「千の夜の還る処」 本 2007年08月15日 ひかわ玲子/富士見書房「アマ」を治める女帝、由摩は、最後の皇帝であると予言されていた。それは世界の滅亡を意味する。由摩は、夢と現実の狭間で、いったい何を想うのか。久しぶりに読むのが苦痛な本に出会いました。未完成の作品?と思うほど、細切れ。しかも時間軸がばらばらで少々混乱気味に。文章はテンポが悪く、作文のようでつまらなかった。それをカバーできるキャラ造形ができているかというと、誰も彼も薄い・・・。由摩の記憶をたどる話・・・でいいのかな?と思いきや、最後で物語対筆者の構図が見えたような気が・・・。確かに物語にとって作家さんは神様のような存在でしょう。で、なんだ、ここまでがんばって読んだ読者に対して、つまりはそういうことが言いたかったわけですか?「ここはどこ?私は誰?」って、アンタ、私の方がもっとわからんわ! PR
「レイクサイド」 本 2007年08月15日 東野圭吾/実業之日本社中学受験を控えた子供たちの勉強合宿のため、4組の家族が湖畔の別荘に集まった。並木俊介が到着した日の夜、妻・美菜子は彼を追いかけてきた愛人・高階英里子を殺害したことを告白する。親たちは一体どういう集団なのか、という点が一番気になりました。用意の周到さから、「当初から殺人は計画されたもので、彼らは殺人集団だ!」と無茶な予測を立てていたせいか、謎解きはわりとソフトな感じを受けました。収まるところに収まった。閉じられた空間というのは、判断力をこうも鈍らせるものなんですね。犯人のインパクトはドラマ「QUIZ」の方がエグいと思います。想像できる後味の悪さはどちらもかなりあるかと。こんなの、これから先うまくいく訳ないじゃないですかー。読後は結婚に対するマイナスイメージが強く残りました・・・。そんなにおもしろいというわけでもないのに、なぜ映画化されたのだろうか。
「どきどきフェノメノン」 本 2007年08月15日 森博嗣/角川書店大学院・ドクターコースに在籍中の窪居佳那が過ごす、「どきどき」かつ「ミステリィ」な日常。いやよいやよも好きのうち?好きなものを嫌いと言うひねくれ者がいますからねー。ただ、8割くらいは本当に嫌いだと思います・・・。佳那の心の声がおもしろい。さらにさっぱりしていて気持ちいい。シャンプーも。奥手なのかと思いきや、ストーカーをしてみたり。笑。相手の好意に薄々勘付いていて、それをどうかわすか、受け止めるか・・・。もんもんと悩んでいるところが好き。全然相手の気持ちに気付かない鈍感な女の子よりはねー。これくらいのセンサーは乙女たる者常備しとかないと!最後は、これで良かった・・・のか・・・。ちょっと私にはなんとも言えない・・・。本人が負けて良かったって思ってるんなら、それでいいのかな。もしや、水谷君の持っている人形はブライスですか?いい趣味じゃないすかー。「ティッシュみたいに丸めて投げ捨てられた夢が、彼女の周りに沢山、今でも落ちている。ときどき思い出し、膝を折って見つめてしまうけれど、恐くてもう一度拾い上げることはできない。」
「空中ブランコ」 本 2007年08月15日 奥田英朗/文芸春秋ジャンプがうまくいかないサーカス団の団員、先端恐怖症のヤクザ…。精神科医伊良部のもとを今日もおかしな患者たちが訪れる。どの短編も、読後感がとても爽やか。症例は極端ですけど、似たような思いというか悩みを感じたことが誰でもあるのではないでしょうか。私はですねー。ハメを外したい「義父のヅラ」の気持ちが一番良くわかります。イタズラしたくてうずうずすることはたまにあります。落書き楽しそうだった!いいなあ。「空中ブランコ」は誰か早く言ってやれよ!とつっこみたくなった。「女流作家」最後は彼女と一緒にジャンプしているような気持ちに。読後感はこれが一番良かった。伊良部はでっぷりとした中年でありながら、子供のような言動をとるキャラとして描かれているわけですが、これ、かわいいっていうか、不気味っていうか・・・。気持ち悪い・・・?ホンジャマカの石ちゃんみたいな感じだったら許せますけど。
「ニンギョウがニンギョウ」 本 2007年08月14日 西尾維新/講談社「――映画を見なければならぬ。十七番目の妹のために。」「私には合計で23人の妹がある」・・・シスプリですか!?(説明しよう!“シスプリ”とはPSソフト“シスタープリンセス”の略である。突然12人の妹ができたら・・・という設定のギャルゲー。個性にこだわるあまり“おにいたま”“兄くん”“兄や”“兄チャマ”など、ありえない呼び方が会話を飛び交います!)さて。読んだ後に何も残らない作品でした。奇妙な世界観はさておいて、西尾さん作品といえばお馴染みの言葉遊びが暴走気味だったような気もします。難解なことは必ずしも美徳だとは限らない。わかる人にだけわかればいい、という内側へのベクトルしか感じなかったのが残念。最後に、この本の価格、実は1500円なのですが、400円も足せばハードカバーが買える値段であることを出版社様はわかっておられるのか。西尾さんの本ならいくら高くても売れると思っておいでか。西尾維新の本ならと思って買ったら、この薄さにこの内容。ファンの足元を見ているようなその姿勢が気にいらない。