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読書の記録です。

「円環少女①」

長谷敏司/角川書店

幾千もの魔法世界から「地獄」と呼ばれ最も忌み嫌われた場所、地球。元の世界で犯した罪のため「地獄」に堕とされた一人の少女魔導師・鴉木メイゼル。「円環大系」の使い手が、誰も成し得たことの無い過酷な運命に立ち向かう!

世界には、魔法があふれていて、そりゃもういろんな魔法が出てくるのです。・・・が、その概念が難しい!私の頭が悪いのか、いや、慣れの問題だと思いたい・・・。
ええと、まず主人公のメイゼルさんは“円環大系”。周期運動するものに魔力を見出す魔法。魔力型。聖騎士たちが“神音大系”。音を媒介にして、魔法を引き出す。索引型。きずなは“再演大系”。現在と過去をあいまいにし、過去の事実をねじまげる。索引型。ジェルヴェーヌが“宣名大系”世界から引き出す奇蹟を、直接対象に重ねる。索引型。と、覚書をしておこう。次を読むころには忘れている。笑。
まず、物語のおおまかな流れを掴むのが精一杯で、結局、これなに?って感じの読後感だったのですが・・・。人間の娘として育てられた、再演大系の生き残り、きずなさんが、幻影城をバベルの塔に変えるカギ?で、このきずなさんを育てた父さんは実父ではなく、神音魔導師でかつて三千年前にだなー、同じようなことをしようとした騎士団の団長だったのだよー。で、悪の魔導師がジェルヴェーヌさんで~、みたいな感じ?
公館の面々が出てきたり、なかなかキャストの多い物語でした。キャラ立てはとてもいいんですよー。特にメイゼルさんのドSが・・・。地球は地獄なんですねえ。魔法が効かないらしいっすよ!仁が使う“沈黙”も、イメージを掴むのが難しいです。難しいと言えば、メイゼルは刻印魔導師という、重罪を犯して地球に追放された魔導師なんですが、協会の敵を百人倒さないと自由になれないという設定です。しかし、メイゼルはまだ一人も殺したことがないんです。で、専任係官の仁もメイゼルに殺させたくないようで・・・。これって、自由になる日は来なさそうではないかい?
・・・感想を書くために、さらっと読み返すだけで頭痛がしてきたぜ。笑。
なんせ、場面の転換が唐突なんです。これについていくのも大変。
メイゼルさんのドSを見たくなったら、続きを読もうかな・・・。


「わかってるわ。せんせ、あたしがいないと生きてけないもんね。」


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「ホテルジューシー」

坂木司/角川書店

大家族の長女に生まれた柿生浩美は、直情で有能な働きモノ。だがこの夏のバイト先、ホテルジューシーはいつもと相当勝手が違う。あやしげな同僚達や、ワケありのお客さんたちに翻弄される日々・・・。

“シンデレラ・ティース”の姉妹編。
“シンデレラ~”は、優柔不断だったサキが成長していくお話でした。一方、この物語の主人公・柿生浩美ことヒロちゃんは、しっかりものの姉御肌。この夏は、自分のために初めて時間が使えるとあって、暇を持て余した彼女は、バイトを始めることに。最初は石垣島のプチホテルで働いていたが、仕事ぶりを買われ、沖縄本島のホテルジューシーに異動になります。ここで、色々ワケありな宿泊客に出会うヒロちゃん。
沖縄は中学生の時に一度訪れただけですが、今も良く覚えています。沖縄って、いいなあ。でも、食事が口に合わないので、移住はできないのです・・・。サーターアンダギーもチャンプルーも無理でした。坂木さんの描写を持ってしても、沖縄料理をおいしそうだと感じることはできなかった・・・!
少しずつ秘密を持った旅人たちの短編。暇を持て余して飲み歩く、山本さん。心に傷を負い、夜が明けるのが怖いユリとアヤ。「かもしれない」詐欺の鈴木。非日常のスリルに憧れていた矢田さん。夢を追いかけて、理想と現実の折り合いが付けられなかったヤスエさん。普通の夫婦とは違う生活スタイルだけれど、本当はお互いをとても大事にしている久保田夫妻。一番きついなあ~と思ったのが、「嵐の中の旅人たち」。これだけ、何の救いもなかったですからね・・・。
ホテルジューシーの従業員は、濃いキャラクターが揃っています。私は、クメばあとセンばあに何度癒されたことか・・・。指ハブ・・・。「ちゅらさん」のおばあを思いだすな~。深いんだよな~。オーナー代理は、夜になると急に真人間になるのでずるい、というヒロちゃんの気持ちが良くわかった。笑。まっすぐでチャキチャキしたヒロちゃんには、沖縄の自由な風土がちょうどいいのかもしれない。沖縄行きたくなってきちゃう!


「ずっと楽しかったです」

「本当に、楽しかった」


「パラケルススの娘 1」

五代ゆう/メディアファクトリー

古来から魔物退治を生業にする跡部家の遼太郎は、現当主である祖母に英国行きを命じられ、ひとり旅立つ。だが、ロンドンに着いた遼太郎を待っていたのは、メイド服を着た銀髪の美しい少女と、黄金の巻き毛をした男装の麗人、そして次々に巻き起こる怪事件だった!

五代ゆうさんは、好きな作家さんなのですが、富士見書房以外の出版社から出ているものは読んだことがなかったなあ。このシリーズを知ったのも、ここ半年くらいの間でした。情報網の狭さが垣間見えますねえ・・・。
主役はレギーネだとばかり思っていました。カバーであのポジションにいたら、ねえ?本当の主役は男装の麗人・クリスティーナ、・・・ではなく、日本男児・跡部遼太郎。・・・たぶん。日本男児の留学というキーワードは、どことなく“Gosick”を連想するなあ。現地に残してきた兄弟がいるという点も。遼太郎も、大きなコンプレックスを抱えている。それは、代々霊力を持つ跡部家の人間であるにも関わらず、一向に霊力が宿らないこと。祖母は、そんな彼にロンドン留学を命じられるが、それは、実質跡部家からの「追放」であると遼太郎は考えている。クリスティーナもばっさりと「君は捨てられた」的発言をしちゃって、遼太郎の最初の思考はかなりネガ。けれど、シシィを助ける行動力は、さすがの日本男児です。私は、日本人のこのまじめで律儀な性質がとても好きなのです。
クリスティーナ&レギーネのコンビは、まだまだ謎が多そうです。特にレギーネの生い立ち(成り立ち?)に関連がありそうだなあ。シヴィルの正体がわりとあっさり明かされたことに驚いた。この先どのような展開が待っているのやら。
しかし、これまで読んできた五代作品に比べると、大分パンチ不足です。あの、重厚で圧倒される世界観に浸りたい~。


「鹿男あをによし」

万城目学/幻冬舎

神経衰弱と断じられ、大学の研究室を追われた28歳の「おれ」。失意の彼は、教授の勧めに従って2学期限定で奈良の女子高に赴任する。ほんの気休め、のはずだった。あいつが、渋みをきかせた中年男の声で話しかけてくるまでは・・・。
 
ドラマで玉木宏さんが演じていらっしゃいましたな~。わけがわからなくて、観てなかったけど・・・。本で読んだ方が、良くわかるしおもしろかった。原作はやはり強い!
イトちゃんの顔を表現する際に、頻繁に出てくる「野性的魚顔」という描写が印象に残っている。あえて魚を持ってくるとは・・・。笑。ストイックで、クールな彼女がとても好きだった。マドンナの長岡先生よりも。藤原くんも、おもろかったなあ・・・。奈良探索に出かけるところは、とてもほのぼのしました。
奈良と言えば、昨年正倉院展に行ってきました。カップルが多いのが驚きでした。あまり古い建物や、物にロマンを感じる人ではない私ですが、昔の人は、まさかこんなものが後生大事に保管されて、ショーケースに入れられ大勢の人が群がって見ているなんて想像もせんかったやろうなー、と思うと楽しかったです。休暇届けとか。いつの時代の人も、仕事に追われてたんだなあ。しみじみ。のついでに、鹿も愛でてきたわけです。鹿せんべい・・・、値上がりしてない!?しかし、これを食べたのか先生。笑。しかも美味しかったのか!・・・ということを思い出しながら読んでいました。やはり現地を知っていると楽しい!
最後には、地震(=なまず)を鎮める儀式に使われる道具「サンカク」に関するちょっとした謎解きも披露されています。鼠・鹿・狐、の使い番と運び番の関係なども合わさって、考古学的な香りが奈良にぴったりな味付けだったのではないでしょうか。
そういや、マイシカで思い出した!奈良に行った時に、悪ふざけで鹿に乗ってる観光客のおっさんを見たのですが、すごい臭いが服に付いたようです。・・・イトちゃん、君の服は大丈夫だったのか・・・?


「サクリファイス」

近藤史恵/新潮社

勝つことを義務づけられた〈エース〉と、それをサポートする〈アシスト〉が、冷酷に分担された世界、自転車ロードレース。初めて抜擢された海外遠征で、僕は思いも寄らない悲劇に遭遇する。

自転車ロードレースを舞台とした珍しいミステリー。
私は、自転車ロードレースには全く興味が無く、観戦したこともないので、最初は競技自体を飲み込むのが大変だった。・・・やはり、観たことがない競技を理解することは困難だったので、団体で走るマラソンみたいなイメージを持って読んでいました。作中でも触れられているとおり、日本ではまだ注目度の低い競技で、テレビ中継をあまり見かけない。ヨーロッパの方では、認知度も高い国民的スポーツなのですねー。私の愛車は、電動アシスト自転車で、競技用の自転車なんかとてもとても、という感じです。あれで山道を登っている方を見かけると、脱帽ものです。すげえ。
ミステリーというカテゴリーなのですが、枠にとらわれず、競技に携わる人たちのドラマが熱かったと思います。主人公の誓は、達観していて、むしろクールなのですが・・・。私は俗な感情に囚われがちなので、この達観した感じがとても羨ましかったなあ。ロードレースの性格上、アシストという仕事を全うすることが苦ではない、という人がいてもおかしくはないけれど、やはり競技をする上で、いつかは自分も・・・と思わない人がいるだろうか?この無欲さが怖い。
sacrificeとは、犠牲・いけにえの意味。自転車ロードレースでは、エースを勝たせるために、他のメンバーが力を尽くす。石尾の決断には、正直そこまでしなくてもー。と思ってしまいました。みんながひとりのために、という重さを良くわかっている人だったんだなあ。
それにしても、早熟な誓くんのエピソードは果たして必要だったのでしょうか・・・。全体に自転車で風を切るようにさわやかで、一つのテーマに収束しているだけに、妙にそこだけ生々しいのよう・・・。