「犬はどこだ」 本 2007年08月21日 米澤穂信/東京創元社犬捜し専門の仕事を始めたはずなのに、依頼は失踪人捜しと古文書の解読。犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。 やがて交わる二つの事件!に魅かれたのですが。・・・交わるの遅くない・・・?読者にはわりと早い段階で、関係が分かるようになっているのですが、いかんせん互いが相手の事件との接点に気付くのが遅い。これは個人差もあるのでしょうが、私は遅いなーと感じました。犬捜しの話ではなく、人捜し。ハードボイルド風味です。ハンペーサイドの独白は正直余計だと感じた。話の流れがネットに及んだ時は意外でした。そうくるか。エマの『そうですか』切りかえしもウケたが、サイトの管理人のつっこみが最高におもしろい。細かいやりとりや、探偵トークなどもおもしろいです。最後は後味が悪い・・・含みがあります。 PR
「そして名探偵は生まれた」 本 2007年08月21日 歌野晶午/祥伝社「雪の山荘」「孤島」「館」で事件は起こった!歌野晶午が贈る三大密室トリック。やっぱり歌野さんは、短編の方がおもしろい。個人的には“葉桜~”よりも、断然こちらをお薦めします。“そして名探偵は生まれた”話の構成自体はいたって普通。しかし、最後の殺人の瞬間がぞくりとする。私は、歌野さんの、少し壊れた精神状態の描写が好きなんだなー。ところで、“名探偵”の漢字変換が“命探偵”になってびびった。謎が解けた時の決め台詞は「命!」(ゴルゴ松本風)とか。むしろゴルゴ松本を呼んでくるか。“生存者、一名”一番気に入った作品。極限状態に追い込まれた時に、人は本性を現す。最後に生き残ったのはどちらなのか、少し考えてみましたがわからなかった。たぶん仁の人の方だとは思うんですがー。何となくお気に入りの短編“瓶詰めの地獄”(夢野久作)を思い出しました。ところで、“名探偵”だけではなく“一名”の漢字変換も“一命”に・・・。どんだけこの字使ったんだ自分。命は大事にしよう!ということで。“館という名の楽園で”うーん、やはり館ものは色々と無理が生じますね。ラストは、切ないと言うより、自分勝手っていうか・・・。そういう巻き込み方ってないでしょ。欲を言えば、文字の絵が欲しかったな。
「ラインの虜囚」 本 2007年08月21日 田中芳樹/講談社奇怪な塔に幽閉された仮面の男は、死んだはずのナポレオンなのか?1830年、冬。パリからライン河へ、謎と冒険の旅がはじまる。おー、一人称じゃない!ミステリーランドって一人称じゃないといけないのかと思っていたので、かなり新鮮。一見、?って感じの題名ですが、あらすじを読めばわかる通り、“ライン”=“ライン川”で“虜囚”=“ナポレオン”なのですねー。田中芳樹さんと言えば、「創竜伝」を思い出します。CLAMPの挿絵目当てで読みました。で、今回も鶴田謙二さんの挿絵目当てで借りました。笑。たぶんね、子供の落書きみたいな絵だったら手に取ってなかったと思う。鶴田さんのイラストはもちろん、漫画もおすすめですよー。とさりげなく宣伝。本編。謎解きというより、冒険譚を読んでいた気分。「三銃士」の世界に近い。アニメ化しませんか。わくわくどきどきです。登場人物も魅力的。おじさま達は皆紳士的。私はモントラシェがお気に入りです・・・。読んでいて非常に楽しかった。メンバーのその後も語られていて、すっきりした結末です。児童文学は、時に、鋭く社会の暗部を描いているので、なかなかあなどれません。
「九杯目には早すぎる」 本 2007年08月18日 蒼井上鷹/双葉社休日に上司と遭遇、無理やりに酒を付き合わされていたら、上司にも自分にもまるで予期せぬ事態が!『キリング・タイム』を始め、ユーモラスな空気の中でミステリーの醍醐味を味わえる短編集。黒っ!全編ブラックユーモア尽くしです。かわいい表紙に騙されることなかれ。『大松鮨の奇妙な客』容赦の無い結末ですが、大してかわいそうと思わせない。感情を挟む余地が無い。『においます?』ショートショート1。わかりやすくて私は好き。うまい。『私はこうしてデビューした』2転3転する展開がおもしろい。噛み合わなさすぎ!『清潔で明るい食卓』ショートショート2。楽になるって・・・。それって・・・。『タン・バタン!』一番印象に残った。運の悪さもここまで重なると、かわいそうを通り越して愉快。『最後のメッセージ』ショートショート3。一番面白みに欠ける作品。ありきたり。『見えない線』一方的な思い込み。最後のあのオチにしてやられました。『九杯目には早すぎる』ショートショート4。表題作。話よりも、題名の由来に気をとられた。題名は良く聞くけど、読んだことないんだよなー。『キリング・タイム』“killing time”=“ひまつぶし”の意。この作品をデビュー間もない頃に書いたという事に驚いた。オチは予想範囲内とはいえ、構成や文章、最後の余韻などとても新人さんとは思えない。今後も要チェックですよ!
「ダウン・ツ・ヘヴン」 本 2007年08月18日 森博嗣/中央公論社戦闘中に負傷して入院、空を飛べず鬱屈した日を過ごす草薙。そしてある日「少年」に出会う。スカイ・クロラシリーズ第三弾。これってシリーズものだったんですね。そういえば、表紙の感じが似てる・・・。(←鈍い)前二作は読んでいないので、話についていけない部分も多々あり。ビルやホテルが出てきたり、近代的なイメージの街なのですが、飛行機はレトロな雰囲気。うーん、飛行機のことはよくわからないのですが・・・、「トップガン」の戦闘機というよりは「紅の豚」の飛行艇ってイメージ。そこがミスマッチなんだけど、奇妙なファンタジー感をかもし出しています。主人公・草薙のストイックさが好き。森さんは、こういう女性を書くのが上手い。クールな中に、激情を秘めているヒロイン。ところで草薙水素とくると、草薙素子(攻殻機動隊)を思い出します。少佐好きなんですよ。バトーもタチコマも好きー。きりが無い上に関係ない。笑。空中戦はちょっとしんどかった。「相手はターン。僕はインメルマンで背面からループ。小回りをして、右サイドへ向ける。」・・・動きがイメージできません・・・。という難点はありますが、意外とこのシリーズ気に入りました。「大切なものは、ここにはない。」「それを思い出せ。」「大切なものなんて、なにもない。」「それを思い出せ。」