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読書の記録です。

「からくりからくさ」

梨木香歩/新潮社

祖母が遺した家で蓉子たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。そして、心を持つ不思議な人形「りかさん」。生命の連なりを支える絆を心に伝える物語。

機織、蔦唐草、蛇、伝統、そして受け継がれていく生命。「連続すること」がキーワードのような一冊。互いに刺激し合いながら成長(変化と言った方がいいのかな?)していく様子が、時に生々しく、あるいは爽やかに表現されている。心の動きに引き込まれた。彼女たちの自然派の暮らしも生き生きしていて楽しそう。職人さん、素敵です。
一方で、無理に過去のつながりを作ることは無かったのではないかと思います。変にややこしくなって、シンプルな印象が一気に複雑なものに・・・。クルド人の例えを出されても、不勉強な私にはよくわからない話だったもので、ぴんと来なかった。
読めない漢字がちょっとありました・・・。悔しい!


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「手紙」

東野圭吾/毎日新聞社

武島直貴の兄・剛志は、弟の進学費用の工面に悩み、盗みに入った屋敷で思いもかけず人を殺めてしまう。月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方直貴は「強盗殺人犯の弟」というレッテルによる差別に苦しむ。

残酷なようですが、きっと世間も私もこんなものだろうなあという気がする。
理解できないだろうし、理解しようとしても、きっとそれは同情でしかないでしょう。現実に、程度の差はあれ差別はいたるところにあります。人間が人間である限り、差別は存在し続けるだろうと思います。問題はそこからだ、と書かれています。精神論ですが、そうであればいいなあと思います。それで解決できれば。
最後の手紙のあたりから涙ぐんでいました。相変わらずすごいものを書かれます。いやー、すごい。そういえば、「秘密」のラストも号泣ものでしたなあ・・・。
いつか、2人が語り合える日が来ればいいと思った。でないと寂しすぎる。


「死神の精度」

伊坂幸太郎/文芸春秋

ある時は恋愛小説風に、ある時はロード・ノベル風に、ある時は本格推理風に。音楽を愛する、クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語。

平均よりは、全然おもしろいレベルだと思うのですが、何か物足りない・・・。
こう、いつものすかっとした爽快感が今ひとつだったからかな?
死神の千葉さんがかわいい。「ミュージック!」と思わず反応してしまうところとか。「死んだ牛はうまいか。」は笑えた。ミュージック、いいよねえ。音楽の無い生活なんて考えられない。死を達観した価値観には同意できないけど、音楽を愛する心には賛同できる。
でも、残念ながら「チルドレン」の方がおもしろかった。次回に期待します。


「チャット隠れ鬼」

山口雅也/光文社

私立神名川学院の教諭、祭戸浩実はインターネット上を監視する「サイバー・エンジェル」の候補に選ばれる。段々チャットにのめり込みだした祭戸は、ある事件に巻き込まれようとしていた。

ネットの匿名性にスポットを当てた本。チャットなだけに、横書きの本。
確かに、やろうと思えば別人になれますよねー。実は私が男だったりすることもありえるのです。いえ、女ですけど。まあ、人に迷惑かけなきゃ個人の自由だと思います。
犯人は、ミステリを読む時の野生のカン(なんとなくこいつが怪しいという奴)で、すぐ目星はつきます。が、きゃっとちゃんにしてやられたというか。後半一気に謎解きで祭戸がやたら活躍してるんですが、あまりのキレ具合に、この人オタ茶なんだよね?という疑問が浮上したり。テンポがいいので、とても読みやすかった。
チャット・・・。私には無理そう・・・。色々とセンスが要求されるんですねえ。大変だ。


「ドッペルゲンガー宮」

霧舎巧/講談社

学生サークル《あかずの扉》研究会に、純徳女学院の教師から生徒の捜索が依頼される。メンバーは、彼女の自宅《流氷館》で行われる推理ゲームに参加しようとするが・・・。

文庫本のぶっとさから、気になりつつも避けていたのですが・・・。読み始めたら、あっという間でした。霧舎学園シリーズよりおもしろい!頭木保君はこちらでも、いてもいなくてもいいポジション。苦笑。後動さんは意外と打たれ弱い?短編とは違うイメージだったような気がする。
地味ーに人がたくさん死にます。ノリとしては、金田一少年の事件簿大学生バージョンの仲間がちょっと増えたみたいな。(わかりにくい)
「そして誰もいなくなった」は未読でして、オチも何も知らないのです。知らなくても支障は無いですが、予備知識があれば、また違う楽しさも発見できていたのかなー、と。
最後の謎解き。双子と発音のあたりが、どーしてもご都合主義だと感じてしまう。そこが残念。うーん、納得できないなあ。
次の作品も読みますよー。二本松くんと、ユイの不器用な恋の行方も気になりますし。