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読書の記録です。

「麒麟の翼」

東野圭吾/講談社

寒い夜、日本橋の欄干にもたれかかる男に声をかけた巡査が見たのは、胸に刺さったナイフだった。大都会の真ん中で発生した事件の真相に、加賀恭一郎が挑む。

先にテレビで映画版の方を見ていたにも関わらず、いつもの記憶違いにより、犯人が工場長になってたっていう・・・。全然違う・・・。自分のことながら、毎度びっくりするわー・・・。
加賀恭一郎in日本橋シリーズ。日本橋良く知らないし、登場人物たちの思い入れとかも、ふーんって感じでしたけど、日本の道路の出発点が日本橋っていうのは勉強になりました。
最初はダレ気味でしたが、水天宮と折り鶴のあたりから、物語が一気に加速して、最後はなんだかんだでいい話にまとめてしまうところは、さすが東野さんと思いました。先生が生徒をかばったのは、生徒を守るため、というのはただの言い訳で、本当は先生の保身と生徒に誤った教育を行っただけだったんだなあ。先生に怒る加賀さんが熱いぜ!
最後に、映画でも「それどうなん?」と思ったポイントがあるんです。それは、青柳武明氏が刺された直後、彼の鞄を持って逃走途中にトラックにはねられて死亡した冬樹さん・・・。結局、彼は犯人ではなく、魔が差して鞄をとっただけ、という結論になりました。結婚する予定だった彼女が、最後に「彼、馬鹿ですよね。なんであんなことしたんだろ。」というコメントを残しています。いや、馬鹿は馬鹿なんだけど。いくらお金が必要だったからって、ナイフで刺された人から鞄取って逃げます?そんな場面に居合わせたことはありませんが・・・人間やったら、救急車やろ!と思います。対処が早ければ、助かっていたかもしれないのに。人でなしの所業ですよ。普段どれだけいい人だったとしても、到底許されることではないと思うのですが・・・。何か、「お金欲しかったから、仕方ないよね☆」くらいの軽さで流されてるのが、腑に落ちない・・・。
妊娠といいお参りといい「新参者」と雰囲気が似ていたかな。このあと、日本橋でどんな事件が起こるのか?金森さんとは何か進展があるのか?何かありそうな、なさそうな・・・。どっちでもいいんだけど・・・。笑。


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「学生時代にやらなくてもいい20のこと」

朝井リョウ/文藝春秋

『桐島、部活やめるってよ』の著者の初エッセイ集。華々しい「大学生作家」の看板の陰で繰り広げられる、無為で阿呆な爆笑の日々!

早稲田大学在学中にデビュー!ダンスサークルに所属!何となくオシャレ!最年少直木賞受賞作家!
・・・と、思いつくのを挙げただけでも、華々しい感じがします。何となく、このプロフィールだけで作品を敬遠していたというか・・・。「これで本もおもしろいなんて、そんなわけがない。→おもしろくないに決まっている。→よって読む必要なし。」という意味不明な理由により、あの話題作「桐島、部活やめるってよ」を読まずに来ました。本当は超気になってるのに!意地っぱりな読まず嫌いです。笑。
このエッセイも、「満たされたおサレな学生生活のあれやこれやが書いてあるのだろうか・・・。」と迷ったんですが、拒否反応が出たら途中で読むのやめようと思って借りてきました。
で、この感想を書いているということは・・・。めちゃくちゃおもしろかったんです!
最初の話が、「お腹が弱い」から始まりますから。笑。プロフィールに「お腹が弱い」ってあったら、一気にイメージ変わりますよ。親しみがわくだろうなあ。
それでは、気に入った話を!まずは、カットモデルの話。「けっそん!」笑。ハゲのこと業界では欠損って言うんですね・・・。あとは、北海道への旅(未遂)も良かったです。OBON!全席指定の新幹線があるんですね。私、これは知らなかったです。いやあ、勉強になりました。続いて母の話。朝井母は、免許証を好きな大きさにカットしていたようで・・・。今までよくバレなかったもんだ・・・。バイト先のXデーもおもしろかった。「へえ、そうなんですかあ、知らなかったあ、の3つの奥義」にうけた。下手に悪口に乗れないときに、これは便利ですよね!
最後の方の就職活動の話は、辛い時期を思いだして、純粋に楽しめませんでしたが、学生時代のあれやこれやは自分もハメを外したり(小さく)、チャレンジしてみたりしたなあということを思い出して、楽しかったです。そして、これを読んで、朝井さんに対して私が勝手にかけていたフィルターが外れたような気がします。そんな朝井さんも今は社会人。これから作品の幅もどんどん広がってゆくでしょう。
まずは1冊、何か読んでみよう。


「最果てアーケード」

小川洋子/講談社

ここは、世界でいちばん小さなアーケード。愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語。

ある街の、小さなアーケード。主人公の女性は、そのアーケードの大家兼配達人。アーケードのお店は、どれもつつましやかに、ひっそりと佇んでいる。そこで起こった、少し哀しい物語。
いつも熱弁してしまうのですが(笑)、小川さんの物語は、冷静な視点で物事をとらえ、ひんやりとした文章で鋭く描写されています。でも、読み終えたあとは、温かい気持ちになっているのです。それは、物語に登場する登場人物たちの、不器用だけど誠実な姿勢や言葉によるところが大きいのかな、と思います。
今回は、商店街が舞台で色々なお店が登場します。どのお店も、他とは少し違う品揃え。古いレース専門、動物の義眼、勲章専門店、1種類だけのドーナツ屋さん、ドアノブ専門店、紙屋さんでは誰かが誰かにあてた絵葉書を売っている。遺髪でレースを編む職人さんもいた。
印象に残ったのは、「輪っか屋さん」の結婚詐欺師さん。だまされなくて良かったなあーと思ってから、実は輪っか屋さんは騙されていた方が幸せだったのかもしれない・・・と思った。「百科事典少女」では、アーケードの図書室(これはいい!)で、百科事典を読んでいた少女が印象的だった。百科事典がものすごく不思議な読み物に思えた。「紙店シスター」では、主人公の母親が入所中の療養所で働く雑用係さんのお話が悲しかった。お姉さんからの手紙を自作しているなんて・・・。しかも、主人公、約束忘れちゃうなんて・・・。「フォークダンス発表会」では、主人公の配達人としてのこだわりに驚かされた。というか、そのこだわりは異常ささえ感じた。
ただの短編集かと思っていたけど、1冊を通して、娘が父親との別離を受け入れる過程が描かれていたように感じました。
「私のことは、どうぞおかまいなく。」そうやってひっそりと生きていくのが理想だけど、現代社会ではそんな生き方は難しい。人はさまざまな局面で競ったり、他人を蹴落としたり、時には陥れることもある。その逆も然り。だからこそ、小川ワールドの住人たちにこんなにも憧れるのかなあと思います。
酒井駒子さんの絵が、小説の雰囲気にぴったり。


「さようなら」

「さようなら、お父さん」


 

「偉大なる、しゅららぼん」

万城目学/集英社

琵琶湖畔の街・石走に住み続ける日出家と棗家には、代々受け継がれてきた「力」があった。高校に入学した日出涼介、日出淡十郎、棗広海が偶然同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がった!

「ホルモー」に引き続き、何だか気になる音です、しゅららぼん。
しゅららぼんは、ある現象が起こるときの音であり、ある生物(?)の擬音語でもあるのですが、それは本を読んで確認していただいた方が良いでしょう。笑。
超能力の一族(琵琶湖から力を得ている民の血族)の話で、序盤は日出涼介が高校進学と同時に、日出家(お城)に居候するところから始まります。序盤は地味で・・・(「赤こんにゃく」には笑った)、中盤からの盛り上がりがすごいです。
同じ琵琶湖の民でも、日出家は人の心を操る能力、棗家は時間を操る能力を持っていて、両家は大昔から対立してきました。しかし、ここで第3の勢力が現れたのです!彼は両家の能力を併せ持った、無敵の力を持っていて、両家の有力者を次々に倒して(動きをとめて)行くのです。さて、両家は滋賀から出ていくしかないのか?敵を倒すことができるのか?と、なかなかに熱い展開でした。ラストもいい終わり方だったと思います。最後にあの人が出てくるとは、意外でしたが・・・。淡十郎がいい奴すぎる・・・!涼介はおもしろいんだけど、三枚目で終わってしまいましたね。いや、彼もいい奴なんだけど。パタ子さんの出番がぐっと減りましたが、パタ子さんは、まあ、大人側の事情ってことで仕方ないですかね。
日出家のごはんがうらやましすぎる!弁当にうな重って、何それ!
私はもちろんグレート清子様が好きでした。笑。憎まれ口ばっかりたたくけど、本当は、かわいい人なんですよ。ギャップ萌え~。


「ピエタ」

大島真寿美/ポプラ社

18世紀、水の都ヴェネツィア。『四季』の作曲家ヴィヴァルディは、孤児たちを養育するピエタ慈善院で“合奏・合唱の娘たち”を指導していた。ある日、教え子のエミーリアのもとに、恩師の訃報が届く。一枚の楽譜の謎に導かれ、物語の扉が開かれる・・・。

表紙から、勝手に双子の女の子の話だと思ってました。・・・全然違う話でした。孤児院で生まれ育った女性を主軸に、その時代を生きた女性たちの人生についての話・・・だと思います。
いまいち確信が持てないのは、話が全体的にぼんやりとしていたからなんですが・・・。ヴィヴァルディの楽譜をめぐるミステリなのか?エミーリアの過去について語られるのか?はたまた、クラウディアも一枚かんでくるのか?と色々ネタは小出しにされるのですが、中途半端にほったらかしになっていて、結局何が言いたかったのか・・・つかみどころがありませんでした。
主人公のエミーリアからしてがぼんやりとしていて、この人は本当に40代半ばの大人の女性なのかしら?と思うことしばしばでした。
どの女性も、色々な困難を背負っています。その中でも、ヴェロニカが一番好きだったかなー。経済的には困っていないけれど、満たされないものはたくさんあって、心を許せる人も数少ない。けれど、最後に姪っ子が彼女のために泣いてくれて、救われたのではないかと思います。アンナ・マリーアは途中から出番が少なくなっていって、少しかわいそうな気がします・・・。
本屋大賞3位らしいですねー。きっと多くの書店員さんが推されたのでしょう。
残念ながら、私はそこまでのれませんでした。つまらなかったわけではなく、話の焦点(というかメイン)が固定されていたら、すとんと落ちてきたかもしれません。


「よろこびはここにある」