忍者ブログ
読書の記録です。

「やさぐれるには、まだ早い!」

豊島ミホ/メディアファクトリー

大学入学を機に秋田から上京して20歳で作家になった豊島ミホの東京っぽくない東京暮らし。“底辺女子高生”だった彼女は、ここで何を見つけたのか。それとも、何も見つからなかったのか。

豊島さんの本は気になるものが多くて、いつか読みたいなあと思っています。あらすじは知らないのですが、題名とか装丁がきれいで爽やかなので。
ところが、豊島さんって「R-18」の出身者だったんですね!
「R-18」って言ったら女性のための官能小説じゃないですか。官能小説って言ったら、アレですよね、エロエロ?杉本彩?というイメージが。あの爽やかそうな本が、実はすごいことになってるのかしら・・・。
でも、この本を読んだら、杉本彩どころか、普通のおもしろいお姉ちゃんでした。私と同い年だし、星座も一緒だから誕生日も近いはず。ちょっと非モテなところにもシンパシーを感じます。
どれもおもしろいのですが・・・。以下お気に入りを。「恋人へのプレゼントチョイス法・一例」ヤカン(ケトル)は初めて聞いたけれど、理由を読んで納得。「眠くなるように話して欲しい」ポッドキャストを眠るために利用する、という発想がただ者ではない!「ああ、犬よ」ラブラドールではないのに、ラブたん。ラブは愛のラブ?「一番かわいい彼女」確か、テレビ番組(探偵ナイトスクープ)でマネキンと結婚式を挙げている人がいたなあということを思い出した。他にもいろいろ。
何度も売れない売れないと悲観されているのですが、私でも知っているくらいなので、ある程度知名度はあると思うのだけど・・・。これでも売れてないのかー、と人気稼業の厳しさを垣間見ました。最後の方では、東京での生活に疲れ、帰郷してリフレッシュされています。今は休業中ですが、いつかまた戻ってきて欲しいなと思います。
エロオンリーは苦手なんですが、なるべくそれっぽくないものを選ぼうっと。


PR

「鬼の跫音」

道尾秀介/角川書店

心の中に生まれた鬼が、私を追いかけてくる。もう絶対に逃げ切れないところまで。一篇ごとに繰り返される驚愕、そして震撼。ミステリと文芸の壁を軽々と越えた期待の短篇集。

ホラーとミステリーの融合。やっぱりおもしろい!
カラスさんが雰囲気を盛り上げてくれています。やっぱり死の使いとかってイメージがあるんかなあ。悪い子じゃないのに。頭がいいだけなのにね。
「鈴虫」こういう話を読むと、女性はしたたかで恐ろしいなあと思います。こんなどんでん返しなら大歓迎だ!一作目からハートをがっちり掴まれました。ところで鈴虫は何をささやいていたのだろう。
「ケモノ」最後のオチは予測できていたが、途中はわかんなかったー。女性が男性をレイプするっていう構図は、それはそれで嫌なもんです。
「よいぎつね」最低な男だな!おい!ヘタレ!とずっと罵ってたような。
「箱詰めの文字」あまりにも言い訳が堂に入ってて、本当に盗作されたのは主人公の方なのかと思いそうになった。私は騙されやすい・・・。
「冬の鬼」時系列が逆になっているのが良かった。鬼とは何ぞや?という疑問は残りますが、幸せでない結末を想像できただけで満足。人でなしみたいだ、自分・・・。
「悪意の顔」そんなに絵って真似れるものなのかな・・・。絵が下手な人間には信じられない。この年にして模写が上手い?モシャス!
賛否両論あると思いますが、私はこの気持ち悪さが結構好きなので、売れっ子になっても、道尾さんには、たまにはこのジャンルを書いて欲しいなあと思います。


「製鉄天使」

桜庭一樹/東京創元社

鳥取県赤珠村の製鉄会社の長女・赤緑豆小豆は、鉄を支配し自在に操る能力を持っていた。彼女は、やがてレディース“製鉄天使”の初代総長として、中国地方全土の制圧に乗り出す。中国地方にその名を轟かせた伝説の少女の、唖然呆然の一代記。

「赤朽葉家の伝説」で、毛毬さんが描いていた漫画「あいあん天使(エンジェル)!」の小説版?みたいなものでしょうか。私、てっきり毛毬さんの中国地方制覇の話だと思ってたんで、拍子抜けしました。まあ、この話自体、毛毬さんの自叙伝といえば、そうなんですが・・・。違いと言えば、特殊能力のあるなしくらいかしら・・・。12年週刊で続いた長編が小説一冊でまとまるわけがないよなあ。
あらすじは大体本編と一緒なので、目新しいところはなし。むしろ飽きた!笑。間を詰めて読んだのが逆効果になったようです。とはいえ、毛毬さんのキップの良さは好きなので、その点は楽しめました。私は、良くも悪くも真面目な人間なので、こんなハメのはずし方できないなあと。友達と遊んだり疎遠になったりって、ベースは一緒なんだけど。何せレディースですから。
幕間が、ミステリーな雰囲気でしたが・・・。最後には、埋蔵金かいっ!と突っ込んでしまいました。マンガもそういうオチだったのかー。という新発見。
なんだかしまらない感想になってしまいましたが、これ以上感想が思いつかないんだぜ・・・。


「赤朽葉家の伝説」

桜庭一樹/東京創元社

千里眼の祖母、漫画家の母、そして何者でもないわたし。高度経済成長、バブル景気を経て平成の世に至る現代史を背景に、鳥取の旧家に生きる三代の女たちを、比類ない筆致で鮮やかに描き上げた渾身の雄編。

長いこと積んでありました・・・。「製鉄天使」を借りてきたら、あらすじがスピンオフっぽかったので、こちらを先に読むことにしました。
物語は、鳥取の旧家・赤朽葉家の歴史を孫の瞳子が語る形式となっています。祖母・万葉は山の人が置いていった子で、未来視の能力がある。彼女は4人の子を育てるが、長男は死に、長女と次女と次男が残された。長女・毛毬は不良時代を経て売れっ子の漫画家となるが、12年の連載作品をかきあげた後急死。万葉は、「昔人を殺した」という謎の言葉を瞳子に残して死去。祖母は一体誰を殺したのか・・・?
桜庭さんといえば、少女の鬱屈した心の動きを描く作家さんだと思っていたのが、いつの間にやら家族、血の呪いを描くようになってました。ここらあたりが転換期だったのでしょうか。
時代の移り変わりと共に、人の価値観や関係が変わっていく。その「移ろい」の過程の描写が何よりも素晴らしかったと思います。私はどの時代かっていうと、瞳子世代になります。瞳子ほどの無気力感にはとらわれていませんが、自分は何者でもなく、また何も成し遂げないだろう・・・と流される感じがわかるなあ。でも、一番おもしろかったのは毛毬かーさんですね!ぱらりらと走り抜けた彼女の生涯は、まさに太く短く!って感じで気持ち良かった。
本書は、ミステリーというジャンルですが、ミステリー面ではあまり評価が高くないかな・・・と。予想通りというのもありますが、遺書のくだりはあまりにも安易でひねりが足りなかったかなーと。万葉お祖母ちゃんが誰を殺したのかっていうよりも、本当は誰が好きだったのかってことの方が大事なことのように見えてきます。私の祖母も万葉さんとはちょっと違いますが、結婚する前に他に好きな人がいたそうです。親の言いつけで祖父と結婚したことを後悔しているようでした。うーん、何十年も引きずるなんて、失恋って大変だなあ!と当時、子供心に思ったものです。これが現代なら、やれ不倫だ熟年離婚だとなるところが、互いを静かに愛情を持って見守るところが奥ゆかしい。・・・歯がゆい?笑。
子供って、どうしても親の影響からは逃れられなくて、自分の人生の軌跡と比べてしまうことがあると思う。そんな時、私が生きている現在の時代で、あるがままに生きることが一番大事だってことを忘れないようにしなければ。自由であれ。世界はいつだって美しい・・・らしいですよ。


「サマー/タイム/トラベラー」

新城カズマ/早川書房

あの夏、幼馴染みの悠有は初めて時空を跳んだ。ぼくら高校生5人組は、「時空間跳躍少女開発プロジェクト」を開始する。けれど、それが悠有と過ごす最後の夏になろうとは、ぼくには知るよしもなかった。

新城カズマさんの作品は、ドラゴンマガジン購読時代に「狗狼伝承」と「浪漫探偵・朱月宵三郎」を読んだことがありますー。残念ながらどちらもイマイチでした・・・。で、たまたま図書館で見かけて思い出したので借りてみた次第。SFも久しぶり。
タイムトラベル青春小説な感じでした。ちょうど季節も夏だし。
タイムトラベルは、やっぱり時空間をねじまげるわけですから、やっぱり色々矛盾があるような気がしてならないんだよなー。
主人公のぼくが、とってもかわいくない。笑。自分がいい歳になってしまったせいか、世の中を俯瞰して見ているつもりでも、所詮は子供か・・・とイラついてしまいます。おっと、大人気ない。反面、悠有は天然でおもしろい子でした。これを読んでふと思い返すと、幼なじみって体の関係を持ってるパターンが結構あるような・・・。そんなもんなのかなあ。もっと、ピュアであって欲しいんですけど・・・。
全体的な構成が、ぼくの回想という形でして、最初にどどんと悠有が未来へ行ってしまうという結論を提示しています。他にも、この時こうしていれば、ああしていれば良かった・・・というモノローグが満載なのですが、「たられば」は個人的にスキじゃないもんで。連発は避けて欲しかったな。どんだけ女々しいんだ主人公。
正直ついていけないぜ!ってところもありましたが、色々な可能性を考察しているところがおもしろかった。特に、タイムトラベルの研究と称して小説を読み漁るのですが、作品が「タイム・リープ」と「時をかける少女」くらいしかわからないという私・・・!読書不足で恥ずかしい!それをもとに、タイムトラベルを分類しているのが面白かった。そんなの考えたことなかったなあ。最後には放火魔の犯人を暴いたり、プロジェクトの仲間の秘密も明らかになったりするので、ミステリーの要素もありかな、という印象です。1巻がのんびりしているだけに、2巻の盛り上がりはすごいぜよ!(この口調が最近マイブイーム)
たまにはSFを読むのもいいねえ。