忍者ブログ
読書の記録です。

「我が塔に来たれ後継者」

秋田禎信/富士見書房

あの騒動から2週間ほどが過ぎたころ、ティッシの屋敷にいるオーフェンを、暗殺者が襲撃する。彼らはどうやら《ブラウニング家の世界書》という本を探しているらしい・・・。

《牙の塔》後編!
前巻で、マジクが火事場ドロボウしてきた本が騒動のきっかけとなります。魔王スウェーデンボリーが書いた、世界の成り立ち、あるいは予言?めいたことが書かれているらしい本。暗殺者だけでなく、アザリーもこの本を狙っている。こんな重要なモンを、家で無造作にほってるチャイルドマンの神経の図太さに憧れるなあ。本当に、この人は武勇伝がありすぎて、私の中で超人化が加速中。
振り返ってみると、今回はウオール教室とフォルテ教室の抗争みたいな感じですねー。ティッシの指がちぎれたのは、昔も今読んでも、かなり衝撃でした。改めて見ると、チャイルドマン教室で塔に残っているメンバーは、ティッシとフォルテだけなんですよねー。あんなにおもしろおかしい人たちだったのに、さみしいですねえ・・・。コルゴンって、後から登場したっけな?
後半の戦闘は、3人がバラバラになって、1対1の戦闘を繰り広げます。オーフェンは、まあ、いつも通り(ひどい)。注目すべきは、マジクの才能が開花するスエインとの戦闘と、クリーオウの石入り靴下が炸裂(笑)するヴィンビ戦でしょう!クリーオウは、魔術が使えない(けどレキは使える。笑。)、そのほかの戦闘術に長けているわけでもないのだけれど、度胸はオーフェンをしのぐ器。魔術士でないからこその発想が意表を突くところは爽快です。学者バカという言葉がありますが、それを応用して魔術士バカと呼んでもいいかもしれません。
オーフェンの過去には一度サヨナラして、次はキムラックへの布石。舞台は劇場へ!
再読した時も、やはり、マジクは一度塔での訓練を受けた方が良かったのでは?という気がしました。なんとなーく。


PR

「横溝正史自選集〔2〕」

横溝正史/出版芸術社

ニューギニアで共に戦った鬼頭千万太の最後の言葉を胸に、鬼頭家が網元として君臨する獄門島に降り立った金田一耕助。やがて千万太の予言どおりに、血も凍る殺人事件が発生する。瀬戸内海の孤島に渦巻く、世にもおぞましい計略に耕助は気づくことができるのか?

久しぶりに読んだな~。2巻目は「獄門島」。私の一番好きな獄門島!
なんで獄門島が一番好きかといいますと、一番の理由は犯人の意外性にあります。横溝さんの作品の犯人は女性(美人でちょっと影がある感じ)が多い、というのはみなさんご存知だと思います。なので、大体あやしげな人物がわかってしまうという欠点が。2時間サスペンスで、配役から犯人がわかっちゃう時と似てますね。詳しい言及はさけますが、これはそういったセオリーから外れた犯人で、最初に読んだときびっくりしたというのがあります。しかしそれが、奥さんの名推理からのものとは・・・!さらに、最初は横溝さん、奥さん叱ったって・・・!最後にはちゃっかり採用しているのにー。
殺人事件が完遂してから犯人を追い詰める、ある意味役立たずの名探偵・金田一耕介。(褒め言葉)犯人は、金田一さんに完敗したと言っていましたが、あれだけフェアなヒントをもらっていたのに、間に合わなかった金田一さんの方が負けでは・・・?途中、めっちゃミスリードにひっかかってたくせに、早苗さんのせいにしたり、聞き間違いを和尚さんのせいにしたり・・・。改めて読むと、器が小さいぜ、名探偵!笑。一番印象に残っていシーンが「むざんやな冑のしたのきりぎりす」。あの、鐘の下から死体が出てくるところは、どきどきしたものです。犯人の末路も、そうだったんだ~と思い出しました。必要のない殺人を犯したってことで、なんだか報われないなあというオチでした。
本鬼頭と分鬼頭の確執や、復員、海賊・・・と戦後の混沌とした時代背景が、横溝さんの作品の魅力です。たとえ、調べものに出かけている間に、新たな犠牲者が出てたって!ちょっと抜けてる名探偵。だけど、うんうんうなって悩んでいる姿を読んでいるだけに、謎が解けたときの爽快感もひとしおです。


「我が過去を消せ暗殺者」

秋田禎信/富士見書房

クリーオウの水浴びを覗いていたマジクを、レキが保護森林ごと焼き払った罪で、オーフェン一行はレンジャーに連行される。しかし、詰め所が何者かに襲撃され、一行は《牙の塔》のあるタフレム市へ向かうことになる。

シリーズの4分の1地点に辿りつきました~。《牙の塔》前編!
オーフェンがまだキリランシェロだった頃。マジクとクリーオウは、その時の彼を知らない。《鋼の後継者》サクセサー・オブ・レザーエッジと呼ばれていた彼は、どのような人物だったのか・・・?題名通り、オーフェンの過去に迫った巻です。オーフェンシリーズの魅力の一つが、登場人物のメランコリーの描写。オーフェン自身はもちろん、師と自分を比べて劣等感に苛まれるマジク、レティシャ、アザリー・・・と、エリートで成功したと思われている人物も、孤独と自分の才能の限界、嫉妬、もろもろの醜い感情があって、葛藤しているところが登場人物をより魅力的にみせているのだと思います。で、マイナスに傾いたところを、クリーオウの破天荒さとレキのかわいさと地人のバカっぷりでバランスをとる・・・と。ほんと、彼らの身勝手な発言(笑)の数々は、うらやましいったら・・・。
過去の話ということで、《牙の塔》チャイルドマン教室のメンバーの内、レティシャとフォルテが登場します。偉大すぎる教師のもとで学んだ教え子だちは、劣等感のカタマリになっていた・・・。どんだけスーパーマンなの、アンタ!?って感じです。あと、ここらへんから、アザリーの暗躍がちらほらと描かれています。今回の人形騒ぎも、元はといえば、アザリーの暗躍が原因なわけだし・・・。ノルニルの道具って、いわゆるドラえもんの道具みたいなもんで、ものすごい力があるんだけど、使う人がアホだったら、大した益にならない、むしろ身を滅ぼすって感じがするなあ。黒魔術、白魔術に加えて、ノルニルの遺品を手に入れたアザリー姉さん。最強だなー。
過去の自分と一応の決着をつけたオーフェン。《牙の塔》後編に続く!しかし、どこまでモテモテなんだ、こやつ・・・。


「ボーン・コレクター」

ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋
訳者/池田真紀子

骨の折れる音に耳を澄ますボーン・コレクター。すぐには殺さない。受けてたつのは、四肢麻痺の元刑事ライム。だが、彼の研ぎ澄まされた洞察力がハヤブサのごとく、ニューヨークの街へはばたき、ボーン・コレクターを追いつめる。

“ウォッチメイカー”読後からしばらく経ちました。さて、シリーズ1冊目から攻めてゆきましょう!シリーズものを固めて読むのは、苦手だったはずなのですが(飽きるから)、オーフェンシリーズが、私にしては、わりとスイスイ読めているので、大丈夫かな・・・?と。
当たり前といえば、当たり前に、ライムとサックスはまだ出会っていません。この物語は、2人が出会う事件。サックスは、異動で広報課に転属する前日、ボーン・コレクターの第一犠牲者の現場を保存する。後々、この事件の担当刑事から依頼を受けたライムは、サックスの働きに注目し、現場の鑑識を彼女に任せることにする。
“ウォッチメイカー”では、息の合ったコンビという感じでしたが、最初はこんなに反発しあっていたのかと、びっくりしました。まあ、2人とも気が強そうですからね~。そして、なんで、サックスみたいな超美人が、四肢麻痺患者のライムをパートナーとしているのか?という私の疑問にも一応の答えは見つかりました。うーん、美人だからこその悩み。言い寄られることが前提ですから・・・。サックスの美人度に注目しがちだったのですが、意外にライムも端正なお顔立ちだったんですね~。それ以外にも、ライムの現役時代のエピソードや、脊椎を損傷した事故の話も。一番印象的だったのは、ライムに強い自殺願望があったということです。四肢麻痺患者の自殺を描いた映画を観たことがあるのですが、その時も難しいなあと思いました。答えがないんだろうなあ。結局のところ、その人の痛みや苦しみは、その人にしか分からないもの。けれど、そっと黙って寄り添ってくれる人がいたら、何か変わるのだと思う。事件発生から、たった3日でこんなにも腹をわって話せるのか、超人見知りの私には些か疑問ですが・・・。笑。これから、2人の絆が確かなものになってゆくのでしょう。
ボーン・コレクターとライムたち捜査陣との知恵比べは、とてもスリリングでした。救えなかった被害者もいたけれど、無事、救出できた人もいて救われた。特に、子供が助かってよかったなー・・・と思っていたら、最後のオチに噴いた。ええっ!?そんな、恩を仇で返すような・・・。いたたまれない・・・。犯人の正体にもびっくりさせられました。うーん、うまい!
これで、鑑識のシーンがもう少しわかりやすかったら良かったのにー。


「流星の絆」

東野圭吾/講談社

惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。14年後、彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。

今年のしし座流星群は、当たりだったみたいですねー。どうも疲れていて、夜空を見上げることがさらに少なくなりました。
しし座流星群を見に行った夜、両親が惨殺された有明兄妹。彼らは、14年後詐欺師になっていた。彼らが次のターゲットに選んだのは、大手洋食屋チェーン「とがみ亭」の御曹司だった。「とがみ亭」のハヤシライスの味が、兄妹の両親が開いていた洋食屋「アリアケ」の味と全く同じだったことから、彼らは事件の手がかりを掴むことになる・・・。
確か、ドラマ化されていましたよねえ。眉なしさん(中島美嘉)は、テレビのオリジナルキャラだったんだー!テーマは暗いはずなのに、なぜか陽気な雰囲気のドラマで、変なの~と思った記憶があります。脚本がクドカンじゃあ、そうなってもしょうがないか~。私はどうも要潤の顔が好きになれないらしい(すいません)。本を読んでも、全然イメージと合わないなあ。原作の方の戸神さんは、めっちゃタイプなんですけどね!不器用な男・・・。かわいい・・・。でも、結局あれですよね。顔がかわいい子がいいんだよね・・・。ちっ。東野さん、自身で公言している通り、ラブストーリーになると途端に雰囲気がぎこちないです。笑。
ミステリーパート(兄妹の両親を殺害した犯人について)は、意外な犯人でおもしろかったです。くだらない動機も含めて。傘がそう絡んでくるか!ひどい話でしたが、もともと有明パパが競馬に入れ込まなきゃこんなことにならなかった、とも言える。そのギャンブラーな血が、有明兄弟にも流れてたってことですかね。兄妹が、生きていくために詐欺をするしかなかった、っていう話もおかしなこと。まして、人の心をもてあそぶなんて、ひどいなーと思いながら読んでいた。立派に更生してくれ。
他人に対しては、結構容赦ない兄たちですが、妹をそれは大事にしていて、そこは好感が持てた。最後までかばってあげてるし。土下座までしてるし。兄妹の絆が強いと、だんなさんか奥さんは、妬いちゃうかもしれないよなー。戸神さん、大変だー。