忍者ブログ
読書の記録です。

「イナイ×イナイ」

森博嗣/講談社

「私の兄を捜していただきたいのです」美術品鑑定を生業とする椙田事務所を訪れた佐竹千鶴はこう切り出した。都心の一等地に佇立する広大な屋敷、美しき双子、数十年来、地下牢に閉じ込められているという行方不明の兄・鎮夫。旧家で渦巻く凄惨な事件の香り…。

エーックス!・・・どんだけシリーズ作ったら気が済むんだろう。
Gシリーズは新刊の“目薬α~”が出てましたなー。
主な登場人物は、事務所の所長、椙田。助手の小川と、大学生アルバイトの真鍋。この椙田という苗字をどこかで見かけたような気が・・・。Vシリーズで探偵で美術な人と言えば・・・、あの人だよね~?と。それぞれのシリーズの時間軸が良くわかってないからなあ。萌絵さん、いつのまにやら大学の講師になってるし。Vシリーズは好きな人が多いの!れんちゃんとか、しこさんとか、紅子さんも出してくださーい!根来さんは・・・生きているだろうか・・・?(失礼)
事件自体は、旧家がすごく好みだったのですが・・・。あの、横溝正史っぽい空気が出ていませんでしたなあ。残念。森さん、粘着か淡白かって言ったら、絶対淡白そうだもんなあ・・・。あと、トリック(というのか?)が、好みじゃなかったんだよーう。失礼な推測をすれば、もう、おもしろいミステリのネタが尽きているのかと・・・。そろそと、ミステリの枠を超えてきたのかもしれません。
色々ぐちぐち書いておりますが、私は萌絵さんのその後が知れれば、他のことには目をつぶれるので、あのー、全体がちゃんと完結すれば、文句はありませんので・・・。


PR

「桐畑家の縁談」

中島京子/マガジンハウス

「結婚することにした」妹・佳子の告白により、にわかに落ち着きをなくす姉・露子。寡黙な父、饒舌な母、そして素っ頓狂な大伯父をも巻き込んだ桐畑姉妹の悩ましくもうるわしき20代の日々。

兄妹の結婚というものは、きっとおもしろいんだろうな~と思いつつ、なかなかその機会が訪れません!笑。ああ、笑うところではないか・・・。とにかく、新しい家族を迎える一大イベント。ところが、桐畑さん家の佳子さんは、さばっとしているというか、あっさりと結婚を決めたんだな、これが。佳子さんは、本当におもろい。思考がおもしろい人って憧れで、自分はとてもとても近づけないの。お姉さんの露子さんは、そんな妹と比べると一般的な考え方で、これぞ日本人という感じはします。独身だけど、研修医の彼がいて、そのまま結婚すればゆくゆくは安泰じゃないのかな~と思うのだけれど、彼女にはそんな気は無い。結婚願望がないのだ。佳子の婚約相手は、中国人のなんとか君。(名前忘れた)本を読んでいても、彼のどこに惹かれたのかよくわからないのだ。笑。んー、その率直なところがいいのかなあ?
突然結婚を告白されて、両親も姉も「まさかこの子が!」ってびっくりして、わたわたしてる内に準備も進んで結婚式当日を迎えます。ああ、でも、てんやわんやで終わっちまうもんなんでしょうね。露子は、彼との結婚は考えられない。たぶんないだろうと思っているのだけれど、話を聞いたことのある既婚者は、大体今のご主人と気がついたら結婚していたそうなので、露子も気がついたら結婚してそうだよなー、と思った。
うちの兄妹も、まったく似ていないのだけれど、桐畑姉妹のように似ているパーツがあるのかねえ・・・。


「八日目の蝉」

角田光代/中央公論新社

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるのだろうか。理性をゆるがす愛があり、罪にもそそぐ光があった。角田光代が全力で挑む長篇サスペンス。

浮気をしていた父親は、とてもひどい男で、一瞬希和子に同情してしまうような構図を見せています。しかし、冷静になれ。どんな人間であろうとも、子供にとってたった一人の父であり母であるのだ。彼女がどんなに辛い思いをしたからといって、子供を本当の親と引き離す権利などない。誘拐は犯罪。と正論を並べて、希和子に肩入れしないように頑張った。そうしないと、彼女の味方をしてしまうくらいに、彼女は母親らしい母親だったのだ。実際、戸籍がないまま成長したら、今後えらいことになるので、早く捕まってよかったんだろうけど・・・。読んでいるときは、できれば、逃げ切って欲しかったような気がしていました。うーん、それくらい幸せそうだったんだよね。やっぱり肩入れしてるわ・・・。
第2章では誘拐された子供、恵理菜のその後が語られています。事件は、彼女と家族のその後の人生を、大きくゆがめてしまったのだなあ、と改めて思わされるエピソードでした。もしかしたら、事件が無かったとしても結果は同じだったかもしれない。それでも、許されることではないのだよなあ。再会した千草が、恵理菜を一生懸命支える姿がとても好きだった。私は、恵理菜のうつむき加減なところが好きになれなかったのだが、千草と交流を深める内に、だんだんと前向きになっていく彼女を感じることができて良かった。
最後に思ったんだけど、希和子って、自分のしでかしたことに対してあんまり罪悪感を持ってないような気がするんだよね・・・。いや、これは私が鈍いのかもしれませんが・・・。物語全体にわたって、女性が主役。母性についてちょっと考えさせられました。


「無銭優雅」

山田詠美/幻冬舎

人生の後半に始めたオトコイ(大人の恋)に勤しむ、42歳の慈雨と栄。2人は今、死という代物に、世界で一番身勝手な価値を与えている。私は死を思いながら、死ぬまで生きて行く。今わの際に、御馳走さま、とひと言、呟くために。

大分前に、同じく山田さんの著書“風味絶佳”の感想の中で、年を取ればとるほど自分たちの世界で完結する恋愛はできない、的なことを書いたことを思い出した。
慈雨と栄の恋愛は、まさしくその真逆をいくもので、2人の世界だけで完結している。完結させようとしている、と言った方が正しいのかもしれない。死と結びつけて、恋をドラマチックに見せようとしてみたり、いい年して何をやってるんだか・・・という気分になる。私のイメージでは、40代っていったら、もう色々なことを経験して、自分の考えがしっかりと確立されていて責任も持てる自立した大人で・・・。アラフォーっていう言葉が流行って、40代間近の女性たちが今もっとも輝いている、という動きもあった昨今ですが、何だか別の意味で40代に対するイメージが覆されました。ううむ。何が大人の恋だ。全然子供じゃない。
そんな気持ち悪さを抱えていました。けれど、後半は、お互いの背負ったものを見せ合う時がきて、一歩前進したかな?という印象を受けた。妙齢の石川さんが、人生を楽しむ様は見ていて微笑ましいのだけれど・・・。


「若いものは美しい、しかし老いた者は若い者よりもっと美しい」


「いのちのパレード」

恩田陸/実業之日本社

人気作家恩田陸が今なお影響を受け続ける名シリーズ“異色作家短篇集”へのオマージュ。
イマジネーション豊かで摩訶不思議な作品集。

恩田さんの短編集といえば、ミステリーやらSFやらホラーやら、とにかくごった煮という印象が強かった。最初の短編「観光旅行」を読み終えたあと、「不思議系だなあ・・・。」とぼんやり思ったけれど、前述した思い込みもあり、他の作品はまた違う雰囲気だろうと確信を持ってページをめくったところ、次の短編「スペインの苔」もまた「不思議系だなあ・・・。」。その後も「もやっと系・・・。」「不思議系・・・。」みたいな印象が交互に訪れる感じでした。あとがきを読んで始めて知ったのですが、これは「異色作家」へのオマージュ、とのこと。異色作家の作品を味わったことはないのですが・・・。たぶん、ついていけないだろうな。断言。
いいなあ、と思ったものをいくつか。
「夕飯は七時」これはショートアニメにすると、すっごくおもしろそう!無声がいいなあ。セリフは字幕で入れたりして・・・。と妄想が膨らみます。子供たちほどじゃないけどね。
「隙間」これは、最後のぞくぞく感がたまりません。詳細はよくわからない。だけど、匂わせてくれるだけで十分。彼女の笑顔だけで十分。
「かたつむり注意報」ギャグ?と思ったのもつかの間、もしかしたら怖いオチなのかなあとドキドキしていました。でも、実は美しいお話でした。かたつむりって、ぬめぬめとしたイメージですが、かたつむりの殻が朝陽に照らされて透けている場面を想像すると、神々しいなあと感じました。
「あなたの善良なる教え子より」テロリストを屠る、その殺しのスキルに感心した!
「SUGOROKU」あがりに待っているものは何なのか・・・。あれこれ考えてしまいました。どの短編にも言えるのだけれど、舞台設定の細かな解説がないことが、想像力をかきたてる役割を果たしている好例だと思う。
「いのちのパレード」食物連鎖の輪からはずれた、我々人間をあらわしているようなお話。彼らが去ってしまった砂だけが残る大地で、人間は新たな輪を作るのか、それとも朽ち果ててゆくのか。
とにかく、恩田さんの頭の中はすごいことになっているのだ。そうに違いないのだ。