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読書の記録です。

「MM9」

山本弘/東京創元社

地震、台風などと同じく自然災害の一種として“怪獣災害”が存在する現代。有数の怪獣大国である日本では気象庁内に設置された怪獣対策のスペシャリスト集団“特異生物対策部”略して“気特対”が、昼夜を問わず駆けまわっている。多種多様な怪獣たちの出現予測に、正体の特定、自衛隊と連携しての作戦行動。相次ぐ難局に立ち向かう気特対の活躍を描く本格SF+怪獣小説。

珍しくSFです。最近、SFも読みたいものがたくさんあるんです。世界観が魅力的ですよね!私が思うSFがファンタジーと違う点は、世界の法則が理系っぽく筋道立てられているというところです。「わかったような・・・、わからんような・・・あ、やっぱりわからん・・・」SF読んでるときの私って大体こんな感じ。笑。・・・深く考えずに読んでみよう!という気分になったので、ちょこちょこ手を出していきたいと思います。
エムエムナイン!という音の響きが戦隊モノみたいな題名ですが、この「MM」は「モンスター・マグニチュード」の略で、怪獣の規模を表しています。地震と同じように、怪獣も自然災害として発生する世界です。この怪獣災害への対策として気象庁内に設置された「特異生物対策部」のみなさんが主人公。
怪獣といえば、ゴジラ・モスラ・キングキドラ・バルタン星人・・・くらいしか思いつかない!けど、怪獣はたくさんこの世に生み出されているわけで・・・。色々なバリエーションの怪獣が出てきました。集団のエビやら、ヒト型、空飛ぶ放射線物質満載の怪獣に、最後はクトウリュウまで。古代の伝説も、実際に起こったことみたいに考えられてて、そうだったら大変だけどおもしろいなあと思いました。
怪獣と戦うといえば、特撮ヒーローみたいですけど、「気特対」は、あくまで平凡な公務員。怪獣をやっつけてやる!とか地球の平和を守る!というよりは、彼らにとって、これは仕事。それはドライということではなく、みなさん一生懸命お仕事されてます。頑張ってても、被害が大きければ非難され、予報が外れても非難され・・・そりゃあ胃も痛くなるわなー。大変だけど、仕事って、誰かの役に立ってるっていいな!という気持ちになりました。
あと、怪獣は、現実世界に存在するにはやはり物理法則的に無理があるようで、怪獣のまわりは時間の流れが遅いとか、神話宇宙フィールドで怪獣のまわりだけ法則が違うという・・・。あとは、世界がどうあったか決めるのは未来の人間で、未来の人間に認識されないものはなくなってしまう・・・そうです。この辺理解があやしいですが・・・。平和になったら、自分達のしてきたことはなかったことになってしまうかもしれない、それでも怪獣災害を防いでみせる!という意気込みがカッコ良かったです。
伊豆野はすごい黒幕なのかと思ったら、すんごい小物だった・・・。カサコソ逃げていくなんて、サマンサじゃないか!(またもやオーフェンネタ)
続編も出ているようなので、ぜひ読んでみたいと思います。


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「リカーシブル」

米澤穂信/新潮社

父が失踪し、母の故郷に引越してきた姉ハルカと弟サトル。弟は急に予知能力を発揮し始め、姉は「タマナヒメ」なる伝説上の女が、この町に実在することを知る。血の繋がらない姉と弟が、ほろ苦い家族の過去を乗り越えて地方都市のミステリーに迫る。

表紙が近未来的な感じで、SFのような話かな?と思っていたら、全く違いました。高速道路をイメージしてるのかな・・・。この表紙から、この話を予測できる人はいないでしょう。
物語は、ある親子が小さな町に引越してきたところから始まります。その町は、母の故郷であり、高速道路の誘致に再生をかける小さな町。友人のリンカとも知り合い、町の生活に慣れようとする姉・ハルカ。しかし、弟のサトルが未来を予言するかのような発言をするようになる。ハルカは、町に伝わる昔話に登場するタマナヒメと類似する点を見つけ、サトルに起こっている現象を解明しようとするが・・・。
高速道路の誘致の陰で行われていた様々な工作。巻き込まれた子供。閉鎖的な町の話になると、理解しがたい価値観が出てくるもんです。
ラストの急展開の夜を迎えるまでは、非常にまったりとした進行です。まったりしすぎてつまらなかった。笑。まったりした話の中にも、ちゃんと伏線はあったのですが・・・。何しろ、ハルカが普通にいい子なもんで、彼女の一人称ではインパクトが無かったせいかなと思います。
しかし、このハルカさん、父親が失踪しただけではなく、母親は義理だし、弟は連れ子で血のつながりはないしで、結構過酷な状況に置かれています。彼女がいい子なだけではなく、しっかりしていて、機転が利くのはこの複雑な状況から培われたものなのかしら。反対にサトルは泣き虫で・・・特にいいとこなしだった。
タマナヒメについて説明不足だった点が残念。先代のタマナヒメ(サクラ)が亡くなったのが5年前だとしたら、今のタマナヒメのリンカに霊魂(?)が乗り移ったのは4・5年前ってこと?なら、タマナヒメの霊魂が乗り移る前は、在原リンカという人間が自我を持って生きていたということになりますよね。小学2年生か3年生まで。肉体が滅びてもタマナヒメの魂は残り、また誰かに憑依する・・・。そうやって永遠に魂は残るのだから、肉体の死を恐れないというタマナヒメの理屈はわかったけど、憑依された女性の人生はどうなるんやと。そもそも、タマナヒメが憑依した時点で、もともとの人格がどうなるのかもよくわからないし・・・。あのリンカはタマナヒメなのか、リンカの部分も少しは残っているのか・・・などなど謎でした。最後は、「私も色々大変なのよ」の一言で済ませてしまったという。ねじふせられちゃった。
リンカや講(という町の互助会)の面々も結構ブラックでしたが、ブラック米澤さんが降臨したのは、離婚届けが送られてきてからの義母の本性でしょう!中学校卒業までは置いてあげるとか、親戚の家に行けとか、家に生活費を入れろとか・・・。態度が控えめでも、結局言いたいことはこういうことですからねー。離婚したら、そりゃ相手の子供は他人だけど・・・。それなら最初から優しくなんてしなければいいのに!いやー、腹黒いです。このシーンだけで結構満足な私。


「鍵のない夢を見る」

辻村深月/文藝春秋

望むことは、罪ですか?彼氏が欲しい、結婚したい、ママになりたい、普通に幸せになりたい。そんな願いが転落を呼び込む。ささやかな夢を叶える鍵を求めて5人の女は岐路に立たされる。

直木賞受賞作とは知りませんでした。遅ればせながら、受賞おめでとうございます!
「仁志野町の泥棒」自分の子供の友達の親が泥棒だったら、子供に「仲良くしないほうがいいよ」って注意しそうなものだけど。人間の頭は都合の悪いものを忘れるようにできてるので、彼女は本当に主人公のことを忘れてしまったのかもしれない。という本筋より、同世代の子が結婚したときの何ともいえない焦りを描写した一部分が、うまいです。笑。よくわかる。
「石蕗南町の放火」私もときどき「なんで変な人にしか好かれないのだろう」と思った時期がありますが、そういう自分が結構クセ者なんだよなあ、と気付いた。妥協は必要だけど、この人はイヤだなあ。小太りでも、公認会計士の方がいいに決まってる!笑。そういや、うちの兄ちゃん、家に帰ってきたとき、もらいもののペットフードのロゴ入りトレーナーとか着てたなあ・・・。デートの時は違うと信じたい。
「美弥谷団地の逃亡者」ザ・ダメ男。この話は感情移入できなかった。なんか、女の子もアホやし・・・。
「芹葉大学の夢と殺人」オールスイリに載ってた話。改めて読むと、雄大の存在はダメ男というより、ギャグとしか思えない。「医学部に入ったあとはサッカー選手」に始まり、彼のセリフは結構笑える。実際いたら、ウケ狙いならすべってるよ、と言いたくなるところだと思う。こんな極端な人間はいないだろうけど、自分だけがかわいい人って、現代には男女問わず結構いるんじゃないかな。
「君本家の誘拐」次の年のオールスイリに載ってた話、その2。その時は「ふーん、こんな人もいるのか」って感じでしたが、もう1回読んだあとでは、「意外とこういう人多いのかな」と思いました。自分の子供がかわいくない、関心が無いっていう人もいるだろうけど、一般的には、自分の子供は大事だしかわいいと思います。それでも、イライラすることもあれば、子供がいなければ・・・と考える瞬間があるものなのかなと。ちょっと肩の力を抜いて、子育てはいい加減がちょうどいいっていうのは、こういう人のためにある言葉なのかなと思いました。すいません、全部想像でコメント上滑り。最後は正気に戻ってくれてよかったです。しかし、良枝さんは自分のことばっかりなのね。そこに気付かないとまた同じことになりそう。ダンナさんは、普通にいい人ですよね。私、育児にうるさい夫はイヤなので、将来結婚するなら、これぐらいの距離感の人が理想だなー。


「はやく名探偵になりたい」

東川篤哉/光文社

烏賊川市のお騒がせメンバーが帰ってきた!
烏賊川市で探偵事務所をひらく鵜飼のもとには、不思議な依頼が舞い込んでくる。
大学生アルバイト、流平とともに、愚鈍なる思い込み…もとい華麗なる推理と、猪突猛進なずっこけプレー…いやいや、見事なチームワークで次々と難事件を解決!

ドラマ「私の嫌いな探偵」を見るまで、烏賊川市シリーズを知らなかった!「完全犯罪に猫は何匹必要か?」を10何年か前に読んだんですが、全く話のあらすじが思い出せない。笑。読む順番が違いますが、読むのに支障は無かったです。
私、ドラマで剛力さん演じる大家さんが好きなんで、小説ではどんな感じなのかな~?と楽しみにしてたんですが、鵜飼探偵と流平くんは出てきても、大家さんが出てこないっ!大家さんはドラマオリジナルの登場人物なのかな?残念だー。他の作品に登場してるのかもしれないけど。
「藤枝邸の完全なる密室」せっかくの密室が!と犯人に同情してしまいました。密室がさらに大きな密室でカバーされて、全く意味を成さなかった密室泣かせの事件。きれいにまとまっていて、この中で一番好きかな。
「時速四十キロの密室」浮気調査のはずが、追跡途中で調査対象が死んでしまった!むむむ、これは苦しい・・・。釣りのことは良くわかんないからなあ。トラックの荷台で血まみれになったら、トラウマになりそうなもんだけど、この鈍さ・・・もといハートの強さが流平くんの武器ですね!
「七つのビールケースの問題」これ、ドラマでやってたなー。そのおかげか、イメージが浮かんできやすかったです。酒屋の女の子の喋り方が、ラシィ(オーフェンの)とかぶってしまった・・・。
「雀の森の異常な夜」なるほど!逆やったんかーと感心。
「宝石泥棒と母の悲しみ」最後の「があがあ」と「わん」に和んだ。宝石を隠す場所としてはありがちな話だったけど、これは親子愛の話だから、いっか・・・。
鵜飼さんが頭の中で、玉木ボイスだった・・・。お笑いの部分を挟みつつも、結構ミステリとしてちゃんとしてるなあと思いました。鵜飼さんもちゃんと推理してるし。

最後に、なるべく刊行順に読むためにメモメモ。
密室の鍵貸します→密室に向かって撃て!→完全犯罪に猫は何匹必要か?→ここに死体を捨てないで下さい!→交換殺人には向かない夜→はやく名探偵になりたい→私の嫌いな探偵


「東京レイヴンズ6」

あざの耕平/富士見書房

北斗の正体は、夏目?実技合宿以来、疑念が拭いきれない春虎は、夏目に対しても今までのように接することができず、二人の仲はぎくしゃくしたものとなっていく。一方、『上巳の再祓』以降、その脅威が現実的なものとなった『D』は、陰陽庁に宣戦布告。事態を重く見た陰陽庁は『十二神将』を配置し迎撃を試みる。いち早く情報を察知した陰陽塾でも、警戒を強め、密かに準備を整える。

「Dクラ」は結局、シリーズの途中でリタイアとなりました。プロトタイプの雰囲気の方が気に入ってたもんで・・・。
そして、あざのさんの最新シリーズがこちら!陰陽師を目指す若者たちが主役です。ブログをさぼってるタイミングに読んでたので、感想は6巻からです。
ドラッグ→吸血鬼→陰陽師・・・と題材がバラエティに富んでます。それだけ引き出しが多い作家さんなのかなと思います。そろそろあざのさんも、ライトノベルの枠を超えた作品を出されるのでは?と予想しているのですが、どうかな・・・。
夏目が、(たぶん)初恋の相手の北斗かも・・・という疑惑を抱いた春虎。「なんでわかんないんだよ、ニブいにも程がある!」と1巻からみんなが思っていたことでしょう。とうとう、彼も勘付くときがやってきました。遅すぎ・・・。しかし、勘付いたら勘付いたで、変に意識して夏目とうまくしゃべれない。ややこしいヤツやなあ。まあ、これはほっといてもいいや。(←両思いには厳しい)
今回の見所は、なんといっても、後半の呪術バトル!学生が主人公なので、ドンパチばっかりやってるわけにもいかず・・・という感じだったのが、今回は「D」こと蘆屋道満と大友先生の一騎打ち!いやー、大友先生ただ者ではないと思っていたけど、何者なの?笑。やたらとカッコ良すぎでした。
蘆屋道満は、最後は何だかんだで引き分けるのかな?と思っていたら、最後はリムジンごと爆砕されてびっくりです!彼は黒幕ではなく、双角会が敵って感じになるのか?角行鬼ってどういうポジションなの?とこの裏の世界(?)の方は力関係が謎です。
あとは・・・、私、鈴鹿のキャラクターがどうにも苦手だったんだけど、今回で大きくイメージアップしました。あの口の悪さは好きになれませんが、実は友達思いで、頼りがいのある仲間で、寂しがりやの女の子なんだなーと思いました。ほんと、京子みたいにコツを掴んだら、あれほどいじりやすい子はいませんね。
幼女先輩・・・もとい、すず先輩が「鴉羽」を手に入れる(だろう)シーンで終わりです。この人も何者?少なくとも、ただの幼女好きではなさそう。笑。
ちなみに、今回の呪術バトルで、何かすごいことが起こっているんだけど、具体的に何がどうなっているのかよくわからん・・・という状態だったので、陰陽五行思想についてちょいとメモを残しておく。