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読書の記録です。

「夜は短し歩けよ乙女」

森見登美彦/角川書店

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受けるのは奇々怪々なる面々が起こす珍事件の数々、そして運命の大転回!

またもやストーキング。
「太陽の塔」とのリンクを可能性として考えてみたのですが、私の中で、2人の「先輩」のイメージが違いすぎるので、これは違うかな~という結論に落ち着きました。
題名からしてそのものなんですが、黒髪の乙女は、とにかく好奇心が旺盛であっちにふらふら~、こっちにふらふら~してるんです。で、それを懸命に追いかける先輩が、不憫っつーか、難儀な人を好きになったもんだなー、と。もう、緋鯉を背負ってようが、達磨を愛でてようが、何をしててもかわいく見えちゃうあたり、恋のマジックにかかっているとしか!そして同じく、「黒髪の乙女かわいいな~」なんて呆けながら読んでいる私も、乙女マジックにかかってしまった1人なのでしょう。
相変わらず、独特の言い回しが炸裂していて、これは好き嫌いが激しく分かれそうだなあと思った。私は好きだけど、他人に森見作品を薦めるのには勇気がいる。一番好きなエピソードは、やっぱり文化祭だな。笑。あんな学園祭・・・。やっぱり彼は京大卒だ!ゲリラ演劇とか、思いついただけですごいな~。
先輩は、必死で黒髪の乙女の外堀を埋めてるんですが、いざ乙女との会話になるとさらりとした会話になってしまうわけです。まあ、必死に外堀埋めてるって勘付かれたら、仕掛ける前にこちらの気持ちがばれちゃうわけで・・・。そりゃあ、気の無い風に装うしかないよね!で、その内、打ち明けるタイミングがわかんなくなって終わっちゃったりして(涙)!一般論かどうか自信はないのですが、大体において、駆け引きは外堀を埋めるところから始まるわけで、そう考えるとこの物語は実に健全なラブストーリーですねえ。時々、夢か現実かわからなくなる描写もあったりして、全編なんとも言えずふわりふわりとした心地で読んでいました。
最後は、なんともくすぐったくなるような終わりかたで、私も幸せな心地になり、よろしゅうございました。片思いが両思いになってからが大変だよう、というのは、今に始まったことではなくて。なのにどうして、2人でいたいと思うのかというと、面倒なことよりもハッピーなことが断然多いからなのです。ああ、2人のこれからが、もっともっとオモチロくて、ハッピーでありますように・・・!


「なむなむ!」


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「刀語 第二話」

西尾維新/講談社

無刀の剣士・鑢七花と野心を秘めた謎の奇策士・とがめは、一路、西へ!愛と復讐の旅路に迫る危機また危機!刀語、第二話の対戦相手は、因幡砂漠に聳え立つ下酷城・孤高の城主、宇練銀閣。

間を詰めて読んでみました、第3巻。
・・・久しぶりに、感想が全消しになってしまって、少々ヘコみました。
と、ぼやかせて下さい・・・・何書いたっけ・・・。
今回の舞台は砂丘に建つお城。冒頭に登場する、まにわにの一人、真庭白鷺のコスチュームがとてもかわいいです。本当に隠密論外なんだな。いっそすがすがしい。笑。バトルシーンよりも、ああだこうだ相談したり、戦闘の解説にページが多く割かれていました。まあ、とにかく興ざめなんだな!時代活劇、と銘打っている本書ですが、このようにバトルの痛快さに欠けるところが残念。技がどうなったとか、どう動いたとかが知りたいのではなく、その瞬間の躍動感をイメージしたいというか・・・。
今回の敵は、私の好きな抜刀術の達人だっただけに、残念さもひとしおです。抜刀術といえば、私が思い浮かべるのは、「るろうに剣心」の飛天御剣流なのです。オタクっぽい!そこでも、鞘走りについての話はあって、(逆刃刀だと、摩擦で抜刀の速度が遅くなる・・・みたいな?)「おお、スピード勝負なんだ!」って思った記憶があります。宇練さんも、抜刀のスピードが売りで、斬られたことにも気がつかないという、まさにケンシロウの「お前はもう、死んでいる」戦法なのですよ~。しかし、血は潤滑油の替わりというよりは、かえって固まりそうなんだけどな。戦いのポイントは、タイミングをはずすということと、空間の活用。つまり、相手に間違った動きを予測させ、空ぶった時には上にいた、という感じなわけで。
・・・ほら、つまんなくなった。
これで、12巻突っ走れるのか・・・・大きなパターンは変えられないので、変化をもたせるのが難しいよなあ。あっ、だから、キャラ立てに力を入れているのかも!?


「ぐるぐる猿と歌う鳥」

加納朋子/講談社

五年生に進級する春、森は父親の転勤で東京から北九州へ転校することになった。引越し先の社宅の子どもたちとは不思議に気があい、彼らは森をまるごと受け入れてくれた。しかし森はこの社宅には何か秘密があると感じていた。

ミステリーランドの作品の中では珍しい、ソフトタイプでした。
日本の団地(工場の社宅)が舞台で、懐かしい香りがしました。私が子供だった頃より、もうちょっと昔、という時代設定なのかな~。スライムが流行った記憶がないもんで・・・。
謎がいくつか提示されていて、物語のピースとして、一つ一つがはまっていきます。物語全体が良く言えば、当たり障りなく、悪く言えば地味なために、印章に残りにくい作品でした。家庭内のいざこざはありますが、まあ、子供向けでは許容範囲内かと。うちが平和すぎるのか、世間が世知辛いのか。母子家庭は増加の一途をたどり、DVで苦しむ家庭もきっとたくさんあるのでしょう。だけど、なるべく多くの家庭が平和であって欲しいなあと思います。健全でない家庭の子供は、やはり、どこか影を背負っていたり、精神のバランスが危ういように見えます。きっと、人の心の動きに人一倍敏感なんだろうな。
この作品では、そういった子供たちも、そうでない子も、手と手を取り合って協力して問題を解決していきます。子供を救うのは子供、そういう図式もありだなと思いました。実際、損得勘定無しで付き合える友達を、社会人になってから見つけるというのは大変だよなーと、しみじみしてしまったよう。
それはさておき、冒険と友情のたっぷり詰まった一冊。サバイバル生活のススメ(違うって)。


「インシテミル」

米澤穂信/文藝春秋

結城理久彦は、車がほしかった。須和名祥子は、「滞って」いた。
オカネが欲しいふたりは、時給11万2000円の怪しげな実験モニターに応募。こうして集まった12人の被験者たちは、館の地階に7日間、閉じ込められることになった。

このミス第10位ランクイン。
これはおもしろかった!ミステリへのオマージュ(?)みたいな感じ・・・ですが、古典ミステリに超うとい私でも、とても楽しめました。詳しいあなたは、2倍楽しめるはず!古典ミステリが出てくると、いつも「ちぇっ」という気分になります。だけど、読めずにいる私・・・。損してるわー。
クローズドサークルという言葉も知らなかったんですが、閉鎖空間内での連続殺人という設定。始まりのノリがあまりにライトだったので、本当に人が死ぬのか疑わしいなあ~、と思っていたところ、あっさり殺されました。しかも、だんだん重く、重くなっていくというか・・・。最後までマイペースだったのが、傍観者・須和名さん。指1本は、お金ではなく・・・、私も人1人説に1票を投じます。ただ、人は普通滞るとは言いませんよね。とことん上から目線だ。
結城くんが、急に切れる男になった時にはびっくりしました。君はそんな立ち位置だったのか!?たしかに、今までの名探偵役を出し抜いたところは痛快だったけれども。意外に、自分に似た一面もあったりして親近感が持てたなあ。第一の殺人の謎解きはお見事でした。第三と第四の殺人のトリックも良かった。設定を上手く逆手にとったところがすごい。うーん、でも、岩井先輩が真木さんを殺したってのが信じられないんだよなあ・・・。
感じとしては「ボトルネック」を少し明るくした雰囲気。結末の後味の悪さは一緒です。交差点に進入したり、ナイフ持ち出したり、手紙が届いたり、含みがありすぎて(悪い方の)あんまり考えたくないんだ・・・。


「Rのつく月には気をつけよう」

石持浅海/祥伝社

湯浅夏美と長江高明、熊井渚の3人は大学時代からの呑み仲間。毎回誰かが連れてくるゲストは、定番の飲み会にアクセントをつける格好のネタ元だ。酔いもまわり口が軽くなったところで盛り上がるのはなんといっても恋愛話で・・・。

借りた決め手は、料理!前読んだ「心臓と左手」の、グルメ描写が素晴らしかったので・・・。表紙がお酒だったから、これは料理がからむかな、という直感でした。ビンゴ!
飲み会のゲストの話から、隠された謎を暴くお話。正直、こじつけだな~と思う節が結構ありました。ありましたが、不可解な現象に関する説明としては、ばっちり!で、きれいにまとまっています。解決がこじつけっていうより、謎そのものからして無理があるって感じなのかな。「まあ、終わった話だからいいじゃん」ってなあなあな空気はなく、一定の距離を置きつつも、言うべきことは言う。そんなところは良かったと思います。・・・ただ、途中から怖くなってきちゃったんですよう。なんか、その行動に深い意味があったって、どうして言い切れるんだろうって。例えば、バレンタインのお返しに堅いパンをあげたのも、ぎんなん食べながらプロポーズしたのだって・・・、何気なくした行動かもしれないじゃないか。たとえ、そういう意味があったとしても、そんなまわりくどいことをしているってことは、相手が気づいたらめっけもん程度の心がまえではないのかと。もしかしたら、謎の行動を起こした当の本人も、気づきたくない心の動きがあったのかもしれません。それを、暴く必要があるのかな・・・?という気はします。考えすぎだわ・・・。
最後にー。グルメについて!ワインはわからないのでスルー。カキ、チキンラーメン、チーズフォンデュ、豚の角煮、ぎんなん、そば粉ホットケーキ、スモークサーモン、がおつまみとして登場します。そば粉ホットケーキは食べたことないけど・・・。カキ以外はいけます。チキンラーメンだって、乾麺のままばりばり食べます。ちなみに私、袋で食べる用にチキンラーメンをストックしてます。笑。作品の中では、「えーっ!」というリアクションだったんだけど、こうやって食べている人は結構いるはず。
・・・叙述トリックは、やっぱりずるいなあ、と思ってしまいます。