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読書の記録です。

「二枚舌は極楽へ行く」

蒼井上鷹/双葉社

「オレの愛する妻を殺した犯人がここにいる。犯人には密かに毒を盛った。自白すれば解毒剤をやる」袋小路に入った主人公と、思わず一緒になって手に汗にぎる「野菜ジュースにソースを二滴」ほか、12編のミステリー短編集。

表紙のかわいさは2割増。物語の黒さは2割減。
印象に残った短編だけ・・・。

“野菜ジュースにソースを二滴”
巡り巡る疑心暗鬼。毒薬の仕掛けがおもしろかったです。
“待つ男”
最後のオチは微妙だなあ、と思いつつ、途中まではおもしろかった。新境地を開拓しようとしているのかと思わせる1作。
“ラスト・セッション”
オチも何もなかったのがこちら!普通にいい話じゃないですか・・・。路線変更か。物足りない・・・。
“二枚舌は極楽へ行く”
逆にブラックユーモアたっぷりなオチがこちら。色々な可能性を探る過程が良かった。まあ、しかし、そんなに気に病むようなことでもないと思うんだけど。っていうのは、少し冷たいのかな。

前回が小心者なら、今回は女性のしたたかな部分が良く表れていたと思います。あとは、物語同士のつながりを匂わせる描写もありました。私は余計かな・・・と感じたのですが・・・。
うーん、物語にキレを感じないものが多かったかな。残念。


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「恋をしよう。夢をみよう。旅にでよう。」

角田光代/ソニーマガジンズ

たのしいこと、うれしいこと、悲しいこと、怒ったこと。ささやかな日常こそがいとおしい。「今日、今、この瞬間」を綴った日常エッセイ。

エッセイなんて、つまらない、とずっと思っていました。「だって、その人の話やろ?私、作品には興味あるけど、その人自身のことに興味なんかないねん。」と言ってきました。昔の読書を振り返ってみても、さくらももこさんのエッセイを2冊ほど読んだくらいです。(当時りぼんっ子だったので)
作品には、作者の品性や人柄、それまでの生き方みたいなものが、どこかでにじみ出ているものだと、今は思っています。作者の人格を認めずして、本を語ってはいけない。本当に大馬鹿者でした。
まあ、そこまで深く考えたわけではないのですが(笑)、そういう心境の変化もあって、ここ1、2年たまに手に取るようになりました。びっくりしたことに、どれもおもしろいんです。この本も、とってもおもしろかった。
エッセイって、共感するだけじゃなくて、そうじゃないよって反発することもある。そうやって、作者と対話したり、その人の思考に直に触れることで、大きな刺激を受けることができる。多くの人には、当たり前のことかもしれないけれど、やっとそういう楽しみ方を会得できたような気がします。
というのも、この本では、著者の角田さんが各章の最後で「あなたはどう?」と問いかけてくれているからです。問いかけに「うーん、私の場合はー。」と瞬間的に考える時間が用意されています。まるで、角田さんと部屋でだべっているような気分になります。
“見た目の占める割合は?”が、一番笑えた。私も、あります。都会に近づくにつれ、「この服ダメ!帰る!着替えるー!」という気分になることは数知れず。笑。小学校のトイレ話は、電車の中で思わず吹いてしまいそうになりました。ストレートな言葉で語られる角田さんの生活は、とても潔いです。「私は本質的に輝けない種類の女なんだろう」としみじみ思いながらも、「心のどこかでは、輝かんばかりになりたいといつも願っていたい」。とってもかわいいなあ、と思います。私も、乙女心を忘れないように、日々かわいいものを愛でていたい。
・・・とまあ、ここまで書いておいて何ですが、角田さんの小説未読でして・・・。こんな角田さんの書く小説、ぜひ読んでみたいと思います。


「εに誓って」

森博嗣/講談社

山吹早月と加部谷恵美が乗車していた東京発中部国際空港行きの高速バスがジャックされた。犯人グループは、都市部に爆弾を仕掛けたという声明を出す。乗客名簿には≪εに誓って≫という名前の謎の団体客が載っていた。

前作に比べて、格段におもしろかったです!
連作としてのポジションがはっきりしていたのが、良かった。今までの事件も、いわゆる実験だった、と言われれば納得できるような気がします。背後に、大きな意思があるってことなんだろうな。
お騒がせ娘・加部谷さんと山吹君が主役でしたが、全然色っぽくならないのが、彼ららしくてとてもいい。そして、萌絵さんがどんどん出てきます。犀川先生を引っ張って、一緒に主役の座を奪いそうな勢いです。さすがの存在感なのですが、少し抑えてもらいたい。クラゲ君は、ほんま地味なポジションでしたね・・・。でも、一言一言が鋭くて好きだなー。
そして、今作はトリックも良かった!森さんと言えば、密室、建物トリックが主流なのですが、こちらもなかなかですよ。短編で、同じようなものがあった気がするのですが、どうだったっかな・・・。
真賀田博士は一体何をしようとしているんだろう?彼女が出てきた(ようなシーン)だけで、文章が研ぎ澄まされます。人心を掌握すると言えば、独裁者みたいですが、そんな小さいことはしないだろうしなあ。続きが気になってきました。S&Mシリーズもそろそろ読み返さないとー。実は最終巻未読です。いや、あの厚さにびっくりしちゃって・・・。


「知るという行為は、情報を自分のものにする。それは明らかに、ある種の支配です。」


「GosikⅡ」

桜庭一樹/富士見書房

「“灰色狼の末裔”たちに告ぐ。・・・」新聞の広告欄に掲載された謎のメッセージを見て、学園を飛び出すヴィクトリカ。彼女と九条一弥は、ある山間の小さな村を訪れる。そこは、ヴィクトリカにとって忘れ難い場所であった。

ヴィクトリカのお母さん話。
森の中の閉ざされた村が舞台です。そそられますね!
誰も彼もが怪しく見える~と思いつつ、モノローグにしてやられました。予想は外れちゃいましたよ。動機は結構、どうでもいいというか、そんなことで・・・?という感じでした。最後は好き放題に荒らしていってましたからね。いやー、あれはちょっとやりすぎでは・・・。トリックはマジックの原理と同じですね。昔、ちょっとかじったことがあるんです。でも、結構好きだな、うん。
ヴィクトリカ嬢が、とにかくかわいい!お風呂好きという好みも発覚・・・(めもめも)。一弥君も、小さなナイトという感じで、かわいらしいですねえ。ほのぼのします。
森の中の不気味な情景や、くらーい、閉鎖的な雰囲気が出てて、そこがすごく良かった。ミステリー初心者さんや、ライトなミステリー読者の方にはオススメできそうです。富士見ミステリー文庫だから、という理由で、敬遠していた時期もあったのですが、こんなにおもしろい作品があったとは。レーベルやジャンルに対する偏見っていけないなあ、と反省しました。可能性を自ら狭めているんだなー。色々手に取ってみないといけませんね!
言い訳なんですが・・・、本当につまんなかったんだもん。「浪漫探偵・朱月宵三郎」・・・。


「町長選挙」

奥田英朗/文芸春秋

都下の離れ小島に赴任した精神科医の伊良部。島は折から町長選挙のまっただ中で、伊良部も島を二分する争いに巻き込まれてしまう。

お馴染みになってきたせいか、存在感が薄くなってきた伊良部先生。
今回は、VIPな人たちが主役。しかもほぼ実名のようなもの。特にライブドアは今裁判が泥沼化しているので、なんていうか、現実とつき合わせると変な感じ。
前2作は、共感が持てる部分が多少なりともあったのですが、今回は無かったなあ。死への恐怖は、結局、権力への固執。ひらがなを忘れることは無いし、一人勝ちしてつまんないなんて経験もない。美への執着は、まだわかるような気がするのですが、背景に職業に関する特殊な空気が流れているので、やっぱり別世界のような気がしました。
マユミちゃんのバンド活動の実態も明らかに。ううむ。若けりゃ誰でも、ミニが履けると思うなー。
・・・っと、ミニで思い出したんですが、今年の夏、デニムのミニが流行ってませんでした?ミニを履いているおねえさんを見かけると、ついつい下半身を観察しています。笑。えー、みなさま大変美しいおみ足でいらっしゃって、眼福眼福・・・じゃなくて、まあ、大体自信のある人が履くので納得なのですが、1人だけキョーレツなのを見かけました。ミニがぱつぱつなのは言うまでもなく。・・・三段腹。おなかのお肉がたっぷりとミニの上に乗っかってるんですよう。キャミから出た腕は、たっぷんたっぷんだったんですよう。こ、これはいかんだろう・・・!
服装は自由だと思うけど、これは、自粛するべきだと思った数少ない事例でした。
大きく脱線しましたが、最後の町長選挙が一番読後感のいい作品だったと思います。みんな棒倒しで決めちゃえばいいのに、っていうのは乱暴すぎるか・・・。でも、もっと、政治の仕組みがシンプルになればいいのにって思います。