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読書の記録です。

「我が聖域に開け扉」

秋田禎信/富士見書房

アイルマンカー結界に穴があき、そこから女神が侵入してくる。聖域の始祖魔術師たちは大陸を捨て、自分たちのいる玄室だけに結界を張るつもりだと言う。オーフェンたちは彼らを阻止するため聖域へ向かう。

最終巻!
長かった・・・。約一年ほどかかりました・・・。しかし、とびとびで読むよりはまとめて読んだ方が話が良くわかりますねえ。これから、ライトノベルはシリーズまとめ読みに変えようかなあ。
今までの話が収束しています。領主も、ロッテーシャもチャイルドマンも、第二世界図塔という装置を作動させ、魔王スゥエーデンボリーを召喚するために造られた人造人間だった。天人種族は、この危機を見越して手を打っていたと、いうことだと思うのですが。ディープドラゴン種族との盟約も、この時のために交わされたものだったと。本を読んでいるときは、「なるほど!」って納得してたのに、いざ文章におこしてみると、まとまらない・・・。
最後はチャイルドマン教室の面々が勢ぞろい!フォルテが、あっさりネットワークを乗っ取られて、廃人になってるのには驚きました。こうなるとコミクロンがかわいそうになってきますねえ。1巻ですでに死んでるなんて、見せ場なし。そしてプレオーフェンでお笑い要員になってしまうという・・・。笑。アザリーも消滅しちゃったんだなあ。コルゴンは生き残ったけれども、その後は不明。ティッシとハーティアはもといた場所に帰るのかしら。
マジクとイザベラの特訓は結構好きでした。っていうか、イザベラが好きだ!なんだあの不意打ち!ここで、それを持ってくるか。笑。マジクはオーフェンの背中を追いかけていくんだろうなって気がする。いわゆる理想というやつではないかな。クリーオウは最後にヘビーな展開をもたらしてくれました。レキがー!でも、オーフェンにあそこまで言わせるなんてすごいな。「女神だって殺してやる」なんて、すごい殺し文句。あれ言われたら女は落ちると思うなあ。ディープドラゴンの子供が、ちゃんとおっきくなるといいな。
コルゴンとオーフェンっていうのは、似て非なる目的だったわけで。コルゴンの結論も極端だけれど、オーフェンの結界を失くすという結論もなかなか過激。今まで悪目立ちしてたってことなんかなー。リスクは減ったけれども、女神が再来する可能性もゼロではない。天災みたいなものとしてあきらめるしかない、と。それにしても、神様ってどうして人の姿になってしまうんでしょうか。
オーフェンが一人で旅立つっていう最後は、キレイな終わり方だったと思います。
いよいよBOXを開ける前に!
この勢いで、無謀編も読んじゃいますぅ☆
・・・。わからない人は、わからなくていいんだ、うん・・・。


「それでも言わないとな。さようならだ」


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「英雄の書」

宮部みゆき/毎日新聞社

お兄ちゃんが人を刺すなんて…。“英雄”に取りつかれた最愛の兄を追って、少女は物語の世界に降り立った。そこで彼女は、すべての物語が生まれ帰する一対の大輪を前に、恐るべき光景を目にしてしまう。

毎日新聞の夕刊で連載されていた作品。うちは毎日新聞を購読していまして連載のお知らせが出た時には「読むぞー!」と意気込んでいたのですが・・・。お恥ずかしいことに、夕刊毎日読まないもんで、気がついたらもう取り返しのつかないことになってました・・・。そもそも、新聞の連載小説って1回の掲載量が少ないからまどろっこしくて、途中で「ええい、もう、単行本になってからまとめて読むわー!」とやけっぱちになってしまいます。毎日のことなんで、仕方ないってわかってるんですけれども。ええ。
時代小説、ミステリー、怪談、ファンタジー、と引き出しをいっぱい持っておられる宮部さん。今回はファンタジー。ファンタジーと言えば、「ICO」の悪夢(無駄にくどかった)を思い出して、めっちゃ不安だったんですが・・・。上下巻というボリュームに関わらず、すっと読めました。読みやすいファンタジーではないかと思います。
とにかく世界観がしっかりしていて、物語のルールもぶれていない。色々なことが最後に明かされて、そこはちょっととってつけたような印象はありましたが、伏線はきれいに回収できていたかと。友理子が訪れた無名の地は、物語が生まれ、また還ってゆくところなのですが、物語が必ずしも友理子の住む世界から生まれたものではない、というところが興味深かった。領域(リージョン)という呼び方になるのですが、領域は一つではなく無数にあり、物語も人が書いたものだけでなく、物語の中の登場人物が書いたものもまた一つの物語として存在している。入れ子みたいな構図で、メタな雰囲気・・・。
友理子の言動が短絡的なことがままあり、そこはイラッとさせられますが・・・。小5だし、仕方ないか・・・?一方、友理子を取り巻く大人たちは、ものすごくオトナで包容力があってすごいなーと思いました。アッシュとか。私だったら、ガチで喧嘩してますねー、子供相手に。笑。
現実に、大樹は人を殺してしまっているので、ハッピーエンドは難しいだろうな、とは思っていました。その中でのベストな終わり方だったと思います。黄衣の王を封印することはできなかったけれども、大樹を成仏(?)させたことはできたわけですし。
友理子のその後とかって、絶対続編とか出そうだなー。むしろ出て欲しいなー。強くなった彼女に会ってみたい。


「我が館にさまよえ虚像」

秋田禎信/富士見書房

多くの戦死者を出してたどりついた領主の館。殺されたはずの領主は生き返り、ダミアンの腹の中は読めないまま。マジクとクリーオウまで領主に心酔してしまったのか!?

とうとうたどりついた最接近領。
領主・アルマゲストというのが曲者でして、周りの人間を心酔させることができるみたいなんですな。しかも、死んだはずなのに、次の日ケロリと生き返ってるし。なんじゃお前ー!ここでウィノナとダミアンともお別れです。ウィノナは、まあいいとして・・・。ダミアンの最後が小物っぽいな・・・。
ロッテーシャは、そんな役割でしたっけ!とびっくりした。そうかあ、領主と同種の存在なのか。本人に自覚が無かっただけで、いつでも他人を支配下に置けたということ?コルゴンに通用しなかったのは、コルゴンだから・・・という理由でいいのだろうか。笑。
久しぶりに地人兄弟の出番が!懐かしいなあ~。「~殺すぞ!」のフレーズを久しぶりに読んだ気がする~。マジクの一人立ちは、早いんじゃない?と思うのですが、師匠が偉大なだけに、自分の無力さが際立つから焦るのかなあ。何度も書くけど、マジク天才なのに。ムードメーカークリーオウは、すっかり元気を無くしてしまって、私もしょんぼりした気分になってしまいました。ライアンの一件がよほどこたえたのか・・・。マジクとクリーオウが抱える問題に、答えを教えてくれそうだったから、領主の言葉につい飛びついてしまったけれど、実際問題、答えなんて簡単に出ないし、償うことだって簡単なことではない。オーフェンがやっとこさ、マジクに言葉を伝えましたねえ。なんだかんだで。オーフェンは優しい先生だわ。
とうとう彼女が戻ってきた。長い道のりだったはぐれ旅も次で最終章!

私もにょろにょろと生きていきたいです・・・。にょろにょろと・・・。


「いいか、お前は行く――――――――だが、いつもどってきてもいい。分かったか?」


「黒百合」

多島斗志之/東京創元社

父の古い友人である浅木さんに招かれた私は、別荘に到着した翌日、一彦とともに向かったヒョウタン池で「この池の精」と名乗る少女に出会う。一九五二年夏、六甲の避暑地でかけがえのない時間を過ごす少年たち。

「このミス」でランクインしていたことがあるため、ミステリーだ、ミステリーだという先入観があったのですが、これ実は、青春小説にミステリーを織り込んだところをウリにしているのかなあ・・・?とにかく、三角関係ウザい!が一番の感想でした。笑。香は良い子なんだけど、一彦と進の足の引っ張り合いがみにくい。
もちろん、ミステリーもあります。章の間に、昔のエピソードが挿入されていまして、それが現在の殺人事件につながります。しかし、肝心な人はぼかされ(当たり前か!)、誰が誰やら途中で混乱すること必至。「葉桜の季節に君を想うということ」でも騙されたパターンと一緒なんだよね。今回も同じで、セックスに言及していれば、それはもちろん男女を想定します。していたんですが・・・、それでは辻褄が合わなくなって、あら?と。振り返れば、日登美さんと深い仲になることは無かったわけですが・・・。まさか、お兄さんも妹がレズビアン一歩手前とは思っていなかっただろうなあ。んー、でも彼女はそれ以前に男性と付き合っていたわけだから、バイセクシャル?とか考えてしまう。
ミスリードが駄目とか、ややこしいのはあかんと言うつもりは無いのです。しかし、あまりにも登場人物を駒のように扱っている感が拭えないのです。私がひっかかっている、レズビアンやバイセクシャルに関しても、愛のかたちは様々、とはいえ、やはり一般的ではない愛のかたちがどうして生まれたのか。どうして、違うかたちの愛でなければならなかったのか。どうして、彼女は今もそこに留まっているのか。全く気持ちが見えてこないのです。中学生の恋を細かく描写するよりも、彼女たちの気持ちをもっと丁寧に描いて欲しかったなあと思います。これだけでは、ただ単に混乱させたかったから、としか感じられなくとも無理はないかと。
ところで、作者の多島さんが現在失踪中ということにびっくりした!人生いろいろっすねえ・・・。


「鷺と雪」

北村薫/文藝春秋

帝都に忍び寄る不穏な足音。ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー。良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ。

直木賞受賞作。ベッキーさんシリーズは、本格ミステリで1作読んだことがあるだけ。北村作品は、昔「盤上の敵」「スキップ」「ターン」「リセット」を読んだのですが・・・。おもしろい、というよりは、上品なミステリという印象で、あんまり合わなかったんですよねえ。いろいろ気になるのはあるんですけど。「六の宮の姫君」とか。
お嬢様・英子さんとお付の運転手・別宮さん(通称ベッキーさん)が、昭和の時代に暮らす人々のちょっとした謎を解いてゆきます。前作から引き続いて登場する人たちが結構いまして。そこは読んどけば良かったなあーと思いました。とにかく、時代背景の描写が細かく、本当に見てきたんじゃないっすか?くらいのリアルさでした。史実なんかが上手く盛り込まれているのもさすが。
「不在の父」では、家柄の違い、夫婦の溝から失踪してしまった人の話。爵位なんて今ではあって無いようなもんですよねえ。さりげなく玄関から出て行ったというトリックには納得。「獅子と地下鉄」は、そんな迷信がー!とびっくり。とにかくこの話はベッキーさんのかっこ良さにしびれました。ビリビリ。「鷺と雪」当時のカメラだからできたトリック。こう見ると、デジカメって味気ないですね・・・。と言いつつ、デジタル一眼を狙っている私。ニ・ニ六事件といえば、「蒲生邸事件」(宮部みゆき)を思い出します。最後はこう来ると思っていなかったので、びっくりしました。時代が違っていたら、もしかしたら、英子と若月さんの間で何かが始まっていたかもしれないのに、と思うと切ないエンディングでした。
そして、やはり北村さんは甘い味付けを忘れない人なのです。昭和の時代にあっても!笑。お兄ちゃんもがチャーミングでおもしろい。
とても上品で深いミステリでした。そしてちょっぴり哀しい。


「何事も―――――お出来になるのは、お嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」