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読書の記録です。

「我が遺志を伝えよ魔王」

秋田禎信/富士見書房

タフレム市からキムラックへ向かう道中、路銀はすられ、馬車は壊れ、残る食料は干し肉ひときれ。生き残りをかけた戦い(仲間割れ?)の最中、悲鳴が響き渡る。オーフェンたちは、謝礼目当てに助けに向かうが・・・。

干し肉争奪戦は、好きなシーンのひとつであります。干し肉をくわえてにんまり笑うクリーオウがステキ。絵師・草河さん、グッジョブ!この巻の表紙絵も好き~。「首から下を埋めてニワトリに目玉つつかせる」って、魔術士の使うテじゃないでしょ!?笑。ニヒルだったり、メランコリックだったり、いろんな顔を見せてくれるオーフェンですが、やはり理不尽にヒドい目にあって、ぎゃーぎゃー騒いでいるときが一番輝いているような気がします。さすが生まれながらに女難の相が出ている男!
・・・さて、干し肉は置いておいて。悲鳴の聞こえた場所に向かうと、翼の生えたワンちゃんに囲まれて、オーフェンたちは劇場に入らざるをえなくなります。劇場に侵入していたのは、なりゆきで地人兄弟も加わった盗賊団らしき一派。オーフェンは、彼らが「お頭」と呼ぶメッチェンを助けようとするが・・・。なんとメッチェン・アミックは死の教師だった!メッチェンのハチマキじゃなくて、布?の巻き方がいいなあと。前のほうでくるくるっとなっているのが。実際見るとダサイんだろうなー・・・。
キムラックに突入する前の、いわば小休止と思わせておいて、やっぱり世界観につっこんだ話となっています。いつか、魔術がつかえなくなる危機が訪れる警告?のためにつくられた、カミスンダ地下劇場。最後にちらっと出てくる魔王と女神の対話は一体何の意味があるのか?考えてみましたが、よくわかんないやー。難しい・・・。
今回、マジクの出番はあまりなく、クリーオウが大活躍!ほれてまうやろー!犬を持って帰ろうとする発想がステキすぎる。男前。オーフェンも彼女のことを相棒と認めている感じがしますねー。しかし、オーフェンとマジクの対応の違いがひどいなあ。笑。


「神ってなんだと思う?」


・・・書影が見つからない!泣。
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「きのうの世界」

恩田陸/講談社

塔と水路がある町のはずれ、「水無月橋」で見つかった死体。一年前に失踪したはずの男は、なぜここで殺されたのか?誰も予想できない結末が待っている!!

町の歴史や言い伝えをミステリーに絡めてくるのは、恩田さんの得意技ですなあ。物語は、語り手を変えて、時系列を変えて、進んでいきます。舞台となるのは、「塔と水路の町」。そこで起こった、水無月橋殺人事件を調べるために“あなた”はこの町を訪れた。
この“あなた”が誰なのか、非常に気になるポイントだっただけに、あっさりしたネタばらしはちょっと物足りなかった。あんまり関係ない人だったしなあ。ただ、彼女の幼少時のエピソードはちょっとほろりとしました。いい話だっただけに、その後の過労と偏食が原因で・・・という決着のつけ方が残念だった。
本編が静ならば、クライマックスは動。ゆるやかな流れの中で、ひっそりと息を潜めている何者かがいる・・・といった雰囲気から一変します。大雨が町を襲ったあとは、突然の火災。そして明かされるすべての謎。・・・そうなんです!珍しく風呂敷がたたまれた結末となっております。まあ、カラスは正直「えー・・・」という感想でしたが。笑。結局のところ、ばーちゃんの思惑通りにことが進んだ、ということでよろしいか!孫も含め、ここの女は恐い・・・。
ところで、見たものをそのまま記憶できる特殊能力って、色んな本でぼちぼち見かけますけど、便利なようで不便!な扱いでかわいそう。自分は、暗記モノは書いて覚える人で、めっちゃ苦労するんで、単純にうらやましいなー。
そもそもの発端は、この家系から始まった。町の仕掛けは無事に作動し、災害は避けられた。けれど、市川吾郎のような宿命を背負った人間が必ずまた生まれる。この連鎖は永遠に続いてゆくのだろうか?


「心配しないでね、って言ったの。忘れないでね、じゃなくて」


「我が塔に来たれ後継者」

秋田禎信/富士見書房

あの騒動から2週間ほどが過ぎたころ、ティッシの屋敷にいるオーフェンを、暗殺者が襲撃する。彼らはどうやら《ブラウニング家の世界書》という本を探しているらしい・・・。

《牙の塔》後編!
前巻で、マジクが火事場ドロボウしてきた本が騒動のきっかけとなります。魔王スウェーデンボリーが書いた、世界の成り立ち、あるいは予言?めいたことが書かれているらしい本。暗殺者だけでなく、アザリーもこの本を狙っている。こんな重要なモンを、家で無造作にほってるチャイルドマンの神経の図太さに憧れるなあ。本当に、この人は武勇伝がありすぎて、私の中で超人化が加速中。
振り返ってみると、今回はウオール教室とフォルテ教室の抗争みたいな感じですねー。ティッシの指がちぎれたのは、昔も今読んでも、かなり衝撃でした。改めて見ると、チャイルドマン教室で塔に残っているメンバーは、ティッシとフォルテだけなんですよねー。あんなにおもしろおかしい人たちだったのに、さみしいですねえ・・・。コルゴンって、後から登場したっけな?
後半の戦闘は、3人がバラバラになって、1対1の戦闘を繰り広げます。オーフェンは、まあ、いつも通り(ひどい)。注目すべきは、マジクの才能が開花するスエインとの戦闘と、クリーオウの石入り靴下が炸裂(笑)するヴィンビ戦でしょう!クリーオウは、魔術が使えない(けどレキは使える。笑。)、そのほかの戦闘術に長けているわけでもないのだけれど、度胸はオーフェンをしのぐ器。魔術士でないからこその発想が意表を突くところは爽快です。学者バカという言葉がありますが、それを応用して魔術士バカと呼んでもいいかもしれません。
オーフェンの過去には一度サヨナラして、次はキムラックへの布石。舞台は劇場へ!
再読した時も、やはり、マジクは一度塔での訓練を受けた方が良かったのでは?という気がしました。なんとなーく。


「横溝正史自選集〔2〕」

横溝正史/出版芸術社

ニューギニアで共に戦った鬼頭千万太の最後の言葉を胸に、鬼頭家が網元として君臨する獄門島に降り立った金田一耕助。やがて千万太の予言どおりに、血も凍る殺人事件が発生する。瀬戸内海の孤島に渦巻く、世にもおぞましい計略に耕助は気づくことができるのか?

久しぶりに読んだな~。2巻目は「獄門島」。私の一番好きな獄門島!
なんで獄門島が一番好きかといいますと、一番の理由は犯人の意外性にあります。横溝さんの作品の犯人は女性(美人でちょっと影がある感じ)が多い、というのはみなさんご存知だと思います。なので、大体あやしげな人物がわかってしまうという欠点が。2時間サスペンスで、配役から犯人がわかっちゃう時と似てますね。詳しい言及はさけますが、これはそういったセオリーから外れた犯人で、最初に読んだときびっくりしたというのがあります。しかしそれが、奥さんの名推理からのものとは・・・!さらに、最初は横溝さん、奥さん叱ったって・・・!最後にはちゃっかり採用しているのにー。
殺人事件が完遂してから犯人を追い詰める、ある意味役立たずの名探偵・金田一耕介。(褒め言葉)犯人は、金田一さんに完敗したと言っていましたが、あれだけフェアなヒントをもらっていたのに、間に合わなかった金田一さんの方が負けでは・・・?途中、めっちゃミスリードにひっかかってたくせに、早苗さんのせいにしたり、聞き間違いを和尚さんのせいにしたり・・・。改めて読むと、器が小さいぜ、名探偵!笑。一番印象に残っていシーンが「むざんやな冑のしたのきりぎりす」。あの、鐘の下から死体が出てくるところは、どきどきしたものです。犯人の末路も、そうだったんだ~と思い出しました。必要のない殺人を犯したってことで、なんだか報われないなあというオチでした。
本鬼頭と分鬼頭の確執や、復員、海賊・・・と戦後の混沌とした時代背景が、横溝さんの作品の魅力です。たとえ、調べものに出かけている間に、新たな犠牲者が出てたって!ちょっと抜けてる名探偵。だけど、うんうんうなって悩んでいる姿を読んでいるだけに、謎が解けたときの爽快感もひとしおです。


「我が過去を消せ暗殺者」

秋田禎信/富士見書房

クリーオウの水浴びを覗いていたマジクを、レキが保護森林ごと焼き払った罪で、オーフェン一行はレンジャーに連行される。しかし、詰め所が何者かに襲撃され、一行は《牙の塔》のあるタフレム市へ向かうことになる。

シリーズの4分の1地点に辿りつきました~。《牙の塔》前編!
オーフェンがまだキリランシェロだった頃。マジクとクリーオウは、その時の彼を知らない。《鋼の後継者》サクセサー・オブ・レザーエッジと呼ばれていた彼は、どのような人物だったのか・・・?題名通り、オーフェンの過去に迫った巻です。オーフェンシリーズの魅力の一つが、登場人物のメランコリーの描写。オーフェン自身はもちろん、師と自分を比べて劣等感に苛まれるマジク、レティシャ、アザリー・・・と、エリートで成功したと思われている人物も、孤独と自分の才能の限界、嫉妬、もろもろの醜い感情があって、葛藤しているところが登場人物をより魅力的にみせているのだと思います。で、マイナスに傾いたところを、クリーオウの破天荒さとレキのかわいさと地人のバカっぷりでバランスをとる・・・と。ほんと、彼らの身勝手な発言(笑)の数々は、うらやましいったら・・・。
過去の話ということで、《牙の塔》チャイルドマン教室のメンバーの内、レティシャとフォルテが登場します。偉大すぎる教師のもとで学んだ教え子だちは、劣等感のカタマリになっていた・・・。どんだけスーパーマンなの、アンタ!?って感じです。あと、ここらへんから、アザリーの暗躍がちらほらと描かれています。今回の人形騒ぎも、元はといえば、アザリーの暗躍が原因なわけだし・・・。ノルニルの道具って、いわゆるドラえもんの道具みたいなもんで、ものすごい力があるんだけど、使う人がアホだったら、大した益にならない、むしろ身を滅ぼすって感じがするなあ。黒魔術、白魔術に加えて、ノルニルの遺品を手に入れたアザリー姉さん。最強だなー。
過去の自分と一応の決着をつけたオーフェン。《牙の塔》後編に続く!しかし、どこまでモテモテなんだ、こやつ・・・。