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読書の記録です。

「本格ミステリ06」

本格ミステリ作家クラブ編/講談社

今回は既読のものが4作ありました。
それ以外の作品でいい感触だったのが、「太陽殿のイシス(ゴーレムの檻 現代版)」(柄刀一)。密室脱出トリック。そら無理やろーと思わないでもないのですが、実名を伏せた語り方といい神話とのシンクロといい、先へ先へ読ませる力を感じました。うわ、他の話も気になるかも・・・。
あとはー、「流れ星のつくり方」(道尾秀介)とても読後感が良かった。ホラーのようでいて、どこかほっとする空気。子供の動かし方がうまいですよね、道尾さん。「刀盗人」(岩井三四二)。これはトリックがシンプルで良かった。後味の悪い結末が意外で好み。
逆に、ちょっとアウトーな作品は「黄鶏帖の名跡」(森福都)。舞台の馴染みの無さも読みにくい原因のひとつかなあ、と思います。中国の歴史は良くわからない・・・。一番のマイナス点は、短編なのに長く話の展開がダラダラしていてテンポが悪いところでしょうか。
連作短編集のうちの一作、というポジションの短編がほとんどで、これを読んだだけではおもしろ味がわからないのかもしれません。私も連作短編集は大好きです!でも、たまには読みきりがあったっていいじゃん。そう見ると、蒼井上鷹さんは1作が独立していてなおかつクオリティの高い短編を書かれているなあ。すごいなあ。・・・どうして「最後のメッセージ」が収録されているんだ・・・。一番面白みに欠ける作品なのにー。残念。


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「けむりの居場所」

/幻戯書房

『週刊文春』の名物連載「喫煙室」から、32人の「たばこ」にまつわるエッセイをアンソロジーとしてまとめた本書。行間から紫煙が立ちのぼり、人生の味わいを感じさせてくれるよう。

私にしては珍しい本の選択だったようで、しきりに珍しがられました。
うーん、確かに世代が違い、名前は見聞きしたことがあるのですが、良くは知らない方ばかり。東海林さだおさんと赤塚不二夫さんはかろうじてわかりました。
どっかでも書いたのですが、私はタバコの煙とかヤニだとか匂いが嫌いです。しかしながら、タバコを吸う人の考え方には興味があります。というか、タバコの灰を落とす仕草がかっこいい人を見ると痺れます。ああ、タバコが無味無臭だったなら!笑。
多くに共通しているのが、戦中・戦後タバコが手に入りにくかった頃の話。今は誰でも自販機で買えますから。タバコに限らず、物を粗末にしてしまいがちです。私も、まだ使えるなあと思っても、いらないものはぽいぽい捨ててしまいます。何でもかんでも買ってはいかんなー、と反省。そう、私の場合、高いものは捨てれませんから!安いものに飛び付いてはいかんということですな。笑。
好きなものには、誰だってこだわりを持っているもの。かく言う私も「本のページをしおり代わりに折らない」「平行して読むのは2冊まで」「同じ作家さんの本はかためて読まない」とか意味不明のルールを持っています。それは人それぞれで、本人はすごく真面目なんだけど傍から見るとすごく馬鹿げてる。時々しなくてもいいケンカに発展することもある。
それでも、くだらないこだわりを大切にしたい。


「ステーションの奥の奥」

山口雅也/講談社

吸血鬼に憧れる小学6年生の陽太と叔父の夜之介は、東京駅大改築の取材に出かけた。だが、駅の構内で無残な死体を発見する。陽太は名探偵志望の級友・留美花と真相を追う。

何冊目かのミステリーランド。今回もなかなか残酷な死体が出てきます。いや、トラウマになると思うよ?普通。
オタク叔父さんは、「やっぱり出たかー」と思いましたが、意外に親しみやすくおもしろい人だったので、好感が持てました。主人公より良かった。彼のポジションは、登場した瞬間から明らかだったので、このあたりが子供向けのわかりやすさなのかなあと思ったり。
東京駅には興味が無いので、細かなウンチクには面白みを感じなかったのですが、良く調べられていてすごいと思いました。それともその気になれば、これくらいは常識なのかしらん。もはや私には、架空の話なのかどうかもわからない。笑。
肝心のミステリーはいまいち。吸血鬼を登場させるのはいいと思うんです。冒険モノとしては馴染みやすいキャラクターですし。しかし、密室トリックが「吸血鬼だから」の一言で片付けられてしまったところが残念でした。ううむ。こういうことがあるから、超能力とミステリーの融合はおもしろくなくなるんだよなあ。超能力を使ったからトリックが成立した、というのは謎解きとして非常につまらないと思うのです。


「横溝正史自選集〔1〕」

横溝正史/出版芸術社

旧本陣・一柳家の長男・賢蔵と克子の結婚式が執り行われた夜、夫婦は無残な惨殺死体となって発見される。不気味な琴の音、血みどろの日本刀、三本指の男の手形が示すものとは?(『本陣殺人事件』)。

図書館で見かけて、思わず手にとってしまいました。金田一シリーズを読んだのも遠い昔の話。未読の方が多いのです。こちらには、「本陣殺人事件」と「蝶々殺人事件」の2編が収められています。
「本陣殺人事件」は、金田一耕介のデビュー作。金田一さんは、色々な方が実写で演じられていますが、私の脳内では古谷一行さんなんです。だって一番汚いじゃん(失礼)。なので、青年とか書いてあると、すごく違和感を感じます。そっか若いんだ金田一さん・・・。密室トリックやミスリード(いかにも怪しい男等)は、予想の範囲内でしたが楽しめました。しかし・・・、動機が・・・。極端やなあ・・・。
「蝶々殺人事件」は、別シリーズ。探偵・由利先生と新聞記者・三津木君のコンビが主人公。トリックは「本陣~」と比べるとこちらの方が込み入っている印象を受けます。構成もこっちの方が好きかも。いかにも怪しいがために、怪しく見えない謎の人物が登場するのはお約束ですが!
トリックとか、そんなにめちゃくちゃすごいことやってるわけじゃなく、少し強引なくらい。しかし、戦後という混沌とした時代を背景に、おどろおどろしい世界観は独特のものだと思います。「本陣殺人事件」なんか、もう、出だしから金田一ワールドの匂いがぷんぷんしています。少し読んだら、「あ、金田一耕介だ」とわかる作品を確立した横溝さんはすごいなあ、と改めて思いました。


「アラビアの夜の種族」

古川日出男/角川書店

聖遷暦1213年、偽りの平穏に満ちたカイロ。訪れる者を幻惑するイスラムの地に、迫りくるナポレオン艦隊。対抗する手段はただひとつ、読む者を狂気に導き、歴史さえも覆す一冊の書。

分冊とどっちにしようか迷ったのですが・・・。ハードカバーで正解でした。上下2段組&約600ページは「ああ、大作を読んだなあ・・・」という気分にさせてくれました。形から入る私らしい感覚です。笑。通勤では読めないけどな!
翻訳本とは知らなかったので、読み始めは非常に不安でしたが、とても読みやすかったです。表現が日本語に近い。舞台はエジプトで、不勉強な私はおそらく物語の何割を本当に理解することができたのか、非常に怪しいです。・・・ま、まあ、難しいことは置いておいて、ひとつのミステリーとしてとてもおもしろかったですよ!ズームルッドの話と、現実の話が交互に展開していく構図は飽きなくて良かった。特に後半になるに従って、現実(カイロ)サイドの話が気になって気になって仕方なかったです。終わり方は、うーん、どちらのストーリーもすっきり終わった方ではないかなー、と思います。
あとですね、各所に細かいツボがありまして。訳者の古川さんが、原作に対するコメントや見解を()でズバッと述べている箇所があったりして、率直でとても好きでした。物語も、全体的にはシリアスなのですが時々「これコント?」っていう会話や行動があったりして笑えます。えー、例えばファラーと村の長老(?)との会話とか。アイユーブの裏切りっぷりとか(またかよ!と何度つっこんだことか)。
物語はひとつの罠として、人を魅了してやまないものとして描かれています。ああ、わかるなあ。昔は徹夜とかしたなあ、と本読みさんは共感しちゃうはず!現在の私は、睡眠>食事>読書の優先順位なので、今のところ命を落とさずに済みそうです。いや、告白すると、アイユーブたちに習ってこの本を夜更かしして読もうと計画してたんですけどね。・・・毎晩読み始めて30分後には寝てました・・・。いつの間に瞼がこんなに重くなったのやら。