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読書の記録です。

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「ミーナの行進」

小川洋子/中央公論新社

美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない・・・。ミュンヘンオリンピックの年に芦屋の洋館で育まれた、ふたりの少女と、家族の物語。

モチベーションが上がっているうちに読んでしまおうという作戦。
この本は、星の本特集で見かけてから気になっていた一冊。確かに、ジャコビニ流星群を見に行く場面は、静かで美しい。
主人公・トモコは母親が洋裁の学校に通うため、岡山を離れ、芦屋に住む母方の伯母夫婦のもとへ行くことになった。芦屋の家には、伯父・伯母・娘のミーナ、伯父の母親でドイツ人のローザおばあさん、家政婦の米田さん、カバのポチ子の世話をする小林さんがいる。ミーナの兄の龍一さんは海外に留学中。伯父さんは、清涼飲料水の会社の社長で、おうちも暮らしもトモコの知らないものばかり。家族はみんな優しく、個性的で、誰もが羨むような家族。けれど、伯父さんは家を空けることが多く、そのことについては誰も触れない。龍一さんと伯父さんの確執も垣間見えたりします。ミュンヘンオリンピック、バレー、ジャコビニ流星群・・・と当時の出来事も織り込みながら語られる、トモコとミーナ、2人の少女がともに過ごした1年の思い出。
喘息持ちで少し不思議な少女、ミーナも好きでしたが、私はやはりトモコさんがイチオシですね!素直で純朴な少女は良いなあ~。ミーナの好きな配達員のお兄さんが、突然いなくなってしまった時、トモコが工場まで乗り込んでいったところもすごいと思った。結局、お兄さんは結婚して遠くへ行ってしまったのですが、ミーナのために優しい嘘をついたり・・・。本当にいい子だ・・・。ぐすん。
本を愛するミーナのため、トモコは図書館にも通います。この図書館のカードに、ずらっと並んだ本の名前1つ1つが思い出とつながっているところがとてもいいなあと思いました。今は何でも電子化で、紙の貸し出しカードってあんまり使わなくなったもんね・・・。
ポチ子のくだりは本当にボロボロ泣きそうになりました。挿絵はどれもきれいでかわいいのですが、カバが一番かわいかった。
トモコもミーナも成長し、マッチ箱の物語を紡いでいたミーナは、ケルンで出版の仕事についている。トモコはたぶん図書館で働いてるのかな?今も充実しているけれど、その合い間にふっと思い出す少女の頃のきらめく思い出。離れていても、大事な人がいるっていいなあと思った。


「たとえ死んでも、消えてなくなるわけではないのだ。この世の物質は決してなくならず、姿を変えるだけなのだ。」


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「少年少女飛行倶楽部」

加納朋子/文藝春秋

中学1年生の海月が幼馴染の樹絵里に誘われて入部したのは「飛行クラブ」。メンバーは2年生の変人部長・神、通称カミサマをはじめとするワケあり部員たち。果たして、空に舞い上がれるか!?

ヘンな名前の部員が集うクラブ。でもあだ名は普通。
物語の登場人物で、変わった名前はたくさん見かけますけれども、朋と書いて「るなるな」は・・・。いただけないなあ・・・。
最初はいやいやクラブに入ったはずの海月が、部長のため(とは自覚せず?)、頑張っちゃうお話。この海月ことくーちゃんが、面倒見のいいとてもいい子。私は彼女の母が一番好きな登場人物でした。アドバイスも全然説教臭くなく、言動もおもしろくて、かわいい!こんな家庭で育ったから、いい子に育ったのねえ。としみじみ。
ところがところが、このくーちゃんの恋のお相手カミサマ部長が、どうも好きになれなくて困った。他の飛行クラブの面々も、キャラは立っているんだけど、魅力を感じる人がいなかった。私、脇役好きなんだけどなあ。珍しい・・・。カミサマ部長の唯我独尊ぶりは、ただ空気の読めない人だし~。かわいげがあるんだけど、足りない(笑)。まあ基本、部員は全員マイペース揃い。いやー、この中でやっていけるくーちゃんはホントすごいわー。
クライマックス、自宅の高層マンションから脱出を試みた朋を、熱気球で助けに行くところは、ありえないながらも熱い展開でした。熱気球は、そんな繊細な操舵はできなさそう・・・。熱気球といえば、世界一周しようとしてすぐ海で消息を絶った人がいたことを思い出します。だから余計すぐ落ちると思い込んじゃうのかも。ありえないと言えば、資金集めのオークションのあたりも、ちょっと苦しいかなあ。


「我が絶望つつめ緑」

秋田禎信/富士見書房

クリーオウの意識は戻らず、マジクは行方不明という状況の中、ウィノナが動きだす・・・。オーフェンはライアンとヘルパートとの決戦へ挑む。ドッペル・イクス編、クライマックス。

全体の4分の3地点にやっと到達しました。まあ、何とか物語にはついていけてるかな・・・。早く続編を読みたいのですが、なかなか・・・。
オーフェンとロッテの一幕の間に、クリーオウとマジクには何があったのかが明らかに。またしてもダミアンが暗躍しています。領主のためとは言え、なんだかんだと助けてくれたので、まあ悪い人じゃないのかなーと思っていたけれど、実はイヤな奴だったね!と爽やかスマイルでコメントしたい気分になりました。
コルゴンはやはり天然だった・・・!やっぱり掴みどころのない人だ!結局のところ、チャイルドマン教室の面々は仲が良い・・・。
それにしても、マジクはこの間ずっと病院で寝てたわけで。地人兄弟の出番もほとんどなく。なんか、だんだん出番が削られてるような?
クリーオウにとっては残酷な結果になったと思います。本当に善意でやったことが、ライアンを死なせてしまったわけですから。この場合、何をやっても結果は一緒だったとは思うんですけどねー。敵のことに、そこまで肩入れしてしまうクリーオウは素敵だと思うなあ。だからと言って、ライアンの立場を理解できるか、というとそれは別問題でして。
ライアンとヘルパートを倒しても、聖域vs最接近領の戦いはまだ続く!・・・んだっけ?コルゴンどうなっちゃうの?


「君に・・・・・・教えたかったんだヨ。ぼくの気持ちを伝えたかった・・・・・」

「ぼくの感じている絶望を!」

「海の底」

有川浩/角川書店

4月。桜祭りで開放された米軍横須賀基地を、巨大な赤い甲殻類の大群が襲う。自衛官は救出した子供たちと潜水艦「きりしお」へ立てこもる。一方、警察と自衛隊、米軍の駆け引きの中、機動隊は凄絶な戦いを強いられていく。

自衛隊三部作の「海」の巻。
予想以上に序盤の展開が早く、驚きました。のどかな空気が一変!
子供たちは、一番年上の望が高3で、以下中学生、小学生という面子。一方自衛官は、幹部候補生の冬原と夏木。私、彼らは25、6くらいかなあと思っていたのですが、17の5、6コ上ってーと、22、3で、私の予想より若いことが判明してびっくり~。キャリア組ってことは大卒だから、入隊後すぐか1年くらいでこんなに部下とかつくんだ~。自衛隊のことはようわからんのですが。
潜水艦、といっても、物語中ほとんど停泊中でして、主に子供たちと2人の交流(バトルともいう)がメイン。うーん、正直、子供への大人気ないお説教は受け付けない気分だったので、レガリスと機動隊の熱き戦いを楽しんでいました。しかし、こちらは自衛隊が出てきたら、すぐに撃墜されまして。「あれっ?あんなに手ごわかったのに?」みたいな肩すかし。あの犠牲者たちはなんだったのか?隊長が浮かばれない!私も機動隊と一緒に脱力感を覚えずにはいられませんでした。だからこそ、実権を握っている上の人たちの、的確で迅速な判断が大切なんだよなあと思った。くだらない縄張り争いをしているところなんて、現実と同じじゃないだろうか。
私は、「クジラの彼」を先に読んでまして、冬原と夏木にはすでに一度会っているはず。なのに、夏木の話を全然覚えてないっ!インパクト無かったのかなあ。冬原はね、ばっちり覚えてますよ。だって、かっこ良かったもん。でも、この本を読んで、ちょっと失望したかなあ。中学生たちのおいたが許せないってのも良くわかるんだけど、いかんせん、2人ともお説教がネチネチしていて陰険!こんな男の人ヤダ!って、ずっと思ってました。笑。望ちゃん、それ5割増しだから。絶対5割増しだから!って最後まで思ってました。彼女も彼女でスゴイ執念だよね~。コワイねー・・・。
レガリスの進化の過程や、習性など設定はおもしろかったのですが・・・。最後は尻すぼみだったのが残念。
あ、おまけの「前夜祭」は、いい大人が馬鹿みたいにはしゃいでておもしろかった!2人は、馬鹿をやって怒られているほうが「らしい」感じがしますよね。少年って感じで。


「ファミリーポートレイト」

桜庭一樹/講談社

あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。呪いのように。親子、だもの。ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。

血の呪いと書いて家族と読む。そんな話。
コマコにとってマコは全てであり、彼女の世界の神のような存在。かなり屈折していますが、「私の男」で描かれた親子関係よりは、まだ許せるかなあ。なんだかんだで、母親は娘を大事に思っていたんじゃないかなあと思うので。母親の影響は、彼女がいなくなってからもコマコを長い間束縛します。傍から見れば束縛なんですが、コマコにとっては幸せな思い出で、それが他人と親子の違いかしら、と思った。
物語は、マコとコマコの逃避行・コマコの幼少時を描いた「ファミリーポートレイト」とマコの死後・コマコの思春期~妊娠までを描いた「セルフポートレイト」の2部から成っています。母親は付き合っていた男を殺し、コマコ(駒子)を連れて逃亡。あちこち転々とするけれど、駒子の父親に見つかったため池に飛び込み失踪。死体はあがっておらず、生死は不明。その後、父親に引き取られた駒子は、家に寄り付かず学校で寝泊りし、卒業してからは文壇バーで暮らす。幼少の頃から、物語の世界に魅せられていた駒子は、自分で物語を語るようになり、ある新人賞に選ばれ作家としての人生を歩む。5歳から34歳までの波乱万丈すぎる半生。
あんた、よく生きていたなあと。そんな感慨を感じるほど危なっかしかった。酔っ払いが崖っぷちをふらふら歩いているような感じ。作家の極限状態は、ただすごいなあと感心するばかりでした。ものを産み落とす作業って、本当に身を削るようなものなんだ。
夜は床でとぐろを巻くようにしか眠れず、恋人に抱きしめられて過ごす夜は落ち着かない。真田が彼女を一生懸命諭す姿は、いいなあと思いました。駒子はずっと本質はコマコのままなのだろうけど、2人が歩み寄って妥協点を探しながら一緒になったのは意外であり、うらやましくもありました。理想的。
最後に、「いろいろ大丈夫。愛することとか。」と言う駒子は、きっと本当に大丈夫なんだと思った。


「狼煙を上げろ。」

「神さまに届くぐらい。高く、高くにだ。」

「地獄の底から叫ぶのだ。」