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読書の記録です。

「アナザーホリック ランドルト環エアロゾル」

西尾維新/講談社

それは<必然(ヒツゼン)>の奇跡(コラボレーション)!
西尾維新が挑む、小説版『xxxHOLiC』。

こちらは、「デスノート」の時と違って漫画の方が未読なのです~。なので、まず世界観についていくのが大変だったかなあ。登場人物を掴めているか、いないか、で入り方はだいぶ違うと思います。願いが叶うだの、あやかしの見える目だの、予備知識はあったほうがいいですね。
ミステリー的要素を含みつつ、人間のエゴイズムな部分に切り込むテーマは、私好みです。ただ、先が見えちゃう単純さが残念。あと、最後の伏せ字(ピー文字?笑。)攻めには閉口しました。なんだよー、隠されると気になっちゃうんだよー。四月一日と侑子さんのキャラクターは、正直好きにはなれなかったのですが、雰囲気はとても良かったので、今度マンガを読んでみようかな。という気分にはなりました。
西尾さんの作品に限りなく近い味付け。登場人物の性格や語り方が・・・。うーん、原作を知らないからなー。もしかしたら、原作と西尾さんの作風が似ているという説もありえますよね。もはやどっちでもいいか。
蛇足。「四月一日」がどうしても一発で読めず、「しが・・・、違う、わたぬき・・・」といちいち脳内変換をするのがめんどくさかったです。もー、「しがつついたち」でいーじゃん・・・。で、なぜ「四月一日」を「わたぬき」と読むのかと言いますと・・・、気になるアナタは検索をかけてみましょう。いやー、インターネットって考える力を失わせていくなあ。


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「ゆくとしくるとし」

大沼紀子/マガジンハウス

年末、久しぶりに帰省すると、そこには母と、オカマがいた。予想を覆す我が家の風景に違和感を覚えながらも、閉じこもりがちな感情が少しずつ開いていく。

オカマがいたらびっくりするわな。笑。
しかも、きれいじゃない方のオカマ(失礼)。きれいな方はニューハーフと呼ぶのか?んんん?まあ、女装タイプの彼女なのですが、豪快ではっきりしていて、私はミカさん好きだなあ。お母さんもいい感じなんです。ぬはは。
トリコの特に理由もない無気力感が、妙にわかるような気がするんですよねえ。ふと立ち止まった時に、このまま進まなければ楽だろうなあ、とぼんやり考える時に似ているような気がする。でも、進まなければ楽なかわりに何もありませんから。それはつまらないなー、と思い直しての繰り返しです。トリコの立ちあがりものんびりしているけれど、これくらいスローペースな方が丁度良いのかもしれませんな。
もう1編「僕らのパレード」という作品が収録されています。こちらの方が受けが良さそうな感じ。ハードな展開なのに、ほんわかムードを通した作風がすごい。
のんびりゆったりしながらも、確実に登場人物たちは何かを私に語りかけ、そして変化してゆきます。マイペースなムードと世界観、恐るべし・・・。
なんだか表紙が不評なようですが、私はかわいくて良いと思います。干支がちりばめられたりしてて。


「配達あかずきん」

大崎梢/東京創元社

近所の老人に頼まれた謎の探求書リスト、コミック購入後に失踪した母の行方を捜す女性、配達したばかりの雑誌に挟まれていた盗撮写真。駅ビル内の書店・成風堂書店を舞台に、書店員の杏子と多絵が5つの謎を解く。

「こんな本探してるんですけど・・・。」
本屋さんでたまーに見かける光景です。私なんか、わからなかったらあきらめちゃうんですけど、ちゃんと書店員さんに聞く人がいるんですよねー。素晴らしい。
そいで、その対応が冷たかったりすると、全然関係ない自分までイヤな気分になったりします。だから、お客さんに親身になってあげて、ついでに事件まで解決してしまう成風堂の店員さんたちは、書店員の鏡!あー、私も販売員ではないのですが、お客様へ対応する時は見習わねばならんなあと思いました。まず、人の顔を名前を覚えないといかんよね。うん。
おもしろい題名と、表紙に魅かれたのですが、内容はオーソドックス。本屋さんの日常を損なわない事件で良かったと思います。知られざる本屋さんの実態が明らかになったりして、おもしろかったです。雑誌って配達してるのねー。
「六冊目のメッセージ」が好きでした。ロマンチックー。笑。あと、「パンダは囁く」。パンダを持ってくるとは・・・!あれかわいいですよね(うっとり)。yomyomは読んでないんですけど。
私、不思議と今まで本屋さんで働こうとは思わなかったんですが、いいかも・・・。と転職を夢見てみたり。笑。


「ガール」

奥田英朗/講談社

30代。OL。文句ある?30代女性を主人公にした爽快オフィス小説。つまずきながらも前向きに働く、キャリアガールのドラマ。

私にとっては、ドラマで良く描かれる30代女性、という印象。共感はできなかったなあ。だって、全然かぶってないもん。笑。
年齢については、まあ、致し方ない。新しい職場でも、まだ若い方で扱いに差は感じていません。なので、将来こういう気持ちになるのかなあ・・・といった予感めいたものを感じました。というか、今も特にちやほやされていないので、どうなんだろう。笑。
しかし、肝心要の仕事が全然違うのさ。私、総合職でも営業職でもない、しがない一事務員でございます。男性と肩を並べて仕事をしている女性ではないし、仕事が好きってわけでもない。できれば働かずに暮らしたい。笑。同じ会社にこれから先10年以上勤めることもないと思います。某大手メーカーに就職した出来のいい同級生は、きっとこんな風なんだろうな、と想像してみるのが精一杯。
環境が違いすぎるなー(苦笑)。いや、モチベーションが違うのかな?
強いて言えば、“ひと回り”の容子の気持ちは少しわかるかも・・・。いやあ、私もかっこいい人には弱いもんで、気にしないでおこうと思うと余計気になって、おかしな行動をしてしまうことはありましたよー。あー、痛い。そーなんですよ、悟ってしまうと何とも無くなるんですよね・・・。
最後に、ヒロ君がめっちゃいい人だ、とうらやましくなりました。


「そうよ。きっとみんな焦ってるし、人生の半分はブルーだよ。既婚でも、独身でも、子供がいてもいなくても」


「ポケットは犯罪のために」

朝暮三文/講談社

古書店に宝石を隠した強盗の意外な結末、小説原稿を置き引きしてしまった男の不思議体験など、武蔵野の面影残る街で起きた事件の数々を、実験小説家の著者が「びっくりさせたれ」精神で描く本格ミステリー。

なんだこの表紙はっ!セクシーなメイドさんのパンチラなんて出てこないじゃないかっ!中身はめっちゃ本格ミステリーじゃないかっ!
と思ったのは、内緒の話。すっごくマイナーな香りのする表紙なのですが(笑)、中身はスタンダードなミステリーです。表紙に負けず、お手にとって頂きたいです。しかしながら、スタンダードと侮ってはいけませんよ。1編の完成度も良いのですが、全体を通した構成への伏線は実験小説家の貫禄が見られます。私はデビュー作が未読なので、あの表紙の折込部分の解説にはどきりとさせられました。本編を読む前に、ネットで作者の生死を調べたのはこれが始めてですよ!笑。
「J.サーバーを読んでいた男」「薔薇一輪」「函に入ったサルトル」が好きだなー。舞台は武蔵野のある商店街に固定されていて、あのクリーニング屋だ、とか気付くのもおもしろい。
本格ミステリーということもあり、浅暮さんの奇天烈な作品を想像していた私にとっては、やや物足りない感がありました。でも、すごくサービス精神が旺盛で、読者としては嬉しい限りです。一つの事柄を色々な方向から考察しあらゆる可能性を模索するのは、ミステリーの醍醐味ですよね。ああ、楽しかった!