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読書の記録です。

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「今夜は眠れない」

宮部みゆき/角川文庫

中学一年でサッカー部の僕、両親は結婚15年目、ごく普通の平和な我が家に、謎の人物が5億もの財産を母さんに遺贈したことで、生活が一変。家族の絆を取り戻すため、僕は親友の島崎と、真相究明に乗り出す。

7年ぶりの投稿。まだブログが残ってたかあー!とびっくりです。しかも、投稿がめちゃくちゃめんどくさいやないか・・・。感想も長文だし、めっちゃ頑張ってましたね当時の自分(笑)。よーしよしよし。

さて、地味に宮部さんの既刊本を読もうキャンペーンを実施中です。特にノルマなどはなく、飽きたらやめる程度。こちらは未読だった本。25年前の作品です。25年前というと、私は当時高校生。カセットテープが本当に懐かしく感じました。今は音楽はデータですよね・・・。
物価も当時に比べてだいぶ上がりました。それでも5億円は大金です。この5億円が突然身内でもなんでもない、昔少し関わりのあっただけ(?)の人から遺贈されることになり、主人公の家族は世間の好奇の目にさらされることになります。ここが疑問なのですが・・・、世間を騒がせた相場師とはいえ、一個人の相続がスクープとしてすっぱ抜かれるもんなのかなあ。それで家に押しかけてくるとかあるのかな?あと、浮気症の父親もそうそういないですよね・・・。いや、これはいるのか・・・?
騒ぎから逃れて身を寄せた別荘で、子供たちのこっくりさんに参加するくだりも、浮き世離れしているようでした。それにしても、こっくりさん懐かしいな。私は宮部作品に出てくる登場人物の人間味、みたいなものが好きなんだけど、この作品に出てくる登場人物はなんだか存在がふわふわしていて掴みどころがない印象を受けました。さらに伝説の相場師やらマダム・アクアリウムやら、ゴシップな話題が合わさって、全体的に軽くってまとまりがなく感じました。
黒真珠をおねだりしたマダムと一世一代の賭けに出た母親の一芝居。筋は好きなんですよね・・・。スマホがない時代だからこそ成り立った嘘。振り返ると、スマホがあれば一発で解決やんかとは思いましたが、読んでいる途中は気にならなかったです。
たぶんこの作品のウリである島崎くんが刺さらなかったなあ。今となっては量産型のキャラクターなのかも。



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「アイネクライネナハトムジーク」

伊坂幸太郎/幻冬舎

ここにヒーローはいない。さあ、君の出番だ。奥さんに愛想を尽かされたサラリーマン、他力本願で恋をしようとする青年、元いじめっこへの復讐を企てるOL。情けないけど、愛おしい。そんな登場人物たちが作り出す、数々のサプライズ。

読書メーターの短文投稿がおもしろく、しばらくそちらで書いていました。パソコンを買い換えて、動作が格段に速くなったので、久しぶりにブログに浮上してきました。パソコンのご機嫌を伺わなくていいってスバラシイ・・・!
さて、浮上後の1発目は伊坂さん。表紙がステキだなあと思っていたのですが、話の内容はチェックしていませんでした。出会いをテーマにした作品があったり、恋愛要素が多めらしいです。
「アイネクライネ」佐藤の先輩・藤間の妻が子供を連れて家をでた。藤間はショックでパソコンを壊してしまう(とどめをさしたのは佐藤)。幸い、データのバックアップがとれていたものの、罰として佐藤は街頭アンケートを命じられる。佐藤くんが大学時代、あこがれていた女性が、大学を中退して結婚し現在は2児の母となっていることに、少し違和感を感じるシーンで時の流れの無常さを感じたり。主題は出会いなので、佐藤くんはこのあとあり得ない再会を果たしてハッピーエンドなわけですが、そんなありえねー展開などどうでもよく、私はこの話を読んで、できちゃったは大抵女性側の策略によるものだよなということと大学中退は良くないよと思ったのでした。
「ライトヘビー」美容師の美奈子は、客の香澄から弟を紹介される。電話で話す関係となった2人だが、彼の職業は・・・。「知人の紹介」にはいい思い出が無い私。これまたありえねー展開のハッピーエンドに若干イラッ。
「ドクメンタ」妻に出ていかれた藤間。免許更新日の期限が近づいて、1人の女性との出会いを思い出す・・・。銀行通帳にそんな使い方が・・・!という目からウロコでした。結婚したことないから、よくわかんないけど、直接謝ればいいのに。めんどくさい人たち・・・。
「ルックスライク」佐藤の友人・織田夫妻の娘が駐輪場の無賃駐車犯に立ち向かう!うーん、そんな手に引っかかる人がいるかなーと思ったけど、このありえないことをさらっと書くのが伊坂さん。朱美さんの、いつも主導権を握られててなんとなく嫌、というモヤモヤした感情がわかる。男女間に限らず、人間関係の中で役割分担が固定されるのはしんどい。期待されるリアクションをしなければならないとか。
「メイクアップ」結衣は高校のころのいじめっ子と再会する。これは復讐のチャンス?私は、いじめっ子と再会してもたぶんわかんないだろうな・・・と思う。三つ子の魂百までということで、根性悪い人はずっと根性悪いんです。復讐したってどうなるわけでもなし、自分は今幸せで相手は未婚で焦ってるという状況から溜飲を下げたんじゃないかな。結局、どっちのパターンだったんだろ?この本のトーンからいくと、不幸でない方のプレゼン落ちて騙されないパターン?
「ナハトムジーク」小野はテレビ番組の収録で過去の試合を振り返っていた・・・。これまでの総まとめという感じ。登場人物のその後とか。時系列が行ったりきたりで、こんな構成にする必要があったのかなと。
斉藤和義さんが好きとかボクシングが好き、あるいは伊坂作品が無条件に好きという方は楽しめるかも。どれでも無かった私は、いまいち乗れませんでした。


「あのね、歯車を舐めんなよ、って話だからね。」

「どの仕事だって基本的には、歯車なんだから。」


「ほんとうの花を見せにきた」

桜庭一樹/文藝春秋

少年「梗」を死の淵から救ったのは、竹から生まれた吸血鬼バンブーだった。心優しきバンブーと、彼に憧れる梗との楽しくも奇妙な共同生活が始まる。だが、バンブーにとって、人間との交流は何よりの大罪であった。

以前は桜庭さんの作品はおもしろい、という前提で読んでいたのだけど、「私の男」がかなり肌に合わず、そこからは、桜庭さんの本の読み始めはおそるおそるページをめくっていた。やはり好きな作家さんの作品を否定する気持ちになるのは辛いし、読書を苦痛に感じるのも嫌だ。
今回も吸血鬼の話、という前情報のみで、合わないタイプの本かもという予感があったのだけど、いい意味で裏切られてとても嬉しかった。桜庭さんの文体が世界観にマッチしていて、さらに、心にしみる物語でした。
「ちいさな焦げた顔」マフィアに家族を惨殺された梗は、竹の吸血鬼・バンブーに助けられる。彼らの一族の掟では、人間との関わりを持ってはいけないのだが、彼は危険を避けるため女の子として2人に大切に育てられる。バンブーは人とは異なる生態で、人の子供を育てることなんてできないのではないかと思った。だけど、彼を大事に思いやり教育も受けさせ、立派に育てあげた。わけあって、梗は1人立ちしていくけれど、彼が日常の忙しさの中でバンブーのことを忘れてしまっても、バンブーは彼をずっと覚えていた。ずっと大事に思っていた。恐ろしい吸血鬼で気まぐれなバンブーの一途な愛情に、ほろっとなった。
「ほんとうの花を見せにきた」前の中編に登場した、掟破りまくりのはぐれバンブーの女の子の話。彼女は人間の女の子と組んで、人間を襲っては血を頂戴していた。(生きた人間を襲うのはご法度。)しかし、他の人間との交流のなかで、人間の女の子は地に足をつけた生活がしたいと思うようになった。以前、法を侵した罰で鼻をそがれたバンブーは、流れて隠れて生きていく術しか知らない。だけど、女の子は新しい世界を知ってしまった。人間は変わってゆくもの。忘れてゆくもの。バンブーがずっと覚えていた約束も、女の子は長い年月を過ごすうちに忘れてしまっていた。バンブーが最後に咲かす真っ白い花。ほんとうの花を見せにきたのに・・・。残酷。
「あなたが未来の国に行く」バンブー一族が日本に流れてくるまでの中国での生活を追われる話。昔は人間と共存していたバンブーだが、時の流れとともに都会からも人が流れてきて、バンブーへの風当たりが強まっていた。王国を去る準備を進めるなか、第三王女は、川から海に出て新天地を目指す計画があることを知る。バンブーは本当に悪いことをしていない。人を傷つけることも、人の生活を荒らすことも。だけど人間は得体の知れないもの、自分達に理解できないものを有害と決め付けて排除していく。人間と同じように、吸血鬼にも色々いるのになあ。お姉ちゃんが弟を助けてあげるのが好きです。お姉ちゃん優しい。
竹と吸血鬼というミスマッチさが、最後にはとけてなくなっていました。


「忘れないで。」

「運命は自分で変えられる。」

「きっとできる。」

「きっとできる。」


「あぶない叔父さん」

麻耶雄嵩/新潮社

鬱々とした霧が今日も町を覆っている。四方を山と海に囲まれ、古い慣習が残る霧ヶ町で、次々と発生する奇妙な殺人事件。その謎に挑む高校生の俺は、寺の小さな離れに独居してなんでも屋を営む、温厚な叔父さんに相談する。毎回、名推理を働かせ、穏やかに真相を解き明かす叔父さんが、最後に口にする「ありえない」犯人とは!

賛否両論の作品ですが、私は好きでした。
田舎町に住む高校生の主人公は、神社の次男。家業は兄が継ぐので、将来の夢も希望もまだなく、うつうつとした日々を送っている。そんな主人公が尊敬するのは、便利屋を営む叔父さん。叔父さんは優しく、いつも主人公の相談に適切なアドバイスをくれる。・・・ということで、探偵役は叔父さんですが、同時に犯人でもあります。みんな、わかったかな?ストレートにネタばらししちゃうと、1話を除いて、途中経過はともかく、最後のシメは叔父さんが殺っちゃってます。本人が犯人ということで、謎解きすなわち犯行の告白となります。
「叔父さん、ついつい突き飛ばしちゃったんだよね・・・(しょんぼり)」
お前かよ!と読者はツッコミを入れるわけですが、そこで叔父さんに心酔している主人公はこう思うのです。
「そうかあ、叔父さんったらしょうがないなあ。でも、被害者の名誉のために自分の犯行を隠蔽するなんて、叔父さんってなんて優しいんだ!さすがは叔父さんだなあ・・・。」
おいおい、そこは褒めるところじゃないだろ!通報だろ!というツッコミも空しく、事件の真相は闇へ葬り去られるのです・・・。ほぼ毎回このパターンで攻めてきますが、私はこのツッコミが楽しく、むしろつっこめなかった「最後の海」に不満を感じます。まさかの二人羽織が出てきたのもこの作品だったかな?叔父さんエラそうだったしなあ。
「転校生と放火魔」での四神になぞらえた放火と見せかけた隠蔽工作や、「藁をも掴む」で、犯人にタックルかけて殺しちゃったオチとか。とにかくシュールでした。
主人公の二股とかラブホのくだりは、どうも気分が良くなかったですね。チョーシ乗ってんじゃないよ!結局、どっちも大して好きじゃないんだろうね。本能を満たしたいだけで。
麻耶作品も初期のものを読み返したくなってきました。当時はよくわからないけどすごい。でも、おもしろさがわからなかった。笑。今読んだら少しはわかるかな・・・。


「夜の床屋」

沢村浩輔/東京創元社

慣れない山道に迷い、無人駅での一泊を余儀なくされた大学生の佐倉と高瀬。だが深夜、高瀬は駅前の理髪店に明かりがともっていることに気がつく。好奇心に駆られた高瀬が、佐倉の制止も聞かず店の扉を開けると・・・。

何かの本の巻末紹介がおもしろそうだったので・・・。実は内容に関する記憶が虫食い状態です。あちゃー。おかしなところがあるかもですが、ご勘弁を。・・・いつものことかしら?
「夜の床屋」なんかの受賞作。山で迷い、無人駅で一泊することになった主人公たち。深夜、さきほどは暗かった床屋があいていることに気付いた2人。好奇心を抑えきれず、入店してしまう。予約まで少し時間があるので洗髪だけならできる、という店主。洗髪してもらった2人は、翌日下山してから事の真相に気付く。なぜ、床屋は深夜に開店したのか?なぜ、洗髪だけだったのか?そして、微かに香った香水の香り・・・。翌日発覚した誘拐事件に、首をつっこみかけていたというオチでした。華はないけれど、着実に推理を進めていく過程がよかった。
「空飛ぶ絨毯」主人公の地元で過去に起きた不思議な話。消えた絨毯の謎が今明かされる!・・・って、コレ何かのアンソロジーで読んだ記憶があります。そのときも、あまり好感触ではなかったなあ。友達が女の子のために殺人を犯した(と本人は思っているが、相手が生きている可能性もあった)のもなんだかなあっていう流れだし、女の子もそれを気にやんでいて何故か病気で急逝。女の子死なす必要ありましたかね?謎自体はおもしろかったのに、それをとりまくアレコレがなんかモヤモヤしていて、モヤモヤさせる必要があるのかすら不明で、気持ち悪かった。
「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」少年と廃工場で鬼ごっこをすることになった主人公。しかし、彼らには他の目的があった。何の根拠もなく、大家のおばあちゃんを疑っていた私。実際は、子供同士が入れ替わって、普段は会えないお父さんに会いにいっていたといういい話でした。ここで心の平穏を取り戻したような気が。笑。
「葡萄荘のミラージュ1」「葡萄荘のミラージュ2」主人公の友達から、別荘に泊まって宝探しをしないかと誘われた主人公たちは、葡萄荘を訪れるが、肝心の友人はどこかへ出かけてしまっていた。独自に謎解きを始める主人公たち。そして現れたお宝とは・・・?幻の香水のレシピまでは良しとしよう!しかし、人魚はなあ・・・。宝探し自体は好きなので、書斎の背表紙を使った暗号や、シャンデリアの位置などは楽しめた。最後に友人が、ブツを売りさばきに行ったかも、と匂わすラストもエゴむき出しで好きです。
「『眠り姫』を売る男」人魚商の話・・・だったか・・・?ファンタジーへと話は流れます。謎解きの部分はおもしろいのに、それに肉付けされるエッセンスがどうにもモヤモヤする。なぜ、それなのか?どうして幻想の方向へ話を持っていってまで、連作短編にする必要があったのか?ひとつひとつは良い切り口なのに、最後に無理に統一性を持たせたおかげで、台無しになっちゃった感じがして残念でした。