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読書の記録です。

「福家警部補の挨拶(再読)」

大倉崇祐/東京創元社

再読という言い訳で、色々省エネモード。
福家警部補シリーズのドラマ、視聴率は伸びなかったようですが、私は大変楽しませていただきました!壇れいさんはきれいだし(ちょっとキリッとしてましたが)、硬派な作りで好きでした。なんでポラロイドなん?という疑問点はありますが・・・。ポラロイドの写真はパタパタしちゃ駄目ですよー。
で、小説とドラマを比較しようとして自分の過去の感想を読み返したところ・・・。・・・あらすじが全くわからねえ!大ざっぱな自分にがっかりです・・・。せめて各話にわけよう。
「最後の一冊」これはドラマには入っていなかったような?私設図書館の館長が、図書館存続のために殺人を犯す。なんとなく一番記憶に残っていたのはこれ。ビールの空き缶についた水滴でできた跡に、眼鏡にとんだ血痕。細かいポイントをついてきます。
「オッカムの剃刀」これはドラマでも前後編でした。元・科警研科学捜査部主任の柳田教授との対決!“オッカムの剃刀”が気になって、ググってみました。「オッカムの剃刀とは、ある事柄を説明するためには、必要以上に多くを仮定するべきでないという指針。(ウィキペディアより)」心理学や統計学で応用されているようです。5年前から怪しいと思われてたら、もう逃げられないよね。笑。石松さんの出番って結構少なかったのかー。ドラマでは警部で上司だったけど、この先昇進するのかな・・・。
「愛情のシナリオ」これは、殺害方法がちょいと違いましたね。こちらは鳥も一緒に死んでた・・・。電池の切れたコンロは、設定としてちょっと苦しいかもしれない。映画に詳しい福家さん。
「月の雫」社長は男だった。ドラマでは片平なぎささんでした。酒造りを愛するが故に、ボロがでちゃったという・・・。車に乗っていたもうひとりの人物。深夜に開けられたはずの木戸、月の光、そこからでなければ見ることができなかった風景・・・。福家さんの畳み掛ける推理が冴えてます。それにしても、酒豪とは・・・。
ドラマでは、警察の組織の中でのしがらみとか、福家さんが単独行動することで、同僚や上司の反感を買ったり・・・という要素も織り込まれていましたが、小説はその辺カット!でした。ロジックに重点を置くなら、組織云々は無くても良いかなと思います。昇進と福家さんの過去については、あとの2冊で言及されているのかもですね。
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「シャーロック・ホームズたちの冒険」

田中啓文/東京創元社

シャーロック・ホームズ&アルセーヌ・ルパン、ミステリ界が誇る両巨頭の新たなる冒険譚。赤穂浪士討ちいりのさなか吉良邸で起こった雪の密室殺人。あのアドルフ・ヒトラーがじつは大変なシャーロキアンだったら・・・。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)が日本に来た本当の理由とは。著名人の名推理に酔いしれる、連作短編集。

オマージュ、ではなくパスティーシュ。違いが良くわかってないんですが、パロディ寄りってことでいいのかな・・・。
「“スマトラの大ネズミ”事件」シャーロック・ホームズの巻。ワトソンの遺稿の中に発表が伏せられていたものがあった!ホームズの名誉に関わる話なので、関係者の死後まで発表は見合わせて欲しいという、ワトソンの要望があったためだという。一体、原稿には何が書かれていたのか・・・。
このトリック、どっかで読んだ記憶があるのですが、全く思い出せない。初出は知らないし。寄生した宿主の姿を模写する虫(正確には、虫が体液を出して背中に顔を描き出す)を使ったトリックなんてそうそうないと思うんだけど。笑。首の断面から足が生えてたっていう描写、どっかで読んだんだよなあ。そうそう、肝心のオチはホームズとの対決で、滝つぼに落っこちて死んだと思われたモリアーティ教授が、ゾンビとして生き返っていたという・・・。実はホームズも・・・!
「忠臣蔵の密室」大石内蔵助の巻。日本人は何故か好きな忠臣蔵。私なんかは浅野内匠頭がもうちょっと我慢したら良かったのにね、って思っちゃうクチです。赤穂四十七士が吉良邸へ討ち入ったとき、すでに吉良上野介は何者かに殺されていた!
探偵役は、大石内蔵助の妻・りく。息子から、吉良を殺したのは実は自分達ではない旨の手紙を受け取ったりくは、真相の解明に乗り出す。そんなことかー、と思ってしまったのですが・・・。
吉良じいさん女中に手を出す→キレた女中の逆襲によりじいさん殺される→父ちゃんを殺された息子がキレる→女中袈裟切り→慌てる側近→そういや大石の一味が討ち入りの計画立ててるって!→じゃあ、大石の奴らに殺されたことにしちゃえばいーじゃん!
・・・意外に、本筋よりおもしろいかもしれない。
「名探偵ヒトラー」ヒトラーの巻。ヒトラーが実はシャーロキアンだった!というある意味この中で一番ありえない設定。私の中でヒトラーは独善的で残忍な印象なので、微笑むヒトラーとか最初は違和感がありましたが、最後のブラックさは彼のイメージ通りでした。
ヒトラーの執務室には、ロンギヌスの槍が飾られている。公に展示されているものは偽物でこの部屋にあるのが本物なのだ。しかし、ある日光る怪人の急襲を受け、ロンギヌスの槍は奪われてしまう。
もともと槍は偽物で、しかも穂先だけだったので引き出しにささっと隠したっていう・・・。ボルマンの背中に蛍光塗料で描かれたのが怪人だったっていう・・・。トリックはあれっ?て感じでした。それより、口封じのためにどんどん人が殺されていくのに恐怖を覚える。
「八雲が来た理由」小泉八雲の巻。松江で小泉八雲が遭遇した不思議な出来事3本立て!
ろくろ首と耳なし芳一にのっぺらぼうです。
ろくろ首の印象があまりなく、いつの時代もバカな男がいるもんだと思った。耳なし芳一は、八雲をはめるための寺側の自作自演で、芳一さん耳持ってかれなくて良かった~と安心。のっぺらぼうは・・・。お坊さんの頭って剃髪してても、肌色じゃなくてグレーに見えません?果たして顔に見えるのか、実験してみたいです。笑。カバンにつめられたミイラは怖いですね。お母さん思いの優しい(ちょっと壊れた?)八雲さんだったというオチできれいにまとまりました。
「mとd」アルセーヌ・ルパンの巻。これは何やねん!と。ルパンもホームズも変装得意ですけど、まさか同一人物とは・・・。えっと、モーリス・ルブランも同じ人だとしたら・・・、めっちゃ忙しい人じゃないですか!っていうか、変態じゃないですか!笑。
今回のルパンのターゲットは宝石。凶暴なミミズクの足にくくりつけられており、盗むのは不可能。・・・なはずなのですが、その後、少女の石像が見つかった場所へ行って、実は少女は昔ルパンと恋仲だったとわかり、そこからヒントを得たルパンは再び戻ってきて、ミミズクと対決!一瞬で石化する毒によってミミズクは石になりましたとさ。・・・正直、対決シーンは呆気にとられてました。一体なにが起こったのか・・・。笑。最後に同一人物ネタをぶち込まれたので、私的にこの本の中で一番迷走した話になりました。
ちなみに、“mとd”とはヒエログリフの対応文字で“m”は“フクロウ”を、“d”は“コブラ”を意味するそうです。なるほど。


「書店ガール」

碧野圭/PHP研究所

吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、部下亜紀の扱いに手を焼いていた。協調性がなく、恋愛も自由奔放。仕事でも好き勝手な提案ばかり。一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。そんなある日、店にとんでもない危機が襲う。

本屋さんで働きたいと思ったこと、ありますか?
私、ないんですよねー。図書館では働きたいと思ったことがあって、司書の資格は取ったんですけど・・・。結婚できたら、派遣社員でいいから図書館で働きたい・・・。本屋と図書館の違いは、営利か非営利かっていうことがあると思うんですけど、本を商業的に考える・・・ということができないせいかもしれません。お客様と本をつなぐ、とは言っても、売れてナンボやもんなー。
主人公は40歳・独身の西岡理子。最近彼氏に二股をかけられた挙句、振られてしまった。かたや、部下の北村亜紀はコネで入社した27歳。美人。新婚。夫は大手編集部のやりて編集者。このキーワードだけで、私も亜紀に対する反発心がムクムクわいてきてしまいます。笑。
しかし、読んでいくと亜紀は非常にまっすぐな人で、正直なだけなんですね。まあ、だから罪がないというわけではなく・・・。これを相手が上手くかわせたり、受け止めたりできるかが人間関係が良好になるポイントなんだろうなと思いました。受け手側の理子は、亜紀より年上とはいえ(年上だからこそ?)彼女のストレートな物言いを受け止めきれず、なんだか苦手・・・から、気に食わない!この小娘!になったのかなー。
自分が嫌いな人は、大抵向こうも自分のことが嫌い。・・・というわけで、何かと反発する2人ですが、閉店の危機にタッグを組んで立ち向かうことになります。意外にも、最初はいい感じだった男性社員たちが、手のひらを返したように、理子に数々の嫌がらせをする展開には驚きました。男の嫉妬ってやっかいですね・・・。亜紀の平手打ちで、胸がスッとしました。よくやった!笑。
最後の巻き返しは、お約束の展開で、実際はそんなうまいこといくわけがない!と分かっていても、爽快でした。私、フェアとか全く興味ないですが、色々考えて作られてるんですよねー。とはいえ、やっぱり飾りつけとかPOPは好きになれないです。POPって結局は感想文で、店の中に飾ってあるのってなんかうるさいっていうか・・・。うまく言えないんですが。
最後は残念である(何だあの社長は!)と同時に、次巻への期待が膨らみました。
決して上客ではございませんが、私も本屋さんが大好きです。


「本屋は本のショールームだもの。」

「本屋で売っているのが、一番素敵に見えるのだもの。」


「ジェノサイド」

高野和明/角川書店

創薬化学を専攻する大学院生・古賀研人は、急死した父親の遺書を手掛かりに、隠されていた私設実験室に辿り着く。ウイルス学者だった父は、そこで何を研究しようとしていたのか。同じ頃、特殊部隊出身の傭兵、ジョナサン・イエーガーは、難病に冒された息子の治療費を稼ぐため、「人類全体に奉仕する」作戦に参加することになる。イエーガーは暗殺チームの一員となり、戦争状態にあるコンゴのジャングル地帯に潜入する。

「野生時代」で途中まで読んでいたのですが、そういや結末はどうなったのかな~と思い、読んでみることにしました。そういえば、何年か前の「このミス」で1位をとってましたね。私の印象では、SFかサスペンスというイメージだったので、このランキングを参考にミステリーだと思って読んだら、騙された気分にならないかなあと思ってました。まあ、その時はイエーガー達が、コンゴの脱出を開始したあたりだったので、その後なんかあったのかな、と。最後まで読んでみて・・・、やっぱりこれはミステリーじゃないなあ、というのが私の感想です。ハイズマン博士からルーベンスへの謎かけをミステリーとしてみることも可能ですが・・・。でもやっぱりSFだよな・・・。
物語の主軸は3ヶ所。日本の古賀研人(薬担当)、コンゴのイエーガー(新人類担当)、アメリカのルーベンス(アメリカの内政担当)の3者が物語を展開していきます。とにかく展開がスピーディで、本の分厚さを感じさせないです。映画を観てるような感覚が近いです。題名の「ジェノサイド」の意味は大量殺戮。人だけが、同種族の中で大量殺戮を行うのだそうです。そんな人類がさらに進化し、新人類が誕生した!将来的には、現在の人類は淘汰され、新人類が生き残るだろう。事態を重く見たアメリカ政府は、新人類の抹殺計画を実行に移す。新人類も黙ってなくて、コンゴから脱出するために自分を殺しに来たはずの衛兵を味方につける。そのために、日本の古賀親子に薬を作るためのソフトを与える。そして、その薬をエサに難病の息子を持つイエーガーを仲間に取り込んだのだ。
こうやって見ると、新人類おそろしいですね・・・。自分が日本に行くために、勧誘しやすいターゲットが候補に挙がるまで、候補者を殺し続けるし・・・。将来、新人類が大多数を占める世の中になったとしても、また争いが起きるんじゃないかなあとは思います。だって、今ですらこんな悪知恵が働くんだぜ?成長したら、すごい策士になりそう。
ミックの扱いがちょっとひっかかったんですが・・・。日本人をそこまで悪者にしないでも・・・。ミック、最後まで最悪な人でした。日本人の中でも、あそこまで凶暴性むき出しなのは珍しいと思うんだけどなあ。韓国との話とか、話の流れとかみ合っておらず、思想の部分では?となりました。ジョンフンはいい人だと思うけど、それを強調するために伯父さんのエピソードを持ってくるのは、どうなんでしょう?
創薬のパートは、うまくいきすぎ感がものすごいですが、うまくいかないと話が盛り上がらないわけで。笑。でも、実際研究ってそんな簡単にいかないよね。渦中のSTAP細胞も、もし、本当にあったらそれは素晴らしいことだけど、ips細胞ですら適用がまだ角膜など一部に留まっていることから見れば、人間の体は本当に奇跡で、そんな簡単に切ったり貼ったり増やしたりできるもんじゃないんだなと思います。でも、挑戦し続ける科学者のスピリットが素晴らしいです!話が混ざっちゃったけど、研人君の目標がクリアになって、お父さんへのわだかまりが無くなったのは良かった。できれば生きてる間にわかりあえたら良かったのにね。
人類はゆるやかに衰退の一途を辿るだけ・・・。という展開は残念です。人間もそんなに捨てたもんではないと思うのですが・・・。


「シュークリーム・パニック<Wクリーム>」

倉知淳/講談社

体質改善セミナーに参加したメタボな男性4人組。インストラクターの無慈悲な指導によって、耐え難い空腹感が行き場のない怒りへと変わっていく中、冷蔵庫のシュークリームが盗まれる事件が発生する。ミステリマニアの受講者、四谷は探偵役に名乗りを上げる!

シュークリーム・パニックの片割れ「Wシュークリーム」編です。
「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」うーん、実に馬鹿馬鹿しい・・・!(褒め言葉)インストラクターのシュークリーム(1個420円)が盗まれた!この体質改善セミナーは人里離れた田舎で行われており、外部犯とは考えにくい。犯人はこの中にいる!・・・四谷さん、途中まではいい感じだったんですけどねえ。まあ、お腹が空いたら、後先のことなんて考えないもんなのかもしれません。笑。それにしても、インストラクターの十津川さんに、猫丸先輩に相通じるものを感じます。あの、べらべら喋るところとか。
「通い猫ぐるぐる」作者の猫愛にあふれた一品。うずまきちゃん(猫の名前)の仕草ひとつとっても、やけに描写が細かい。笑。爪に隠された暗号よりも、主人公たちの結婚よりも、うずまきちゃんが「にゃあん」と鳴くシーンを書きたかったのではないかと思っちゃった。ちなみに、私は一緒に暮らすなら犬派ですが、生まれ変わるなら猫派です。
「名探偵南郷九条の失策ー怪盗ジャスティスからの予告状ー」アンフェア?うるせえっ。やかましいっ。・・・と先に言われたら、何にも言えないじゃないですか!もし、これから読む人がいたら、犯人当てをするだけ無駄だとアドバイスしたい。アニメファンのサイン色紙に落書きをしたのは誰?という謎。材料が、呼び名だけっていうのはなあ・・・。「つるさんはまるまるむし」という絵描き歌が懐かしかったです。描いた描いた。
コメディ→猫→アンフェアな感じで、こちらは脱力系かな。私はこっちの方が好きです。しかし、これ1冊にまとめた方が題名との整合性がとれるような気が・・・。講談社の新書って結構分厚いの多いからいけそうなもんなのに・・・。


「まあまあまあ、ちょっと、あなた、落ち着いて落ち着いて」

「それで、どこに置いてあったんですか、その特製濃縮プレジデントシュークリームは」