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読書の記録です。

「煉獄のエスクード 2」

貴子潤一郎/富士見書房

あれから八ヶ月。薫は、正式にエスクードの一員となるため、バチカンを訪れる。が、たまたま教皇庁を訪れていたクラウディアによってフィンランドのとある村で、潜入捜査をすることになる。

短編でも良かったのでは?という感じのエピソード。無駄にエロ度もアップしてましたし・・・。ファンタジア文庫でこんな表現を使っていいのかなー。「デビル」とか「RoomNo」とか、最近、ファンタジア文庫の方向性がいまいち良くわからないと思う時があります。そういうのが読みたければ官能小説を買えばいい話ですからねえ。あえてファンタジアでやる意味が良くわからない。
それは置いといて。
うーん、薫君がたくましくなりましたよー的なことが言いたかったのでしょうか。話の内容は薄い、という印象。今後、アイリスが見習い魔術師として登場するのが楽しみです。絶対いつか出るはず!と根拠も無く確信しています。クラウディアの調子の良さが好きです。しかも、実力が伴っているところがかっくいー。薫君は良い子なのですが、脇キャラが濃すぎて目立ちませんよね。不憫・・・。ともぞさんの挿絵は、またまたパワーアップしていましたね。毎回密かに期待しています。
次巻では、真澄兄さんが登場するようです。うわー、楽しみだー。
相変わらず年上の女性に振り回される主人公。・・・著者の願望ですか?笑。


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「最後に咲く花」

片山恭一/小学館

投資ファンド会社に勤める永江は、大学時代の同窓生と再会する。彼女の体は病に侵されており、残された時間はわずかだった。

生きるということ、そして生命についての哲学もありますが、全体的にうすっぺらいのですよ。私は株取り引きとは空虚なものだと思っていますので(人のお金云々は関係なく、投資自体が)余計そう感じたのかも。
難しい事を書いてますが、要するに二股をかけていて、最終的に心の平穏を得られる病床の彼女を取りました、っていう話。短編の方が良かった。片山さんは、短編はわりと好みなのですが長編はいまいち・・・。シンプルな文章なので、構成ももっと無駄なものをそぎ落とした方が、きれいなのではないかと思うのです。
題材として、アメリカのテロ事件を持ってきたのは良くない。デリケートな扱いを必要とする事件は、必然性が無い限りそのものを使うべきではないと思う。
振られた彼女が一番かわいそうだった。何をしたわけでもないのに・・・。


「どすこい(安)」

京極夏彦/講談社

「地響きがする―と思って戴きたい。」という書き出しから始まるベストセラー小説をベースにした7編の短編集。いざ、めくるめくお相撲さんワールドへ!

オススメされた時は、ちょうど「姑獲鳥の夏」でダウンした時だったので、いくら「馬鹿でおもしろいよ~。」と言われても、「絶対ギブするからやめておこう。」と心に誓った一冊。京極堂克服記念に読んでみると、これがおもしろい!本当に馬鹿!笑。何でもっと早く読んでおかなかったのか・・・。こんなユーモラスな一面もお持ちなのですねえ。編集者女性の凶暴っぷりも素敵。
えー、実は元ネタは、“すべてがFになる”(森博嗣)と“理由”(宮部みゆき)しか読んだことがないのですが、この2つに限って言えば、ちゃんと小説の形式を踏襲しています。していますが、全くの別物。しかし、不思議と不快感はなくパロディへの消化の仕方が上手だと思います。表紙が・・・!あおり文句が・・・。うまいです。笑。7つの短編はリンクしていて、最後は少し倒錯した感覚を残しつつ、ちゃんとオチがついています。
私、相撲はあまり好きではないのです。昔、何かの番組で、引退後の小錦が石膏で体の型を取っていたのです。その時の、小錦さんの裸体のインパクトが今なおトラウマとして残っているためだと思われます。
こんな私も楽しめましたので、お相撲さんが好きな方はもちろん嫌いな方も、「京極さんのは、読みにくそう・・・。」と思っておられる方もぜひぜひご一読を~。

“姑獲鳥の夏”→“スズメの夏”とご自分の作品もパロッておられました。
怪奇なイメージが、一気に日本昔話の雰囲気に。


「てるてるあした」

加納朋子/幻冬舎

親の夜逃げのために高校進学を諦めた照代。彼女は、遠い親戚を頼って佐々良という街で暮らし始める。不思議な出来事が起こる日々を、彼女を取り巻く人々と季節の移り変わりを通じて鮮明に描いた癒しと再生の物語。

佐々良!ということは・・・と思ったとおり、サヤさんが登場~。
登場人物に思い入れがあるというより、“ささらさや”はとても感動的だったので、期待できそうだと思いました。そして、実際ええ話でした。
主人公・照代はどん底の真っ只中。見るもの、聞くもののすべてがうらやましくて妬ましい。少々被害妄想気味の照代さん。かわいくない態度をとってしまいますが、それがすごく良くわかる。特に、サヤさんみたいな、誰からも愛されるような人がいたとあっては、そりゃ自己嫌悪に陥りますわな。
逆に居候することになった、遠い親戚の久代さんは自分にも他人にも厳しい元教師。久代さんと照代。どちらも頑固で、素直じゃないから、歩み寄るのに何倍もの時間がかかってしまいます。だからこその感動が最後に待っています。
照代の頑なな心が、徐々に解きほぐされていく過程をぜひ読んでいただきたい。前に読んだ本(鏡姉妹の~)が殺伐としているだけに、あたたかさを2倍に感じました。笑。
「ありがとう」と「ごめんなさい」はとても大事な言葉なのです。ちゃんと言えてますか?


「てるてるあした、今日は泣いても明日は笑う」


「鏡姉妹の飛ぶ教室」

佐藤友哉/講談社

誰もが365日分の1日で終わる予定でいた6月6日。鏡家の三女、佐奈は突然の大地震に遭遇する。佐奈を待つもの、それは死か?死か??

死でしたね。私は死だと思います。
読むたびに、何ともいえない気持ち悪さを感じる佐藤作品ですが、なぜか読んでしまう不思議な味があります。今回は死体描写以外は割合まともだったと思います。思うに、私が鏡家サーガを全作読んでいるくせに、鏡家のことを良くわかっていないのは、描写にインパクトがありすぎて、登場人物がかすむせいだと思うのですがどうでしょう。と言い訳してみる。・・・ごめん、本当に全然わかんない。
序盤、なんとなく“漂流教室”(楳図かずお)っぽいのかなあ、と思っていましたが、単なる地震だったということで私的には安心した。個人的に村木君にいらつき、妙子ちゃんのギター姿に萌えました。制服とギターの組み合わせはかわいいと思うのは私だけ・・・でしょうね・・・。
表紙の笹井一個さんの、星印牛乳がかわいい!っていうか、給食の牛乳は瓶では!?


「がんばるのは当然だわ。私が尋ねてるのはそうじゃなくて、飛べたかどうかよ。」
すげえ、姉ちゃん。みんなが命懸けで体現したプロセスを全否定。