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読書の記録です。

「しにがみのバラッド。」

ハセガワケイスケ/アスキー・メディアワークス

目を覚ますと、少女は死神でした。少女の使命は人間の命を運ぶこと。死を司る黒き使者である少女は、仕え魔のダニエルと共に、人の魂を奪いにいくのです。死を司る少女は、様々な人と出会い、そして別れていきます。哀しくて、やさしいお話。

バラッド=バラード(ballade)=譚歌、譚詩の意味、かな・・・。
真っ白なワンピースに赤い靴をはいた、変わり者(デイス)と呼ばれる死神モモ。彼女の仕事は、人間の魂を運ぶことだけれど、人間に干渉して少しだけ運命を変えたりします。なぜ、モモがそんなに人間に肩入れするのか・・・。なぜ、モモには記憶がないのか・・・。様々な謎が提示されますが、この巻はいわば顔見せのような感じで、モモとダニエルに関する詳細には触れられていません。そう、最新刊の11巻までお楽しみはとっておかなくちゃね。あと10冊かあ。道のりは遠い・・・。
読み始めのイメージでは、物語の主人公が死んで終わりなんだろうな、って感じでした。しかし予想に反して、主人公死なないんですよ・・・。家族や、とても近くて大切な人を亡くした人たちの物語。残念なことに、会話や独白のテンション(高かったり低かったり)に私がついていけなかった。青春だなー。と、遠くから眺めているような距離感でした。
誰かが死んで旅立つ時には、この世に残される人がいる。その人が、これから先どうやって生きていこうとしているのか。その道が幸せの予感を秘めていても、険しいものだとしても、一筋の光が見える結末が良いなあと思いました。
余談ですが、一文ごとの改行はページがもったいない!


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「モノレールねこ」

加納朋子/文藝春秋

遠くの河原に捨ててきたはずのデブねこは、ある日平気な顔で戻ってきた。新しい赤い首輪をつけて。ぼくが手紙を首輪にはさんでみると、返事がくるようになる。家族の絆をテーマに描かれる、ハートウォーミングな8つの物語。

ああ、家族の絆がテーマと言われれば、そうですね。自分が読んでいた時は、どの物語でも死が扱われているなあ、というイメージだったのですが・・・。
「モノレールねこ」という題名からして、ファンタジーなイメージだったんですが、意外にラブでロマンチックなオチでした。しかし、これはこれで。「マイ・フーリッシュ・アンクル」の叔父さんはいい人だった。現実のニートは嫌いだけど。笑。彼の人柄を買おう!(えらそう)
家族には色々な形がありまして、どれが幸せな形なのかなんて、誰にも正解は分からない。のだなーと改めて思いました。「ポトスの樹」のクソオヤジなんかさ、私から見たら本当に許せない。父親に色々な事情があったとしても、そりゃひどいっしょ、と思う。たった1つの出来事で、そういうこと全部チャラにできるのは、家族だからだろうなあ。
一番最後のバルタン君の話でうるっときてしまいました。「バルタン最期の日」。本当にお人好しだよ、アンタ・・・。いいザリガニだなー。今年の夏は、鳥に食べられたザリガニの残骸を見るたびに胸が痛みそうだぜ。


「そんなに負けるのは悪いことかなあ・・・・・・だって負けるやつがいなきゃ、勝つやつもいないだろ」


「ZOKUDAM」

森博嗣/光文社

ロミ・品川とケン・十河が配属された、遊園地の地下にある新しい部署には、真新しい二体のロボットがあった。戦士として選ばれた二人は、このロボットで怪獣と戦うらしいのだが、さて。

前作「ZOKU」を読んだのは、だいぶ前なので、イメージは朧なのですが、もっと痛快でおもしろかったような気がする・・・。つながりも良くわからず(そもそも覚えているのが、木曽川さんだけ)。これは、先に「ZOKU」を読み直しておくべきでした。失敗・・・。
主人公は、たぶんロミとZOKUDAMの面々。ロボットの話もありながら、2カップルの進展(?)度合いも見所かもしれません。ZOKUDAMもTAIGONも、お互いに偵察したりしてるんだけれども、いまいち緊迫感がなく、本当にやる気あるの?ぐらいのゆるゆる感。この企画自体が、お偉い人たちの道楽みたいなものだしなあ。
しかし、あれですね、ロボットものなのに対決するシーンが出てこないっていうのは・・・。非常にシビアです。そもそも二足歩行自体がねえ・・・。笑。この皮肉っぽさが、全然嫌味でないのは、その辺の森さんの知識が下地にあるからなんだろうな、と想像してみる。あと、ロミと野乃ちゃんのかわいさ故かと。ロミも十分かわいいんだよ。あの強気さがいいのだ!もう、負け犬女の話になると、必要以上にアンテナの感度が増すのです。そう、世の中は独身に厳しいのさ・・・。
巻末の「ロボット大決戦観戦御一行様」。確かに私も指をさしてしまいそうです。


「来い!」
「お楽しみはこれからだ。」


「九月の恋と出会うまで」

松尾由美/新潮社

「男はみんな奇跡を起こしたいと思ってる。好きになった女の人のために」『雨恋』の著者が放つありえない恋の物語・第二弾。

階段ですれ違っただけで、一目ぼれされるなんて、並以上の容姿ですから!明らかに松レベルですってば・・・。と脱力してしまった私。なんか、ぬいぐるみに話しかけたり、怪しい声を信じて隣人を尾行してしまったり、主人公は結構イタい人なのでは・・・。と思ってただけに、この展開にはびっくりだよ!ええ、そりゃもう。
前半の平野の行動の謎とか、シラノの指示の真意とかまでは面白かったのですが・・・。SF的タネ明かしには、正直ついていけなかった。難しすぎて頭がぐるぐる。大江戸線?何か矛盾点があるような気がするんだけど、きっとそんな気がするだけなんだろうなあ。個人的には、SFだと思わせておいて実は・・・という現実的な展開を望んでいたのですが、これはこれで、みんな幸せそうにやっているからいっか、という気分。なんでこんなに投げやりなのかというと、世の中、そんなにうまい話は転がってないからだと、私が思っているからなんだろうなー。うまい話というのは、ひと目ぼれと、追っかけてもらえるってところなんですけど。あたい、追っかけてもらったことないからさ・・・。(遠い目)
やばい、だんだんひがみっぽくなってきているのかもしれない!大絶賛しているブロガーさんがたくさんいらっしゃるのですが、私はそこまで感情移入できなかったのです。我ながらねじくれてるなあ・・・。
意外に積極的にきりこんでいく平野さんは好きです。うーん、こんな風に強引に迫ってもらいたい!笑。


「ソロモンの犬」

道尾秀介/文藝春秋

さっきまで元気だった陽介が目の前で死んだ。愛犬はなぜ暴走したのか?飄然たるユーモアと痛切なアイロニー。青春ミステリー傑作。

がらりと作品の印象が変わりました。なんか、今まで読んだ作品は、どれもシュッとした(スマートな?)感じだったのですが、この本はあらすじの通り、ユーモアに富んだ内容となってます。私はどっちもいけるなー、と思いながら読んでました。最後のどんでん返しもしっかりあって、うーん、まんまと騙されてしまいました。だって「バーベキュー」って・・・。確かに、ウ段の口になりますけど!
主人公の秋内くんがおもしろいんだなあ。女の子慣れしていなくて、あれやこれやと妄想をめぐらせている姿が良い。うん、智佳ちゃんはかわいいからね。ひろ子さんは、女の子っぽいという描写があったのですが、なかなかにたくましいよ、彼女は・・・。
事件の謎を解くカギにもなる、カーミング・シグナル。恐怖や緊張に襲われた時にとるあくびなど無気力な行動のことなんですが、うちの犬が怒られた時とか、つまずいてこけた時とかに良くするんですよねー。「こいつ、お茶をにごしてやがるな・・・。」と思っていたのですが、あながち間違いではなかったようで。
決してハッピーエンドとは言えない。言うには犠牲が大きすぎる。ただ、不思議とさわやかに終わりました。これも秋内の煩悩パワーの成せるワザか!?