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読書の記録です。

「シュークリーム・パニック<生チョコレート>」

倉知淳/講談社

高校2年生の夏休み。「僕」は仲間たちと映画制作を始めた。監督の「僕」は以前から気になっていた同級生、百合川京子を主役に抜擢し、撮影は快調。しかしその最終日、ラストシーンのロケ場所から、彼女の姿が消えた!?(「夏の終わりと僕らの影と」)

短編集が出たあと、もう5、6年新刊出ないんじゃないかと思ってましたが、意外に早く新刊が出て嬉しいです。こちらは、「メフィスト」に掲載された短編集をまとめたもの。「生チョコレート」と「Wクリーム」の2冊が出ています。とりあえず、順番通りに・・・。
「現金強奪作戦!(但し現地集合)」銀行強盗の完全犯罪!今回、主人公はオトリだったけど、上手くいったのを見たら自分でもやりたくなっちゃうよね~。でも、こういうのって2番煎じは失敗するようにできてるんだよな・・・。マジメに働いた方がいいよ。
「強運の男」きっと、最後は騙されて終わるんだろうなあと思っていたら、一番大事なものを取られてしまった!先に実験の主旨を説明してくれないと・・・。説明されて、賭けに乗る人はいないか。
「夏の終わりと僕らの影と」せいしゅん・・・。倉知さんはオチにLOVE注入の作品が多いよね!なんかもう、謎とかいらないじゃん。別にケーキじゃなくてもいいじゃん。(←ひがみ全開。)
そういえば・・・シュークリームの影も形も見当たらない・・・。
シリアス→シリアス→青春小説、とコメディ色の少ない作品でした。私的には、ちょっと物足りなかったかなー。


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「夜の国のクーパー」

伊坂幸太郎/東京創元社

この国は戦争に負けたのだそうだ。占領軍の先発隊がやってきて、町の人間はそわそわ、おどおどしている。はるか昔にも鉄国に負けたらしいけれど、戦争に負けるのがどういうことなのか、町の人間は経験がないからわからない。人間より寿命が短いのだから、猫の僕だって当然わからない・・・。これは猫と戦争と、そして何より、世界の理のおはなし。

長い上に、退屈でした。
この一言で終わるのも寂しいですね。・・・なので、ちょいと付け足し。
主人公は、仙台の公務員と、パラレルワールド?の猫。仙台の公務員は、海釣りに出かけてそのまま遭難。流れついたのが、とある国の海岸。目覚めたときには、男は蔓で拘束されていた。そこに話しかけてきたのが、猫。この猫はある国に暮らす猫なのだが、その国が戦争で鉄国に負け侵略の危機にさらされている。このままでは、自分達の生活が脅かされる。で、なんか光る石(?)が武器になるってんで、馬に乗ってここまできたらしい。
伊坂さんファンで、なんでもウェルカム!っていう人はそこそこ楽しめるかもしれません。しかし、初期の伊坂作品が好きな人には、もう、無理でしょう。笑。私は、伊坂さんの本の何が好きなのかなあ、と考えたときに、スカッとする痛快なところが好きなのかなあと思いました。しかし、最近の伊坂さんの本って、楽しむより考える?方向性のような気がします。それはすごくいいことなんですけど・・・。こう、もっとにじみ出てくるものが欲しいんですよね・・・。
伊坂さんの作品の中では、登場人物たちのちょっとお洒落なセリフの掛け合いが特徴的だと思うんですけど、これがだんだんスタイリッシュになりすぎて、ほんとにただの「台詞」になってるような印象を受けました。物語はフィクションなので、登場人物も話している内容だって全部作り物だってことは分かってます。分かってますが、まるで話している人間(あるいは猫や鼠)の表情が想像できない。能面みたいな顔が浮かんで、不気味さすら感じました。
ところでクーパーは、私もいないと思ってました。でも、途中でクーパーと戦うシーンが出てきて、「あら、やっぱり実在するんだわ」と思ったら、やっぱりいないっていうオチでした。あのシーンは夢か幻?
色々言いつつも、また読むんだろうなあと思います。それだけ前の作品はおもしろかったんだよ!残念なんだよー。


「雪蟷螂」

紅玉いづき/アスキー・メディアワークス

長きにわたって氷血戦争を続けていたフェルビエ族とミルデ族。その戦に終止符を打つため、ひとつの約束がなされた。それは、想い人を喰らう“雪蟷螂”とも言われるフェルビエ族の女族長アルテシアと、永遠生を信仰する敵族ミルデ族長オウガとの政略結婚だった。しかし、その約束の儀は、世代を超えて交錯する人々の想いにより阻まれる。果たして、山脈の地に平和は訪れるのか。そして、極寒の地に舞う恋の行方は・・・。

人喰い物語3部作、最後のお話です。
ちなみに題名は「ゆきかまきり」と読みます。私、どうしても「ゆきとうろう」って読んじゃう・・・。交尾したあとにメスのカマキリがオスを食べるってとこからきた呼び名?実は、あの食べられてるオスって、交尾後にメスから離れるのが遅いだけなんですって。ちゃんと逃げてるオスもいるらしいです。
これまでの2作では、人を食べる魔物が存在していましたが、今回は物理的に食べるという意味ではなく、比喩としての食べるです。食べる=愛、ってな感じ。主人公は、フェルビエ族の女族長アルテシア。彼女の暮らす山脈には、いくつかの部族が暮らしているが、その中でも大きな2つの部族(フェルビエ族とミルデ族)は長い間憎しみ合い、戦いを続けてきた。しかし、アルテシアの先代(彼女の父親)アテージオは、ミルデ族長のガルヤとある盟約を交わす。それは、互いの娘・息子を結婚させ、2つの部族の統合をはかるというものだった・・・。
読み始めから、バリバリのファンタジーで、「ついていけるかな?」と不安を感じましたが、すぐに世界観に入り込むことができました。さすが紅玉さん。読んでる間、頭の中がずーっと吹雪でした。
族長の遺体を損壊した犯人探し?とミステリ魂がうずく展開です。しかし、占い師に過去の映像を見せられてハイ終わりっていうネタばらしです。勝手に期待して、がっかりしてしまった!
裏の主人公である、アルテシアの伯母・ロージアの話が深かったなあ。激情型(笑)の恋愛話を読むと、感情移入が難しくてすごく戸惑うんですが、読後には男女の愛の真髄ってこういうドロドロしたところなのかなと思います。普通だったら色々計算が働くと思うんですけど、このような情熱的な方々は一度恋に落ちたら、敵だろうが妻子もちだろうが関係ないって突っ走る!迷惑な人だな・・・。最初は相手にされてなかったのかな?と思ったのですが、最後の方で、相思相愛だったんだなあとわかると、良かったんだか悪いんだか複雑な気分になりました。だから、略奪っていいことないんだよ・・・。
アルテシアとトーチカの間には、愛とか好きとかそういうものはないと思っていたけど、そんなことはなかった・・・。自分の気持ちを大事にしたラストは良かったと思います。最後までわからなかったのは、ルイの気持ち。オウガに惹かれてるのかな、と思っているのですが、それよりアルテシアへの忠誠心の方が何倍も強烈なイメージでした。まあ、一番ナゾなのがオウガなんだけど・・・。
チェックしてないうちに、紅玉さんの本がたくさん出ていた!おお、これは読まねば・・・。


「あなたを、喰べたい。」


「アンソロジー カレーライス!!」

/パルコ出版

きょうは、カレーだ。カレーだらけの33篇。

カレー大好き!という人はいても、カレー嫌い!という人はなかなかいないだろう・・・と思っているそこのあなた!カレー嫌いな人、います。うちの母親です。我々兄妹が子供のころは普通にカレーが食卓に並んでいて、みじんもそんな気配が感じられなかったのですが、我々が就職したりある程度大人になってから数年後、突然「私、カレー嫌いなんだよね」と突然の告白。「しばらくカレー作らないことに決めたから」有無を言わせない宣言。たまには食べたいんだけど・・・と思いつつ、私たち家族もカレーにそこまで執着心が無いため、あんまり気にしてません。作らないと言いつつ、たぶん1年に1回は作ってますし。家で最後にカレー食べたのっていつか思いだせないです。
他の家族は知りませんが、なんで私がそんなにカレーに執着心が無くなったかというと、以前の勤め先の社員食堂で食べたカレーが原因だと思います。めっちゃまずかったんです。この世に、まずいカレーが存在するということにびっくりしました。カレールウという素晴らしいものがある現代で、カレーって、まずくなりようがないじゃないですか!おそらく、食堂のおじさんがすごい料理下手か、ベジタリアンの多い職場だったため、ベジタリアン用のカレールウを使っているせいか・・・(たぶん、スパイスの量が少なくて動物性由来のものが入っていない。もちろん具はにんじん・じゃがいも・タマネギのみ)。1週間に1度、カレーの日が存在しまして、その日はカレーを食べなきゃ食べるもんがない!お弁当とか、パン買って行ったりとかしてたんですけどねー。カレーより最悪なコロッケ畑の日(おかずが、じゃがいも・かぼちゃ・クリームコロッケかしかない)もあるしで、仕方なく食べてたら、もう今週はカレーええわ・・・という気分になったせいかも。でも、たまに友人と食べるカレーはおいしいし、母親が渋々作るカレーもおいしく頂いています。私が今まで食べたカレーでまずかったのってコレだけなんで、ほんと、カレーが嫌いにならないで良かったなあと思っています。
・・・と、カレーについて書いてみました。
食べ物と人の記憶は結びついていて、「カレーライス(あるいはライスカレー)」というひとつの食べ物から、色々な話が派生して語られます。名前を聞いたことのある人から、存じ上げない方までたくさんのエッセイが詰め込まれています。印象に残った、カレーライスについての心得をいくつか。
①カレーは、少々味がおかしくてもなんとか食べれる!安いカレーも高いカレーも味は大して違わない。
②カレーはお上品に食べるもんではない!水をごくごく飲みながら、がつがつ食べるのがよろしい。
③本場のカレーは、めっちゃ辛い。
この前、インドの方が作るカレー屋さんに行ったら、レベル2で口の中が大変なことになったのを思いだしました。あとは、吉本ばななさんのエッセイが、嘘のような話でした。お気に入りのカレー屋の店主が事故で続けて亡くなるなんて・・・。本当なら怖いなあ・・・。藤原新也さんのお話に出てくる、タマネギのみじん切りを10時間くらい煮込むカレーは長野に行って食べてみたいと思うほどおいしそうです。
ところどころに挟まれるカレーの写真もおいしそうです。ほんと、カレーライスって日本食にしてもいいぐらいですよねえ。笑。


「食物は、なつかしさが第一、味は二の次」


「プラチナデータ」

東野圭吾/幻冬舎

犯罪防止を目的としたDNA法案が国会で可決し、検挙率が飛躍的に上がるなか連続殺人事件が発生した。警察の捜査は難航を極め、警察庁特殊解析研究所の神楽龍平が操るDNA捜査システムの検索結果は「NOT FOUND」。システムの開発者までが殺害される。現場に残された毛髪から解析された結果は、神楽が犯人であることを示していた・・・。

ちょうど映画が地上波で放映されるタイミングでした。これで犯人を間違えることはなさそうです。
昔と比べて、DNA鑑定の技術が発達した現代ですが、この作品の中ではDNAの技術がさらに向上し、犯人のプロファイリングまで可能になっています。さらには、多くの国民のDNAを登録し、もし該当する人物が見つからなくても、血縁者から犯人を探し当てることができます。・・・犯人の即時逮捕につながるのはいいけど、どんな便利なものにも落とし穴があるものです。
主人公の神楽龍平は、DNA捜査システムの開発者の1人。DNA検索に該当しない人物・NF(Not Found)13が犯人と見られる連続殺人事件を捜査中、DNAシステムのプログラムを構築した天才的な数学者、蓼科早紀とその兄が射殺される。遺体に付着していた毛髪を鑑定した結果、犯人は神楽自身という結果が出る。実は神楽は二重人格者で、もうひとつの人格・リュウが目覚めている間に事件は起こったのだ。警察に嫌疑をかけられた神楽は逃亡。アメリカからDNA捜査システムの視察に訪れていた白鳥という女性から、蓼科早紀があるプログラム「モーグル」を完成させていたことを知る。「モーグル」は、DNA捜査システムのある欠陥を補う役割を果たすという。神楽も知らなかったDNA捜査システムの欠陥とは?真犯人とは?
いやー、これはおもしろかったなあ。スピーディな展開で飽きずに読めました。次が気になってしょうがない!話はミステリーなんだけど、エンターテイメント!という言葉がぴったりです。
スズランいらんやん、とか思ったりしたけど・・・。ああ、でも最後のリュウとの場面は良かったので必要かなー。まあ、逃亡には必要なかったということで。
一部の権力者だけがDNA情報を登録せずに済む・・・プラチナデータの存在は、現実にもありそうな話です。なんだかんだで、政治家とかVIP好きそう。
犯人は、何となく怪しいあの人で、意外性はなかったんですが、動機が・・・。マッドサイエンティスト・・・。浅間刑事が最初主人公かと思ったんですけど(神楽の感じが悪かったもんで)、でも神楽が主人公でしたね。浅間刑事の刑事魂もカッコ良かったです。プラチナデータ自体の解決はできなかったのは残念だったけど、神楽が父親へのわだかまりを解いて、ろくろを回しているラストはとても良かったと思います。

★追記★
映画、見ました!(TV放映)
なんか・・・、話がものすごい脚色されてて、コレよくOK出したなあと思いました。神楽の方が交代人格になってる!水上教授が女性だし、動機がえらい崇高なモンになってるし・・・。電トリ出てこないし、リアル蓼科早紀がめっちゃかわいい。笑。そして、リュウの人格が私のイメージと全然違うわー。こんなオドオドした兄ちゃんじゃないんだけど。浅間刑事の捜査シーンもかなり削られてましたね。浅間刑事の魅力が半減じゃないか。
とにかく説明の多い映画だった。スズランがいなくても、話が成り立つということが証明されたな・・・。
記憶が曖昧だったら、ひっかからないところもあったんだろうけど。原作を鮮明に覚えてると、こういう弊害もあるのか・・・。