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読書の記録です。

「我が呼び声に応えよ獣」

秋田禎信/富士見書房

本業は魔術士だが、副業でモグリの金貸しをしているオーフェン。ちっとも金を返そうとしない地人が、どうやら金儲けの話を見つけてきたらしいいので、とりあえず、とある金持ちの屋敷にやって来たのだが…。

秋田禎信Boxが、もうすぐ発売されますね~。もちろん予約済みですのことよ!これに合わせて、シリーズをざっと読み返しておこうかな~と思いついたのです。間に合わないと思うけど・・・。途中で絶対飽きると思うけど・・・。
すっごく久しぶりに読んだけれど、やっぱりおもしろいな~。と感心しました。ギャグ、アクション、シリアス、ミステリーと色々な要素を詰め込んで、こんなにコンパクトにまとめられているなんて!当時、私は中学生だったので、オーフェンの年齢(20歳前後)は、大人~で、むしろマジクやクリーオウに共感しながら読んでいました。特に、金髪の美少年で魔術の素質があるマジク君に激ハマリでしたなー。笑。しかし、いまや私、アザリーやティッシを飛び越えて、チャイルドマン世代です。今読み返したら、オーフェンの若さにびっくりするやら寂しくなるやら。複雑・・・。
オーフェンのアザリーに対する気持ちっていうのが、初恋だったんだなあと改めて思いました。憧れや尊敬と恋は、似て非なるものですが、オーフェンは確かにアザリーを好きなのだ!と。クリーオウとオーフェンの関係も、最後まで曖昧なままでした。これは良き相棒かなあと、私は思うのですが、この答えが続編で出ることを期待しています。
後半、このシリーズはドラゴン種族やら大陸の歴史やら宗教色を帯びてきたような記憶があって、理解できなかった部分がありました。今回は、理解できるかな?
現在、馬鹿みたいなペースで大量のライトノベルが出版されていて、読める量なんてほんの少し。な上に、当たり外れが厳しいです。そんな中で、間違いなく胸を張ってオススメできるライトノベルです。


書影がなかったんです・・・。悲しい。
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「ほしのはじまり」

星新一(新井素子:編)/角川書店

全世界で、あるいは全宇宙で永遠に読み継がれるべきマスターピース集。これ1冊で、星新一作品世界のすべてがわかる。星チルドレンの旗手・新井素子が選ぶショートショートの最高傑作54。

私の中で、ショートショートといえば、星新一か阿刀田高。ショートショートは苦手で、あまり読まないせいか、ぱっと作者が出てこない・・・。そもそも、私がショートショートが苦手になったきっかけは、星新一さんの「未来いそっぷ」でした。小学生くらいの時に、ショートショートというジャンルも、星さんも知らず、ただ表紙のキリギリスがかわいいという理由だけで読んだ本。意味がわからなくて、なんだか読後感が気持ち悪いと思ったのを覚えています。そして約20年が経ってから、どうして星新一を読もうと思ったのか謎です。笑。でも、おもしろかったなあ。きっと、編者の新井素子さんの解説と、愛ある構成のおかげだと思います。テーマごとに作品が集められていて、なじみやすかったというか。
びっくりしたのは、話を覚えていたこと。「少年と両親」と「おーい でてこーい」「いそっぷ村の繁栄」も。大人になった今読むと、これらの作品は人間の風刺画のように見えるのです。特に、ベタな結末ですが「おーい でてこーい」はとても好きです。
5章と6章の作品が好みでした。人間という生き物の性を描いているところが好きなのかな。「殉教」なんか良かったですねえ。あの、流されやすいところが人間ですよね。信用しちゃうんだ!っていう。読んでいる途中はいまいちだったのですが、余韻が残るのは「殿さまの日」。お殿様があーだこーだ考えていることなのですが、何も考えていないようなお殿様が、こんなに周りに配慮して生活していたとしたら・・・。と見る目が変わりそう。「花とひみつ」では、数々の偶然の結果、勘違いした研究者たちがロボットのモグラを開発した話。得意そうにモグラをさしだす所長がかわいらしい。笑。
星さんの作品には、「実はどこかのスパイ」とか「実は殺し屋」「実は組織のボス」「実は・・・」っていう裏の職業を持っている人がたくさん登場します。ありえないけど、そこがおもしろいのかも。
「ほしくずのかご」では、漢字とひらがなの全体的なバランスのこだわりの話が興味深かった。読みやすいし、ページを遠目に眺めてもきれいに見えるような気がするのは、このせいかな。気のせいかな?手元に1冊置いておきたい本です。オススメ。


「なにもいらない。いまのわたしに必要なのは思い出だけだ。それは持っている」


「黒笑小説」

東野圭吾/集英社

偉そうな顔をしていても、作家だって俗物根性丸出し!俗物作家東野がヤケクソで描く、文壇事情など13の黒い笑い。

シモだシモだという話を読んだ人から聞いていましたが、そんなにシモネタだとは感じなかったなあ。シモネタ耐性がついたのか。どんなレベルアップだよ・・・。1話1話が気軽に読める短編集。ということで、感想もかるーく。
「もうひとつの助走」寒川先生、あわれ・・・!こういう勘違いオチ、好きだなあ。
「巨乳妄想症候群」「インポグラ」たぶん、この本がシモネタと言われたのは、この2作が原因だろうなあと想像してみる。いや、インポグラは実際にあったら使えそうですよね!笑。
「みえすぎ」雑菌が目に見え、洗濯機を1日5回まわすという坂上忍のトークを思い出した。どうでもいい回想ですいません。
「モテモテ・スプレー」かわいそうだが、そこまでして・・・という涙ぐましい努力が、我々の笑いをさそうのです。ぷぷっ。
「線香花火」「過去の人」作家が書くだけに、そういう人が本当にいそうな気がしてきた。編集は、恐ろしいなあ。
「シンデレラ白夜行」ほんとうは恐いグリム童話・・・。そうか、ガラスの靴である理由はそこにあったのか!と納得した。そうそう、悲劇のヒロインはみんなしたたかな女なんだよねえ。
「ストーカー入門」女の見栄ってやだな。なんだかんだ言いつつ、ちゃんと彼女の指示に従っている彼氏がいい人だ。
「臨界家族」もし、自分に子供ができたとき、おねだりに屈しない自信はない!というか、たぶん怒れない。だめじゃん。
「笑わない男」きれいにオチがついていて、一番好きな作品。今のお笑いブームに乗っかって売れて、自分はおもしろいんだと勘違いしている芸人が読めばいいと思う。
「奇跡の一枚」私は、めちゃくちゃ写真写りが悪いので、うらやましい~。なぜ、人はすぐばれると分かっていて、嘘をついてしまうのだろうか・・・。
「選考会」寒川先生、再び・・・!「過去の人」での扱いの原因が判明。振り落としに、ここまで手間ひまかけてくれた編集は、優しいのか、ひどいのか・・・?
滑稽な登場人物たちに、くすりと笑いをもらしながらも、頭の片隅では「結構自分も同じ思考をしてるかも・・・」とぼんやり思っていました。


「儚い羊たちの祝宴」

米澤穂信/新潮社

ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、本書は、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。

ブラック米澤さん、光臨!
「バベルの会」という大学の読書サークルが、ちらほらと登場するのですが、あんまり最初と最後の話以外は、なくてもいいような・・・。セレブな家を舞台にした短編集。本の紹介では、ラストのオチをウリにしているような感じですが、ラストが意外だったのは、1つ、2つだったような・・・。
それでは、各話の覚え書きを。
「身内に不幸がありまして」。そ、それだけの理由で・・・。仮病使ったらええやん・・・。この先、このスタンスが続いてゆきます。シュールな作品ですが、まだジャブ。
「北の館の罪人」。丁寧言葉な人に、甘ったれと罵られると、ぞくりとします。私、Mっ気は無いはずなんですが~。妹さんは、全てを察しているということで、よろしいでござんすよね?
「山荘秘聞」。えー、それだけのために・・・。という話。限りなくクサイ終わり方でした。きっと口約束を信じない人だから、口を封じるなら確実な方法をとるよね。いかなるときも、微笑みを絶やさないのが、一流の使用人!
「玉野五十鈴の誉れ」。一番、最後が意外だと思った作品。五十鈴さんは、きっと本当は純香さんのことが好きだったんだよーと思うことにした。赤子をさっくりと殺してしまう、このブラックさが良い・・・。
「儚い羊たちの晩餐」。カニバリズム!レクター博士もびっくりの唇の蒸し物が登場いたしました・・・。ええもん食べ過ぎると、こんなもんまで食べたくなるもんかと思うと、粗食のままでいいや・・・って思うなあ。アミルスタン羊という呼び名は初めて聞きました。「特別料理」(スタンリイ・エリン)という作品に登場するようで、読んでみたいような、読まないほうがいいような。「わたしは、」この後何が起こったんすかー!?と、誰かの肩を揺さぶりたくなること必至。
ブラックジョークな感じで、えぐい描写は一切出てきません。すべては、私たちの想像力にゆだねられているのです。私の現実と夢想を隔てる壁は、もろいのか?頑丈なのか?試されていたのかもしれません。


「目薬αで殺菌します」

森博嗣/講談社

神戸で劇物の入った目薬が発見された。目薬の名には「α」の文字が。その頃、那古野では加部谷恵美が変死体を発見する。死体が握り締めていたのは、やはり目薬「α」。探偵・赤柳初朗は調査を始めるが、事件の背後には、またも謎の組織の影が…?

萌絵さんと犀川ティーチャーが、け、け、け、けっこん!?
その辺の話を詳しく!目薬なぞ、どうでもいい!笑。
という、私の叫びも空しく、さらっとスルーされてしまいました。ちえっ。結婚してても遠恋でも、あの2人はうまくいってそうですよね~。そんな2人の距離感が理想的です。
探偵・赤柳さんが大活躍でした。事件の全貌に迫るのは、加部谷たちではなく、彼なのでは?という気がしてきました・・・。加部谷、もうそれどころじゃなさそう・・・。野次馬モードではなく、恋する乙女モードにスイッチが切り替わったようです。うん、でも、がんばったよ!相手は、究極の草食系男子だからさ・・・。しかし、ここまで乙女な加部谷を前にして、平静を保つ海月が怖いな・・・。
犀川は、犀川なまんまでしたが、萌絵さんが、ちょいと感じが変わったなあという気がしました。「あきらめろ」なんて言うタイプじゃないのに。本当に悟ったのか、最後の萌絵さんは、真賀田博士がなりきったとか・・・。色々詮索してしまいますが、どれも、当たっていないような気がする。
今回は、少し、真賀田博士の目的みたいなものに触れていて、すっきりしました。まあ、それに何の意味があるのか?という疑問が残りますが。頭いい人の考えることは、やっぱり良く分からないなー。