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読書の記録です。

「肉小説集」

坂木司/KADOKAWA

肉×男で駄目な味。おいしくてくせになる、絶品の「肉小説」。

お肉の部位をテーマにした短編集。おいしい料理が出てくるのかな~と思っていると、足元をすくわれますので要注意!
「武闘派の爪先」舞台は沖縄。極道に憧れた主人公は、脱サラをしてその道に入るものの、仕事をしくじり、しばらく姿をくらますことに。沖縄で潜伏生活を送る彼は、1軒の店に入る。コミカルなタッチだったので、最後は助かるんだろーなーと気楽に構えていたのですが・・・。あれ?もしかして?という不穏な空気が残ります。コラーゲンたっぷりだけど。美容にいいらしいけど。豚足苦手・・・。
「アメリカ人の王様」主人公は、祖父から教えてもらった「粋」なものを愛するデザイナー。しかし、彼女の家庭は彼の粋とは正反対のものばかり・・・。いちいちお義父さんのあとに()書きされているコメントがおもしろい。笑。彼と彼女の出会いである、ごま塩パッケージの仕事の話も良かったけど、お義父さんの懐の深さも良いなあと思った。豚カツ、おいしいのに。
「君の好きなバラ」反抗期真っ只中の主人公は、自分の母親に不満がある。もっときれいで、料理が上手で・・・。ある日、道端で出会った女性に、理想のお母さんを重ね合わせるが・・・。その理想のお母さんは、行きつけの理髪店の店主の奥さんで、自宅はボロいアパート。子供がいなくて少し寂しそうな雰囲気・・・と予想と違う現実の姿に、現実に引き戻された主人公なのでした。子供とはいえ、自分勝手!とイライラした。勝手に理想を抱いて、勝手に幻滅しただけでしょー。角煮、あっためて食べたらいいのに・・・。
「肩の荷(+9)」主人公は中年にさしかかり、歯の隙間が気になる会社員。かつての上司が会社を去り、自分がリーダーとなったが、果たして部下は自分についてきてくれるのだろうか?いいチームを作れるだろうか?老いってどうしようもないよなあ、と読んでて悲しい気分になったのですが、部下たちがいいプレーを見せてくれたので、良い読後感でした。いい部下たちです。しかし、飲み会がモツ専門店だったら、私なんとしてでも行きません。
「魚のヒレ」ずっと気になっていた彼女の部屋に上がりこむことができた主人公。ここぞとばかりにアタックを仕掛けるも、「おもしろい話を気に入ったら、考えてもいいよ。」という彼女に翻弄されることに・・・。まあ、魚のヒレと豚のヒレは違うよね・・・。うーん、なんか、普通の大学生の話で、どうでも良かったです。笑。
「ほんの一部」塾に新しい子が来た。彼女の夕飯はいつもサンドウィッチ。でも、主人公がコンビニで買うハムのサンドウィッチと、彼女のサンドウィッチに挟まっているハムは違う。それは生ハムというらしい。・・・うーん、最後の妙にエロティックなシーンがいただけない。なんか、気持ち悪かったです。生ハムってそんな生々しいイメージ?しょっぱいイメージでしたけど。ちなみに、生ハムとメロンは別がいい派です。
全体的にもっと肉料理のおいしさが醸し出されていればなーと思いました。


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「wonderful story」

/PHP研究所

昔話でおなじみの犬もいれば、地名の由来になった犬もいる。はたまた、悪者が連れてきた犬もいるし、人のために働く盲導犬や、やたらと見つめてくる犬も・・・。犬にちなんだペンネームに改名(!?)した人気作家5人による犬をテーマにした5つの物語。

犬も好き!本も好き!・・・なら読むしかないでしょ!
遊び心いっぱいの試みで、こういう企画っていいなあと思います。
「イヌゲンソーゴ」(伊坂幸犬郎)伊坂さん、さすがの直球です。何せ犬が主人公。ムサシとポチの大冒険。犬にまつわる昔話や童話ってたくさんあります。犬は人間のトモダチだもの。最後の颯爽とした黒ラブがカッコ良すぎる。黒ラブってシュッとしてるよねー。
「海に吠える」(犬崎梢)うーん。これは・・・。さわやかなお話だったんですが、私が思っているのとは違うドッグフレーバーでした。似たような話(湊かなえさんの作品)を思い出したせいか、新鮮味もなかったな。
「バター好きのヘミングウェイ」(木下半犬)バターといえば・・・犬!って何年前の下ネタだよ!そういう話と思わせて、実は再起の話だったのです。まあ、そのままバター犬の話になっても困ったちゃんだったので、良い落としどころだったと思います。シェパードは好きだけど、この犬につなげる無理やり感が好きになれない・・・。
「パピーウォーカー」(横関犬)盲導犬の話としても、ミステリーとしても成立していて、おもしろかったです。去年あったお仕事中の盲導犬を傷つけるという、ひどい事件を思い出しました。彼も家庭の事情があったとはいえ、ひどいことをしたものです。主役のコンビがいい感じ。
「犬は見ている」(貫井ドッグ郎)振り返れば犬がいる・・・という言葉の響きだけなら、のどかな感じがしますが、実は犬に監視されているとしたら・・・?友人の恋人との破局話から一転、陰謀めいた話につながり、意外にもこれはサスペンス!というおもしろさでした。オカルト好きでも、カッコ良かったらもてると思うけどなー。


「「思考」を育てる100の講義」

森博嗣/大和書房

「考える」うえで、何を発信し、どう受け止めるのか? 累計1300万部を超える人気作家が説く、自分だけの思考を育てるヒント!

率直な物言いがステキな森さん。
最近、おもしろい人に会ってないなーと思い、森さんのエッセイを読んでみようと思ったのでした。自分もまあまあ普通の人なので、他人におもしろさを要求するのもワガママだよなーと思います。・・・が、それにしても、今の職場の人々はザ・真面目!すぎやしないか・・・。グチグチ・・・。
まあ、で、久しぶりに森さんのエッセイを読みました。そして新たな発見をしました。森さんは、話の切り口がおもしろいのですが、着地点は至極まっとうだなと。「ふーん」とは思っても、「おおっ!」という目からウロコ的な話はあんまりなかったような・・・。そもそも、講義とか題名につけちゃってますけど、これ、ただのエッセイですからねえ。ちょっと期待ハズレでした。
これまで、森さんの育児の話は読んだことがなかったので、「ああ、子供いたんだ」と森情報がひとつ増えました。あと、シェルティも2頭になったんですねえ。あんまり作家さんって、印税の話しないですけど、森さんは結構オープンな感じですよね。さらっと、もうお金たくさん稼いじゃったよって書かれると、イラッと来ます。笑。大学はとっくの昔に退職し、執筆は1日1時間、あとは趣味というまさに「人生の楽園」的生活を送られているようです。しかし、執筆1日1時間って・・・。いや、私は小説書いたことないし、わかんないけど、作家のイメージからかけ離れすぎてる。笑。時間と質は必ずしも比例関係にないと思うけど、それにしてももっと作品に心血を注いでいると形だけでも言ったらいいのに。


「ゴーストハント5 鮮血の迷宮」

小野不由美/メディアファクトリー

増改築を繰り返し、迷路のような構造を持つ巨大な洋館。地元では幽霊屋敷として名高く、中に入った者が行方不明になる事件が連続して起こる。この館を調査するため、二十名もの霊能者が招集された。複雑な内部を調べていた麻衣たちは、館内に空洞があることに気づく。次々に姿を消す霊能者たち。やがて明らかにされる、館の血塗られた過去。

これは怖かった!正直、このシリーズはそんなに怖くないなと思って読んできましたが、今回は今までとちょっと毛色が違いました。なんせ、学校の怪談じゃないし。
今回は、元首相が所有している洋館に関わる話で、ナルの師匠から依頼を受けていつものメンバーで洋館に泊り込みで調査を行うことに。この洋館に入った人が失踪する事件が続いたため、心霊現象の調査という名目で、霊能者や学者さんを集めていて、ナルたちもそのうちの1グループ。今回は、登場人物が多くてイメージが描ききれませんでした。
ほかの霊能力者たちが、オカルト的手法でアプローチするのに対し、あくまでもマイペースに機材を持ち込んだり計測をしたりするSPRの面々。最終的にはこの科学的アプローチが功を奏し、隠し部屋の存在が明らかになるわけだけれども!あまりにも部屋がありすぎて、このお屋敷がいったいどれほどの規模の大きさなのか、ちょっと掴みにくかったですねー。見取り図があればいいのに・・・と思ったけど、わかりやすい見取り図を作るのは不可能ですかね。笑。
吸血鬼・ヴラドを見習って(?)生に固執した、ご先祖さまが起こした数々の罪。もう頭がおかしくなっていたとしか考えられないです。そうじゃなきゃ、血のお風呂になんかつかれませんよう。ガクブル。
今回も麻衣はひとつ芸を増やして(ぼーさん談)、大活躍でした。夢の中とはいえ、首をかき切られる夢なんて怖すぎる!前回に引き続き、怖い思いをしている麻衣に同情します・・・。実際に参加者の中から首を切られて殺された人が3人も出たわけで、実際に死亡者が出たのはこの巻が初めて。部屋に積み上げられてたとか、かわいそう・・・。
最後にもひとつどんでん返しが。結局、ヴラド(浦戸)の除霊はなされず(というか不可能)、どうにかするなら燃やすか、ヴラド自体は屋敷から出れないので、このまま封鎖するか・・・という結論に落ち着いた(はず)。そもそも、今回の依頼は除霊ではなく、この参加者の中に有名霊能者の名を騙るニセモノがまぎれているので、それを明らかにすることだったそうなんです。それはクリアできたので、問題ないとナルは言うのですが・・・。なんかヘリクツだよなーと。
麻衣の家庭の事情も明らかに!・・・なったんだけど、孤児とか極端でしょ・・・。だからバイトのために、学校休んでもOKとかありなんだろうか・・・。事情が事情なだけに、いまいちツッコミにくい。
安原さん、大学合格おめでとう!未来の官僚!腹黒そうだし、ピッタリだよねー。


「聖なる怠け者の冒険」

森見登美彦/朝日新聞出版

一年ほど前からそいつは京都の街に現れた。虫喰い穴のあいた旧制高校のマントに身を包み、かわいい狸のお面をつけ、困っている人々を次々と助ける、その名は「ぽんぽこ仮面」。彼が跡継ぎに目をつけたのが、仕事が終われば独身寮で缶ビールを飲みながら「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」を改訂して夜更かしをすることが唯一の趣味である、社会人二年目の小和田君。当然、小和田君は必死に断るのだが・・・・。宵山で賑やかな京都を舞台に、ここから果てしなく長い冒険が始まる。

図書館で8ヶ月待ちでした。みんな、ちゃんと返却日守ってる?って思いたくもなります。
で、この本、評価が二分に分かれてるな~という印象を受けました。好きな人は好きだけど、世界観に馴染めなかった人は楽しめない・・・という感じでしょうか。私は久しぶりのモリミーワールドを堪能させていただいて、大変満足でした。
表紙のぽんぽこ仮面が超かわいい。(中の人はアレだけど)アルパカ顔(っていうかアルパカそのもの)の人が小和田くんかと思っていたら、彼は5代目で、おそらく小和田君は一番奥のシルエット・・・?というくらいの主人公です。小和田くんの、「将来お嫁さんを持ったら実現したいことリスト」に何が書いてあるのか、気になっていたのですが、わからないまま終わって残念・・・。
ぽんぽこ仮面を追う謎の組織。探偵たち。狙われる小和田くん。でも、昼寝に余念がない小和田君。疲れ果てたぽんぽこ仮面。がんばれ、ぽんぽこ仮面!もう、ぽんぽこ仮面に手を差し出されたら、握っちゃうなあ。(中の人は・・・以下略)私、実際のところおせっかいは嫌いなんですが・・・。そして、ぽんぽこ仮面のように、面倒なことに首を突っ込みまくってる人は理解しがたいのですが・・・。後半、ズタボロになったぽんぽこ仮面が現れたときは、応援しましたとも!(中の・・・以下略)
物語の大半をぐうぐう寝て過ごした小和田くんも、後半には大活躍です。彼といいコンビ?の玉川さんは、「宵山万華鏡」に出てきたお姉ちゃんの方かな?八兵衛明神も出てきてたような・・・。でも、あの描写読んだ覚えがあるんだよねー。タヌキとお酒といえば「有頂天家族」で出てきた偽電気ブランに似たテングブランなるお酒もでてきます。私のイメージではブランデーのようなお酒なんですが・・・。どんな味なんだろう・・・。あまりにも美味しそうなので、想像がどんどん膨らみます。笑。
最後はめくるめく宵山不思議ワールドに迷い込みました。土曜倶楽部、日曜倶楽部、月曜倶楽部・・・のくだりはなんのこっちゃって感じでした。最後はみんながぽんぽこ仮面になって何が何やら。笑。これで我らがぽんぽこ仮面も安心して京都を発つことができるでしょう!
それにしても、森見さんは祇園祭が本当に好きなんですね~。
探偵さんの「やぷー」が流行らないかなあ。自分で使い始める勇気はない!


「我らが内なる怠け者に」