「六の宮の姫君」
最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった。
大学4年になった「私」は、卒論にバイトにと忙しい日々を送っている。そんな中、全集の編纂の手伝いの関係で訪れた作家から芥川の「六の宮の姫君」に関する言葉を聞く。「あれは玉突きだね。・・・というよりは、キャッチボールか。」この言葉の意味を突き止めるため、私は文献をあたり始める。
この本をおもしろいと感じるかどうかは、これまでの読書体験と知識の有無、あとは作家の生き様に興味があるかどうかってところでしょうか。・・・なーんてエラそうに書いちゃったけど、オイラ、おもしろい以前に、内容もよくわかんなかったよー!笑。あ、笑うところじゃなくて、反省するところですね・・・。
そもそも、私のベースに古典文学はほぼ無く、芥川の作品も「六の宮の姫君」っていう短編があることすら知りませんでした。もちろん、作家の人生についても、芥川が自殺だったことも、菊池や佐藤など作家との交流も、手紙のこととか、なーんにも知りませんでした。なので、北村さんの考察を楽しむなんてことはできるはずもなく、「ふーん」「へー」「ほー」「知らなんだー」とか思ってるうちに終わりました。
・・・出直します。
文学の話はそんな感じで。次は、ちょっと勝手な逆恨みです。笑。
「私」はその後出版社に勤め、子持ちの中年女性になったのが最新刊という情報は得ていたのですが、就職活動を全くしていないのには驚きました!時代が違うとはいえ、就職氷河期を人間性を否定されながら苦しんだ私としては、ここは・・・見逃せませんね~。先生の紹介で小さな出版社にバイトに行った「私」は、就職の打診を受けます。本好きな「私」はラッキーとばかりに快諾。ついでに卒論の資料も貰えたりして、棚ボタフィーバーです。おそらく中流以上の家庭で育ちお金の苦労は知らず、姉にコンプレックスは感じながらも、好きな本を読みバイトをしたこともない「私」。初めてのバイトは怒られることもなく、好きなことに関われる。周りの友人も大人もみんな優しく「私」を助けてくれる。就職は棚ボタで決まったし、あとは卒論。卒論もヒントをもらえ、糸口を掴むことができた。・・・なんか、「私」の人生、順風満帆じゃないですか?きっと、手痛い失恋もせず無難な結婚をし、仕事でも理不尽な目に遭うこともなく、ずっとみんなに愛されるのでしょう。根性のねじまがった私は、基本的に悪口を言わない人と挫折を知らない人は、信用できません。「夜の蝉」で「私」が見せた、姉との距離をどうしたら良いのだろうという迷いには共感できましたが、この本での「私」には(男女間についての考察も含め)全く共感できませんでした。
上品な北村ミステリーは好きです。しかし、キレイすぎる登場人物には魅力を感じません。
・・・でも、ちゃんと最新刊まで読むよ!
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