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読書の記録です。

「ミサキア記のタダシガ記」

三崎亜記/角川書店

「ダ・ヴィンチ」「本の旅人」で四年にわたり連載された人気エッセイが一冊に!twitterの「ツブヤ記」も収録した、シュールで不可思議なエッセイ集登場!

ダ・ヴィンチで読んでたときに、まとめて読みたいなあと思っていたのを思い出して借りてきた次第。
公務員兼業作家、というイメージだったのですが、いつの間にやら専業作家になっていらっしゃいました。しかも結構前だった。うーん、もったいない(笑)けど、専念できる環境が整ったということは、気持ちに余裕ができて良いですね。
三崎さんの小説は、不思議な世界観が特徴です。
さすがに、エッセイまで不思議な世界ではないですが、話題の切り口がナナメです。まあ、悪く言えばひねくれ者な感じですね。笑。マイノリティ寄りを自覚している者としては、非常に親近感がわきます。はい。
時事ネタが多くて、確かにそんなことが取り上げられていたなあと思いながら読んでいました。自動車の走行音が静かすぎて危険、というのは最近も思うことです。ハイブリッド車、後ろから接近されても全く気付きません。(音楽も聞いてないし、耳あてもしていなかった。)あとは、「孤独」を「個独」として楽しもう!とか良いと思った。
グローバル化についての回では、以下のような記述があります。
「・・・・最近、「グローバル化」という言葉には、何かを覆い隠し、不満を持っている層に対して言い繕うような胡散臭さがつきまとうからだ。弱い立場の人々にさらなる我慢を強いる、「錦の御旗」と化しているように思えてならない。
そんな風に裏読みしたくなってしまうのは、「グローバルな視点」を言い出す人は決まって、グローバル化した社会で、「どうやって生き残るか」を説くばかりで、「どうやって格差をなくすか」についてはちっとも教えてくれないからだ。自分の「グローバル化」の目線からこぼれ落ちたものを他人に強要しても、説得力はない。」
なるほど!って思いました。私が大学生のとき、いたるところで「グローバル化」、良く使ってました。笑。日本が海外と対等になる、くらいの認識しかなかったんですが、最近は淘汰だなと思います。もちろん、メリットがあることはわかっていますが、それは強者にとってであって、結局は弱肉強食だなと思います。個人的には、アベノミクスは失敗に終わると思います。消費税が上がっただけ、みたいな。私には、何の恩恵ももたらされないと思います。強い人はより強く、弱い人はほどほどに生きていく。そんな世の中です。平等な世界なんてあり得ません。
あとは、ツィッターで、おもしろいのがあったので・・・。
「「勇気・希望・努力」って並べられると、なぜだか「ネットの無い時代の男の子のエロ本への葛藤」を想像する。「書店で購入する勇気!すごい内容に違いないって希望!母親に隠し場所を見つからないための努力!」だ。そう考えると、ネットで簡単に画像が手に入る今の男の子は可哀想な気もする。」
わかる・・・。今、足りないのは想像力だ!エロにこそ想像力が必要なのです!あはは。笑。エロではないですけど、私、ずいぶん前から本をネットで買うのはやめたんです。買うのは楽なんですけど、買った本に全く愛着が湧かなくて・・・。やっぱり本は本屋さん(あるいは図書館)で現物を見て、どんな本かなあって想像しながら選んで、重い思いをして家に持って帰ってくるから読むのが楽しみなのかなと思います。
べつやくれいさんのイラストも良いですよ。ただの挿絵ではなく、ひとつのコラムとなっています。
特に、「もう一時間寝よう・・・」「地球のために!」が好きです。(これだけじゃわけわからん。笑。)


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「桜庭一樹短編集」

桜庭一樹/文藝春秋

一人の男を巡る妻と愛人の執念の争いを描いたブラックな話から、読書クラブに在籍する高校生の悩みを描いた日常ミステリー、大学生の恋愛のはじまりと終わりを描いた青春小説、山の上ホテルを舞台にした伝奇小説、酔いつぶれた三十路の女の人生をめぐる話、少年のひと夏の冒険など、さまざまなジャンルを切れ味鋭く鮮やかに描く著者初の短編集。

てっきり表紙は写真だと思っていましたが、近くで見ると絵でした。髪の毛がすごくリアル。
ライトノベルというジャンルに縛られなくなった頃からの作品かな?と解釈しました。
「このたびはとんだことで」女2人芝居。恩田陸さんのようなテイストでしたが、ちょっと違う。コミカルなやりとりを入れるところが桜庭さんだなと思います。最初、男の人は両手足が無くなって植物人間のような状態なのかしら・・・と思っていたので、もうお骨になっているとわかって却ってほっとした。
「青年のための推理クラブ」プロトタイプにあたるお話。久しぶりに「青年のための~」が読みたくなった。
「モコ&猫」遠くから眺めているだけで満足、という気持ちはわかるけど、猫が屈折しすぎだ。笑。しかも、そこそこモテているから腹がたつ。「もう、お別れなのだ。殺すこともなく。愛しあうこともなく。ただ、おだやかな好意だけを空気みたいに残して、別れていくのだ。」本気でぶつかり合わなかったから、別れた後には何も残らない。・・・刺さります。
「五月雨」ファンタジーに近い話。ぼんやり読み終わってた。
「冬の牡丹」独身で子供もいないと、なんだか人間として未完成で恥ずかしくて怖い時がある。その感覚を思い出して、読んでる間いたたまれない気分だった。でも、これって結婚して子供を産んだら解決する問題なのだろうか?とも思う。どうあっても文句を付けられるのだから、やりたいようにやるのが一番だよなあ。それにしても、既婚組の上から目線ってやつが無くなる日は来るのだろうか?
「赤い犬花」ひと夏の少年の物語。少年が語り手なのは、初めてとのことです。私はやはり桜庭さんといえば少女のほうがしっくり来ます・・・。冒険(三本松まで行く)があまりおもしろくなかったのと、2人の掛け合いにあんまり乗れなかったもので。


「いったいどうすれば、ほんとうに一生懸命生きる、なんて奇跡のような芸当ができるのだろうか。」

「わたしたちがどう戦えば、あなたたちは満足するのか。」

「わたしたちを赦してくれるのか。」


「Yの悲劇」

エラリイ・クイーン/早川書房

狂気じみたハッター家の当主の死体がニューヨークの港から発見され、その後一族の中で次々と奇怪な惨劇が起こる。サム警視の依頼を受け、ドルリイ・レーンはその恐るべき完全犯罪の意外きわまる真相を解き明かそうとするが……犯罪の異常性、用意周到な伏線、明晰な推理。本格ミステリ不朽の名作。

エラリイ・クイーンは、2人だった!
フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーという従兄弟同士のユダヤ系アメリカ人の合同ペンネームだそうです。(あとがきより)確かに、写真にはおじさんが2人写っている!またひとつ、賢くなりました。恥をかく前で良かった~。
「X・Y・Zの悲劇」に「ドルリイ・レーン最後の事件」を加えて、悲劇四部作と呼んでいるそうです。題名は良く目にしますが、あらすじまでは知りませんでした。Yさんが殺されるのかしら~ってイメージでした。
「Xの悲劇」で事件を解決した探偵・ドルリイ・レーン氏は、警察から再び事件の捜査を依頼されます。事件の舞台となったハッター家は、「気ちがいハッター」と呼ばれ、常軌を逸した行動の多いことで有名な一族。2ヶ月前にこのハッター家の夫(ヨーク・ハッター)が自殺していたのだが、次はその夫人(エミリー・ハッター)が自宅で殺された。凶器は、ヨークのコレクションのマンドリン?また、前夫との間の娘・ルイザ・ハッターを狙った毒物混入事件も起きている。エミリー殺害時に、同じ部屋で寝起きしていたルイザは、重要な証人だが彼女は先天的に視力・聴力を失っており、喋ることができなかった。捜査が続けられるなか、ヨークの実験室が放火される。・・・犯人は誰か!?っていう話でした。
とにかく、探偵のレーン氏が、煮・え・き・ら・な・い!もー、引っ張る、引っ張る。笑。すぐ言えよ!今言えよ!ここで言えよ!と何回思ったか。結果として、犯人は自分で仕込んだ毒を誤って飲んで死んでしまうんですけどね・・・。レーン氏は善意で、犯人に更正のチャンスを与えたつもりだったのかもしれないですけど、そんな他人を裁くような権限、探偵にはないと思います。ただ真相を暴くのみ。あとは司法に委ねて下さい。まあ、こんな感じでレーン氏、手際悪い~。いまいち~って感じでしたけど、謎解きのアプローチはなるほど!と思いました。読者に対してフェアです。
特に、犯人への背丈からのアプローチ。ルイザの証言で材料はほとんど揃っていたっていう。あとは、マンドリンについて。blunt instrument(鈍器)の意味が分からず、instrumentつながりで、musical instrument(楽器)を連想し、マンドリンへと結びついたという発想の飛躍。これは、なかなか思いつきません。
ただ、犯人が善悪の判断がつかないまま、犯罪を遂行していくところは動機としてどうだろう?と思います・・・。遺伝と言われれば、もうどうしようもないですけどね。そもそも、ハッター家のみなさんの異常性は、エミリーが原因と言われています。作中では詳しい原因について触れられていませんが、あとがきで梅毒というキーワードが出ていたので、ちょっと調べてみました。(梅毒で神経の異常まで起こるのか?という疑問があったため)
梅毒は、感染すると痛みのないしこりができたり、太もものつけねが腫れたりします(第1期)。その後、全身に菌が広がり(第2期)、最終的には心臓、血管、目、神経などに重度の障害が出るそうです(第4期)。現在は末期の患者は稀だそうですが、可能性としてはあり得るということですね。納得。検査ではワッセルマン反応で陽性が出るそうで、ハッター一族のカルテにも書かれていたっけな~。これも納得。第2期にはバラ疹と呼ばれる発疹が全身に現れるそうで、ヨークが生前、腕の発疹に薬を塗っていたけど、これも病気によるものだったのかなーと思ったり。勉強になりました。
最後まで、「ドルレイ・リーン・・・あっ、ドルリイ・レーン・・・」っていう状態でした。ドルレイ・リーンの方が読みやすくないですか?


「きょうの猫村さん3」

ほしよりこ/マガジンハウス

1日1コマで連載しているほしよりこの大人気エンピツ漫画第3弾。
猫なのに家政婦、猫だけど働き者。そして意外に芸能通な猫村ねこ。ご奉公先の犬神家は相変わらず夫婦親子嫁姑と全方向に問題続き。ヤンキーの尾仁子おじょう様は集会を企みつつあり、奥様の顔のメンテナンスはとどまるところをしらず、旦那様はなんだか奥様に冷たいよう…。女優・若杉利子の私生活やアイドル・森コリスちゃんの将来までも、猫村さんの小さな胸は気がかりなことでいっぱい。夫婦って家族って一緒にいることって…?
それでも、きょうも精いっぱい猫村さんはおつとめします。


表紙の猫村さんが気持ちよさそう~。
3巻は大きな展開はなく、大体、あらすじどおりです。テレビ番組が変わったのと、肉屋の息子が出てきたくらいか。たかしぼっちゃんの就職が決まりました。以上!笑。
マンガって文字だけじゃ、気に入ったポイントを紹介するのに限界があるよな~と思ったので、大昔のスキャナーとか引っ張り出して、ああだこうだやってみました。もっと美しくするつもりが、ここらへんが限界でした・・・。全国のネコムラーさん、すいません!
マンガのレビュー書いてる人って、すごいなあ・・・。

以下、選りすぐりの気に入ったコマ。
①つめとぎ違い。
 

②猫村さん、禁断の整形
 

③そんな猫村さんが、大好きだ!

④ご主人、何気に猫に対して失礼。
 


意外に深い本です。図書館で借りれるしね!犬神家、どうなるんだろ・・・。


「さよならの次にくる<新学期編>」

似鳥鶏/東京創元社

名探偵の伊神さんは卒業、葉山君は進級、そして迎えた新学期。曲がり角が衝突したことがきっかけで、可愛い一年女子の佐藤さんと知り合った。入学以来、怪しい男に後をつけられているという佐藤さんのために、葉山君はストーカー撃退に奔走することになる。苦労性の高校生・葉山君の、山あり谷ありの学園探偵ライフ。

演劇部を手伝ったり、文芸部の伊神さんと親しかったりで、忘れかけてましたが、葉山くんは美術部だった!2年に進級した葉山くん、新入生が入部しなければ、1人ぼっち!・・・まあ、それはそれで気楽かもしれない・・・。そんなある日、葉山くんは曲がり角でぶつかった1人の新入生と知り合うことになる。彼女・佐藤希との出会いから、後編スタートです!
「ハムスターの騎士」ストーカー撃退作戦。ノリノリな演劇部の人たちがステキだった。葉山くん、希ちゃん、柳瀬さんの三角関係に発展するか!?
「ミッションS」青少年よ、永遠に!高校生男子の具体的なあっちの事情はよくわからんのだけど、無修正とか見ちゃうのか。そうなのか。ここでも、演劇部がノリノリでステキ。希ちゃんは、伊神さんの妹?はいないから従姉妹?親戚?とか考えてた。
「春の日の不審な彼女」希ちゃんの正体が明らかに!っていうか、渡会さんの衝撃的な再登場にかすんでしまった。笑。インパクトはあるけど、主人公の初恋の思い出を前編で打ち砕くだけでなく、こんな形でおとしめるのはかわいそうだし、スマートではないような気がする。それにしても、葉山くん、ロマンスかと思いきやまるでピエロ・・・。
「And I`d give the world」妹は妹でも腹違いの妹だった・・・。なんか、重いんですけど・・・。あと、そんな難しい暗号、わかりません。笑。
「よろしく」断章のつじつまもあったし、伏線も回収できて、きれいに収まりました。しかし、なんだろうこの納得のいかない感じ・・・。こなれた感じがするけれど、決定的な何かが足りない。この人の味がないのかな?
まだ、積んであるので、また気が向いたら読もう。