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読書の記録です。

「イケニエのヒツジ」「イケニエのロンリ」

榊一郎/富士見書房

トリスタン市では、魔法と関係のない人たちが、ある日突然魔族化するという謎の事件が頻発していた。そんな中、深夜の街角でレイオットは異形のものに遭遇する。

ストジャもいつの間にやら8冊目。上下巻だったのでまとめちゃいました。
この作品、世界観が好きです。毒をもって毒を制すというところが。あと、人間のダークな側面が浮き彫りになっている作品に弱いです。なんでだろう。
今回は、“生け贄”というキーワードが示す通り、弱肉強食がテーマ。自然界では、弱いものが強いものに食べられるという、いわゆる食物連鎖の図式が成り立っているわけですが、人間はその食物連鎖から外れた存在であるわけですよねー。皮肉なことにその人間も、結局は弱い人間を踏み台にして強い人間が利益を得ている。つまり、多数の生命が存在する以上、弱肉強食のルールから外れることはできないんですね。平等なんてありえない。人間が生きていくということは、食べるということ。環境を破壊していくということ。環境問題なんて人間が滅びれば一気に解決しますよね、きっと。ベジタリアンだって、結局は野菜食べてるし。野菜も一個の生命でしょう。それこそ、仙人みたいに霞食べて生きれるようにならなきゃ。
ごちゃごちゃしてきたので、ここらで弱肉強食は置いといて。
見所は、一見善良そうな兄妹の黒さ。良い感じですー。背後の組織がちらちら見え隠れしていますが、その辺の記憶が全く無いので掴めてません。このまま行くと、超人同士の戦いになるんじゃないですか。
ロンさんの魔剣<パルティータ>にときめきました。うわー、魔剣もっと出てこないかなあ。モールドとかスタッフもいいんですけど、やはり魔剣の響きには勝てないぜ!


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「女王様と私」

歌野晶午/角川書店

真藤数馬は冴えないオタク。ある日可愛い妹との楽しいデートの最中に、数馬は「女王様」と出逢ってしまう。

これは、あれだな、妄想系だな!
と思っていたら、本当に妄想でした。人形が喋ったりー。ワープしてみたりー。大体、ピンチを3回まで脱出できるってもうそれだけで都合良すぎじゃん。何が制限のある妄想だよ!
あの妹の喋りが馬鹿っぽくて我慢ならんかった。女子高生のメールみたいな感じ。
最後に意外なオチがあるにはあるんですが、辿り着いた時にはもう疲れきっていて、「はいはい、ああそうですか。」くらいの気分でした。
最近増加している引きこもりの犯罪をモチーフにした作品。「親が死んだら働きます~」なんて言う姿をテレビでみると、何とも言えない気分になったことを覚えています。他人からの評価が怖いのはあなただけではない。みんな人間関係に悩んでいる。自分の中で消化していかなければならない感情というものがきっとある。それをめんどくさいの一言で括って捨ててしまってはいけないと思います。
社会って、理不尽な事の方が断然多い。でも、そんなに捨てたもんじゃないよ、といつか彼らが感じる日は来るのだろうか。


「交響詩篇エウレカセブン 2」

杉原智則/角川書店 原作:BONES

ニルヴァーシュの操縦をめぐりエウレカとの間に心の壁を作ってしまったレントン。その孤独につけ込むかのように、アネモネが現れる。一方自らの心を閉ざし始めたエウレカは、コーラリアンの中へ吸い込まれていく。

う、うまい・・・。話自体は全然別物となってきたのにも関わらず、ポイントはしっかりおさえてあるのね。レントンとエウレカの仲違い。アネモネとエウレカ、もしくはジ・エンドとタイプ・ゼロの対比。そしてホランドの葛藤。ホランドと言えば、腕が!これはびっくりした。生えるとは考えられないし、このままなのかな。色々と動きが制限されてきそうです。
アニメは、視覚にイメージをダイレクトに伝えることができるけれど、小説はいかに読者の想像力を掻きたてられるかが勝負どころだと思います。そういう意味では、エウレカセブンの世界観を損なわずに、これだけのイメージを伝えてくるとはなかなかのもの。
途中、アメリカの自爆テロを彷彿とさせる展開はいまいち。これだけ時間がたっても、ある程度の不快感を感じたりするのは、思いのほか、この事件が私に大きく影響しているということでしょうか。
早くも、エウレカはレントンにメロメロになりつつあります。ま、あと2巻で終わらないといけないしねー・・・。


「きみは、確かに他の人とは違うよ」
「だって、いつでも、おれにとっては特別なんだから」


「またまたへんないきもの」

早川いくを/バジリコ

目から血を噴くトカゲ、凍結するカエル、ゾンビ化するカタツムリ…。あの「へんないきもの」がさらなる進化を遂げ、お茶の間を急襲する。

夢を見ました。
湯船の中に体が透明で長細く平べったい、目だけが黒く浮き上がっている生物がみっしり漂っていて、それを洗面器でひたすらすくって捨てている夢です。きっと、この本を夜寝る前に読んだからだ!ということにしておきました。
私と同じく自称繊細な神経の持ち主の方々は、夜寝る前に読むのは控えましょう。
と書くと、「キモチワルイ絵があるのかしら・・・。」と思われるかもしれませんが、それほど気持ち悪いものはありません。むしろ微笑ましい絵もあるくらいです。ただ、巻末カラーはちょっと・・・かも。あと、ネットで検索すると、実物は意外とパンチが強かったりするので気をつけましょう。
私は、これがシリーズ初読なのですが楽しめました。きちんと生物の解説がつきつつ、ナイスなあおり文句に、センスの光る文章。そして精密な絵。さらにさらに、なんとあの藤田先生との対談が収録されています。寄生虫博物館行きたかったんだけど、友達全員に拒否されて行けんかったんよ・・・。サナダムシと聞くと、小学校の時の先生が、自ら割り箸で巻き取ったけど最後にひっかかって切れて逃げられたという話を思い出します。リアルな話で申し訳ない・・・。
やはりウミウシは奇怪な姿をしているものが多いですねー。この前溶けるウミウシとか見ました。すごかった。
乗っ取るとか、オスがメスになるとか、ああいう発想がすごいですよね。独創性があってうらやましい。(発想という言葉が適切なのかは謎。)


「となり町戦争」

三崎亜記/集英社

ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。戦時下の実感を持てないまま、それでも戦争は着実に進んでいく。

私のイメージとは少し違う作品でしたー。もっと情報戦とか、くだらない小競り合いみたいなものを想像していたので。本当に戦争するとは・・・。そのまんまでおもしろくないじゃないか・・・。
しかも、何故戦争という手段をとったのかが非常に謎。うーん、この世界観がどうにも気持ち悪くて私は駄目だったなあ。その世界観を基本的に受け入れている登場人物たちも、もう理解できない人たちで全然駄目でした。
戦争がリアルに感じられず、苦悩する主人公。直接的な死体や戦闘の描写は無かったので、読者も戦争をリアルに感じることが無いと思います。戦争を理解していないものが反対の声を上げることなどできない。と主人公は感じるようなんですが、戦争に反対するのに、どうして理由がいるのか。こちらが聞きたい。
おそらく、未来の日本人はもっと賢明であると信じています。