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読書の記録です。

「人生相談。」

真梨幸子/講談社

昔のあの出来事、セクハラにあたるのでしょうか?西城秀樹が好きでたまりません!占いは当たるのでしょうか?すべては“あなたの悩み”から始まった。何の関係性もなさそうな「人生相談」。その裏にあるものは・・・。

真梨さんの本は読んだことがないのですが、「イヤミスの名手」という二つ名?は良く聞いていたので、何となく避けてました。笑。「イヤミス」っていや~な気分になる後味の悪いミステリーだと思ってるんですが、合ってるのかな・・・。でも、私、後味の悪いラストもそんなに嫌いではないのになんで避けてるんだろう?なんだろう、宣言されるともう結末がバッドエンドだと分かってるから読みにくいのかなー。ものすごいのが出てきそうな感じがイヤなのかな?と複雑な乙女心を考えてみたりしつつ、母親からまわってきたので読んでみました。
そしたら、これがおもしろかった!これはイヤミスではない・・・感じ。
ネットをフラフラしてると、相関図を書いておられる方がたくさんいて嬉しかった~。私も書いたんですよ~。相関図書いたのなんか何年ぶりでしょう!いわゆる連作短編集なのですが、登場人物同士のつながりがややこしいので、いったん整理したくなるんでしょうね。一気読みがオススメです。
最初は複雑な家庭のいざこざ?なんだかキナ臭いなーという話から、出版社の人間関係。作家の下積み時代まで話は遡って、最後は占有屋やらマネーロンダリングやら・・・そして、あの人が実はあの人だった!と、お話がコロコロ転がっていきます。主軸は原田家の騒動の真実と、人生相談コーナー担当の川口寿々子かなーと思ってます。人間関係を考えながら読むだけでもおもしろかったです。良く構成が練られてるなあ。(←えらそう)
残念な点を挙げるなら、これだけ枝葉の多い話なので、とりこぼしが多いことかなあ。私が気になる人が何人かいまして・・・。一人目。現在の原田家に住む占有屋の息子・小坂井剛。彼はキャバ嬢のカノンに入れあげて、同じ店で働くナオミ(この人が実は昔原田家で一緒に暮らしていたふみちゃん)に騙されて1000万円のバーキンをプレゼントするのですが、これがニセモノであることが発覚し、カノンは大恥をかくことに。カノンは怒りの炎をメラメラ燃やすのですが、当の剛はこれを知らない(と思う)。ここで何かひと悶着あったのかな?と。
二人目。エスティシャンのメグミ。彼女は作家・樋口義一の担当である佐野山美穂のいきつけのエステで働くエスティシャン。美穂はメグミを気に入り、毎回指名するけれどメグミは彼女のトークに辟易していて苦手な客と思っています。ある日、美穂はメグミに実家から送られてきたネギをおすそ分けする(二人は同郷)のですが、実はメグミはネギアレルギー。しばらくして、美穂はエステの店を変え、その時にメグミがネギアレルギーで亡くなったという記述が出てきます。・・・あの時のネギ?これはご想像にお任せします、かなあ。
他にも、あの人どうなったの?っていう人が。隣人の嫌がらせのためにアパートを引き払って帰ってきた米田美里。実は実家も隣人の嫌がらせを受けていた。・・・っていうか、鍵閉めましょうよ、お母さん!死相が出てるってことは死んだのかなあとか、武蔵野寛治夫妻のバトルの結末とか・・・。全てをスッキリさせることは無理でしょうが、モンモンしてしまいました。
色々な人が出てきたけど、一番アホなのはセクハラメールを全社員に送信した、葛西健人でしょう。笑。


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「絡新婦の理」

京極夏彦/講談社

房総の女学校・聖ベルナール学院の生徒・呉美由紀は校内に潜む背徳の行為と信仰を知って戦慄する。連続目潰し魔に両目を抉られた教師・山本純子は呪われて死んだのか。そしてもう一人、教師の本田幸三が絞殺され、親友・渡辺小夜子が眼前で校舎から身を投じた

久しぶりの京極さん。京極堂シリーズじゃなくて、百鬼夜行シリーズなんですって。知りませんでした。シリーズなのに、途切れ途切れのペースで読んでいるため、毎回記憶がリセットされています。今まであんまり不便を感じなかったのですが、今回は「これ誰?」が多すぎて反省しました・・・。主要メンバーの4人(関口先生、京極堂、木場修、榎さん)くらいはさすがに覚えてましたが、敦子さん(京極堂の妹)や鳥口くん、伊佐間なんかからっきしでした。あんなに分厚い本を読んだのに全然覚えてないなんて、空しいですね・・・。
しかし「これ誰?」と思いながらも、楽しく読めました。シリーズ中、おもしろい部類に入ると思います。榎さんの出番も多いし。2つの事件を主軸に、関係者が錯綜し、やがて大きなひとつの絵が描き出されるのです。ひとつは、聖ベルナール学院を主な舞台とする連続目潰し魔。そしてもうひとつは、千葉近郊から広がる絞殺魔。関連性がないように思われた二つの事件だが、織作家を媒介に同じ背景を持つ事件であることが判明する。事件を裏で操っている真犯人がいるのだ。
この巧妙に張り巡らされた伏線を、京極堂は蜘蛛の巣にたとえる。動き出した事件は止めることができず、自らも駒の一部であると京極堂は語る。憑物落としは事件を収束させるのではなく、かえって結末を早めかもしれないとしつつ、依頼を受けることになります。結果的に、早めただけになってしまったのは残念でしたが・・・。
今回は、冒頭が犯人との対話から始まっており、犯人は女性であるという点はハッキリしていました。そこで、織作家の姉妹のうちの誰かが犯人やなとそこまでは当たりがついたのですが・・・。犯人のくせに、えらく被害者ぶった口調はなぜに?と思っていましたが、まあ、本人が自分の居場所を得るためと言っていたので、そうなのでしょう。半分自業自得(家出して娼婦をしたのは自分の責任)で、あとの半分被害妄想入ってんじゃないの?というのが、私が考える動機なのですが・・・。自分の思うように、ありのままに生きている人間なんてなかなかいません。みんな、もがきながら生きていると思います。本来自分が向き合い、克服していくべきもの・・・例えば娼婦であった過去や、夫婦生活が送れないこと、弱い自分・・・といったものを、他人を殺すことで無いものにしてしまおうというその腐った性根が気に入らない。というわけで、アンチ茜さんな私です。織作家自体が異常な一族だということはわかってますし、それぞれ父親が違う生い立ちもかわいそうだとは思いますが。なんか、卑怯だよね。
視線恐怖症もどないやねんと思いましたが、葵の殺害シーンが一番インパクト大でした。首絞めながらぐーるぐる回るって・・・。どんな怪力なの・・・。あっけにとられました。笑。あと、今回の京極堂さんのウンチクは、キリスト教と男女差別について(ジェンダー論?)。男女の格差・・・自分も考えたことがありますが、今は男と女だけじゃなくて、色々な立場の人がいて、なるべく他人の立場を尊重しあいながら仕事ができたら良いなあと思います。きれいごとです。
ラストと冒頭の桜が舞い散るシーンはとても良かった。美しい。
それにしても、ドアが2つ以上ある部屋って嫌だなあ。茜さんの部屋にいたっては、ドアが8つあるっていう・・・。いらんいらん。笑。


「星の民のクリスマス」

古谷田奈月/新潮社

最愛の娘が家出した。どこへ?クリスマスに父が贈った童話の中へ。父は小さな娘を探すため小説世界へともぐりこむ・・・。残酷でキュート、愛に満ちた冒険譚。

第25回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作らしいです。そんな賞があったんですねえ。・・・ポチポチ(検索)。森見さんの「太陽の塔」しか読んだことないわー。
あらすじに、残酷でキュートとあったので、雰囲気として映画「パンズラビリンス」をイメージしながら読んでいたのですが、まあ、特に残酷な描写はなかったと思います。ちなみにキュートでもありませんでした。ファンタジーの世界に理屈を通そうとすると、こうなるね!って感じです。
史実を書く仕事をしている父の娘は、孤独?から、幼い頃父親が書いてくれた物語の世界に迷い込む。そこは雪をあらゆる原動力にして人々が暮らす世界だった。娘は、父親がくれたもうひとつの名前・・・ズベン・エス・カマリと名乗り、この世界で生きていく。一方父親も、いなくなった娘を探して物語の世界に迷い込む。しかし、父親の場合は影になってしまい、街の人に気付かれずひっそりと彷徨うのです。そんな父親を発見するのがキツツキの子。(この世界では名前がなく、あだ名?で呼び合うようです。)キツツキの子は、娘が銀色(郵便配達員)のところに彼の娘としてかくまわれていることを知る。父親と娘は出会えるのか?
とにかく、お父さんがかわいそうでした。別に、もとの世界でも娘をほったらかしにしていたわけではなく、ただ仕事が忙しかっただけだし・・・。娘には思うところがあったのか、物語の世界に迷いこんだあと、すんなり銀色の娘になり、仕事をして物語の世界の住人として生きることを選びます。特に父親を恋しがる様子もなく、エンジョイ!後に、彼女は外からきた存在であることがバレて投獄されるのですが、そこで父親に助けてもらっても、やっぱり物語の世界がいいんだって。うーん、娘の思考が理解できない・・・。
最後の最後で、この物語が三重構造になっていることがわかります。物語の世界<物語が書かれた世界<この本を書いた父親が現在いる世界・・・ってな感じでしょうか。含みのある終わり方で、終わり方はいいなと思いました。父親だけが現実世界に帰ったのか、娘は失踪した日にすでに亡くなっていて、これは娘のために書かれた物語だったのか、父親はそのまま消滅してしまったのか・・・。色々考えられますが、どの結末であったとしても、これは父親と娘の別れの物語なのだなあと思うと悲しいですね・・・。


「雪月花黙示録」

恩田陸/KADOKAWA

大和文化を信奉する「ミヤコ民」と物質文明に傾倒する「帝国主義者」に二分された近未来の日本。美青年剣士の紫風が生徒会長を務めるミヤコに謎の飛行物体が飛来した。それは第三の勢力「伝道者」の宣戦布告だった!

今回はSFでした。
ミヤコの中で、代々権力を握ってきた春日家の面々が主人公。生徒会長の紫風に、凄腕の剣士の萌黄。元気娘の蘇芳。もともとミヤコに敵対する勢力として、帝国主義者が存在していたが、第三の勢力「伝道者」が暗躍し始める・・・。という、学園モノかと思いきや、ミヤコの成り立ちの謎にも触れられたりして、一言で説明できない話ですね。とりとめがないというか・・・。ネタばらしになるけど、ミヤコのPVみたいな話なのかなあ。これはイントロダクション?
紫風と萌黄を救出するあたりがヤマかなと思っていたので、その後あっさり救出し、うだうだとその後のエピソードが続いたのが残念だった。日本の大多数は帝国主義で、ミヤコはモデルケースとして意図的に残された地域である云々・・・と種明かしを読んでも、特に・・・。「ふーん」で終わりました。笑。蘇芳が合宿先で謎の生物兵器に襲われたり、佐伯の正体は?とか、ところどころはおもしろいんですが・・・。
話のことはおいておいて、恩田作品にしては珍しい、裏表のない蘇芳が好きでした。明るくて元気いっぱいの蘇芳がかわいかったから、この本が最後まで読めたと言ってもいいと思う。他にも、派手好き蘇芳好きで裏に何かありそうなミッチーや、愉快な双子姉妹も好きでした。まあ、こんな感じに登場人物を楽しむと良いかもしれません。
恩田さんのミステリーを、そろそろ読みたいなあ・・・。


「英子の森」

松田青子/河出書房新社

英語ができれば世界は広がる。それは誰かが作り出した幻想かもしれない。英語を使う仕事を切望しながら、派遣社員を続ける英子。自分のアイデンティティに疑問を持ったとき、母親と2人で暮らしている森が崩壊し始める。

母経由の本。自分では選ばないであろうジャンルの本でした。新聞で松田さんの記事を読んだときは、綿矢りささんに雰囲気が似てる?という印象でした。実際読んでみると、淡々とした語り口調には共通点が見えますが、作品全体の雰囲気は違いました。
「英子の森」表題作。母親の「あの人みたいになってはいけない」という呪縛にからめとられた英子は、とにかく英語を使った仕事に就くことを希望していた。英語の仕事は色々あるように見えて、成功している人はほんの一握り。英子は派遣会社に登録しているが、英語を使う仕事と普通の仕事の時給の差はたった50円。・・・うーん、私は英語がからきしダメなので、英語を使う仕事のなかで、こんなヒエラルキーがあることも知りませんでした。英語が喋れれば未来は約束されている!っていうのも短絡ですけど(笑)、まあ、英語できないよりできた方が絶対良いですよね。英語できるからって、グローバルっていうのもちょっと違うと思いますけど。最近は社内の公用語を英語にしたりする会社があって、グローバルってそういうことなの?とひっかかります。まず、日本語をきちんと使えるようになろうぜ!母親と娘の閉塞した森は、一度崩壊するけれど、最後に再生する。母娘の関係の破壊がテーマかと思っていたので、えっと・・・、再生していいの?と思いましたけれども、本人たちが良ければ良いのでしょう!オッケー!・・・英子の彼氏、すかしすぎてぶん殴りたくなったのは、私だけでしょうか?なんだよアイツ!何がオレの森だよ!枯れちまえ!
「※写真はイメージです」すべては脳が認識しているもの・・・ということ?ちょっと謎でした。
「おにいさんがこわい」人は思っていることの八分の一も言葉にできない。思っていることの全てがダダモレてしまうと、大変なことになっちゃうわけで。これくらいがちょうどいいのかなあと思った。うたのおにいさんやおねえさんはすごいのです。
「スカートの上のABC」よく覚えてないんですが・・・。久しぶりにスカート欲しいなと思った。スカートって、気分が上がります。
「博士と助手」精神病の治療を研究する博士と、博士のことがヘドが出るほど嫌いな助手。ちょっとSFな雰囲気。
「わたしはお医者さま?」暗闇のなかで職業を当てるゲームをする人々。本当の職業だったり、架空の職業だったり・・・。ペンギンナデはいいですねえ。欲を言えばペンギンだけでなく、色々な動物をなでなでしてまわりたいですねえ・・・。と和む話ではなく、もうすぐこの世が終わってしまう瞬間であることが最後に明かされます。どんな自分であったのか?本当はどうありたかったのか?自分の人生を振り返る機会があることは幸せなのかな・・・。星新一さんの世界観を思い出します。本の中で一番好きな作品。