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読書の記録です。

「鏡姉妹の飛ぶ教室」

佐藤友哉/講談社

誰もが365日分の1日で終わる予定でいた6月6日。鏡家の三女、佐奈は突然の大地震に遭遇する。佐奈を待つもの、それは死か?死か??

死でしたね。私は死だと思います。
読むたびに、何ともいえない気持ち悪さを感じる佐藤作品ですが、なぜか読んでしまう不思議な味があります。今回は死体描写以外は割合まともだったと思います。思うに、私が鏡家サーガを全作読んでいるくせに、鏡家のことを良くわかっていないのは、描写にインパクトがありすぎて、登場人物がかすむせいだと思うのですがどうでしょう。と言い訳してみる。・・・ごめん、本当に全然わかんない。
序盤、なんとなく“漂流教室”(楳図かずお)っぽいのかなあ、と思っていましたが、単なる地震だったということで私的には安心した。個人的に村木君にいらつき、妙子ちゃんのギター姿に萌えました。制服とギターの組み合わせはかわいいと思うのは私だけ・・・でしょうね・・・。
表紙の笹井一個さんの、星印牛乳がかわいい!っていうか、給食の牛乳は瓶では!?


「がんばるのは当然だわ。私が尋ねてるのはそうじゃなくて、飛べたかどうかよ。」
すげえ、姉ちゃん。みんなが命懸けで体現したプロセスを全否定。


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「マドンナ」

奥田英朗/講談社

荻野春彦が課長を務める営業三課に、女子社員が異動してきた。名前は倉田知美。知美は春彦のタイプの女性だった。いかん、いかん、と思いつつも彼女に魅かれてゆく春彦。表題作「マドンナ」を含む、オフィス模様を描いた短編集。

あらすじを読むとラブストーリーっぽいですが、違います。
サラリーマンの哀愁・・・。そんな感じ。“マドンナ”も、若いOLとの純愛物語ではなく、中年男性の妄想が暴走し、最後には哀愁漂う作品なのです。
“総務は女房”の「馬鹿か、お前は」には大ウケした。確かに。笑。そら、あなた、経済大国日本で生まれ育ったからそんなのんきなことが言えるんじゃない?今の生活が成り立っているのも、経済の発展があったからこそなのですよ、きっと。
大きな組織の中で、日々、いろいろ思うところはあるのだけど、最終的に自分はちっぽけな存在なんだよなあ、と思うことってありません?(私の場合、小さな組織ですが。)でも、きっとそれなりに幸せなんです。


「切れない糸」

坂木司/東京創元社

主人公・新井和也は、大学卒業直前に父親が急死し、家業のクリーニング屋を継ぐことになった。商店街の人情味あふれるミステリー短編集。

新シリーズはクリーニング屋さん。
色々豆知識が増えて、それだけでも楽しい一冊です。主人公・新井君の言動もおもしろい。いいキャラしてます。謎解きも変にひねってなくてわかりやすい。
前シリーズは、引きこもりの探偵が急に子供がえりするシーンが苦手でたまらんかったのです。それが無いだけで、かなり好印象。
基本的に登場人物は根がいい人たちばかりで、こんな人たちばかりならば商店街も悪くないんじゃない、という気にはなりますが、田舎の人間関係を見ていた私には、やはり近すぎるご近所つきあいは少し苦しい気がする・・・。田舎と商店街は似て非なるものですけれども。
坂木さんは、食べ物をほんとにおいしそうに書かれています。グルメ本では無いのですが、本編へのからませ方が上手。飲めないのに、コーヒーが飲みたくなりましたもの。笑。
“秋祭りの夜”の屋台は、絶対ひやしあめだと思ったんだけどなあ。


「終わらないことはないし、いなくならない人はいない。」
細木数子が、子供の「人はなぜ死ぬの?」という質問に、「人は神様のパワーによって生きている。心が悪いとその神様のパワーが切れるからだ。」みたいなことを言っていましたが、そうではなく、つまりはこういうことではないかと思う。


「play」

山口雅也/朝日新聞社

隠れ鬼、ぬいぐるみ、ボードゲーム・・・。小さい頃夢中になった“遊び”をテーマに繰り広げられる、ブラックなミステリー短編集。

全体的に、トリックの想像、あるいはオチの予想がつけやすかった。しかし、人間のダークサイドを表現するのが上手です。
気に入ったのは“蛇と梯子”。テイストは違いますが、映画“ジュマンジ”に似て、はらはらしました。ただ、こちらはハッピーエンドといかないのが、山口さんの味付け。
今回、ループの作品が2つ出てきますが、どちらもループへの持っていきかたがうまい。ところで、裏テーマは引きこもりやオタクなのかと思うほどの出現率ですね。冒頭の引用文に「遊びは、人間にとって、癒しであると同時に、病でもある。」とあるように、登場人物たちは遊びに囚われてしまったのでしょうか。何事もほどほどに。


「「心理テスト」はウソでした。」

村上宣寛/日経BP社

世に広く普及している適性検査の多くは、著しく信頼性を欠く詐欺同然の代物だった。これまで右へ倣えで高額な適性検査を外注してきた社長や人事担当者が知ったらゾッとするような“ウソ”を、心理学の第一人者が痛快に暴露する1冊。

「色々な人と知り合いになるのが楽しみである」
誰もが就職活動で、必ず一回はこの質問にぶち当たっているはず!
質問が抽象的で大嫌いでした。このテスト。この他にも色々適性検査を受けましたが、「反乱分子」とか「会社にとって危険な人物」とか出て、ブルーになったなあ・・・。(遠い目)
血液型で性格や相性を占うのも嫌いですねえ。「あの人B型だってー。」と言われても、「あ、そう。」くらいにしか思わないもんで。
さあ、そんな数々の嫌な思い出のある心理テストの数々は、やはり必ず当たっているとは言えないし、根拠もでっちあげのような信憑性の無いものばかり。ロールシャッハは特にひどい気がする。こんなもので、人を理解することなどできないのです。分類などできないのです。
心理学、大学で授業を取ってから、「おもしろそう→難しい」に印象が一変しました。この本を読んで、難しさを再認識しました。だって統計学わかんない・・・。(←経済学部出身なのに)


「インクのシミが明らかにするのは、唯一、それらを解釈する検査者の秘められた世界である。」(アナスティシ、1982年)