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読書の記録です。

「灼熱のエスクード2」

貴子潤一郎/富士見書房

薫は、相棒の魔術師ルーシアと共にイギリス女王から緊急に呼び出され、『落丁の一頁』を追っていた部隊を救出してほしいと頼まれる。それは人間にとって最悪の魔族『真紅の貴婦人』を封印しておくための最後の砦だった。

思ったよりも続きが早く出たー。
・・・けど、ちょっと良くわからなくなってきた・・・。
レディ・ルージュが『外道祈祷書』として封印され、彼女を復活させるために、魔族は書を集めていた。その最後の足りないページが、モン・サン・ミシェルの地下にあるものと、あとルーシアの体内にあったもの?あと、アイリスの祖母が持っていたもの?地下のものがいずれは回収されたとしても、ルーシアとアイリスの持っているページが、タイミング良く揃ったということも解せない。女王さんは、その可能性を考慮していなかったのかしら?ちょっと都合が良すぎるなあ。むむむ・・・。
あと、ルーシアの天然さん人格が消えてしまったのが寂しい。だけど、あの天然さんと、レディ・ルージュが結びつかないんだけど!
レディ・キィの正体は・・・。前回私が予想していたものとは全然違うものでした。これを予想できないなんて、私はミステリ読者としてまだまだ修行が足りません・・・。それにしても、「どちらを選んでも幸せになれない『選択』が待っている」ということを教えてもらっても、何の役にも立たないよな~と思いながら読んでました。もっと中身を教えてよ!具体的に!
このシリーズも、とうとう折り返し地点を迎えたようです。トゥロワヌも想定外に消されてしまいましたし。薫君は、学校を退学してしまいましたし。これから、物語は終わりに向かって大きく動いてゆくでしょう。どんな結末が待っていようとも、最後まで見守っていく所存です。


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「鉄鼠の檻」

京極夏彦/講談社

忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。

やっとこさ、鼠が読めました!図書館でなかなか巡りあえず、人に借りて読みました。あくまで自分では買わない。笑。だって文庫で1500円とかありえないでしょ!ハードカバー並みじゃん!
・・・という弁当箱サイズの文庫を抱えて、2週間は格闘したと思う。格闘って言葉を使ったけど、今回はとてもおもしろかった。2作目の次に良かったなー、と。薀蓄は健在ですが、話のテンポが良かったせいだろうなあと思いました。謎が解き明かされるタイミングがお見事。禅寺の正体。覚丹の正体。了稔の野望。鈴は何者なのか。松宮と飯窪の関係は?などなど、後半はぐいぐい引き込まれていきます。1作目「姑獲鳥の夏」とリンクしているあの人やこの人も出てくるよ!でも、あんまり覚えてなかったよ!つくづく自分はもったいないことをしているなあ、と思うわー。
今回は、箱根の禅寺が主な舞台です。禅といえば、座禅・・・?というイメージしかなかったので、起源から説明されてあって、とっつきやすかったです。あんまり覚えてなくてごめんなさい。問答というものが、私はとても苦手で・・・。興味深い思考なのだけど、正直、どうでもいい話だ。笑。
まあ、京極堂の登場の遅さとおいしいところをかっさらっていくところはいつも通りでした。榎木津の出番が少なくて残念だったなあ。たぶん、脇役としては多い方なんだろうけど。木場さんなんか、今回は出てこなかったし。きっと、愛ゆえの物足りなさなのよ~。彼の率直な物言いが好きなのです。聞いてて気持ちいいよね。
最後に、死後、便器に頭から突っ込まれるのだけはイヤだなあ、と強く思ったことを記しておこうと思う。一番悲惨な見立てだよなあ・・・。


「先生と僕」

坂木司/双葉社

大学生になった少し怖がり屋の僕は、ひょんなことからミステリー研究会に入る。同時に家庭教師のアルバイトを始めるが、その教え子は大のミステリー好きだった。

僕、こと主人公の伊藤双葉は怖がりやで、人が死ぬミステリーが大の苦手。対して、公園で双葉をスカウトした中学生、隼人は、大のミステリー好き。そんな2人が行く先々で起こる小さな謎を解決していきます。
これが、本当に些細なこと・・・。万引きした本を売る古本屋に、違法建築のビル、痴漢、新興宗教の勧誘、インターネットでの盗品の売買。犯罪は犯罪なのですが、インパクト不足。って書くと不謹慎かなあ。ただ、謎っていうよりも、2人の関係性が重点的に書かれているような印象を受けました。
事件の終わりには、ミステリーの先生である隼人君から双葉に宿題として、一冊、本が渡されます。この本が、事件のもと、つまり各短編はこの一冊へのオマージュなのかなと思ったり。残念ながら、海外の作品は読んでいないのでわかんないのですが・・・。あ、「六の宮の姫君」(北村薫)も読んでないか・・・。私も、良くミステリーを読み始めたのは大学生の時、友人に倉知さんを薦められてからなんです。「ミステリーって、こんなにおもしろいんだ!」って目からウロコが落ちました。ほんっと、ポロリと。だから、双葉がこれを機にミステリーにはまるといいな、なんて思いながら読んでいました。
それにしても、双葉の記憶能力はうらやましい限りです。いいなあ・・・。絶対音感と同じくらいいいなあ・・・。そんな才能をうまく活用してあげている隼人君とは、実はいいコンビなのかもしれません。大学生活に、華がないのはちょっと空しいけどねえ。だって、夏に男2人でプールとか!正直、ちょっと引いた・・・。
続編が出そうで、出ない方がいいかなあと思っています。最後に、どうでもいい話題なんですが、坂木さんって女性だよ!って確信したあとがき。


「鼓笛隊の襲来」

三崎亜記/光文社

戦後最大規模の鼓笛隊が襲い来る夜を、義母とすごすことになった園子の一家。避難もせず、防音スタジオも持たないが、果たして無事にのりきることができるのか。眩いほどに不安定で鮮やかな世界をみせつける全9編。

三崎さんの少し不思議な世界観にも耐性がついてきて、「世にも奇妙な物語でやったらおもしろそうだなあ」などと考える余裕がありました。
本書の短編はどれも好きなので、全部感想を書いてみようと思います。
「鼓笛隊の襲来」。鼓笛隊は、自然災害のようなもので、我々人間が太刀打ちできる相手ではないのです。しかし、この「敵対する」という姿勢自体が鼓笛隊と人間との関係を歪めているのであり、人間と鼓笛隊は共存できる関係を築くことができるのだ。ありのままを受け入れる、そんな懐の深い人間になりたいものです。
「彼女の傷跡展」。確かにいたはずの、私の恋人。しかし、私に残っているのは、恋人を失ったという喪失感だけで、恋人に関する記憶は全くない。そんな折、ふと立ち寄ったギャラリーで彼女は自分に関するものが展示されいていることに気付く。記憶の不確かさ、人は90パーセント(だったかな?)の出来事を忘れてしまう、という話とも取れるのですが、彼女もまた、誰かから忘れ去られた恋人であるという話にも取れるよなあと思った。忘れたり、忘れられたり。
「覆面社員」。労働者の権利として覆面を身につけることが認められた。同僚の女性が覆面デビューを果たすが、彼女は事態が好転しても、一向に覆面を外そうとしない・・・。最後のシメは少しいただけない!しかし、覆面を被って出社という光景がなんともシュールです。笑。実際問題、覆面を被ったくらいで人間の本質は変わりません。そんなもんで変わってたまるか。
「象さんすべり台のある街」。開発がストップした住宅地に象さんすべり台がやってきた。しかも、プラスチック製のすべり台ではなく、今時めずらしい「本物」の象さんすべり台である。象さんは最後をどこで迎えたのだろうか。せつない気持ちになった。
「突起型選択装置」。彼女の背中には、直径1センチほどの小さなボタンが付いていた。僕は、小さいころ体にボタンを持つ女性に会ったことを思い出していた。・・・押したらどうなるの!?笑。いや、笑うところではないのですが!
「『欠陥』住宅」。旧友に連絡が取れなくなった。妻は「姿を見ることは出来るが、会うことは出来ないだろう」と言う。私は、彼の家をたずねることにした。うーん、一番意味を掴みかねた作品。世界の秩序・・・。難しかった・・・。
「遠距離・恋愛」。私は恋人と特殊な遠距離恋愛の状態にある。なぜなら、恋人の住む「浮遊特区」飛代市は、普段は滞空状態にあり、数ヶ月に一度しか降下してこないからだ。最近小さな失恋をしたばかりで、そんな時ほどハッピーエンドな物語は胸に染み入るのです。最近、友人のおめでたい報告を聞いた時にも、とても幸せで満ち足りた気持ちになりました。人の幸せを素直に喜べる自分であることに、安心しました。きっと、また走り出せる。
「校庭」。娘の保護者参観日のため、久しぶりに母校を訪れた。そこで、私は校庭の真ん中に見慣れない家が建っていることを発見する。なぜにそんなシステムがあるのか?と思ってしまいました。私は確かにここにいるのに、誰にも気づいてもらえないのは、何よりも怖い。
「同じ夜空を見上げて」。5年前の2月3日、私の恋人が乗った列車が乗客・乗員とともに忽然と姿を消した。今年もまた、私は消滅が起こった場所へと向かう。「もういいよ」って言ってるような気がする、っていうのは、本当に自分の中での気持ちの問題であって、もうとっくの昔に彼はすべてを許して遠いところへ行ってしまったのかもしれない。あるいは、近くで「まだ忘れないで!」と言っているのかもしれない。後者の可能性の方が高いな、なんて思っている私は未練がましいのでしょう。
久しぶりの長文でした。世界観の設定をぜひ紹介したかったので・・・。一つでも気になる世界があったなら、ご一読をオススメします~。


「Gosicks」

桜庭一樹/富士見書房

西欧の小国ソヴュール、聖マルグリット学園に東洋からの留学生がやってきた。学園になじめず孤独な一弥はあらぬ殺人容疑をかけられる。そんな彼を救ったのは、図書館塔に引きこもる謎の少女・ヴィクトリカだった。

迷った末に、短編集を読むことにしました。ついつい「ゴシックス」と複数形で読んでしまう私ですが、「ゴシックエス」と読むらしいです。エスはショートの略?
今となっては懐かしい「ドラゴンカップ」エントリー作品が収録されております。あのシメは、雰囲気が良くて、富士見ミステリーにしておくのはもったいないな!(失礼)と思ったものです。という短編「春やってくる旅人が学園に死をもたらす」から、長編1巻までをつなぐ学園での出来事が収録されています。章のタイトルは、みんな学園の噂話なのですね!
他に、印象に残ったのがー、「廃倉庫にはミリィ・マールの幽霊がいる」。騎士のミイラってところが、もう、中世だよね!(謎)って感じで。そして、大泥棒2代目クィアランの正体に驚いた!って思ってたら、次の「図書館のいちばん上には金色の妖精が棲んでいる」で、さらにさらにどんでん返しが待っているのですよ~。古典的手法なのですが、これがおもしろーい。そして、一弥のお兄さんとヴィクトリカの知恵比べの続きも気になるなあ。
書き下ろしは、一弥と出会う前のヴィクトリカを描いた作品。ヴィクトリカの孤独を垣間見ることができます。それとともに、一弥が留学したばかりのときのかわいらしい一面も!母性本能をくすぐるというか・・・。
期待のあとがきは、「狛犬劇場(完全版)」が収録されており、とっても楽しかったです。身内にそんなおもしろおかしい人がいたら、楽しいだろうなあ~。さてさて、次は長編に取り組もうかな!おそらく、最終巻ではなかったはず。最近このシリーズの新刊を見かけないのですが・・・。桜庭さんが売れっ子になって、ラノベまで手がまわらないのかな・・・。