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読書の記録です。

「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」

J.K.ローリング:著、松岡佑子:翻訳/静山社

十五歳になったハリーは、蘇った「例のあの人」との新たな対決を迫られる。額の傷痕はますます激しく痛み、今までとは違うなにかを告げていた。夜な夜な夢にうなされるハリー。長い廊下、黒い扉。真実はその扉のむこうか?十五年前になにが起こったのか?いよいよ真実が明かされる。

「最新刊はプリンスだろうが!」とポッタリアンの皆様にお叱りを受けそうですが、5巻目です。図書館で本棚に並ぶのを待ってたら、こんな時期になっちゃった。(基本的に予約はしない人です。)
告白すると、私は翻訳本を読むのが苦手です。古典ミステリー読んでみたいんですけどね・・・。アガサ・クリスティの「黄色いアイリス」でダウン。翻訳独特の言い回しっていうんですか、それがどうも読みにくい。原書で読める頭脳が欲しいなあ。今は、児童書が精一杯ってところです。
さて、本筋に戻りましょう。
どきどきさせる展開はこれまで通り、だんだんと過去も明らかになってきます。当事者が全体像を把握できないっていうのはつらいよね。大きくなる一方の自尊心や、大人への不満。気になる女の子。ハリー君、思春期真っ只中です。ある人の死により、大きな悲しみ、怒りを感じる描写はとても感情が良く伝わった。あんなあっけない死に方ってあり?しかも、暖炉で話した時に「暖炉じゃなくて、私が渡したものを使え」って一言言えば済む話なんでないの?お粗末な結末が私も悲しいよ・・・。
実は私、ハリー・ポッターシリーズのすごいところは、これでもかと吐き出される、剥き出しの悪意だと思っています。これは1巻を読んだ時から感じていたことで、教師も生徒もその他の登場人物も、ここまであからさまな憎しみに満ちた児童書って見たことありません。笑。これ、子供が読んでどう思うんだろう。そんな私は、一番公平っぽいマクゴガナル先生のファンです。かっこいい。
続きが気になるところではありますが、また図書館で出逢うその日まで楽しみに待ちたいと思います。


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「ゲームの名は誘拐」

東野圭吾/光文社

敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトを潰された。葛城邸に出向いた彼は、家出してきた葛城の娘と出会う。“ゲームの達人”を自称する葛城に、二人は勝負を挑む。

狂言誘拐といえば、映画「カオス」(原作は歌野晶午「さらわれたい女」)に似た雰囲気を感じました。オチは忘れてしまったのですが・・・。何せ中谷美紀だけを見つめていたので・・・。
途中までは予想がつくのですが、そこからさらに発展した真相解明は意外。最後の思わせぶりな終わり方も良かった。ぶちっ!て感じで切られてるんですけど。
映画化にもなってましたね。仲間由紀恵さんが娘役だったようですが、読後だと美人さんは美人さんでも少々大人っぽいなあという感想。当時は藤木直人さんを追っかけていたようで、映画関係の切り抜きがいっぱいあります。笑。彼はイメージ通りかな。
みなさん、頭がよろしいというのは良くわかるんですが、そのちょっと見下した感が鼻持ちならない。仕事ができる人ってあんな感じの考え方が染み付いてる気がする。どうすれば他人を出し抜けるのか考えてないと、そりゃ成功はしないだろうなあ。すごいと思う反面、そうはなりたくない(むしろなれない)と思う。
残念なことに、東野さんの手にかかっても誘拐モノにはいまいち魅力を感じなかった。個人的に、どのようにして現金の受け渡しをするか、とか、その他諸々の工作には興味が湧かないからかな・・・。


「バスジャック」

三崎亜記/集英社

バスジャックブームの昨今、人々はこの新種の娯楽を求めて高速バスに殺到するが…。表題作“バスジャック”他、奇想あり抒情ありの多彩な筆致で描いた全7編。

前作“となりまち戦争”と同じく、舞台設定が独特。前半4作は設定に負けている、または設定の斬新さ以外何も感じませんでした。その発想はすごいと思うのですが、だからどうしたと。
その点、後半の3作は良かったー。このギャップの大きさは何なんだろう。笑。
“雨降る夜に”は、とてもきれいなショートショート。欲を言えば、彼女が僕の部屋を図書館と勘違いしているのだろう、という説明的なくだりを省略するともっと神秘性が増して良かったのでは。“動物園”は読者の中のイメージを膨らませてくれます。イメージを具体的な形にできる可能性はとても魅力的。一見ファンタジックな能力を、ビジネスとして描くことで冷静に見つめることができました。しかし、社長と主人公のちょっとわけありな関係は蛇足、かな。“送りの夏”は夏の眩しい光とともに、死を哀しく爽やかに描いた作品。人形と暮らす住人は最初不気味に映ったけど、いつの間にかそれをあまりおかしくないと感じるようになりました。別れに時間が必要な人もいる。ただ、人形とともに過ごすことで気持ちの整理がつくのかは非常に疑問。麻美の葛藤とともに考えさせられます。


「凍りのくじら」

辻村深月/講談社

父が失踪してから、残された病気の母と二人、家族をたったひとりで支えてきた高校生・理帆子の前に、一人の青年が現れる。彼の優しさが孤独だった理帆子の心を少しずつ癒していくが、昔の恋人の存在によって事態は思わぬ方向へ。

残念ながら、サプライズの仕掛けは前2作と変わらず。次はもう買ってあるのですが、もしやこれも・・・?と思わずにはいられません。
若尾は私の1コ下なのですが、同年代とは思えないほど幼稚な思考。今までこんな低能な人間見たことがないぜレベル。そんな感じで登場人物中、彼だけとても浮いていました。笑。
理帆子の心の描写にものすごい嫌悪を感じると同時に、魅かれる瞬間もありました。感情の動きをリアルに感じた結果かしらん、と思うのですがどうなんだろう。同族というほど似てもいないし。その他にも、時々見える鋭い表現がツボにはまります。無駄なものをそぎおとす腕をあげたなあ。
ドラえもんとのリンクは、各章に設けなくて良かったのでは。この作品のモチーフなのですが、ちょっとくどい。ドラえもんと言えば、劇場版が好きでした。見なくなってもうどれくらい経つのかな。久しぶりに漫画が読みたくなりました。
写真集のくだりでは目頭が熱く・・・。あそこで感動しない人はいないでしょう。普段は何も言わなくても、せめて大事な局面ではきちんと向き合える親子関係でありたいなあ、と思わせてくれる一冊。
ちょっと愚痴っぽいレビューになってしまいましたが、おもしろかったですよ~。少々の中だるみに耐えられる方はぜひどうぞ。


「どうやったの?郁也。
細い腕に縋りつき、なりふり構わず彼にそれを問い質したかった。どうやって、それに耐えた?一人になる恐怖と、どうやって折り合いをつけたのだ。」


「DEATH NOTE ロサンゼルスBB連続殺人事件」

西尾維新/集英社

「週刊少年ジャンプ」で大人気を博した“予測不可能”なサスペンス漫画が、待望のノベライズ!ノベル界で最も熱い西尾維新が描く完全オリジナルストーリー。

おもしろかったよー!(大声)

正直、最近の西尾さんの作品は読後の満足感が足りないと感じていたので、今回も“デスノート”というヒット漫画(またはブーム)に乗っかっただけのものなのでは・・・という心配がありました。
今は、杞憂に終わって良かった・・・!という気持ちで一杯です。一番のポイントはいい意味で西尾さんの個性が消えているという点でしょう。少々過剰気味の言葉遊び(西尾さんの大きな魅力でもありますが)が鳴りを潜め、言わんとしていることが読者に伝わりやすかったのではないかと思います。まあ、赤ずきんチャチャはご愛嬌ってことで・・・。
えー、で、肝心の本家“デスノート”の方は2巻までしか読んでません・・・。ごめん・・・。だってLが死んじゃうなんて聞いちゃったら、読む気失くすじゃん・・・。ぎりぎり南空ナオミがわかるレベルです。メロはもう聞きかじりだなあ。そんなあたいが言っても説得力が皆無なのですが、そんなに違和感なかったです。うーん、L目当ての人はちょっとがっかりされるかもしれませんね。でも、私はこの構成は良かったと思います。“デスノート”の魅力、「駆け引き」を上手く継承しているのではないかと思います。さらに、最後の「BB事件」という名前まで巻き込んだ種明かし。名称しか出てこなかったのに、ここまでふくらまされてはもう脱帽です。やっぱり、西尾さんからはまだまだ目が離せません。
そんな感じで“デスノート”フリークからは程遠い私ですが、ひとつのミステリーとして大変楽しませていただきました。見立てあり、暗号解読ありで謎解きも手抜きなしです。特に暗号解読が楽しかった!ページのやつ。カポエラはサービスかな?と思いつつ。
1500円はやっぱり少しお高いですが、今回は字体(文字の大きさや間隔)が好みだったので大目に見てあげよう。(えらそう)予備知識(死神の目とかLとか)として2巻くらいまでは読んでおいたほうがいいかも。・・・ノベライズ買おうって人でコミック読んでない人の方が珍しいか・・・。
オススメです。