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読書の記録です。

「夢違」

恩田陸/角川書店

夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは・・・。

自分の夢を他人が見れる時代がきたら・・・困ります!笑。
という、久しぶりの恩田さんの本です。
読み始めてすぐ、「悪夢ちゃん!」って閃いた。笑。ドラマはつまんなくて、3話くらいで見るのをやめたんだよなー。「恩田さんの本が原作!?こんなつまらんコメディを恩田さんが書くわけないじゃん!」と思ってたけど、本を読んでドラマを連想するということは、ある程度原作の世界観を踏まえたドラマではあったのかな・・・。つまんなかったけど・・・。
小説の方はもちろんコメディではなく、主人公が奇妙な現象の調査をしていくうちに、過去の事件を巡る流れに巻き込まれていく・・・というホラーっぽいお話です。いろいろな伏線が張り巡らされて、時々ぞくっとする場面もあり、ぐいぐい引き込まれて読んでいました。しかし、恩田さんの作品は久しぶりなので、あのもやっとした終わり方に、私がついていけるのだろうか・・・という一抹の不安もありました。最後の方になっても、謎は深まるばかり。これは、やばいぞ・・・!と思ってましたが、案外さらっと流して読めました。細かい点をどうでもいいと思わせるパワーがあるのか・・・。まあ、細かいことは置いておいて、きれいにまとまったんじゃないの?と納得。意外にもロマンチックなシメでした。
浩章が、ほとんど結衣子のことだけ考えていて、奥さんのことを考えて複雑な気持ちになった。初恋の人だしワケありの過去だし、なかなか忘れられないだろうけど、奥さん、いい人なのに・・・。この後離婚しやしないだろうか心配してました。結局そこはわからず終いだけど。
そういえば直木賞、残念でした・・・。今年こそとって欲しかったのになー。


「彼女は、そこにはいないよ。」


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「逆回りのお散歩」

三崎亜記/集英社

確かに起こったはずなのに、その「デモ」は無かったことにされた。炎上、ステマ、電突、ネット右翼。「見えない戦争」を巡る新たな問題作。

好きなタイプの作品ではなかった!残念!
最近は残念な気分になることが多いなあ・・・。ま、そういうときもあるさ。
「となり町戦争」「コロヨシ!シリーズ」なんかが、私の苦手な雰囲気でして・・・。あれ、私、置いてきぼりにされた?っていう感じで、いまいち共感できないんですよね・・・。これは、「となり町戦争」の系列に入るようです。短編は「となり町戦争」のスピンオフ。今頃スピンオフを読んでも、何が何やら・・・。
で、本編は、A市とC町の合併問題を巡るお話です。・・・。・・・えーと、話自体が、もう、どうでもいいよ・・・。
そのー、ネットの炎上とかね、デモ行進とか、スパイとか、情報戦に対する警鐘みたいなのもあり、主人公が、無関心であることをやめて、問題に取り組むようになったり・・・みたいなことが書かれています。しかし、私にとってこの本の内容は、「政治家の愛人だった主人公が、昔の初恋の相手と再会。彼に影響されて、合併問題に首をつっこんでいく。彼女は、自分なりに考えた結果、政治家と主義者の密会映像をネットに垂れ流し、それで反対派が復活するか様子を見ることにしましたとさ。」こんな感じです。
結局、他力本願じゃん!
で。結局、これが何だっていうのさ?


「全力でスローボールを投げる」

北尾トロ/文藝春秋

若者みたいに速球は投げられない。戸惑いばかりの“ガラスの50代”。オヤジのペーソスが詰まった「週刊文春」の大好評エッセイ、待望の単行本化。

雑誌「ダ・ヴィンチ」で、よく記事を拝見していたのですが、本を読むのは初めてです。
そもそも、トロさんのファンってわけでもなく、記事もそんなにおもしろいと思ったことがないので、最初は読む気なかったんですが・・・。なんとなく、突撃ルポみたいなのがおもしろそうだったので、借りることに。
取り上げている題材はおもしろいのに、何でこんなに気分が乗らないのか、不思議でたまりませんでした。たぶん、文体とか、狙っている笑いどころが自分とずれているとか、色々理由を考えてみましたが、結局、もうこれは相性が悪いとしか言えない・・・!そうそう、「走れ!トロイカ学習帳」もテーマはいいのに、記事を読むのがしんどいんだよなーと思ったりした。
日常の出来事のほかに、「気になるからやってみた」というものが結構あって、それがおもしろかったです。縁切神社が良かったなー。幸いそこまでドロドロな感情が未体験なので、行く機会が無いし・・・。コワイし・・・。あとは地味にロバのパン屋さんが好きです。そりゃあ、ロバのエッセンスを期待するのが子供ってもんですから!
あとは、トロさん自身が古本屋を兼業されているということで、古本屋のお話も興味深かった。お値段つけるのも大変なんだなー。将来お金がいっぱいたまっていたら、古本屋というか自分の好きな本だけ置いたカフェみたいなのとか、誰か一緒に経営してくれないかしら・・・と思っていた時期があったので、自分の本屋を持ってるってうらやましいな~と思ったり。
しかしどうしても、ノリノリになれない・・・のが残念でした。


「夜行観覧車」

湊かなえ/双葉社

高級住宅地に住むエリート一家で起きたセンセーショナルな事件。遺されたこどもたちは、どのように生きていくのか。その家族と向かいに住む家族の視点から、事件の動機と真相が明らかになる。『告白』の著者が描く、衝撃の「家族」小説。

直木賞候補作に湊さんのお名前が挙がりましたね!ちょっとびっくりしたかな・・・。
この本はドラマを先に見ていて、ある程度のイメージを持って読み始めました。
しかし、読み始めてすぐに登場人物に対する印象がガラリと変わりました。とりあえず、好感を持てる主要人物がいない。ドラマの方では、この人がこういう行動をとったのは、こういう事情があったから仕方ないんですよ、という描き方をしているのに対して、原作では容赦なく個人のエゴがむき出しになっています。主軸の遠藤・高橋家の奥様2人は、子供のことをそんなに大事に思っているようには見えないし、行動の根底にあるのは保身のみ。ドラマでは、両家の交流が描かれていて、仲が良かったからこんなに深入りしてるのかなーと思ってましたが、原作を読むと大して親しくしていたわけでもないのに(むしろ慎二も比奈子も彩花を嫌っている)、首つっこんで何やってんの?って感じでした。こりゃあ、「野次馬一家」と呼ばれても文句は言えませんわな。
私の一番の間違いは、ドラマの印象のまま、これをミステリーだと思って読んだことでした。これは、家族の話であってミステリーではなかった。がっかり・・・。誰が犯人なのか?ということは問題ではなく、これからどうするべきなのか?ということがテーマだったのかな・・・。
残された子供達はどうすればいいのか。そして、この事件はどの家庭でも何かのはずみで起こりうることなのだ。家族は再生することができるのか?
・・・と言われても、正直、登場人物たちがここまで自分勝手だと、知らねーよ、自業自得だよ、という投げやりな気分に・・・。
そういや、観覧車は、完成どころか建設予定の段階だったんですね・・・。
ドラマより原作の方がおもしろいだろう!と思って読んだだけに、がっかり感が半端ないです。


「パラダイス・ロスト」

柳広司/角川書店

大日本帝国陸軍内に極秘裏に設立された、スパイ養成学校“D機関”。軍隊組織を真っ向から否定する戒律を持つこの機関をたった一人で作り上げた結城中佐の正体を暴こうとする男が現れた。(『追跡』)。ハワイ沖の豪華客船を舞台にしたシリーズ初の中篇「暗号名ケルベロス」を含む、全5篇。

「ダブル・ジョーカー」の感想は、とうとうアップできずじまいでしたが、2作目もおもしろかったです!そして待望の3作目!表紙が毎回かっこいいので、表紙も楽しみなシリーズ。文庫も同じ表紙というのがまた良いです。
結城中佐は相も変わらず、裏でものすごい存在感を放っています。
人は、秘密にされればされるほど、その秘密が知りたくなるという・・・。結城中佐がそれを見越して仕掛けたダミーがすごい。将来、自分が立ち上げる組織が、敵の脅威になることを確信してたってことだもんなー。嘘には真実を混ぜると良いという話を聞いたことがあるので、このダミーの過去にも、ちょっとくらい本当の結城中佐の過去が混ざってないかしら?と思ったのですが・・・。彼に限ってそんなことはないか。
一番良かったのは、「失楽園」かな・・・。もしかして・・・と真相に気付いても、愛を選ぶちょっとダメな感じの最後が良かった。「暗号名ケルベロス」は前半の終わりはひっぱりましたが、オチがパンチ不足・・・。
暗闇で銃を組み立てられるっていう技術が、読むたびにすごいなあと思います。彼らの能力は、記憶力とかその他色々すごいんですけど、銃の組み立てに一番そそられます。手先の器用さに憧れる・・・。
シリーズも3作目で、そろそろ終わりかな・・・という予感がなきにしもあらず。戦争が終わったら終わったで、結城中佐もスパイの彼らも、飄々と世の中を渡って行きそうだ。


「正体を暴かれたスパイなど、死んだ犬ほども役に立たない」