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読書の記録です。

「白ゆき姫殺人事件」

湊かなえ/集英社

化粧品会社の美人社員が黒こげの遺体で発見された。ひょんなことから事件の糸口を掴んだ週刊誌のフリー記者、赤星は独自に調査を始める。聞き込みの結果、浮かび上がってきたのは行方不明になった被害者の同僚。ネット上では憶測が飛び交い、週刊誌報道は過熱する一方、匿名という名の皮をかぶった悪意と集団心理。噂話の矛先は一体誰に刃を向けるのか。

一人称の書き出しを見て、思わずゲンナリしてしまいました。また一人称か・・・。一人称が嫌いではないのですが、一人称ってずるいとき(叙述トリック)があるからなー。これが湊さんの作風、と割り切るしかないのかもしれませんが、馬鹿のひとつ覚えみたいに一人称の作品を書き続けるのはどうかと思います。これだけ本を出されているなら、作品によって視点を使い分けて欲しいところです。
内容はこれまた湊さんの十八番です。ザ・腹黒女!ドロドロしてましたねー。OLって大変ですねー。やっぱ美人って苦手やわー。性格が悪いっていうより気が強いんですね、たぶん。
話のスジはシンプルです。化粧品会社の美人社員・三木典子が殺された。被害者の同僚・城野美姫が、母親の危篤を理由に会社を欠勤しているが、それはどうやら嘘らしい。2人の間に何があったのか。城野美姫とはどのような人物なのか。容疑者の関係者が語り始める。インタビュー形式で話が進んでいきます。本人はメモ書きですが・・・。こんなメモ書く奴いるか?笑。
両親・兄弟・親戚・友人・元恋人・同僚・近所の人・・・。当たり前のことですが、人は1人では生きていけないわけで。これまでの自分の人生を通して関わってきた人たちが、必ず何人かはいるはずなんです。この人たちが、自分のことをどのように第三者に説明するのか。あんまり聞きたくないですけど。笑。両親の懺悔にはびっくりしましたね!他の人が何と言っても、親なら信じてあげようよ。これはかわいそうでした。
ネット書きこみ、マスコミの報道。どれが真実なのか、どれが誤りなのか。まったくの部外者である人々は、判断することができないにも関わらず、より過激でおもしろいものを真実と思ってしまうのです。しかも、大体話を盛る。これは事件とか関係なく、私も話をおもしろくするために演出を加えることがあるなー、と反省。情報が一人歩きし、当の本人も自分の本当の姿を見失ってしまう。マスコミの報道合戦や、インターネットの普及による個人情報の暴露の加速。犯人はともかく、被害者の個人情報(フェイスブックやブログの公開)はダメでしょ!と思っていたので、このテーマは良い視点だと思った。
それにしても、後半の事件資料にはやられた。各章に事件資料の番号が載っていて、本の後半には番号の振られた資料があるのだけど、物珍しさからついつい全部をざっと読んでしまいました。気がついたときには、犯人の名前が出てました・・・。うっかりしちゃった☆テヘ☆・・・と言ってみても犯人が変わるわけもなく、驚きは皆無でした。どなたかが感想で書かれてましたが、資料は各章のあとにつけましょうよ!資料と各章の証言は重なる部分もあり、クドさを感じました。
「芹沢ブラザーズ」って見るたびに、マリオが頭の中を駆けめぐった。


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「悟浄出立」

万城目学/新潮社

俺はもう、誰かの脇役ではない。砂漠の中、悟浄は隊列の一番後ろを歩いていた。どうして俺はいつも、他の奴らの活躍を横目で見ているだけなんだ? でもある出来事をきっかけに、彼の心がほんの少し動き始める。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、司馬遷に見向きもされないその娘。中国の古典に現れる脇役たちに焦点を当て、人生の見方まで変えてしまう連作集。

沙悟浄がどんな大冒険をするのかな?と思ってたら、短編集だった。しかも、最初の1話だけだった・・・。「とっぴんぱらりの~」からがらっと雰囲気が変わって、中国のお話です。・・・わからん。
「悟浄出立」西遊記から沙悟浄。西遊記という話を知っているつもりだったけど、あくまで脚色された日本のドラマを見ただけで、本を読んだわけじゃないんだよなーと思った。猪八戒もただの豚の妖怪だと思っていたら、もともとは凄腕の軍師だったとか。ひねくれた傍観者であった沙悟浄が、物語に参加しようと一歩を踏み出した・・・といういい話なんですが・・・。最初に書いたとおり、私は大冒険を想像して読んでいたため、地味な話の展開に少々拍子抜けでした。意外にも悟浄って、悟空のことが好きだったんですねえ。
「趙雲西航」三国志より趙雲。もうわかりません。もう有名な諸葛孔明しかわかりません。話もなんだか入ってきませんでした。
「虞姫寂静」項羽の愛人である虞美人。四面楚歌のエピソードは知っていますが、その程度では到底話についていけるはずもなく・・・。しかし、虞美人の鬼気迫る舞がこの本の中で一番印象に残っています。まあ、私ならお言葉に甘えて、すたこらさっさと逃げますが。笑。
「法家孤憤」始皇帝暗殺の話ですかね?結局未遂に終わってしまうのですが、この下手人のケイカと同じ読みをするケイカさんが主人公。HEROのジェット・リーを思い出していました。ケイカの漢字、忘れちゃった。
「父司馬遷」司馬遷の娘。司馬遷は史記を書いた人って習ったと思うけど忘れてましたすいません。司馬遷も色々大変だったのねーと思いました。娘さんがぶち切れたところが印象に残っています。いつの時代も女は肝っ玉が据わっているのです。
万城目さんの中国古典への愛を感じて、中国史もおもしろそうだなあ・・・とは思いました。脇役がメインなだけに、聞いたことがある、知っているだけでなく、ちゃんと理解している人が楽しめる本なのだと思います。私がこのジャンルを読むのは当分先になるだろうなあ。


「とっぴんぱらりの風太郎」

万城目学/ 文藝春秋

天下は豊臣から徳川へ。重なりあった不運の末に、あえなく伊賀を追い出され、京(みやこ)でぼんくらな日々を送る“ニート忍者”風太郎。その人生は、1個のひょうたんとの出会いを経て、奇妙な方向へ転がっていく。やがて迫る、ふたたびの戦乱の気配。だましだまされ、斬っては斬られ、燃えさかる天守閣を目指す風太郎の前に現れたものとは?

ニート忍者の響きから、ぐうたら忍者が騒動に巻き込まれて、おもしろおかしく大冒険!みたいなのを想像してたんですが、全然違います。一瞬、ひょうたんの話かと錯覚しそうにもなります。どれだけ重要なんだ、ひょうたん!笑。ごめん、風太郎。熱いぜ、忍者魂!
そもそも、風太郎がニートじゃない!伊賀を追放されたけど(リストラにあったような感じ?)、お金が無くなれば日雇いの仕事をし、ごはんも自分でつくるし、身の回りのことは自分でしてる。ひきこもってるわけでもない。エライやん、風太郎!笑。これだけで、私の中で風太郎株がぐぐぐっと急上昇です。風太郎は、本当は忍者にもどりたい。伊賀からの使いを待つ風太郎のもとに現れたのは、かつての相棒にして疫病神の黒弓。貿易商のような仕事をし羽振りが良さそうな黒弓は、伊賀から知らせを持ってきた。それはひょうたん屋の仕事・・・。もう忍びには戻れないことを突きつけられた風太郎は、ひょうたん屋を手伝うが、その最中おかしな粉を吸ってからおかしな出来事に遭遇するようになる。それはひょうたんの精ならぬ果心居士の仕業だった。かつての同僚たち・・・泥鰌ヒゲがチャームポイントの蝉、絶世の美女だけど実は男の常世、魔性の女百(もも)を手伝ううちに、豊臣と徳川の戦いに巻き込まれていく。
詳しい時代背景が語られないので、歴史に弱い私はぼんやりとイメージしてただけでした。まあ、それでも大丈夫です。笑。徳川家が勢力を強めた頃から、大阪城に残っていた徳川秀頼が大阪夏の陣で敗れるまででしょうか。徳川秀頼って全然覚えてなかったけど、この本に出てくるひさご様はお茶目であったかい人柄で、忍たちが心を動かされるのもわかるな~。
忍は一人で生きていく。仲間と馴れ合ったり、助け合ったりなんてしない。だけど、ひさご様のためにという使命感を持った時、協力しひとつの目的を達成することができた。その代償はあまりに大きかったけど・・・。舞台が戦乱の世なので、容赦なく人が殺されていきます。一人、また一人と死んでいくたびに、主人公だけは生き残って欲しいなあと思ったけど・・・。こんな終わり方になるとは思ってもみませんでした。ひょうたんの精よ、何とかせい!って思ったけど、人間の生き死にに干渉することはできないそうで・・・。まあ、最後に超常現象で強引にまとめても、それはそれでNGかー。分厚い本ですが、最後の盛り上がりはアツくておもしろいです。オススメー。
風太郎が守り抜いた秀頼の子が、プリンセス・トヨトミにつながっていくのかな?本の詳しい内容を良く覚えていないので、もう一度読んで確認したいところなのですが、予約の本が8冊も届いているのです!きゃー!・・・と言ってるうちに、タイミングを逃すんだろうなあ・・・。


「桜ほうさら」

宮部みゆき/PHP研究所

父の汚名をそそぎたい。そんな思いを胸に秘めた笙之介は・・・。人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさが心に沁みる物語。

いつも通りの本の分厚さ(笑)。でも、おもしろかったです。
舞台は江戸。父親の不正疑惑によりお家断絶となった古橋家の次男・笙之介。武芸より文事が性にあっている笙之介は、先生の身の回りの世話をして過ごしていたが、お家再興を目論む母やその他の思惑により、江戸へ出てきて写本で生計を立てながら事件の真相を探ることになる。江戸居留守居・東谷(本名:坂崎さん)によれば、笙之介の父は濡れ衣を着せられたようだ。もとから父の無罪を信じていた笙之介は、賄賂の証拠となった文書を偽造した人物を探そうとするが・・・。その人物は、真似られた本人が驚くほど正確に字を似せて書くことができるという。同じ長屋に住む人々や、貸し本屋の治兵衛の助けを借りて、真相に迫る笙之介。事件の黒幕は誰なのか?
父を陥れた犯人を追う内に、もっと大きな企みに気付くというミステリー仕立てでありながら、人情あり、恋愛ありと盛りだくさんな内容です。どれもとってつけた感じではなく、うまく混ざり合って一つの物語になっているというか・・・。どれがかけても物語として成立しない、絶妙なバランスで構成されています。
合い間にはさまれる、お吉の話(自分が義理の娘だと知り、狂言誘拐を企て本当の両親のもとに逃げた・・・が、実は悪い男がバックについており、お吉は彼の女になっていたのだが、彼にとって彼女はただの金づるだった。)なんか、胸が悪くなったし、うまくまとまってもモヤっとしたものは残りました。
笙之介と兄・勝之介の関係についても、勝之介の本性が暴かれたあと、これにて一件落着かと思いきや、最後に勝之介の執念が読後感の重みとなりました。そこまでしないといけないのか、と半分狂っているかのような勝之介を理解することができなかった。跡取り・遺産相続・・・と家族だからこそ泥沼問題ってありますけど、理屈抜きの味方になってくれるのは家族だけですから。できるだけ家族とは仲良くしたいですねー。
笙之介の恋のお相手の和香さんは、要所要所でかわいくって、とても好感が持てました。家族関係がこじれまくった笙之介だけど、和香さんと仲のよい家族の輪を作っていって欲しいなと思いました。読後感は重いですけど、起こし絵(昔の立体模型みたいなもの?)とか、大食い競争(武部先生、残念だった!)など、町の人々の暮らしが見える楽しいエピソードも盛り込まれています。
それにしても、最後の最後であの家系図が出てくるとは・・・。宮部さんお見事!


「謎解きはディナーのあとで3」

東川篤也/小学館

宝生邸に眠る秘宝が怪盗に狙われる?体中から装飾品を奪われた女性の変死体発見?続々と発生する難事件に、麗子ピンチ!一方、影山の毒舌と推理は絶好調!

ドラマの方も観てましたが、北川景子の麗子お嬢様も、桜井くんの執事も何かが違いましたね・・・。風祭警部は良かったですが、今度は椎名桔平さんに風祭警部のイメージが定着してしまうという悲劇が私の中で起きました。笑。
「犯人に毒を与えないでください」大富豪が殺害された。当初は、愛猫が失踪したため自殺したと思われていたのだが・・・。犯人が誰か、よりも、犯人特定のきっかけとなった、ペットボトル湯たんぽのインパクト大でした。最近のペットボトルはお湯入れても大丈夫なの?あったかいの用?
「この川で溺れないでください」川でおぼれたと見せかけて、実は風呂場が殺害現場だった・・・というどこかで読んだようなトリック。桜の花びらがポイント。あまり印象に残らず・・・。
「怪盗からの挑戦状でございます」宝生家の「金の豚」が怪盗に狙われた!寝ずの番をする麗子とお抱えの探偵。しかし、盗まれたのは価値の劣る「銀の豚」だった・・・。いつもとは違うテイスト。平にして背中に隠す・・・。まあ、できないこともないですが・・・。美しくないなあ。怪盗に出し抜かれてしまい、珍しく負けの一戦となってしまいました。
「殺人には自転車をご利用ください」殺人の容疑者は元・競輪選手。殺害現場と自宅を自転車で時間内に往復できるのか?・・・というアリバイ崩しに意味はなく、殺害現場は犯人の自宅だった。犯人はママチャリの後部座席にお祖母ちゃんの死体を乗せて運搬していたというオチ。自転車の後ろに死体を乗せて走ってる図がシュール。
「彼女は何を奪われたのでございますか」女性の遺体が見つかるが、彼女はアクセサリーの類を全てとられていた。一体何をカモフラージュするためだったのか・・・?眼鏡とコンタクトの関係性。外れたときは外れたときで何とかなるから、コンタクトしてるときに眼鏡は持ち歩かないけどなあ。・・・私だけ?
「さよならはディナーのあとで」泥棒と間違えて殺されちゃった事件。ミステリーでは、人を殺したあとに、平然と現れる犯人の精神力とウソの証言をさらりとこなす演技力に感心しますね。最後に、風祭警部の衝撃の昇進が明かされるのですが・・・。大丈夫か!?オーフェンでコギーが昇進しそうになると、いつも感じるあの不安感を感じました。笑。メッキはすぐにはがれるでしょうが・・・。これで一応シリーズは終わり・・・という感じですね。こういう一発ネタのような設定は、ダラダラ続けるより時期を見てすっぱり終わらせた方がいいと思います。