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読書の記録です。

「青に捧げる悪夢」

角川書店

とびきりの謎、推理の極み。超豪華なラインナップで贈る戦慄のミステリー・アンソロジー。角川スニーカー文庫の「ミステリ・アンソロジー」「ホラー・アンソロジー」より単行本化。

ホラーテイストの短編が多かった・・・。がっくり。ヒットはありませんでしたが、印象に残ったものを。

“水晶の夜、翡翠の朝”(恩田陸)
お目当ての作品。のわりに、「麦の海に沈む果実」の話をすっかり忘れていました。幻想的な雰囲気が大好き。
“階段”(乙一)
階段をモチーフにした発想がおもしろい。しかし、始終妹のトロさにイライラしていた。ハッピーエンドは意外だった。
“闇の羽音”(岡本賢一)
あかんって、巨大昆虫は反則やって!蜂が迫ってくる臨場感と、うごめく幼虫のリアルさが気持ち悪い。個人的に少女の後半の盛り返しが好きだったので、残念な結末でした。
“ラベンダー・サマー”(瀬川ことび)
青春小説。ホラー的な題材を、明るくさわやかに仕上げているところに好感を持った。玄関をはいまわる音って・・・。すご・・・。


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「ララピポ」

奥田英朗/幻冬舎

選りすぐりの負け犬たち、ここに集合。

もしや、この表紙は・・・。と借りた後に気付きましたが、あとの祭り。図書館のお姉さん、違うんだ!私は知らなかったんだよー・・・。題名につられたんだよー。
という内容の本書。
成分の約70%が性描写という、もうそれ主体の話なわけです。得意分野ではありません。苦笑。しかし、奥田さんのあっさりとした語り口のおかげで、何とか完読。ララピポの謎も解けたし!
救いの無い結末だなあと少々切ない気分でしたが、最後の最後で、人間の底力を見たというか。この世の中、どんな人間も生きていけるんだなあという希望を垣間見たような。短編が少しずつリンクしています。リンクの仕方が絶妙。最後に小百合をもってくるあたり、なかなかうまい。
第一話・杉山さんの盗聴にかける熱意が特にすごい。その情熱をもっと別のことに向ければ、違う人生も開けていただろうに・・・。
コミカルで楽しい雰囲気はありますが、あくまでエロはエロなのでおすすめはできません。我こそは、と思う方はチャレンジしてみるとよろしいかと思います。


「ネコソギラジカル㊦」

西尾維新/講談社

“人類最悪の遊び人”たる狐面の男はぼくの前に再び現れる。玖渚友との決別。想影真心の暴走。そして、復活する哀川潤。シリーズすべてを貫く伏線の楽譜は絡まり合い、一気に奔流をはじめる!

大きく広げた風呂敷がたたみきれていない。
“ネコソギラジカル”が始まってから、ひっかかっていたこと。
「四千年以上もの間、戦争という名の殺し合いを続けてきても終わらないこの世界が、どうして十人だか二十人だかがケンカしたくらいで終わるんです。」
この的確なセリフを言ったいーちゃんも、結局正義の味方になるとかなんとかほざき出したのが残念。なぜ冷静になれなかった。
そーなんです!ここのところ、やたらめったら“人類なんとか”とか“世界の終わり”とか連発してますけど、所詮京都の片隅でケンカしてるだけじゃん、みたいな。いや、一人の人間がさ、どうやって肉体一つで世界を滅ぼせるの?とか、最強って言ってる割に弱いよね?とかその作中での世界最高基準に疑問を感じるのです。要するに、大げさなんだよね。そっか、井の中の蛙達の話を読んでたんだ・・・。
終わり方も、“空の境界”(奈須きのこ)みたいな生ぬるいハッピーエンド。・・・西尾節はどこへ行った?私は、“クビシメロマンチスト”みたいな、しびれるエンディンングが読みたかったんだよー。
唯一の救いは、哀川さんの男前っぷりと、玖渚ちゃんのかわいさだけかな。好きなシリーズで、期待していただけに残念。
で、名前は???(怒)


「天に還る舟」

島田荘司、小島正樹/南雲堂

休暇を取って妻の実家に帰省していた警視庁捜査一課刑事・中村は、一つの事件に遭遇する。地元警察が自殺と判断した死体に不審を抱いた中村は捜査を開始するが、事件は連続殺人事件へと発展する。

漢詩の見立てとは珍しい!と思っていたら・・・。・・・。しかも民話長いし。
トリックは、青龍刀のあたりが一番ひっかかった。どう贔屓目に見ても無理、だと思いますね。無理、と言えば警視庁捜査一課の刑事が、行きずりの民間人とタッグを組むというのも、なんだかな~という展開。しかも、後半刑事の方から捜査に誘ってるのですよ。いくら管轄外とはいえ保守主義とか無いんですか。リアルである必要は無いけれど、ありえない設定が続くのもいかがなものか。
前に読んだ「龍臥亭~」も、手記でしめられるパターンでした。謎を解くという意味では、犯人の手記や心理描写は一番すっきりする幕の引き方だと思います。だけど、続いてとなると「またか・・・。」と思ってしまう。
最後には戦争につながって、なんだか島田さん風味といえばそんな感じ。生首だし。(これは関係ないか。)景観や風土の描写が詳しいので、旅小説のような感じもします。取材の甲斐あり、といったところでしょうか。
共著?文体は一貫して同じという印象を受けたのですが、はて、どちらが書いたのかな?


「殺人の門」

東野圭吾/角川書店

どうしても殺したい男がいる。その男のせいで、私の人生はいつも狂わされてきた。人間の心の闇に潜む殺人願望を克明に描く、衝撃の問題作。

お前はアホか、と何度つっこんだことか。私だったら、賭け五目に連れていかれた時点で関係を切りますけど・・・。自分がカモだって事に気付くのは、それから10年以上経ってから。いくらなんでもお人好しすぎるよー。
とこけにしていますが、私は田島君のことが嫌いではないのです。自分も大概お人好しなもんで、田島がんばれ、という気持ちもありました。自業自得だけど世渡り下手でかわいそうだと同情もしました。むしろ、平凡な幸せを手に入れようとする田島を誘惑する倉持の方が嫌いだなあ。周りの人たちは、彼にうまいこと騙されてますからね。騙す、というよりも彼がもともと持っている面の一つなんでしょうが・・・。彼が天誅を受けるのはいつか、というのが楽しみでもありました。2人の関係というか、運命というか。大きな流れの中での人間関係を書くのが上手。
殺意や恨みだけで殺人はできない。計画的なものよりも衝動的な殺人の方が、ずっと多いはずですし、これには賛同できるかな。
評価が真っ二つに割れているようですが、私は好きです。