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読書の記録です。

「雪蟷螂」

紅玉いづき/アスキー・メディアワークス

長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガとの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。そして、極寒の地に舞う恋の行方は・・・。

人喰い物語3部作、最後のお話です。
ちなみに題名は「ゆきかまきり」と読みます。私、どうしても「ゆきとうろう」って読んじゃう・・・。交尾したあとにメスのカマキリがオスを食べるってとこからきた呼び名?実は、あの食べられてるオスって、交尾後にメスから離れるのが遅いだけなんですって。ちゃんと逃げてるオスもいるらしいです。
これまでの2作では、人を食べる魔物が存在していましたが、今回は物理的に食べるという意味ではなく、比喩としての食べるです。食べる=愛、ってな感じ。主人公は、フェルビエ族の女族長アルテシア。彼女の暮らす山脈には、いくつかの部族が暮らしているが、その中でも大きな2つの部族(フェルビエ族とミルデ族)は長い間憎しみ合い、戦いを続けてきた。しかし、アルテシアの先代(彼女の父親)アテージオは、ミルデ族長のガルヤとある盟約を交わす。それは、互いの娘・息子を結婚させ、2つの部族の統合をはかるというものだった・・・。
読み始めから、バリバリのファンタジーで、「ついていけるかな?」と不安を感じましたが、すぐに世界観に入り込むことができました。さすが紅玉さん。読んでる間、頭の中がずーっと吹雪でした。
族長の遺体を損壊した犯人探し?とミステリ魂がうずく展開です。しかし、占い師に過去の映像を見せられてハイ終わりっていうネタばらしです。勝手に期待して、がっかりしてしまった!
裏の主人公である、アルテシアの伯母・ロージアの話が深かったなあ。激情型(笑)の恋愛話を読むと、感情移入が難しくてすごく戸惑うんですが、読後には男女の愛の真髄ってこういうドロドロしたところなのかなと思います。普通だったら色々計算が働くと思うんですけど、このような情熱的な方々は一度恋に落ちたら、敵だろうが妻子もちだろうが関係ないって突っ走る!迷惑な人だな・・・。最初は相手にされてなかったのかな?と思ったのですが、最後の方で、相思相愛だったんだなあとわかると、良かったんだか悪いんだか複雑な気分になりました。だから、略奪っていいことないんだよ・・・。
アルテシアとトーチカの間には、愛とか好きとかそういうものはないと思っていたけど、そんなことはなかった・・・。自分の気持ちを大事にしたラストは良かったと思います。最後までわからなかったのは、ルイの気持ち。オウガに惹かれてるのかな、と思っているのですが、それよりアルテシアへの忠誠心の方が何倍も強烈なイメージでした。まあ、一番ナゾなのがオウガなんだけど・・・。
チェックしてないうちに、紅玉さんの本がたくさん出ていた!おお、これは読まねば・・・。


「あなたを、喰べたい。」


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「アンソロジー カレーライス!!」

/パルコ出版

きょうは、カレーだ。カレーだらけの33篇。

カレー大好き!という人はいても、カレー嫌い!という人はなかなかいないだろう・・・と思っているそこのあなた!カレー嫌いな人、います。うちの母親です。我々兄妹が子供のころは普通にカレーが食卓に並んでいて、みじんもそんな気配が感じられなかったのですが、我々が就職したりある程度大人になってから数年後、突然「私、カレー嫌いなんだよね」と突然の告白。「しばらくカレー作らないことに決めたから」有無を言わせない宣言。たまには食べたいんだけど・・・と思いつつ、私たち家族もカレーにそこまで執着心が無いため、あんまり気にしてません。作らないと言いつつ、たぶん1年に1回は作ってますし。家で最後にカレー食べたのっていつか思いだせないです。
他の家族は知りませんが、なんで私がそんなにカレーに執着心が無くなったかというと、以前の勤め先の社員食堂で食べたカレーが原因だと思います。めっちゃまずかったんです。この世に、まずいカレーが存在するということにびっくりしました。カレールウという素晴らしいものがある現代で、カレーって、まずくなりようがないじゃないですか!おそらく、食堂のおじさんがすごい料理下手か、ベジタリアンの多い職場だったため、ベジタリアン用のカレールウを使っているせいか・・・(たぶん、スパイスの量が少なくて動物性由来のものが入っていない。もちろん具はにんじん・じゃがいも・タマネギのみ)。1週間に1度、カレーの日が存在しまして、その日はカレーを食べなきゃ食べるもんがない!お弁当とか、パン買って行ったりとかしてたんですけどねー。カレーより最悪なコロッケ畑の日(おかずが、じゃがいも・かぼちゃ・クリームコロッケかしかない)もあるしで、仕方なく食べてたら、もう今週はカレーええわ・・・という気分になったせいかも。でも、たまに友人と食べるカレーはおいしいし、母親が渋々作るカレーもおいしく頂いています。私が今まで食べたカレーでまずかったのってコレだけなんで、ほんと、カレーが嫌いにならないで良かったなあと思っています。
・・・と、カレーについて書いてみました。
食べ物と人の記憶は結びついていて、「カレーライス(あるいはライスカレー)」というひとつの食べ物から、色々な話が派生して語られます。名前を聞いたことのある人から、存じ上げない方までたくさんのエッセイが詰め込まれています。印象に残った、カレーライスについての心得をいくつか。
①カレーは、少々味がおかしくてもなんとか食べれる!安いカレーも高いカレーも味は大して違わない。
②カレーはお上品に食べるもんではない!水をごくごく飲みながら、がつがつ食べるのがよろしい。
③本場のカレーは、めっちゃ辛い。
この前、インドの方が作るカレー屋さんに行ったら、レベル2で口の中が大変なことになったのを思いだしました。あとは、吉本ばななさんのエッセイが、嘘のような話でした。お気に入りのカレー屋の店主が事故で続けて亡くなるなんて・・・。本当なら怖いなあ・・・。藤原新也さんのお話に出てくる、タマネギのみじん切りを10時間くらい煮込むカレーは長野に行って食べてみたいと思うほどおいしそうです。
ところどころに挟まれるカレーの写真もおいしそうです。ほんと、カレーライスって日本食にしてもいいぐらいですよねえ。笑。


「食物は、なつかしさが第一、味は二の次」


「プラチナデータ」

東野圭吾/幻冬舎

犯罪防止を目的としたDNA法案が国会で可決し、検挙率が飛躍的に上がるなか連続殺人事件が発生した。警察の捜査は難航を極め、警察庁特殊解析研究所の神楽龍平が操るDNA捜査システムの検索結果は「NOT FOUND」。システムの開発者までが殺害される。現場に残された毛髪から解析された結果は、神楽が犯人であることを示していた・・・。

ちょうど映画が地上波で放映されるタイミングでした。これで犯人を間違えることはなさそうです。
昔と比べて、DNA鑑定の技術が発達した現代ですが、この作品の中ではDNAの技術がさらに向上し、犯人のプロファイリングまで可能になっています。さらには、多くの国民のDNAを登録し、もし該当する人物が見つからなくても、血縁者から犯人を探し当てることができます。・・・犯人の即時逮捕につながるのはいいけど、どんな便利なものにも落とし穴があるものです。
主人公の神楽龍平は、DNA捜査システムの開発者の1人。DNA検索に該当しない人物・NF(Not Found)13が犯人と見られる連続殺人事件を捜査中、DNAシステムのプログラムを構築した天才的な数学者、蓼科早紀とその兄が射殺される。遺体に付着していた毛髪を鑑定した結果、犯人は神楽自身という結果が出る。実は神楽は二重人格者で、もうひとつの人格・リュウが目覚めている間に事件は起こったのだ。警察に嫌疑をかけられた神楽は逃亡。アメリカからDNA捜査システムの視察に訪れていた白鳥という女性から、蓼科早紀があるプログラム「モーグル」を完成させていたことを知る。「モーグル」は、DNA捜査システムのある欠陥を補う役割を果たすという。神楽も知らなかったDNA捜査システムの欠陥とは?真犯人とは?
いやー、これはおもしろかったなあ。スピーディな展開で飽きずに読めました。次が気になってしょうがない!話はミステリーなんだけど、エンターテイメント!という言葉がぴったりです。
スズランいらんやん、とか思ったりしたけど・・・。ああ、でも最後のリュウとの場面は良かったので必要かなー。まあ、逃亡には必要なかったということで。
一部の権力者だけがDNA情報を登録せずに済む・・・プラチナデータの存在は、現実にもありそうな話です。なんだかんだで、政治家とかVIP好きそう。
犯人は、何となく怪しいあの人で、意外性はなかったんですが、動機が・・・。マッドサイエンティスト・・・。浅間刑事が最初主人公かと思ったんですけど(神楽の感じが悪かったもんで)、でも神楽が主人公でしたね。浅間刑事の刑事魂もカッコ良かったです。プラチナデータ自体の解決はできなかったのは残念だったけど、神楽が父親へのわだかまりを解いて、ろくろを回しているラストはとても良かったと思います。

★追記★
映画、見ました!(TV放映)
なんか・・・、話がものすごい脚色されてて、コレよくOK出したなあと思いました。神楽の方が交代人格になってる!水上教授が女性だし、動機がえらい崇高なモンになってるし・・・。電トリ出てこないし、リアル蓼科早紀がめっちゃかわいい。笑。そして、リュウの人格が私のイメージと全然違うわー。こんなオドオドした兄ちゃんじゃないんだけど。浅間刑事の捜査シーンもかなり削られてましたね。浅間刑事の魅力が半減じゃないか。
とにかく説明の多い映画だった。スズランがいなくても、話が成り立つということが証明されたな・・・。
記憶が曖昧だったら、ひっかからないところもあったんだろうけど。原作を鮮明に覚えてると、こういう弊害もあるのか・・・。


「MM9」

山本弘/東京創元社

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”略して“気特対”が、昼夜を問わず駆けまわっている。多種多様な怪獣たちの出現予測に、正体の特定、自衛隊と連携しての作戦行動。相次ぐ難局に立ち向かう気特対の活躍を描く本格SF+怪獣小説。

珍しくSFです。最近、SFも読みたいものがたくさんあるんです。世界観が魅力的ですよね!私が思うSFがファンタジーと違う点は、世界の法則が理系っぽく筋道立てられているというところです。「わかったような・・・、わからんような・・・あ、やっぱりわからん・・・」SF読んでるときの私って大体こんな感じ。笑。・・・深く考えずに読んでみよう!という気分になったので、ちょこちょこ手を出していきたいと思います。
エムエムナイン!という音の響きが戦隊モノみたいな題名ですが、この「MM」は「モンスター・マグニチュード」の略で、怪獣の規模を表しています。地震と同じように、怪獣も自然災害として発生する世界です。この怪獣災害への対策として気象庁内に設置された「特異生物対策部」のみなさんが主人公。
怪獣といえば、ゴジラ・モスラ・キングキドラ・バルタン星人・・・くらいしか思いつかない!けど、怪獣はたくさんこの世に生み出されているわけで・・・。色々なバリエーションの怪獣が出てきました。集団のエビやら、ヒト型、空飛ぶ放射線物質満載の怪獣に、最後はクトウリュウまで。古代の伝説も、実際に起こったことみたいに考えられてて、そうだったら大変だけどおもしろいなあと思いました。
怪獣と戦うといえば、特撮ヒーローみたいですけど、「気特対」は、あくまで平凡な公務員。怪獣をやっつけてやる!とか地球の平和を守る!というよりは、彼らにとって、これは仕事。それはドライということではなく、みなさん一生懸命お仕事されてます。頑張ってても、被害が大きければ非難され、予報が外れても非難され・・・そりゃあ胃も痛くなるわなー。大変だけど、仕事って、誰かの役に立ってるっていいな!という気持ちになりました。
あと、怪獣は、現実世界に存在するにはやはり物理法則的に無理があるようで、怪獣のまわりは時間の流れが遅いとか、神話宇宙フィールドで怪獣のまわりだけ法則が違うという・・・。あとは、世界がどうあったか決めるのは未来の人間で、未来の人間に認識されないものはなくなってしまう・・・そうです。この辺理解があやしいですが・・・。平和になったら、自分達のしてきたことはなかったことになってしまうかもしれない、それでも怪獣災害を防いでみせる!という意気込みがカッコ良かったです。
伊豆野はすごい黒幕なのかと思ったら、すんごい小物だった・・・。カサコソ逃げていくなんて、サマンサじゃないか!(またもやオーフェンネタ)
続編も出ているようなので、ぜひ読んでみたいと思います。


「リカーシブル」

米澤穂信/新潮社

父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る。

表紙が近未来的な感じで、SFのような話かな?と思っていたら、全く違いました。高速道路をイメージしてるのかな・・・。この表紙から、この話を予測できる人はいないでしょう。
物語は、ある親子が小さな町に引越してきたところから始まります。その町は、母の故郷であり、高速道路の誘致に再生をかける小さな町。友人のリンカとも知り合い、町の生活に慣れようとする姉・ハルカ。しかし、弟のサトルが未来を予言するかのような発言をするようになる。ハルカは、町に伝わる昔話に登場するタマナヒメと類似する点を見つけ、サトルに起こっている現象を解明しようとするが・・・。
高速道路の誘致の陰で行われていた様々な工作。巻き込まれた子供。閉鎖的な町の話になると、理解しがたい価値観が出てくるもんです。
ラストの急展開の夜を迎えるまでは、非常にまったりとした進行です。まったりしすぎてつまらなかった。笑。まったりした話の中にも、ちゃんと伏線はあったのですが・・・。何しろ、ハルカが普通にいい子なもんで、彼女の一人称ではインパクトが無かったせいかなと思います。
しかし、このハルカさん、父親が失踪しただけではなく、母親は義理だし、弟は連れ子で血のつながりはないしで、結構過酷な状況に置かれています。彼女がいい子なだけではなく、しっかりしていて、機転が利くのはこの複雑な状況から培われたものなのかしら。反対にサトルは泣き虫で・・・特にいいとこなしだった。
タマナヒメについて説明不足だった点が残念。先代のタマナヒメ(サクラ)が亡くなったのが5年前だとしたら、今のタマナヒメのリンカに霊魂(?)が乗り移ったのは4・5年前ってこと?なら、タマナヒメの霊魂が乗り移る前は、在原リンカという人間が自我を持って生きていたということになりますよね。小学2年生か3年生まで。肉体が滅びてもタマナヒメの魂は残り、また誰かに憑依する・・・。そうやって永遠に魂は残るのだから、肉体の死を恐れないというタマナヒメの理屈はわかったけど、憑依された女性の人生はどうなるんやと。そもそも、タマナヒメが憑依した時点で、もともとの人格がどうなるのかもよくわからないし・・・。あのリンカはタマナヒメなのか、リンカの部分も少しは残っているのか・・・などなど謎でした。最後は、「私も色々大変なのよ」の一言で済ませてしまったという。ねじふせられちゃった。
リンカや講(という町の互助会)の面々も結構ブラックでしたが、ブラック米澤さんが降臨したのは、離婚届けが送られてきてからの義母の本性でしょう!中学校卒業までは置いてあげるとか、親戚の家に行けとか、家に生活費を入れろとか・・・。態度が控えめでも、結局言いたいことはこういうことですからねー。離婚したら、そりゃ相手の子供は他人だけど・・・。それなら最初から優しくなんてしなければいいのに!いやー、腹黒いです。このシーンだけで結構満足な私。