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読書の記録です。

「さよならの次にくる<卒業式編>」

似鳥鶏/東京創元社

「東雅彦は嘘つきで女たらしです」愛心学園吹奏楽部の部室に貼られた怪文書。部員たちが中傷の犯人は誰だと騒ぐ中、オーボエ首席奏者の渡会千尋が「私がやりました」と名乗り出た。初恋の人の無実を証明すべく、葉山君が懸命に犯人捜しに取り組む「中村コンプレックス」など、〈卒業式編〉は四編を収録。

似鳥さんの本、結構積んであるんですよ・・・。
タイトルの付け方が上手いから、おもしろそうだし、文庫だからつい買っちゃうんだよね・・・。
「理由あって冬に出る」を読んだのはずいぶん前。にも関わらず、すぐに続編に手が伸びなかったのは、「理由あって~」のインパクトがあまりにも小さかったためだと思います。
今のところ前編ですが、どうも、こちらも煩雑な印象を受けます。
「あの日の蜘蛛男」果たして小学生がそんなアクロバティックなことをするものだろうか、とは思った。ところで柳瀬さんは、葉山くんのことが好きなの?
「中村コンプレックス」罪つくりなイケメン、東さんを中傷するビラを貼りだしたのは誰?葉山くんは、初恋の人を救うことができるのか?私の中でのミノの評価が少し上がりました。
「猫に与えるべからず」いつもと雰囲気が違う・・・。葉山くんぽくないと思っていたら、語り手は、やはり葉山くんではなかった。猫がかわいそう・・・。エサをあげるなら、魚とかカリカリにしようぜ・・・。
「卒業したらもういない」伊神さん、卒業。葉山くんが、伊神さんを探してウロウロする話。私なんかは、「そんな必死にならんでも、縁があればまた会うだろうし、会わなければそれまでのこと」と思ってしまうタイプなので、葉山くんの必死さがよくわからなかった。「中村コンプレックス」でも窓の鍵が~というオチでした。なんじゃそりゃ。似たようなオチなら、密室の演出なんかなくても、話は成立しただろうに。
ちなみに、伊神さんが実は女性っていう説もあるようでびっくりです。表紙って柳瀬さんでしょ?違うの?と戸惑った私。しかし、皆の衆思い出そう。渡会さんは「伊神さんって彼女いるの?」と聞いていたはず。彼女っていえば、相手は男でしょう!変則で、渡会さんがレズビアンで・・・という説もなきにしもあらずですが、その場合葉山くんの衝撃はあんなもんではないはずです。というわけで、伊神さんの性別は男です。これで実は女でしたとか言われたら・・・、わたしゃ・・・暴れるよ!笑。
断章については何も語られず。後編への伏線のようです。
後編での巻き返しを期待しています!


「もてるやつらはもてすぎだあ。不公平だ」

「そうだあ」

「畜生」

「畜生」


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「そして誰もいなくなった」

アガサ・クリスティ/早川書房

さまざまな職業、年齢、経歴の十人がU・N・オーエンと名乗る富豪からインディアン島に招待された。しかし、肝心の招待主は姿を見せず、客たちが立派な食卓についたとき、どこからともなく客たちの過去の犯罪を告発してゆく声が響いてきた。そして童謡のとおりに、一人また一人と…ミステリの女王の最高傑作。

題名だけなら、誰でも聞いたことがあるだろう数々のミステリーの名作たち。
ミステリー好きの私も、もちろん大体のものは読んでいます・・・と言いたいところですが、実は全く読んだことがありません。日本の古典ミステリーは何冊か読みましたが、読んでる方に比べたら全然・・・。翻訳ものに到っては、そもそも訳された文が苦手で全く手をつけずにここまで来ました。最近になって、やっと翻訳ものを楽しめるかなという予感がしてきたので、翻訳ミステリーに本格的に挑戦することにしました。
そこで、選書の参考に・・・と買ってきたのが、「東西ミステリーベスト100(文芸春秋)」。私の大好きな「獄門島(横溝正史)」が1位だったから、好みが合いそうってことで。国内編ランキングの作品も気になるところですが、まずは海外編から、途中で飽きる可能性も考えて、1位から攻めていきます(それは、攻めなのか守りなのか・・・)。
前置きが長くなりましたが、1位がこの「そして誰もいなくなった」です。
色々な作品で、モチーフに使われたり引用されたりしているので、本を読んだことがなくても「孤島に集められた男女10人が、インディアンの歌の通りに殺されていく。最後は全員死ぬ。」のようなあらすじはなんとなく知っていました。実際そのまんまでした。笑。
この選ばれた10人は、過去になんらかの罪を犯しているけれど、確たる証拠がないため法で裁かれなかった人々。しかし、本人達は自分の犯した罪を自覚しているので、うろたえ、おびえ、追いつめられていきます。そういや、最初の被害者の兄ちゃんだけは陽気に酒をあおって死んだっけな・・・。
陸の孤島、見立て殺人、最後の犯人の告白・・・と、名探偵の謎解きはありませんが、ザ・ミステリー!という充実の内容でした。現代だったら、ネット環境から衛星携帯まで大体の通信設備が整っている時代で、このような話は成立しにくいかと思いますが、これは読了後に考えたことで、読んでいる間は全然気になりませんでした。むしろ気になったのは、真犯人は最後に自殺するんですけど、自殺の形跡は調べればわかるんじゃ・・・そしたら、自ずと犯人わかるんじゃないの?という点。
様々な趣向を凝らしたミステリーももちろんおもしろいですが、こういうシンプルなミステリーもわくわくしますね。嫌味のないさっぱりとした読後感でした。


「秋田禎信BOX1 魔術師オーフェンはぐれ旅」

秋田禎信/TOブックス

女神との死闘から1年後の物語“キエサルヒマの終端”、20年後の新大陸を舞台にした“約束の地で”、“魔王の娘の師匠”の3篇が収録。

これを読むために、魔術師オーフェンシリーズをまとめ読みした時期がありました。その後この本も読了。しかし、感想を書く気力が湧かず、内容を忘れました。そして、またブログに戻ってきたときに、感想を書くため再読。しかし、またブログから離れ、また少しして戻ってきました。・・・今度こそ、書こう・・・。
意外にもオーフェン関係の検索で、当ブログに辿り着かれる方がいらっしゃることに驚いています。続編も出ているし、まだまだオーフェン人気は健在ですね!続編はまだ積んである状態で、終結するまで読まないかもしれません。
そういえば、このBOX、気合いを入れて予約までして買ったのに、その何ヶ月かあとに本屋に余ったのが積んであるのを見たときは、悲しかった・・・。しかもしばらく売れ残ってた。さらに、一般に本として出版されちゃうし。あの衝撃をなんと表現すればいいのか。限定ちゃうんか!
・・・クールダウン。
「キエサルヒマの終端」クリーオウが主人公です。オーフェンと別れた彼女は、当然、オーフェンを追いかけます。これぞクリーオウ!コルゴンが連れなので、どうしてもシリアス向きですが、この前進しようというパワーが彼女の魅力。一方、魔王として四面楚歌状態のオーフェンは、キエサルヒマ大陸を去り、新大陸への移住計画を進めていた。世界図塔を起動させたりなんやかんやしている時に、魔王スウェーデンボリーの力がオーフェンに移っていたということ?らしいです。最後は、オーフェンの船にクリーオウが追いついて、めでたし。クリーオウがたくましくなって、本当に良かった!ショートカットもお似合いです。
「約束の地で」あれから月日は流れ、20年後。キエサルヒマ大陸<牙の塔>から、マヨールとベイジット(レティシャとフォルテの長男・長女)が新大陸の<スウェーデンボリー魔術学校>を見学に訪れる。<スウェーデンボリー魔術学校>の校長・オーフェン・フィランディ(フィランディはクリーオウの姓)と彼の娘(上からラッツベイン・エッジ・ラチェット)たちの歓迎(?)を受けるが、新大陸は独自の発展を遂げていた・・・。オーフェンの世界がさらに広がったこの話。続編へのイントロかなと思い、マジメに読んだつもりなんですが・・・。もう最後のスウェーデンボリー登場のあたりは???でした。続編に手がのびないのは、この???が原因かなーと思います。なんだか、みんなエラくなりましたなあ。
「魔王の娘の師匠」これはマジクの話。マジクがいい感じでくたびれていて、和みます。(以下棒読み→)新大陸(住民にとっては“原大陸”)では、かつてキエサルヒマ大陸(住民にとっては“キエサルヒマ島”)で起こった女神との戦いのような戦闘が何度か起きているようです。神人と呼ばれる彼らには、普通の魔術は通用せず、魔王術でなければ倒せないようです。また、魔王術は誰にでも扱えるものではないようです。(←ここまで)ええと、敵が強くなったけど、オーフェンとマジクの魔王術で対抗できます、みたいなことが書いてあるのだろうか?と思った。マジクにはこのまま独身昼行灯を貫いて欲しいですね!確かにラッツベイン(殺鼠剤)ってひどい名前(笑)。
オーフェンに出会ってから1〇年、いつの間にか彼らの年齢を追い越していました。また追い抜いてもらえたと思ったのもつかの間、もうすぐマジクの年齢に追いつきそうです。これだから時の流れってヤツは・・・(遠い目)。


「きっと色んなことが変わっていく」

「わたしだけじゃなく、みんな」


 

「大きな音が聞こえるか」

坂木司/角川書店

八田泳、高校一年生。そこそこ裕福でいわゆる幸せな家庭の息子。唯一の趣味はサーフィン。凪のように平坦な生活に自分を持て余している。だがそんな矢先、泳は叔父がブラジル奥地へ行くと知らされた。さらにアマゾン川の逆流現象(ポロロッカ)で波に乗れるという情報を聞いて・・・。小さな一滴が大きな波紋を生んでいく、等身大の成長物語。

耳が聞こえないサーファーの話だと思ってたら、全然違う話でした。あらすじを何かで読んだはずなんだけど、覚え間違いしてたみたい・・・。
高校生が主人公のお話は、最近も読んでいます。
「桐島、部活辞めるってよ(朝井リョウ)」「オーダーメイド殺人クラブ(辻村深月)」。あの、狭い教室が全ての世界だったころ。痛々しくて苦しくて早くここを抜けだしたいと思っていた、あのころ。2冊とも、若者の閉塞感を描きながらも、最後にはきらりと光るものが見えた良作でした。
で、この本がどうだったかというと、主人公の泳くんに全く共感できないまま終わりました。500ページを超えるボリュームも、バイト~アマゾンというボリュームを考えると致し方ないのですが、長かった・・・。疲れた・・・。泳くんは、確かにつまらない日常に閉塞感を感じていたかもしれないけど、それは、つまんないよーつまんないよーって子供が駄々をこねているだけで(あ、子供か)、何かもっと心の暗部に踏み込むものが欲しかった。
泳くんがどう成長しようが、どうでも良かったんですが(ひどいけど、この人全てが上手くいきすぎでしょ。笑。)、まわりの大人たちが魅力的だったと思います。ヴィンチ号の乗り組み員とか。泳くんのお父さんが一番すごいと思うんだけどなあ。お父さんのすごさに気付いたときが、彼が大人になったときかもしれないですね。彼は海外と日本を比べて、日本をすごく小さく思ったかもしれないけど、それは文化の違いで、日常が違うだけ。どこがどこに劣っているというわけじゃないってことに気付いていたらいいんですけど。日常を普通に生きるということが、実は一番大変なんじゃないかと思う今日このごろです。
現地の女の子との、一夜限りの関係を美化しすぎているのはどうかと思う。神聖だ、素晴らしいと言ってみたところで、結局はただの遊び。・・・古いかな?いやいや、もし自分に子供がいたら、絶対にはりとばしてる。


「It’s natural.」

「So,adult is full of pleasure.」


「ケルベロスの肖像」

海堂尊/宝島社

「東城大学病院を破壊する」。送られてきた一通の脅迫状。田口&白鳥は病院を守ることができるのか。エーアイセンター設立の日、何かが起きる。メディカル・エンターテインメント・シリーズ、いよいよフィナーレへ。

最近海堂さんの作品はごぶさただったのですが、このシリーズだけは最後まで読んでおこうと思い、根性で読みきりました。私にとっては、根性を使わねばならないほど、退屈でした。
もともとは「チーム・バチスタの栄光」から始まったこのシリーズ。個性的な登場人物が次々登場し、物語はこのシリーズだけではとどまらず、スピンオフのラッシュでした。いちいち追いかけていたらキリが無いので、私が読んだのは「螺鈿迷宮」だけでしたが・・・。いいんですよ、スピンオフ。ファンの人は嬉しいだろうし。
しかし、シリーズ最後にきて、スピンオフを読んでいないとワケワカメみたいな展開にしちゃダメよ!私、かろうじて「螺鈿迷宮」は読んだことあったから知ってたけど、それ以外にも誰?っていう人いたし。いや、海堂ファンにとってスピンオフ制覇は当たり前?読んでないヤツは最終巻を読む価値もなし?とちょっと考えてしまった。
また、話の構成が、会議と(ちょっとカッコつけた)会話で終わっていたので、動きが少なかったですね。田口先生が戦車に乗ってもたいしておもしろくないし。最後の最後で派手にやらかしてましたが、これも「もったいない・・・」という感想で終わったという。笑。
一番意外だったのは、東城大学医学部付属病院の行末かな。
白鳥の出番をもうちょっと増やしてあげれば良かったのに。
一貫してAIでしたね。業界人以外には、結構どうでもいい問題です。どうしようもないし。「チーム・バチスタの栄光」が面白かったので、今度こそはと期待して読んできましたが、どうも最後まで振り回されてしまった感じです。最後が良ければチャラになったかもしれないけど・・・。