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読書の記録です。

「さまよう刃」

東野圭吾/朝日新聞社

蹂躙され殺された娘の復讐のため、父は犯人の一人を殺害し逃亡する。遺族に裁く権利はあるのか? 社会、マスコミそして警察まで巻き込んだ人々の心を揺さぶる復讐行の結末は!?

うーん、難しいテーマです。ちょっと過激な発言をさせていただくと、私は未成年だろうが、何歳だろうが刑事罰を与えるべきだと思っています。年齢ではなく、何を犯したかを問うべきだと。守るべきは被害者か加害者か。大人が思うよりも、子供はずっとずる賢く、したたかであるとまだ気付いていないフリをしているのです。
あのようなケダモノが、人間としてのうのうと生きるなんて確かに許せない。死んで当然。殺されても同情の余地などない。
ただ、もし自分が彼だったら。自分は人を殺せるだろうか。それは正義なのか。
本の中で、何も答えが出なかったのと同じように、私の答えも出ないままです。
こんな葛藤を現実に味わう人が少しでもいなくなるように祈るばかりです。


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「神様ゲーム」

麻耶雄高/講談社

小学4年生の芳雄の住む神降市で連続猫殺害事件が発生。芳雄は同級生と結成した探偵団で犯人捜しをはじめることにした。そんな時、転校してきたばかりのクラスメイト鈴木君に「ぼくは神様なんだ。」と明かされる。

ミステリーランドのシリーズです。
以前に何冊か読んでいましたが、正直、子どもに読ませたいと思う本は一冊もありませんでした。一応子ども向けと銘打っているのだから、もっと穏便に話を進められないのでしょうか・・・。今回も、最後の最後でとばしまくりでしたね・・・。もう猫殺しとか忘却の彼方に。どんでん返しはびっくりを通り越して意味がわからなかった。それを達観している主人公のぼくが不憫で不憫で。私は彼の将来が心配ですよ。
やはり小学生には、麻耶さんではなく、シャーロックホームズとか赤川次郎とかを読んでいただきたい。


「四月の懇親会の時に酒を飲まされたあと力ずくで関係を結ばれて、それからずるずると続いているみたいだよ。」
鈴木君(神様)、メロドラマの見すぎだよ!


「猫丸先輩の空論」

倉知淳/講談社

年齢・職業ともに不詳の童顔探偵猫丸先輩が、日常を本格推理する!不可解で理不尽な謎がすらりと解かれる6編の短編集。

やっとの単行本化。待ってました!
ささいな謎を短編1本分にふくらませて、飽きさせないというところがすごい。テンポがいいのです。掛け合いとか、登場人物がみんな生き生きしていておもしろい。
おすすめは「な、なつのこ」の後藤田支部長の素振りシーン。スイカ割り公式ルールとかあったんですね。知らなかったー。「子ねこを救え」挿絵のにゃんこたちがラブリー。書き下ろし短編「夜の猫丸」は、ちょっとぞくっとする結末。近づいてくる電話のベルなんて、想像するだけで恐ろしい!
猫丸先輩の実物イメージは、10年くらい前の阪口大介さん。現在のビジュアルはわかんないので・・・。うーん、ブーイングが聞こえてきそうです。笑。


「実験小説ぬ」

浅暮三文/光文社

交通標識で見慣れたあの男の秘められた、そして恐ろしい私生活とは?(「帽子の男」)等27編から成る短編集。奇想天外、空前絶後の企みに満ちた作品の数々が、あなたを目も眩む異世界へと引きずり込む。

前半は、絵あり漢字あり記号あり何でもありの短編。オチは普通なのですが、過程がおもしろい。思わず、こんなのあり?と言ってしまうこと請け合いです。おすすめは「遠い」「さん(漢字が無かったのでひらがな。)」「壷売り玄蔵」「帽子の男」。
後半は、ほとんどショートショートと言っていいほどの長さ。ページ数平均4、5枚くらい。私はショートショートが苦手ですので、?というものも何個かありましたが楽しめた方ではないかと。

「ああ、見ての通りの海驢(アシカ)だぜ・・・。」
シブいです、海驢さん!


「子どもたちは夜と遊ぶ」

辻村深月/講談社

同じ大学に通う仲間、浅葱と狐塚、月子と恭司。彼らを取り巻く一方通行の片思いの歯車は、思わぬ連続殺人事件と絡まり、悲しくも残酷な方向へと狂い始める。

前作より一冊減りましたが、相変わらずくどい!余計だと感じるエピソードが多かった。会話はまるで昼ドラのようなわざとらしさ。その中で、「人生ってのは暇潰しなんて生易しいもんじゃない。楽することは許されないし、簡単にはリタイヤさせてもらえない。」という言葉が唯一輝いていました。
意外にも、殺害時の描写にひきつけられた。恐怖や冷酷さといった感情の書き方がうまいなあ、と。ラストお化けトンネルのあたりなどは、はらはらしました。が!犯人がー!私の嫌いなオチトップ3に入るネタでして。ああ駄目。まさか、まさかと思っていたけど、最後は裏切って欲しかった。恋愛サイドの結末は好きです。せつない~。
前作も今作も、人物の意外性(実は誰々だった。)が一番のサプライズとして描かれていた印象です。なんで、またかよーという気持ちも無きにしも非ず。次作はもっと別の仕掛けを期待したいです。