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読書の記録です。

「キララ、探偵す。」

竹本健治/文藝春秋

愚図なドジっ娘メイド・キララの正体は最新鋭アンドロイド。ご主人様のためならあんなコトもこんなコトも! 青春メイドミステリー。

マイパソさんが壊れてしまい、久々の更新です。記憶が薄れてゆく・・・。
竹本健治さん初読み。何年か前に、何かを読んだことがあるのですが、ついていけず挫折した記憶があります。難解なイメージ。しかし、この本はメイドだし、大丈夫だろう!と。実際、大丈夫でした。なんかえらい記憶と違う雰囲気にびっくりしましたよー。
「アイドル好きの童貞オタク大学生」という紹介文とは裏腹に、なかなかの行動派主人公です。だって、バイク乗り回してるし!私は、大きいバイクを乗り回すオタクを見たことがないので・・・。車はいたかなあ。謎解きは、別に「ああなるほど」くらいの感想で、普通。ベースの割には、まともでそこは良かったと思います。やはり今回は、メイド・キララ嬢のインパクトが強力です。「~ですう。」喋りには正直、引いた。笑。そして、セクサロイドモードのクララにはもっとびっくりした。うーん、しちゃったところが意外だったなあ。びっくりしたと言えば、最後の方のアレにもびっくりしましたが!ばれてるよ・・・。そんなアヤシイ動き・・・。
まあ、私は女子なので、特にいいなあともなんともって感じなのですが、世の男性にとっては、これほど便利で快適なものは無いだろうな。ナマモノは、わがままで言いなりにはならないものですから。そう考えると悔しいなあ。だって、私にはこんな風に尽くすことは絶対に出来ない。くそう。こんなアンドロイドが出来る時代には、私も執事アンドロイドを所有してやる。クラウディオ風の・・・。


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「絵|小|説」

皆川博子/集英社

6つの詩篇が、絵師の筆を走らせ、異界の幻影が、作家の目を惑わす。この虚構に迷い込むのは、あなた。短編の名手と挿絵の巨匠による、奇跡のコラボレーション。

宇野亞喜良さんの絵が印象的な一冊。宇野さんといえば、新聞の小説で挿絵をお見かけしたような・・・。恥ずかしながら、絵は知っていても、お名前を知りませんでした。今、覚えました。
短編集で、それぞれ詩から宇野さんがイメージ画を描き、それをもとにして皆川さんがストーリーを書くという構図らしいです。印象に残った絵はいろいろあるのですが・・・。シマウマ、オオカミ、泳ぐ絵、ボート、あたりが良かったなー。お話の方は、「あれ」が一番好きでした。どの作品も、子供から見た世界の暗いところの描写が光っていたのですが、この銭湯での一幕が一番雰囲気が出ていました。暗くて、じめっとしてて、大人は得体の知れない生き物のようで。やはり、皆川さんの作品の魅力は、ここにあると思うのですが、どうでしょう?
耐性ができたせいか、物語のおとしどころに前作ほどのショックは受けませんでした。受けませんでしたが、「はて?」と首をひねるところはありました。うーん、私にはまだまだわからない世界ですなー。
それでも、また皆川さん作品を借りる気マンマンなのです。にやり。


「変わるの?」
「そう。森になったり、塔になったり」
「お姉さんは、いろいろなものになったの?」
「そう。<あれ>にも」
「あれ?」
「そう。あれ」


「まほろ駅前多田便利軒」

三浦しをん/文藝春秋

東京のはずれに位置する‘まほろ市’の駅前にある便利屋「多田便利軒」に舞いこむ依頼はどこかきな臭い。多田と行天コンビの魅力満点の連作集。

第135回直木賞受賞作。
この表紙、なぜかりんごにナイフが刺さっているのだと思っていました。タバコだったんですねー。先入観って恐ろしい。あと、章ごとの扉絵が好みの絵で思わぬ嬉しさ。
便利屋を営む多田のところに転がり込んできた、行天。不思議な魅力を持つ人で、主人公は、彼のことが放っておけない。この行天さんのキャラクターを、どこかで見かけたことがあるような気がするのですが、思いだせない・・・。うーん、ま、いっか。この何だか憎めないという性格が、ずるい!うらやましい!と思います。何も考えてないと思わせて、するどい一言を言ったり。あああ、おいしいとこ取りじゃないですかー!
終盤の話の流れは、いたってオーソドックス。ケンカして、ふらっといなくなって、そしてまた戻ってくるという。チワワの話が好きです。ルルとハイシーがいいなあ。すごく前向きで明るい。
不思議なことに、バツイチのいい年した男どもが、まるで少年のような掛け合いでじゃれていることに、あまり違和感を感じなかったなあ。作者の三浦さんは、BLの嗜好も持っておられるようで、その辺のイメージもあり「なんだかこの空気って・・・」と思う瞬間も結構ありました。次の作品に手を出すのをためらってしまうなあ。どうしようか・・・。
生きていても、やり直せないことはあるかもしれないけれど、私は、まだ生きている限り、やり直せることがあると信じています。そして、幸せは必ず巡ってくると。きっと「幸福は再生する」。


「おまえはあのアニメを、ハッピーエンドだと思うか?」

「思わないよ」
「だって死んじゃうじゃないか」


「失われた町」

三崎亜記/集英社

30年に一度起こる町の「消滅」。大切な誰かを失った者。帰るべき場所を失った者。「消滅」によって人生を狂わされた人々が、運命に導かれるように「失われた町」月ケ瀬に集う。消滅を食い止めることはできるのか?悲しみを乗り越えることはできるのか?

独特の世界観は相変わらず。なじむのに時間がかかるのが難点です。途中、消滅に対抗する音の理論あたりはもうスルーしました。わかんないよー。
色々な登場人物たちが、最後に物語の流れの中で一つにまとまっていく様は、すごくうまい!と思いました。世界観は、正直とっつきにくい(笑)。町に意思があるからなあ。ですが、気になる矛盾点もなく、一貫しているのでだんだんなじんでくる感じがします。読めば読むほど味が出てくる作家さんではあるなあと思います。もう、「となり町戦争」の感想なんか、ボロカスなんですけど、なぜか次の作品が気になってしまうのです。他にも同じような作家さんが何人かいます。これは、作品の嫌いなところも含めて作風が気に入ったということなのか・・・?
桂子さんのエピソードと、のぞみのエピソードが良かったなあ。桂子さんはかっこいい!脇坂さんを追いかけるあたりは、おおげさだなあと思っちゃいましたけど・・・。
何かの終わりは、また別の何かの始まりでもある。そう考えると、終わりは絶望ではなく、希望の色を帯びてくるのです。何事も気の持ちようですかね。そして、どのような世界にあっても、人はやはり世界を敵に回してしまうのだなあ。反乱分子だなーと思いました。


「ナイチンゲールの沈黙」

海堂尊/宝島社

ガンで眼球を摘出する子供たちの運命に心痛めた看護師の小夜は、子供のメンタルサポートを“愚痴外来”田口に依頼する。その渦中、患児の父親が殺された。厚生労働省の変人役人・白鳥も加わり、事件は思わぬ方向へ。

今度は、看護士さんが主役ということで。すごく不満がたまりました。田口さん目線の物語がまた読めると思っていたもので。少ない~。マコリンの出番も少ない~。
気を取り直して。前作では、医療の現場で起きた何かすごく専門的な分野のミステリーという感じでした。我ながら、頭の悪い要約だ・・・。ところが今作では、そういう医療現場の緊迫した雰囲気、というよりは、メンタルな部分に関係する仕事がクローズアップされていたのかな?という印象を受けました。謎解きも、前作は医療分野ならではのロジックがあったりして、そこら辺が一味ちがうなーと感心していたのですが、今回は、それに比べるとロマンチックになったなーと残念でした。もう、色々な人がネット上で書かれている通り、歌がね・・・。歌で、鮮明な映像を映し出すことができるって、相当ムチャな設定ですよね・・・。これが謎解きにまで絡んでくるところがやっかい。
あと、作中に良く出てくるコードネーム?通り名?みたいなものが、カユイ。盛り上がれない。これがラノベなら、ひねった通り名はかっこいいんですけどー。
それにしても、看護士と患者のアレはありなんでしょうか・・・?ドラマやマンガでは医者と患者も良く聞きますけどねー。医療従事者としてそれはどうかと思うなあ。と、ドン引きしてしまいました。
結構批判的になってしまいましたが、全体的に読みやすかったです。桜宮病院サイドの話も読みたいですし。田口センセの出番が多ければ尚良いのになあ。今回に限って言えば、むしろミステリーという枠をとっぱらった作品の方が、もっと登場人物たち(特に小児科病棟の患者たち)の深いところまで描き出せたのかもしれないですね。ミステリー要素も、ドラマ要素も薄かったような気がします。