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読書の記録です。

「本題」

西尾維新/講談社

西尾維新が書いた5通の手紙と、それを受け取ったクリエイター達による「本題」から始まる濃密な対談集。

西尾さんの本最近読んでないなあ。
というか、西尾維新作品に対する世間の需要がまだあるんだなあということに、びっくりです。
羽海野大先生の名前があったので、読んでみました。
意外にも、みなさん西尾さんの本を結構読み込んでおられて(しかもベタボメ)、「そ、そんなに褒めるポイントがあるのか・・・!」と驚愕しました。それにしても西尾さん、一日2万字とか書くんですね・・・。ノルマ?どうりで内容がほとんど意味のない・・・薄っぺらい印象が残るんですねえ・・・。西尾さんの言葉遊びが10年くらい前は好きだったので、やっぱり色々語感を考えながら書いてらっしゃるんだなあと思ったり。
羽海野さんとの対談では、クリエイターとしての才能について、ひとしきり自慢話のようなものが繰り広げられています。恐らく、お二人とも人一倍の努力をされてきた、という自負があるからかもしれません。まあ、才能云々を理由にして辞める前に、血ヘド吐くまでがんばれやという話ですかね。(たぶん違う)しかし、努力したからといって成功できるとは限らないという・・・シビアな話でした。根性論、ごもっともです。でもね、・・・向き不向きはあるような気がする・・・。
あとは、辻村さんが今は余生を生きているようなものだ、とおっしゃっていて。・・・ずいぶんと充実した余生ですね・・・とジト目になってしまいました。
西尾さん、対談では意外に普通の人でした。
羽海野さんが、ベタボメしていたということもあり。もうすぐ完結予定ということもあり。物語シリーズの続きを読むか!と思って読んだんですけど、とんだ時間のムダでした。感想は後日。


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「致死量未満の殺人」

三沢陽一/早川書房

雪に閉ざされた山荘で、女子大生・弥生が毒殺された。容疑者は一緒に宿泊していた同じ大学のゼミ仲間4人ー龍太、花帆、真佐人、圭。外の世界から切り離された密室状況で、同じ食事、同じ飲み物を分け合っていたはずなのに、犯人はどうやって弥生だけに毒を飲ませることができたのか。

第3回アガサ・クリスティ賞受賞作。
閉ざされた吹雪の山荘。毒殺。疑心暗鬼の容疑者たち・・・。とベタベタなミステリの設定で、楽しみにしていたのですが・・・。結構残念な仕上がりでした。
まず、事件は15年前に起こったものであるということ。参加メンバーの1人であった花帆が夫と経営する喫茶店に、同じく参加メンバーだった龍太が来て「実は俺が犯人なんだ・・・」という告白から、回想が始まります。こんなこと言ったら野暮だけど、15年前のことなんかそんなに詳細に覚えてないし(少なくともソラで状況をスラスラ言えるとは思えない。)、何のために15年前という設定にしたのか。毒物の入手経路のため?
あとは、序盤は気にならなかった文体。後半、物語が盛り上がるにつれて、筆が乗ったのかなんなのか、やたらと大仰な言葉使いになってきて、興ざめでした。なんで、ここに手を入れなかったのかなあ。
トリックが、まあまあだっただけに残念です。メンバー全員が被害者に殺意を持っていて、全員がなんらかの毒(しかも同じ種類の)をそれぞれの方法で仕掛けていた・・・というオチ。しかも不発のものもあったりして。笑。砂糖はどうかなあ、混ざらないかなあとは思いますが・・・。そもそも角砂糖だったらどうするつもりだったんだろ?ということで、犯人は「実は俺が犯人なんだ・・・」と思っていた龍太だけじゃなかったっていう、龍太にとってはかわいそすぎる真相。そこから、さらにもうひとひねり入ってきます。これが蛇足でした。実は、この4人に殺意を巧みに(?)誘導し、毒殺するよう仕掛けた黒幕がいたのです!学生とはいえ、大人がこんなことで誘導されるのかなあとも思うし、一番弥生に消えてもらわないと困るのもこの人だと思うので、もっと確実に殺せる方法を選びそうなモンですけどねえ。
この真相を看破したのが、学生時代からつきあっている弥生のダンナ。これがまた、意味もなく名探偵風な演出で・・・。おもろいので、ちょっと抜粋。
「いつも細い黒髪に霞んでいる玲瓏な目が私をじっと捉えていた。普段の穏やかさは微塵もなく、今は標本針にも似た、私の自由を奪う鋭利な凶器にしか見えなかった。私は彼の思うがままの姿を取る一匹の蝶に過ぎない。」
まあ、このダンナが本気を出して色々推理を披露していきます。・・・ってアンタ、部外者じゃなかったんかーいってツッコミたくなります。いやいや、15年前に本気出そうよ!
もっとツッコむなら、この被害者の弥生っていう女性が、もんのすごく性悪に描かれているのですが、彼らがどうしてそんな最悪な女と関係を続けているのか、よくわかりませんでした。中・高は難しいけど、大学時代の友達関係って結構自由に切れない?こんな人なら無視しちゃえばいいんじゃない?弥生も弥生で、授業のノート欲しさに好きでもない男と関係を持つのも意味不明だし・・・。
あとは、吹雪の描写や容疑者たちをカノンの演奏者にたとえるのもしつこい。著者が気に入ってるモチーフなんだろうけど、げんなりします。もっと毒殺のトリックを際立たせた方が絶対良かったと思う。
「彼らの弥生への殺意は氷柱のように冷たく尖り、それらは他人を陥穽にかけようとする邪悪な思惑によって複雑に絡み合い、煩雑で醜悪な氷塊へと変貌を遂げた。」
・・・こてこてに装飾した表現だけど、結局「4人の殺意がものすごーく高まって、現場で集約されました」ってことでしょう。この文章がいける人なら、満足できるのでは。


「何が困るかって」

坂木司/東京創元社

子供じみた嫉妬から仕掛けられた「いじわるゲーム」の行方。夜更けの酒場で披露される「怖い話」の意外な結末。バスの車内で、静かに熾烈に繰り広げられる「勝負」。あなたの日常を見守る、けなげな「洗面台」の独白。「鍵のかからない部屋」から出たくてたまらない“私”の物語ーなどなど。日常/非日常の情景を鮮やかに切り取る18篇を収録。

「短劇」のようなブラック坂木さん降臨か!?と期待して読みましたが、キレが足りない・・・という印象の小説が多かったです。もやっとした感じ。私が期待したテイストではありませんでしたが、小骨がひっかかるようなお話たち。あとがきを読んで、こんな感想を持ったということは、坂木さんの勝利なのかなあと思いました。
以下、印象に残ったものを。
「キグルミ星人」旦那さんの生死が気になるところですが、それよりも何よりもキグルミ星人に心ひかれました。見た目はファンシー、中身はエロいキグルミ星人。「ナイショ」が何故かエロい!とか思ってる人ってあんまりいないだろうなあ。笑。ステキです。
「勝負」子供のときは早く押したかったバスの乗降ボタン。いつから押すと負けのような気分になったんだろう?降りれないのはイヤなので、あるポイントで必ず押すようにはしてますが・・・。
「カフェの風景」世間は悪意で満ちている・・・とは思いたくないですが。飼い犬がおじいさんに訴えているのは「ねえ、死んで」「早く、早くう」だったとは・・・。こ、こわい・・・。自分がどう思われているのか、わからない方が幸せですねえ。
「ぶつり」狩りと言えば、最終的に行き着くのは人間だろうなとは思っていたのですが。まさか行きずりのホームレスだとは思いませんでした。そこは、ほれ、相手の人なんじゃないの。
「ライブ感」最近増えてるあれですね。フォロワーや、いいね!の数を増やすためなら、脱いだり、過激なことだってしてみせる。刺激にだんだん慣れていって、正常な判断力を失わせていく。いつでも誰かとつながれる環境は、置いていかれる不安を増強するものなのかな。
「都市伝説」てっきり男は懲らしめられるのかと思ってました。まさかの救いがない結末!
「ちょん」えー、性格悪いなあ。なんかイヤな奴だなあ。自分が先輩になったら、こういう試すことしそうでもっとヤダ。笑。
「何が困るかって」ぽとり。ぽとり。と落ちていく指。だけど主人公は動じない性格で、手袋でごまかしては、まあ何とかなるだろうと思っているという。なんだこの人。新婦さんならぬボクサーはパンチ力の低下が気になるけど、まあ負けたっていいじゃんって思ってる。なんだこの人。不気味すぎるぜ。
「仏さまの作り方」ありがとう、と言われたい。感謝されたい。そう思う人は多いと思いますが、自分の身を切ってまで感謝されることを追求する人はなかなかいない。財産を全部処分して、村を作って自分が死んだあとには金塊が発見されて・・・。本人は本望だったかもしれないですけど、弱い人間につけ込む歪んだ方法でした。
「神様の作り方」お話として完成されているなあという印象。適当な場所を選んで花を供え、そこを事故現場にしてしまった男。被害者はあきえちゃんという少女で、好きな食べ物はチョコレート。好きな飲み物は炭酸飲料・・・と次第に設定は細かくなってゆき、交通事故で亡くなったあきえちゃんは地域に浸透していく。そこにいると信じれば、そこにいる。霊は人が認識しなければ存在し得ないのだ。まあ、この人、よっぽどヒマだったんですねえ。


「鋼殻のレギオスⅩ コンプレックス・デイズ」

雨木シュウスケ/富士見書房

甘い香りとともに、今年もまたツェルニにその日がやってきた。愛の告白の代わりにお菓子を贈るバンアレン・デイ。その宣伝ポスターの前でフェリは呟き、無表情のままため息をつく。同じ頃、ニーナはディックと名乗る、不思議な雰囲気を漂わせた青年と出会う。その出会いが、後にもたらす真の意味を知らぬままに・・・。

6巻からジャンプして10巻でーす!
約1年に1冊ペースなので、そのたびリセットです。もうちょっとまとめて読まないとダメやなあ。ところでレギオスってもう終わったらしいですねー。25巻まであるらしいですねー。・・・にじゅうご冊も・・・。
今回は短編プラス中編で、本編の補足のようなエピソードでした。特に短編のペラペラさ加減といったら・・・。笑。バレンタインデーの悲喜こもごもな話。ここで注目すべきは、ニーナ先輩のモテモテ具合!女子高のノリやなあ。みんながチョコをあげたいレイフォンは、倉庫荒らしの犯人を捕まえるため自警団の手伝い。これはシャンテが生まれ故郷のハトシアの実に反応したためで、そのシャンテを捕獲するために狼面衆がこそこそ動いていたようです。シャンテは興奮すると大人になるよ!という話です。
そして中編は、ディック先輩登場&ニーナの幼少時の話。そうです、私がぶつぶつ文句を言っていたディック先輩登場の回です。これで少しは話の展開がわかるかいな?と思ったんですが、全然わからんやん・・・。ディック先輩はあっちの世界の人らしいです。えーと、あとニーナに技を教えてくれて・・・。とにかく、ニーナやツェルニの味方ってことで理解しておきます・・・。サヴァリスも出てきたけど、シャンテに興味があるようで。シャンテはこれから話に関わってくるのかな?なんだか情報の出し方がイマイチ・・・。
ニーナ先輩の幼少時は超かわいかったです。家出でクッキー買おうとか超かわいい。ニーナあってのレギオスです。ニーナがいなかったら、もう読むのやめてますね(断言)。


「わたしは、わたしだ」
そう、あなたはあなた。私は私。カモメはカモメなのです!


「死と砂時計」

鳥飼否宇/東京創元社

世界各国から集められた死刑囚を収容する、ジャリーミスタン終末監獄。親殺しの罪で収監されたアラン青年は、“監獄の牢名主”と呼ばれる老人シュルツと出会う。明晰な頭脳を持つシュルツの助手となって、監獄内の事件の捜査に携わるアラン。死刑囚の青年と老人が遭遇する、摩訶不思議な事件の数々。

久しぶりに鳥飼さんの本を読みました~。
舞台は監獄。被害者も犯人も監獄の中!という特殊な状況での殺人事件です。主人公は親殺しの罪で死刑となったアラン。彼はジャリーミスタン終末監獄に送られる。そこで不可解な事件が起こり、アランは監獄の長老・シュルツの助手となり事件を捜査することになるのです。
「魔王シャヴォ・ドルマヤンの密室」死刑の執行日が決定した2人の確定囚が、独房の中で殺された。ほっといても殺される2人を何故わざわざ殺す必要があったのか・・・。びっくり人間にだけ可能なトリック!しかも絶対にフルヌードにならなければならないという・・・!なんてハードルの高い犯罪なんだ・・・。
「英雄チェン・ウェイツの失踪」海外で天才詐欺師が脱獄して、気が済んだから戻ってきました・・・みたいなニュースを見ましたが、このお話で脱獄したチェンも実は戻ってきていたというオチ。ジャリーミスタン終末監獄では、囚人にチップを埋め込んで管理しており、立ち入り禁止区域に入るとものすごい電流が流れる仕組みになっています。そのため脱獄は不可能と思われていたのですが、チェンは見事脱獄に成功します。体格のいい看守をおもりにして・・・というのは想像がつきましたが、チップの埋め込んであるところにはびっくりでした。目玉をえぐり出さないといけないんだぜ?
「監察官ジェマイヤ・カートレッドの韜晦」これは印象に残ってないなあ。なんか人騒がせだなと思ったような・・・。要は自殺ですよね?
「墓守ラクバ・ギャルポの誉れ」死体の埋葬を引き受けていたギャルポ。しかし、彼が墓を掘り返し、死体を食べているのではないかという疑惑が浮上する。ただの宗教観の違いだったんだけど、ギャルポがジャリーミスタン語を理解できなかったため、コミュニケーションが成り立たず事態を複雑化してしまった。土葬も鳥葬もいやです。火葬して欲しいです・・・。
「女囚人マリア・スコフォールドの懐胎」女性の囚人が獄中で妊娠したらしい。彼女が収監されてから13ヶ月が経っているので、収監される前の妊娠とは考えられない。謎を解くためシュルツとアランは女囚が収用されているエリアへ向かう。このマリアという女性はアランの幼なじみで、アランに好意を寄せているのですが、この好意が屈折した愛へと変化したんですね・・・。アランがかわいそうで、女医さんが無駄にセクシー。そんな話。これってある意味レイプなんじゃないの?
「確定囚アラン・イシダの真実」ついにアランの死刑が執行されることになった。死刑当日まで砂時計で時を計りながら空ろに過ごすアラン。そして明かされるシュルツ老の正体。とうとう死刑執行か・・・というところで、逆転につぐ逆転。なんと死刑はお金持ちに向けたショービジネスだったのです!あるある!黒幕は、ジャリーミスタンのえらい人。あるある!死刑執行直前にアランを助けにきたシュルツ老人。相討ちになって、アランだけを逃がそうとする。あるある!というあるある展開が続きましたが、最後の1行がもう一回物語をひっくり返しました。シュルツ老人には絶対何かあるぜ。こいつは犯人の香りがする・・・。と思っていたのですが、想像を上回るマッド・サイエンティストでした。彼にとっての子供とは、ウィルスだったんですねえ・・・。後半、アランがかわいそうだったなあ・・・。