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読書の記録です。

「トーマの心臓」

森博嗣/メディアファクトリー

ユーリに手紙を残して死んだトーマという美しい下級生。ユーリを慕っていたという彼は、なぜ死を選んだのか。愛と孤独、生と死に苦悩する若者の内面を森博嗣的世界観で描いた傑作。

萩尾望都さん原作のコミックを、森さんが小説化。と、話題になっていたので気になって、原作を知らないまま読みました。読み終えて、世界観やいろいろなことが、ニュアンス?でぼかされていて、原作を知っていたほうが良かったかな?という感想が一瞬頭をよぎりましたが・・・。たぶん、この先も読まないだろうジャンルなので、結局いつ読んでも一緒か、という結論に落ち着きました。
全寮制の男子校が舞台・・・というだけで、なんだか禁断のかほりを感じる私。笑。特にBL好きではないのですが・・・。舞台は日本(だけど、原作では海外?)。主人公・オスカーはハーフで、他は日本人、呼び名はニックネームという設定。ある日、ユーリに思いを寄せていた後輩のトーマが死ぬ。その後、トーマと瓜ふたつの転校生、エーリクが現れる。トーマはなぜ自ら命を絶ったのか。ユーリに一体何があったのか・・・。ある意味ミステリ仕立てで、透明感漂うこの世のものではないような男子校は雰囲気バッチリでした。この世には、カワイイ男子も確かにいるけれど、男子校って言ったら、ほら、汗とか臭いとかエロ本とかじゃないですか。俗物丸出しっぽいじゃないですか。笑。そーいうのが排除されていて、生徒たちはとってもピュア。潔癖であると言った方がいいかな。潔癖な人間の方が危うい感じがしますよね。なんかポキッと折れちゃいそうな。こんなに波乱万丈な人生だと、人格が歪まないかしら・・・。といらぬ心配をしてしまいました。
理知的な会話は森ワールド全開でした。原作でも理系エリートが通う学校なんでしょうか・・・。理系トークを読んでいると、なんか、全員賢そうに見えるんだよねー。
私は原作を知らないので、トーマの真意とか、エーリクがただのそっくりさんなのか、ユーリの身に何が起こったのか・・・。すべては想像の域を出ません。とにかく純粋な登場人物たちで、BLとか言っちゃいけないのです、きっと。それは性別を超えた人間愛。・・・たまに違う人もいるかも、だけど。
保健室の先生が好きでした。学園モノに、かっこいい大人は必要です。


「結局のところ、他人と理解し合うということ自体に、そもそも無理があるのだ。人間はそれほど単純ではない。友好的でもない。自分に対してでさえ、友好的でないのだから。」


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「難民探偵」

西尾維新/講談社

ネットカフェ在住の元警視庁警視・根深陽義、就職浪人・窓居証子、人気小説家・窓居京樹が京都で発生した殺人事件の謎に挑む。

講談社100周年の書き下ろし企画だそうで。西尾さんの本、久しぶりに読みました。まあ、タイトルに「探偵」ってついてるし、多少はミステリーだろう。ミステリーならば、多少羽目を外していても大丈夫だろう。という打算づくしのチョイス。笑。昔は西尾作品を見かけたら、すぐに飛びついていたのになあ・・・。好みって変わるんだな・・・。(しんみり)
さて、本筋ですが、ちゃんと事件を解決するミステリーでした。西尾さんのはっちゃけたところも抑え気味で、物足りないファンは多かったかな?という感じ。私にとってはちょうど良かったです。ところどころ、語りが入るところは西尾さんだなーと思いましたが。それ以外は予想していたよりは、ソフト。
私としては、もうちょっと事件に比重を置いた方がおもしろかったんじゃないかな・・・と思います。捜査も謎解きもけっこうあっさりで、ちゃんとした手続きを踏襲しているのに、なんかもったいない。それにしても、防犯カメラに靴下が映るファッションってどんなだよ、とツッコミたかった。
主人公(?)の窓居証子の叔父である人気作家・窓居京樹の「作家裏話」とか根深陽義がどうしてネットカフェ難民をしているのかその苦悩とか。持たざる者からすれば、「なんだよその理屈!」となるわけで、非常にイライラした。登場人物がみんな口だけ達者な子供ばかり、という印象で好感の持てる人がいなかったのが残念。残念と言えば、事件が起こるまでの無駄な前フリもいただけない。
この脂身こそが西尾作品の魅力なのだろうけど、年のせいか、あっさりしたものの方がいいんだよねえ・・・。


「鎌かけを外す探偵というのも、実際、珍しい」
そりゃそうだ。笑。


「SPEC Ⅱ」

西荻弓絵・豊田美加/角川書店

捜査を行う当麻と瀬文の前に特殊能力「SPEC」を持つ犯罪者たちが次々現れる。気づかぬうちに2人は、いつしか巨悪の闇に飲み込まれようとしていた・・・。

くそう、表紙が一緒だ・・・!楽しみにしてたのにー。うっかり1巻を買ったら、どう責任を取るつもりだ!
様々な料理と餃子を組み合わせ、餃子の可能性を追求する新感覚料理番組★SPEC!のノベライズ第2弾です。この前、黄金伝説の節約生活で、春日が餃子解体してましたけど、餃子そのまま放りこむ当麻より、かなり繊細だぜ春日!と妙なところで感心してしまった。
ドラマは終盤ですね。次回最終回でしょうか。血を吹いていた課長の運命が一番気になります。なんだかんだで、私課長好きなもんで。雅ちゃ~ん。小説の方は、4話~6話収録となっております。今回もほぼ原作通り。
一番期待していたのは、4話のパーフェクトスーサイドの集団自殺の顛末に関するアレコレなんですが・・・。ドラマに忠実なだけあって、やはりちぐはぐでした。そもそも、生き残って幹事となった人がもう一度メンバーを召集して集団自殺をするならば、自分も中に混じってなければいけないし、なのに逃げ出した人の始末をしなければならないのであれば、幹事っていつまでたっても死ねないんじゃ?と思うのです。どうなんだろ・・・。娘さんがバイクに乗って逃走、というのも違和感がありますし。この話は全体的にどうも納得できず。
SPEC保有者たちが、能力を発動させるときのアクションがあるんですけど、冷泉の「ラミパスラミパス~」がダントツでしたが、海野の回想に出てくる病を治すSPECもおもしろかった。鼻の穴におもっきし指つっこまれるんですよ?病気治して欲しくても、一瞬悩むよね?
あとはー、瀬文と里中が居酒屋で飲むシーンなんかが好きです。回を追うごとに、瀬文カラーが付いてきて、いいなあと思います。あと、餃子のストラップめっちゃかわいいっ!販売してくれないかしら~。
雅ちゃんに別の男の影が・・・!彼女黒いですから、2股くらいじゃ驚かないよっと思ってたら、8話では驚かされました。課長、不憫だ・・・。
ここまできたら、最終巻も買いますけどー。
・・・これ、まとめて1冊でも良くない?


「当麻さん、僕だって生命を救うSPECが欲しかったですよ。ただ、才能ってのは自分が望むものと一致しない」

「神は残酷だ」


「三匹のおっさん」

有川浩/文藝春秋

還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!腕に覚えありの武闘派二名、機械をいじらせたら無敵の頭脳派一名。かつての悪ガキが結成した自警団が、今日もご町内の悪を斬る!

おじさんを書かせたら、天下一品!の有川さん。待望の還暦小説です。
「1話」不正取引事件。「2話」痴漢(強姦未遂?)事件。「3話」結婚詐欺事件。「4話」動物虐待事件。「5話」未成年脅迫事件(と表現していいのかな?)。「6話」マルチ商法。町内にはびこる悪を、めっためたにやっつける、勧善懲悪もの・・・と、すっきりとはいかないのが意外。後味が悪いのはキライじゃないのですが、なんとなく、テーマ的にすっきりハッピーエンドでしめそうなイメージだったので・・・。どの事件も、実際に当事者になったならば、あとをひきそうですよね。
キヨの孫の祐希と、ノリの娘である早苗がくっついたのは、さすがラブコメの女王の貫禄を見ましたね!じわじわ伏線をはっての5話は胸キュンでした。うまい。笑。
また、じわじわくるのは恋愛模様だけではない。ゲーセンの店長がしっかりしてきたり、祐希とキヨの関係が良くなったり。キヨのところの嫁さんは、最後の最後に改心。人間みんな成長して変わっていくところが良かったな。ちなみに、三人の中では、キヨさんが一番かっこいいと思いますー。姿勢が良い人って憧れです。
残念な点としては・・・。とにかく、祐希のファッショントークがうっとうしかったことかなあ。私の勝手な先入観の話になるんですが、大学に必ずチェックのシャツを着てくる先生がいらっしゃったんですよね。それから、チェックのシャツを着まわす人間は非オシャレである!というイメージが植えつけられてしまったんです。なので、えんじとモスグリーンだろうが何色だろうが、チェックシャツをはおるというコーディネイトは私にとっては非オシャレ。しかも赤×緑って、クリスマスカラーじゃん・・・。あと、ウォレットチェーンも、私の中では非オシャレアイテムなんですよう。そんな祐希くんが、あれがいい、これがいいと語りだすたびに、「非オシャレなくせに!エセオシャレなくせに!」という反発が生まれるという・・・。笑。
調子こきましたが、オサレ人間ではないくせに、文句つけてすいません(土下座)!


「プリンセス・トヨトミ」

万城目学/文藝春秋

このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった・・・。

ちょっと前に読んだのですが、なんだか感想が書きにくくて放置してました。記録程度にちょろりと。
会計検査院の3人もなかなかインパクトのある人々だったのですが、一番インパクトがあったのって、やはりセーラー少年なんですよね。詰襟を着ることに違和感があるだけで、男の子が好きってわけでもない。わからない。というところが新鮮だったのかなあ。ニューハーフというよりも、女がメンズもの着るのに、男がレディスを着て何が悪いという感覚が近いのかしら。私は男がスカートはいたっていいけどね。スネ毛の処理はちゃんとしろよ!これ、夏に短パンはいてる男子全員に言いたいんだけど、足見せる時は男であろうとスネ毛剃って下さい・・・!理屈じゃないんだ。生理的に受けつけないんだ。
あと幼なじみの茶子さんも、男前でかっこよかった。私はこの2人が好きだったなー。
大阪国を巡るあれこれは、確かにおじさんたちの熱き戦いだなあと思うのですが、結局それがどうしたという感想が残るのですよ。税金つぎ込んでまでこのシステムを維持する意味があるのか、最後まで疑問だった。
あれだけ不審な動きをして、女性たちが気付いていないわけもなく。知ってて、知らないフリをしてあげてるんだっていうから、恐れ入ります。やはり女は強い。