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読書の記録です。

「支那そば館の謎」

北森鴻/光文社

僕の名は有馬次郎。怪盗と呼ばれた過去もあったが、縁あって住職に拾われ、大悲閣千光寺の寺男となった。寺に持ち込まれる奇妙な事件を解決にひた走る毎日だ。

6年間在住だったり、遠足・旅行で訪れたり、就活でうろうろしたりしているくせに、行くたびに道に迷う、私にとって馴染みがありそうでそんなに無い京都が舞台です。
嵐山には2度ほど行きましたが、大悲閣というお寺は知らないなあ。そんなマイナー路線の京都ミステリー。短編集で、展開は同じパターンを踏襲しています。しかしながら、各章では染料や送り火、町屋など京都の文化が取り上げられていて、色々新鮮です。川床、一回行ってみたいんだよね・・・。地味ながら、安定した読み心地。後半、ムンちゃんが登場してから、ちょっとお笑いどころも出てきます。いい性格してるわ。隠れた読みどころは、毎回出てくる十兵衛の割烹料理。おいしそうです~。
残念だったのが、“支那そば館”。私は実際にそういう名前の博物館か何かがあるのかと思っていたので、この話に関しては少しがっかり・・・。
小説でも、京都弁はまったりします。神戸弁では、「なにやっとうん?」となるところが、京都弁では「なにしてはるん?」とはんなりした感じになるところに、そそられる人もいるようです。えー、神戸弁はかなり汚いらしいんですが、みかもさん一家は、エセ関西弁を喋る一族の末裔なので、詳しいところは不明です。悪しからず。


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「交響詩篇エウレカセブン 3」

杉原智則/角川書店

危機に直面したゲッコーステイトを、さらに不測の事態が襲う。月光号で裏切りが発覚したのだ。彼の手引きにより連邦首都へと拉致されたエウレカとレントン。そこで彼らを迎えた男は、二人を贄とし己の野望を実現せんとしていた。

アニメ版エウレカとは、だいぶ違ってきたぞー。
とは言っても、もうアニメの方の話の流れもあやふやなのですが・・・。裏切りは無かったはず。コーラリアンやトラパー、それにデューイの計画など、アニメでは感覚的に捉えていた概念が、理論的(?)に捉えられるようになったことが良かったです。もう、アニメとの違いなんて関係なく、展開も文章も文句をつけるところが無いので、安心して読めます。
今回は、葛藤が見所かと。ホランドのコンプレックスや、内面がメインなのですが、私はやっぱり後半のアネモネとドミニクの対話が印象的でした。アネモネは第二のヒロインですからねー。サディスティックな反面、ぼろぼろで健気なところがほっとけないというか。ドミニクの気持ちが、良くわかるんだわー。ホランドも、アニメよりカッコイイではありませんか!笑。“少年ハート”はやっぱりホランドにぴったりだなー。
アニメ版のエウレカとレントンは、正直、ハッピーエンドだと私には思えなかった。アネモネとドミニクは甘かったけど。小説は、みんながハッピーになれる最後だといいな・・・。


「嘘つき!あんた、どこにもいなかったじゃない。あたしが本当にひとりきりのとき、あんた、側になんていなかった。コーラリアンと戦うって、どういうことかわかる?痛いんだよ、苦しいんだよ。あたしの中にたっくさんの誰かが遠慮もなしに入ってきて、それだけでも苦しいのに、あたしはその誰かを殺さなくちゃいけない。あたしの中のたくさんのあたし。あたしは自分を殺すのよ。何度も、何度も。引き裂いて、ずたずたにして、火をかけて、あたしの歯で噛み砕く。何度も、あたし・・・・・・あたしを、殺すんだよ!」


「猫は引越しで顔あらう」

柴田よしき/光文社

同居人のミステリー作家・桜川ひとみの転居にともない、東京で暮らし始めた正太郎。隣猫、フルフルとニンニンのコンビと一緒に、新しい街で、新しい冒険に大忙し。

うちは猫を飼っていません。我が家のわんこと両親は猫嫌いなので、たぶんこれからも飼うことは無いでしょう。猫、かわいいのに・・・。だから、柴田さんの書かれる猫のいる生活、というものが、とてもうらやましいです。それ以上にうらやましいのが、同居人桜川ひとみさんのマイペースな生き方なのですが。笑。
このように、猫描写が気に入って読んでいるこのシリーズ。えー、正直ミステリーとして、おもしろいかどうかは微妙。謎解きの過程は良い。ケモノ会議。猫ならではの視点。本当に猫同士で、あんな風にウニャウニャ喋ってたらいいのにー。しかし、結果が・・・。急に生々しくなってみたり、どーでも良かったり。もっときれいにまとめて欲しかったなあ、という感じでした。
サスケとのコンビが見れなくなったのは残念だけど、新しいパートナー、ニンニンとフルフルもいい感じです。安心しました。トマシーナは出てきませんでしたねー。ひとみさんの恋愛模様も描かれず、しばらくは両方ともおあずけ?
次は引越しの長編になりそう。短編に輪をかけて微妙なんだよな、長編・・・。
ちなみに、私の永遠の憧れの猫は、ロシアンブルー。ペットショップへ行ったら、しばらく張り付いて愛でてます。あのグレーが美しい・・・(うっとり)。


「しかし言葉を返すわけではないが、この世の中に、自分勝手でない猫、というものが存在しているのならば見せていただきたい。」




おまけ。最近お気に入りの猫ブログ。
くるねこ大和
世界はニャーでできている

「誰か」

宮部みゆき/実業之日本社

財閥会長の運転手・梶田が自転車に轢き逃げされて命を落とした。広報室で働く編集者・杉村は、義父である会長から遺された娘二人の相談相手に指名される。姉妹の相反する思いに突き動かされるように、梶田の人生をたどり直す三郎だったが…。

お久しぶりの宮部さん。ミステリーのような。違うような。
あー、他人の人生をさかのぼっていくのって楽しい!(悪趣味)
わたくし、実生活では、あんまり他人の過去を詮索しない人なんですが、これが小説となると話が別です。宮部さんは、人物描写がくどいくらいに詳しくて、登場人物がそれぞれの人生をこれまで生きてきたんだなあ、と思わせてくれるところがいいと思います。梶田さんって、本当にいそうですよ・・・。
1人の過去を調べていくうちに、どうしても、生きていく上で関わった人たちの過去が明らかになっていく。それが例え、知られたくない過去であっても。ほのぼのとした展開に似合わず、血なまぐさい真相が意外でした。でも、私は好きだなあ。特に、実は死んでなかったりして・・・という思考がいい。さらに意外なことに、どろどろの修羅場でシメです。このあたりは、少女マンガみたいだな・・・。八つ当たりは醜い、と思ったり。三角関係って、傍から見てると、ただの意地の張り合いってことが多いです。きっと、誰か1人は決断を下しているはず。お姉さんには、ぜひともクールダウンしてもらいたいなあ。というか、縁を切った方がいいんじゃない?
と、書きつつも、幸せかどうかなんて、本人にしかわからない。当の杉村さんだって、誰かから見たら、肩身の狭い婿養子なんて嫌だと思われてるかも、だし。
だから、ほっとくべきだったんですよ、杉村さん。


「人の恋路を邪魔する奴は
 窓の月さえ 憎らしい」


「図書館の神様」

瀬尾まいこ/マガジンハウス

思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに“私”は文芸部の顧問になった。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。

一時期話題になっていたので、図書館でいつも棚をチェックしていたのですが、運悪く出逢えず、月日が経って忘れた頃に眼に飛び込んできた本。出逢いとは、このようなものなのかもしれません。
さて、著者自身が先生ということもあってか、主人公の清さんを、飾らず淡々とした文章がリアルに感じさせてくれます。教師を目指して、講師をしながら毎年試験にチャレンジしている友人を見ていると、流されて試験に受かってしまう清にはフクザツなものを感じます。実際に、そういう人がいるんだろうと思うから、余計割り切れない。せめて、清さんのように、子供と関わりたいという気持ちをもって教育に携わって欲しいな。
残念なことに、私には浅見さんのいいところが理解できませんでしたー。逆に、弟君は大好きでしたけれども!優しいというより、自由なところがとてもいい。
私はあまり文学というものを楽しめず、だから、今でも推理小説やライトノベルといったエンターテイメント味が強い本を好んで読んでいます。夏目漱石は好きですけど。清さんが文学のおもしろさに触れるシーンは、本当にうらやましくて、私も川端康成の作品や、「さぶ」を読んでみようかと本気で思ったり。もういちど、「雪国」を読んだら、今の自分は何を感じるのか。それもおもしろそうだ。
傷跡を残しながら、私たちは何度でも生まれ変わることができる。
だから、大人も子供も、自殺をしないで、生きて生まれ変わろう。