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読書の記録です。

「図書館内乱」

有川浩/アスキー・メディアワークス

郁の両親の図書館訪問、小牧のお姫様を巡る事件、手塚の家庭事情、郁が査問会へ呼び出されたり、戦闘はなくとも図書館は大忙し。柴崎の恋の行方に堂上と郁の関係にも注目!

今回はドンパチが無いけれども、いろいろな事件があって目まぐるしい感じ。最後は郁の絶叫でシメという。笑。ああ、なんだ、この2人(堂上と郁)っていい感じじゃない、と好感度アップの2冊目でした。
前半は、小牧のお姫様・毬江が登場。難聴の毬江に、小牧が同じ障害を持つ女性を主人公とした小説を薦めたことが問題化。メディア良化委員会の尋問を受けます。この小説「レインツリーの国」の方を先に読んでいたのですが・・・。当時の感想は・・・ふむふむ・・・要約すると「いい話だが、説教臭い。」だそうで(相変わらず自分の感想はエラそう。笑)。さすが正論好きの小牧さんオススメの一冊。このパートも、正直乗れなかったなあ。小牧という人間に、全く魅力を感じないため、小牧を大好きな毬江にシンクロできなかったのが要因かと。この問題が原因で、鳥羽館長が降ろされて新任の館長が着任することに。
で、次に郁が嵌められてしまいます。問題の発端となったのは、図書館のホームページ内に設置された「一刀両断レビュー」。ざっくり言うと、本に対する悪口ですね。辛口レビュー?これを書いている隊員が、一部の図書を故意に処分しようとしたと。それに郁も加担したと。「荷物持っただけで中身わかれとか、あたしはエスパーかっ!」には笑えた。ほんと、同僚に頼まれたら荷物運ぶの手伝ってあげるし、中身が何かなんて、いちいち開けて確認しないもん。査問会のおじさまがたのムチャ振りには辟易しました。最終的に官僚なんかもからんできて、郁大ピンチ!なところに颯爽と現れる堂上!おいしいところを・・・!今でも十分、王子様やんか。笑。手塚は手塚で、兄弟の確執があったりするようですが、柴崎となかなかいい感じに打ち解けている模様。手塚、かわいいなあ。郁が取引を持ちかけられて、兄弟にそんなことをされたら絶対に許せない、だけど絶対に嫌いにもなれないのだ、と思うところはすごく良くわかった。心底憎むなんてできないよ。だから手塚は辛いところだなあと思う。
辛いといえば、柴崎の悩みはすげえな。自分で自分を美人と評するとは。なんとなく、恋に発展しないように線引きをする気持ちはわかります。私は柴崎とは逆の意味でね。たぶん私に興味ないだろう、たぶんもう恋人がいるだろう・・・。自分が傷つかないように予防線を引く癖はあるかなあ。
書評については、私もネットの片隅で感想を書いている身としては、少し考えさせられました。色々な考え方があるからこそ、感想を読む楽しみがあると思うけれど・・・。みんなが好きって、なんか不気味なので。しかし、行き過ぎた非難や悪口は当たり前ですが、誰かを傷つけるのだなと。自分にとって特別な意味を持たなくとも、誰かにとってのスペシャルな1冊かもしれない。そのことを忘れないようにしよう。


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「それはいろいろまずいだろ?」

秋田禎信/富士見書房

頑張れど頑張れど、ちっとも幸せになれない貧因金貸し魔術士オーフェンの破壊的な日常を描く無謀編・第8弾!

早くBOXを開けたい・・・。けど、少し読んでは飽きたな・・・の繰り返しで進まない・・・。
「まさか本気じゃねえだろな?」ギネスでも、一体こんなマニアックな記録に何の意味が・・・と思うことがあるよなあ。老人の「落ちたら・・・死んじゃうし・・・」がこの話の全てを物語っているといえよう!
「それはいろいろまずいだろ?」子供はかわいいなあと腹立つなあが紙一重な生き物ですよね!私は子供を叱れない人なので、おしおき水は教育者として正しいかどうかは置いといて(笑)、しつけに効果があるならいいんじゃない?と思います。まあ、子供にはムチよりアメの方が受けがいいから、エサでコントロールした方がいいと。・・・そういう提言ですね!
「それでお前は満足か?」今まで数々の出まかせ婚約者をでっちあげてきたキースに、真の婚約者が!?ちなみに第27代婚約者がジョアンナで、第28代婚約者がアンジェリー(翼獣)。で、ローンは何だったの?・・・いや、キースの話にオチを求めてはいけないのだった・・・。
「俺をなんだと思ってる?」コンスタンス、今さらオーフェンの生態を探る、の巻。持ち回りで魔術の被害の後始末だなんて、たくましすぎるぜトトカンタ市民。そうだねえ、生きていくためには、環境に順応するしかないもんねえ。
「天使の囁き」プレオーフェン・無常編。ティッシが主人公。ティッシ、読者から嫌われてたの?とびっくりした。私は結構好きだけどなー。素直になれないだけで、本来はすごくいい人だと思う。本編でも、オーフェンになんだかんだで協力してくれたし。後輩に追い抜かれる時は、嬉しいよりも悔しい感情が勝ってしまうもの。それがプライドを持っている証だと思う。


「食堂かたつむり」

小川糸/ポプラ文庫

同棲していた恋人にすべてを持ち去られ、恋と同時に多くのものを失った衝撃から、倫子はさらに声をも失う。ふるさとに戻った倫子は、小さな食堂を始める。それは、一日一組のお客様だけをもてなす、決まったメニューのない食堂だった。

おいしそうな料理が出てくる本が読みたい。さらに、優しい気持ちになれたらいいなあ。という気持ちで選んだ本。賛否両論あるようですが、私はこの本好きです。オススメできると思います。ふわふわした読後感でした。
傷心の倫子はふるさとへ戻ってきて、ずっと折り合いの悪かった母親と暮らし始めます。このおかんが曲者。笑。シャイだかなんだか知らんが、大事なことをきちんと伝えておけば、もっといい関係を築くことができていたかもしれないのに・・・と思うと残念。おかんとの確執については結構触れているのですが、インド人の恋人に対する恨み言があまり無くて、悟りの境地だなあ、すごいなあと思った。考えるのもイヤだったのかしら。
食堂っていうと定食イメージがあって、和食かと思っていたのですが、フルコース的なものからフルーツサンドまで色々です。どれも手間ひまをかけられて作られていて、おいしそう。野鳩は食べて大丈夫?って心配になりましたが。実際に、1日2組限定のお店は聞いたことがあって、それで採算取れるのかなあ?って思ったことがあります。下世話な話をすると、仕入れは野生のものばかりではないし(海外からの取り寄せもあり)、手間ひまかかってるし(光熱費がかかる)、客単価も高そうではないし(高校生のカップルでも利用できる)、1日1組では経営は成り立たないだろうなあ。おかんがいる間は、おかんがお金貸してくれたけど、これからは厳しいかも。いや、ふわふわした小説でこんな地に足をつけた話が出てきても興ざめだったと思うので、この設定はこれで良かったのだと思います。
「その人のためだけの料理」というのは、料理人にとっての理想かもしれないですね。しかも自分の料理を食べて、みんなが幸せな気持ちになってくれたなら、これほど嬉しいことは無いと思います。誰かのために作られた料理には心が宿り、人を感動させることができるのだから。だから私は料理を作るより作ってもらうほうが好きなのです。・・・自分の料理がおいしくないせいもありますが!
エルメスの解体は、正直読むのが辛かった。何年か前、食育ってあったと思うんですけど、子供たちが自分で鶏を絞めて、命の大切さを知るっていう、あれを思い出しました。食べる=命を頂いている。大切な作業だと頭では理解しているのですが、私には出来ない・・・。そういう気持ちが入り混じって、辛いけれど尊いシーンでした。愛しているから、食べる。それもひとつの愛のかたち。
ふくろうに関しては、いい話なんだけどそりゃないだろう!という心のツッコミを入れてしまいました。笑。おかん、この手紙発見してもらえなかったら切なすぎる!でも、最後に大切なことを伝えることができて良かった。生きているうちに、直接伝えられたなら、もっと良かったのに。
番外編のチョコムーンは、幸せそうで何よりなんだけど、1年後には別れてそうだなあと、なんとなく思ったのでした。(←ひどい)


「料理を作る、ただそれだけで、私の中の一個一個の細胞が恍惚とした。
 誰かのために料理を作れるだけで、本当に、心の底から幸せなのだ。
 ありがとう、ありがとう。
 真冬の夜空に何回叫んでも足りないくらい、全世界の人々に聞こえるような大声で、心の声が枯れるまで、みんなに、この気持ちを伝えたかった。」


「SPEC Ⅲ」

西荻弓絵・豊田美加/角川書店

冷泉のおかげでニノマエの居場所を突き止めた当麻だったが、結局ニノマエの力を思い知る結果に終わる。そのニノマエは瀬文の前に現れ、志村の命を救うことを条件に、特殊部隊率いる津田を引き渡すよう迫った。

2巻で「表紙が一緒だー!」というクレームを叫んでいましたが、実はこれ、同じ写真をだんだんズームアップしていってるということに、やっと気がついた次第。・・・まぎらわしいことに変わりないけど!
「SPEC magazine」を買ったところ、最終話とその前が電子書籍限定公開!みたいになってて、「そのために買えと?」とケンカ売られてるような気分になりました。いや、それだったら、最終話終わってから出したらいいじゃん?なんか、騙されたなって感じがする・・・。内容自体は良かったので、余計に残念。
さて、最後は予想の斜め上をいく展開でした。地居くんがまさかこうからんでくるとは!記憶を改ざんできたら、人を操るのも簡単だよなあ。今まで色々な人を傷つけてきた出来事が、すべて地居くんのゲームだったとは、残酷な感じがしますが・・・。特に、志村の意識が戻ったあと、あっけなく殺されてしまった時は、こりゃひどいと思いました。持ち上げておいて、叩き落す!ニノマエと当麻の関係も、少しできすぎのような気がしましたが、記憶の改ざんが行われていたのか・・・。教会での対決は、瀬文さんの歯でふい打ちとか、当麻の手が移植ってあたりが省略されてましたね。特に、野々村係長が、ニノマエの遺体を見て驚いたのと、当麻の手が移植されていたのには関係があるのか・・・?最後のエンドロールは、当麻にSPECが引き継がれたことを意味しているのか・・・?疑問がたくさん残っていたのですが、解消されるどころかさらにぼかされてました。特に期待はしてなかったけど・・・。
後半、餃子率の低下が目立ちましたが、傑作デザート「マヨメロ」「フリカケパイン」のパンチはすごかった。マヨメロ、メロメロ~。野々村係長も、無事で良かったー。良かったけど、前妻も妻も浮気相手も雅ってどうなの?生涯現役ですな、係長。
瀬文さんの熱い名セリフの数々。「命なめるな」「気合いだ、気合いで止めてやる」がぐっときました。当麻と瀬文のコンビは永久に不滅なのです。
私は「ケイゾク」を見ていなかったので、消化できなかったところもあったのですが、とても楽しめました。主題歌のアレンジも良かった。「映画化しねーよ」と言われたら、よけいに期待しちゃいますよ!


「生命ある限り、すべては変えられる。希望は絶対消えない」


「豆腐小僧双六道中ふりだし」

京極夏彦/講談社

妖怪豆腐小僧が自分探しの旅へ。「なぜ、手前は豆腐を持っているんでしょうか?」自己の存在意義に不安を抱く小さな妖怪が数々の異種妖怪に出会い「世間」を知るふりだし篇。

装丁が正方形の分厚い本で、本自体が豆腐っぽい形にも見えます。すいすい、というわけにはいかなかったけれど、厚さの割にはスムーズに読めたのではないかと思います。
妖怪といえば、「ゲゲゲの鬼太郎」を思い出しますが、はて怪談に出てくるのは妖怪かしら?と迷ったりしました。墓場に出るのは幽霊だよねえ。妖怪と幽霊の違いについても触れられつつ、そもそも妖怪とはなんぞや?という疑問に、京極さんの見解を披露されています。ベースは、「妖怪は人間ありきの存在である」ということ。人間が妖怪を思い浮かべなければ、妖怪はそこに存在することはできない。妖怪が自在に考え、行動しているのではなくて、人間が感じたように姿を現し、そして人間がその存在を感じなくなれば、消えてゆくものなんです。人間には触れられないし、障害物を動かすことも出来ない。扉を自分で開けることもできない。不便!「ゲゲゲの鬼太郎」なんかだと、結構おもしろおかしく自由気ままにやってるぜ感があったような気がするのですが、こちらでは、なんか縛りが多くて大変だなあ・・・。
主人公・豆腐小僧は、紅葉豆腐を持ってうろうろしているだけの妖怪。逢引中の若旦那が感得したため出現し、それまでの記憶?自我?みたいなものがなく、まっさらな状態。自分とは何者か?様々な妖怪たちと出会い、その断片をかき集めてゆくのです。滑稽達磨と後半登場する袖引き小僧との掛け合いがおもしろい!達磨先生、面倒見のいい妖怪だなあ・・・。
人間界の方では、武士たちが不穏な動きを見せ、それと連動するように妖怪たちの間では狸が良からぬ企みを実行に移そうとしているところ。狐と狸の化かしあいならぬ、いがみあい。あんまり違いについて感じたことはなかったけれど、確かに狐がお稲荷さんな一方で、狸はノーブランドな感じがする!とにかく、妖怪にも色々な解釈があって複雑ですね。人はなんだか良くわからないけれど怖い、という感情を乗り越えることはできない。だからこそ、その怖いという感情に妖怪という形を与えることで感情をコントロールする術を身につけてきたのだそうです。しかし、豆腐小僧はそういった恐怖の感情から生まれたものではなく、そのため消えることもない、妖怪の完成形のような存在。その答を得て、豆腐小僧、次はどこへ向かうのか。映画化か。3Dか。


「見ろ。あさましい。暴力の、争いごとの如何に無意味なことか。」