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読書の記録です。

「犬はどこだ」

米澤穂信/東京創元社

犬捜し専門の仕事を始めたはずなのに、依頼は失踪人捜しと古文書の解読。犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。

やがて交わる二つの事件!に魅かれたのですが。
・・・交わるの遅くない・・・?
読者にはわりと早い段階で、関係が分かるようになっているのですが、いかんせん互いが相手の事件との接点に気付くのが遅い。これは個人差もあるのでしょうが、私は遅いなーと感じました。
犬捜しの話ではなく、人捜し。ハードボイルド風味です。ハンペーサイドの独白は正直余計だと感じた。
話の流れがネットに及んだ時は意外でした。そうくるか。エマの『そうですか』切りかえしもウケたが、サイトの管理人のつっこみが最高におもしろい。
細かいやりとりや、探偵トークなどもおもしろいです。最後は後味が悪い・・・含みがあります。


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「そして名探偵は生まれた」

歌野晶午/祥伝社

「雪の山荘」「孤島」「館」で事件は起こった!
歌野晶午が贈る三大密室トリック。

やっぱり歌野さんは、短編の方がおもしろい。
個人的には“葉桜~”よりも、断然こちらをお薦めします。
“そして名探偵は生まれた”
話の構成自体はいたって普通。しかし、最後の殺人の瞬間がぞくりとする。私は、歌野さんの、少し壊れた精神状態の描写が好きなんだなー。
ところで、“名探偵”の漢字変換が“命探偵”になってびびった。謎が解けた時の決め台詞は「命!」(ゴルゴ松本風)とか。むしろゴルゴ松本を呼んでくるか。
“生存者、一名”
一番気に入った作品。極限状態に追い込まれた時に、人は本性を現す。最後に生き残ったのはどちらなのか、少し考えてみましたがわからなかった。たぶん仁の人の方だとは思うんですがー。何となくお気に入りの短編“瓶詰めの地獄”(夢野久作)を思い出しました。
ところで、“名探偵”だけではなく“一名”の漢字変換も“一命”に・・・。どんだけこの字使ったんだ自分。命は大事にしよう!ということで。
“館という名の楽園で”
うーん、やはり館ものは色々と無理が生じますね。ラストは、切ないと言うより、自分勝手っていうか・・・。そういう巻き込み方ってないでしょ。欲を言えば、文字の絵が欲しかったな。


「ラインの虜囚」

田中芳樹/講談社

奇怪な塔に幽閉された仮面の男は、死んだはずのナポレオンなのか?1830年、冬。パリからライン河へ、謎と冒険の旅がはじまる。

おー、一人称じゃない!ミステリーランドって一人称じゃないといけないのかと思っていたので、かなり新鮮。
一見、?って感じの題名ですが、あらすじを読めばわかる通り、“ライン”=“ライン川”で“虜囚”=“ナポレオン”なのですねー。
田中芳樹さんと言えば、「創竜伝」を思い出します。CLAMPの挿絵目当てで読みました。で、今回も鶴田謙二さんの挿絵目当てで借りました。笑。たぶんね、子供の落書きみたいな絵だったら手に取ってなかったと思う。鶴田さんのイラストはもちろん、漫画もおすすめですよー。とさりげなく宣伝。
本編。謎解きというより、冒険譚を読んでいた気分。「三銃士」の世界に近い。アニメ化しませんか。わくわくどきどきです。登場人物も魅力的。おじさま達は皆紳士的。私はモントラシェがお気に入りです・・・。読んでいて非常に楽しかった。メンバーのその後も語られていて、すっきりした結末です。
児童文学は、時に、鋭く社会の暗部を描いているので、なかなかあなどれません。


「九杯目には早すぎる」

蒼井上鷹/双葉社

休日に上司と遭遇、無理やりに酒を付き合わされていたら、上司にも自分にもまるで予期せぬ事態が!『キリング・タイム』を始め、ユーモラスな空気の中でミステリーの醍醐味を味わえる短編集。

黒っ!全編ブラックユーモア尽くしです。かわいい表紙に騙されることなかれ。
『大松鮨の奇妙な客』
容赦の無い結末ですが、大してかわいそうと思わせない。感情を挟む余地が無い。
『においます?』
ショートショート1。わかりやすくて私は好き。うまい。
『私はこうしてデビューした』
2転3転する展開がおもしろい。噛み合わなさすぎ!
『清潔で明るい食卓』
ショートショート2。楽になるって・・・。それって・・・。
『タン・バタン!』
一番印象に残った。運の悪さもここまで重なると、かわいそうを通り越して愉快。
『最後のメッセージ』
ショートショート3。一番面白みに欠ける作品。ありきたり。
『見えない線』
一方的な思い込み。最後のあのオチにしてやられました。
『九杯目には早すぎる』
ショートショート4。表題作。話よりも、題名の由来に気をとられた。題名は良く聞くけど、読んだことないんだよなー。
『キリング・タイム』
“killing time”=“ひまつぶし”の意。この作品をデビュー間もない頃に書いたという事に驚いた。オチは予想範囲内とはいえ、構成や文章、最後の余韻などとても新人さんとは思えない。

今後も要チェックですよ!


「ダウン・ツ・ヘヴン」

森博嗣/中央公論社

戦闘中に負傷して入院、空を飛べず鬱屈した日を過ごす草薙。そしてある日「少年」に出会う。スカイ・クロラシリーズ第三弾。

これってシリーズものだったんですね。そういえば、表紙の感じが似てる・・・。(←鈍い)前二作は読んでいないので、話についていけない部分も多々あり。ビルやホテルが出てきたり、近代的なイメージの街なのですが、飛行機はレトロな雰囲気。うーん、飛行機のことはよくわからないのですが・・・、「トップガン」の戦闘機というよりは「紅の豚」の飛行艇ってイメージ。そこがミスマッチなんだけど、奇妙なファンタジー感をかもし出しています。
主人公・草薙のストイックさが好き。森さんは、こういう女性を書くのが上手い。クールな中に、激情を秘めているヒロイン。ところで草薙水素とくると、草薙素子(攻殻機動隊)を思い出します。少佐好きなんですよ。バトーもタチコマも好きー。きりが無い上に関係ない。笑。
空中戦はちょっとしんどかった。
「相手はターン。僕はインメルマンで背面からループ。小回りをして、右サイドへ向ける。」
・・・動きがイメージできません・・・。
という難点はありますが、意外とこのシリーズ気に入りました。


「大切なものは、ここにはない。」
「それを思い出せ。」
「大切なものなんて、なにもない。」
「それを思い出せ。」