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読書の記録です。

「女王様と私」

歌野晶午/角川書店

真藤数馬は冴えないオタク。ある日可愛い妹との楽しいデートの最中に、数馬は「女王様」と出逢ってしまう。

これは、あれだな、妄想系だな!
と思っていたら、本当に妄想でした。人形が喋ったりー。ワープしてみたりー。大体、ピンチを3回まで脱出できるってもうそれだけで都合良すぎじゃん。何が制限のある妄想だよ!
あの妹の喋りが馬鹿っぽくて我慢ならんかった。女子高生のメールみたいな感じ。
最後に意外なオチがあるにはあるんですが、辿り着いた時にはもう疲れきっていて、「はいはい、ああそうですか。」くらいの気分でした。
最近増加している引きこもりの犯罪をモチーフにした作品。「親が死んだら働きます~」なんて言う姿をテレビでみると、何とも言えない気分になったことを覚えています。他人からの評価が怖いのはあなただけではない。みんな人間関係に悩んでいる。自分の中で消化していかなければならない感情というものがきっとある。それをめんどくさいの一言で括って捨ててしまってはいけないと思います。
社会って、理不尽な事の方が断然多い。でも、そんなに捨てたもんじゃないよ、といつか彼らが感じる日は来るのだろうか。


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「交響詩篇エウレカセブン 2」

杉原智則/角川書店 原作:BONES

ニルヴァーシュの操縦をめぐりエウレカとの間に心の壁を作ってしまったレントン。その孤独につけ込むかのように、アネモネが現れる。一方自らの心を閉ざし始めたエウレカは、コーラリアンの中へ吸い込まれていく。

う、うまい・・・。話自体は全然別物となってきたのにも関わらず、ポイントはしっかりおさえてあるのね。レントンとエウレカの仲違い。アネモネとエウレカ、もしくはジ・エンドとタイプ・ゼロの対比。そしてホランドの葛藤。ホランドと言えば、腕が!これはびっくりした。生えるとは考えられないし、このままなのかな。色々と動きが制限されてきそうです。
アニメは、視覚にイメージをダイレクトに伝えることができるけれど、小説はいかに読者の想像力を掻きたてられるかが勝負どころだと思います。そういう意味では、エウレカセブンの世界観を損なわずに、これだけのイメージを伝えてくるとはなかなかのもの。
途中、アメリカの自爆テロを彷彿とさせる展開はいまいち。これだけ時間がたっても、ある程度の不快感を感じたりするのは、思いのほか、この事件が私に大きく影響しているということでしょうか。
早くも、エウレカはレントンにメロメロになりつつあります。ま、あと2巻で終わらないといけないしねー・・・。


「きみは、確かに他の人とは違うよ」
「だって、いつでも、おれにとっては特別なんだから」


「またまたへんないきもの」

早川いくを/バジリコ

目から血を噴くトカゲ、凍結するカエル、ゾンビ化するカタツムリ…。あの「へんないきもの」がさらなる進化を遂げ、お茶の間を急襲する。

夢を見ました。
湯船の中に体が透明で長細く平べったい、目だけが黒く浮き上がっている生物がみっしり漂っていて、それを洗面器でひたすらすくって捨てている夢です。きっと、この本を夜寝る前に読んだからだ!ということにしておきました。
私と同じく自称繊細な神経の持ち主の方々は、夜寝る前に読むのは控えましょう。
と書くと、「キモチワルイ絵があるのかしら・・・。」と思われるかもしれませんが、それほど気持ち悪いものはありません。むしろ微笑ましい絵もあるくらいです。ただ、巻末カラーはちょっと・・・かも。あと、ネットで検索すると、実物は意外とパンチが強かったりするので気をつけましょう。
私は、これがシリーズ初読なのですが楽しめました。きちんと生物の解説がつきつつ、ナイスなあおり文句に、センスの光る文章。そして精密な絵。さらにさらに、なんとあの藤田先生との対談が収録されています。寄生虫博物館行きたかったんだけど、友達全員に拒否されて行けんかったんよ・・・。サナダムシと聞くと、小学校の時の先生が、自ら割り箸で巻き取ったけど最後にひっかかって切れて逃げられたという話を思い出します。リアルな話で申し訳ない・・・。
やはりウミウシは奇怪な姿をしているものが多いですねー。この前溶けるウミウシとか見ました。すごかった。
乗っ取るとか、オスがメスになるとか、ああいう発想がすごいですよね。独創性があってうらやましい。(発想という言葉が適切なのかは謎。)


「となり町戦争」

三崎亜記/集英社

ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を任ぜられた。戦時下の実感を持てないまま、それでも戦争は着実に進んでいく。

私のイメージとは少し違う作品でしたー。もっと情報戦とか、くだらない小競り合いみたいなものを想像していたので。本当に戦争するとは・・・。そのまんまでおもしろくないじゃないか・・・。
しかも、何故戦争という手段をとったのかが非常に謎。うーん、この世界観がどうにも気持ち悪くて私は駄目だったなあ。その世界観を基本的に受け入れている登場人物たちも、もう理解できない人たちで全然駄目でした。
戦争がリアルに感じられず、苦悩する主人公。直接的な死体や戦闘の描写は無かったので、読者も戦争をリアルに感じることが無いと思います。戦争を理解していないものが反対の声を上げることなどできない。と主人公は感じるようなんですが、戦争に反対するのに、どうして理由がいるのか。こちらが聞きたい。
おそらく、未来の日本人はもっと賢明であると信じています。


「KAIKETSU!赤頭巾侍」

鯨統一郎/徳間書店

正義の味方・赤頭巾侍。悪漢を切り捨てた後に苦しまぎれの“こじつけ”推理が炸裂!!早トチリの剣豪の活躍を描く、異色の時代ミステリー。

短編なのですが、パターンが毎回同じ。
“風が吹けば桶屋が儲かる”(井上夢人)も同パターンを繰り返す短編集でしたが、非常におもしろかった。しかし、これはいまいちでした・・・。
悪人が人を殺したと予想できるシーン→事件が一太郎の耳に入る→勘太に犯人を聞く→一太郎、悪人を斬る→翌日、自身番へ行く→小田から悪人は下手人ではないと聞く→勘太逃げる→一太郎、推理を披露する→筆学所での講義
話の流れはこんな感じです。勘太の言う犯人を即斬りに行く。しかも毎回。実際犯人だったから良かったものの、関係ない人だったらどうするの。かなり危険人物。こじつけ推理が売りなのでしょうが、それも霞むほどのマイナスイメージ。ついでに言うと、ゲイ要素も微妙にマイナス・・・。
それにしても、犯人を一太郎に教えてあげた勘太こそが真の名探偵ではないかと思うのですが、いかがでしょう。