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読書の記録です。

「少女には向かない職業」

桜庭一樹/東京創元社

中学2年生の1年間で、あたし、大西葵13歳は人をふたり殺した。これは、ふたりの少女の血の噴き出すような闘いの記録。

小説新潮の短編をちらりと読んだのですが、あれはいまいちだったなあ、とかそういや“GOSICK”積んであるなあとか思いつつ借りてみた所存です。
結果としては、おもしろかったです。最後の数ページまでは。
後半、主人公が実は○○の方が○○ではないのか。という疑心暗鬼にかられる思考があって、そこがとても良かったのです。しかし、残念ながら、△△の方も○○だったのですねー。ここで、実は善人だった△△を殺していれば、黒くて良かったんですがー。って、さっぱり意味がわからんぜよ!?笑。
一番評価したいのは、著者は、少女と呼ばれる時期の女の子の気持ちを良くわかっておられる、という点です。青春小説というより少女小説。思春期の少女とは、甘くてかわいい思考と残酷でエゴイストな思考が共存したカオスなわけですねー。
島なのに殺伐とした空気・・・。島だからこその殺伐とした空気・・・。
・・・田舎暮らしって、やっぱりこわーい。


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「晴子情歌」

高村薫/新潮社

昭和五十年、洋上にいる息子へ宛てられた母・晴子の長大な手紙。三十になって知る母の姿に激しく戸惑いながら、息子・彰之は初めて母という名の海へ漕ぎ出していく。

男の子は大体マザコンなんだよなー。
私ここまで親の内面の世界について思考したことがないので、すげえなあと。これが女性だったら、おそらくこの物語は成り立ちませんぜ。良くも悪くも、男性にとって母親の与える影響は大きいと思います。かといって、女性にとって父親が同じ影響を与えているとは限らないんだなー。
晴子お母さんの手紙が全部旧かなづかいで、読みにくい。現代っ子の私には非常に読みにくいです。漢字が読めないの・・・。想像で埋めていくしかないの・・・。ていうか、昔の人はこんな難しい漢字を日常的に使っていたのでしょうか。ちょっと疑問。
彰之も含め、登場人物たちが見せる他人への執着は、理解できない部分も多々あり。トシオよりさらに後に産まれた私の世代は、他人に対してより無関心であるのかもしれない、と思った。一人一人の複雑な心が丁寧に描かれています。言葉では、言い表せない気持ちの動きが感じられました。
本を開けば、常にそこには何かが息づいていて、生命が躍動している姿が目に浮かぶよう。


「今日まで、生命の正しい声に従って産卵に一番適した海辺の場所や、雪解け水が海に流れ込む時期と水温をそのつど寸分の狂いもなく選んで回帰して来たというのに、最後の最後になって我を忘れるのも彼らの生命の声だとしたら、ぼくたち人間はそれを何と呼べばいいのだろう。」
(現代仮名遣い&現代漢字に直してあります。)


「正直じゃいけん」

町田康/角川春樹事務所

負けたものが勝者が得るべき権利を得るという、「正直じゃいけん(正直じゃんけん)」のルール。子供らがそのじゃいけんを、正直、と呼ぶのはどういう訳だろうか…。「小銭の豪放」「往来の事情」などを収録したエッセイ集。

この表紙かなりセンス良くないですか?
表紙借りですよ。だから、町田さんって誰?って感じですよ。
でも、町田さんを知らずとも十分楽しめます。エッセイのネタの目のつけどころがおもしろい。自虐ネタが多いかな?でも、わかるわかる、と頷いてしまいます。
一本が短い。にも関わらず、起承転結の流れがあり尚且つおもしろい。オチのつけ方が好きなのかな。
プロの方をこんな事で褒める方が失礼かもしれないけどさ、ブログの片隅で感想文を書いている身としては、やっぱりこのセンスが少しうらやましいのです。
おっと、注意点が!ばりばりの大阪弁なので、ちょっと、いやかなり?汚い言葉使いが出てくることもありますよー。


「ミッキーマウスの憂鬱」

松岡圭祐/新潮社

東京ディズニーランドのバイトになった21歳の若者が、友情、トラブル、純愛など様々な出来事を通じ、やがて裏方の意義や誇りに目覚めていく。

・・・純愛?
えっと、どこに純愛が転がっていたのでしょうか・・・。
ま、いいか。
どこまで本当のことかはわかりませんが、ディズニーランドの裏舞台がメインです。ディズニーランドは色々な感覚が狂う恐ろしい場所です。あのミッキー耳カチューシャを買おうか本気で悩みましたから。
職場が遊園地だろうと水族館だろうと、組織である以上、上下関係も派閥もあるだろうという想像は容易につきますが。勝手に理想を作りあげて、暴走して、勝手に幻滅して。いや、この人かーなーりー、うっとうしい人です。
しかしながら、彼はやがて正社員との壁を越えて、シーとランドの壁も越えて、ディズニーランドの危機を救うのです。ここらへんの盛り上がりは熱いのですが、ふと振り返ると、これって勤務初日含めて3日間の話なんですね、これが。
仕事に対して、意義や愛着を感じるのに、いくら何でも3日間は早すぎると思うのですが。


「名探偵の呪縛」

東野圭吾/講談社

図書館を訪れた「私」は、いつの間にか別世界に迷い込み、探偵天下一になっていた。次々起こる怪事件。だがここは、「本格推理」という概念の存在しない街だった。

父上が、電車に捨て置いてあった本を拾ってきたのがこれ。読後、捨てた人の気持ちがわかりました。
いまいち。
“名探偵の掟”は、非常におもしろかったので、残念さも2割増し。
そのー、これも本格に対する著者のスタンスというか、こだわりですよね。ですが、最後のオチまで想像がつく上に、トリックもなんだかなあというものばかりで、これでは主張に説得力が無い。
続編ということですが、“名探偵の掟”を読んだあと、特に続きが欲しいとは思わなかったので、あれで完結していたのかと思っていました。読んでみて、やはり続編は不要だったと思わざるをえません。
続編といえば、「幻夜」もいい勝負のつまらなさでした。読んだことを後悔しました。
まだ読んでないあなたは、読まない方がいいでしょう。