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読書の記録です。

「鴨川ホルモー」

万城目学/産業編集センター

新入生の安倍は葵祭からの帰り道、新勧コンパのビラを受け取る。参加したコンパで、早良京子にひと目惚れした彼は、“京大青竜会”というサークルに入部。しかしこのサークルは式神や鬼を使った、通称“ホルモー”を行う奇妙なサークルだった。

ホルモーって競技名だったんですね、ホルモー。ホルモンと響きが似てるもんだから、もっと肉っぽいものを想像してました。物語終盤に、ホルモーのもう一つの意味が明らかになるのですが、最後までホルモーの語源は謎でしたねー。なぜホルモー?
先に「鹿男~」を読んでて、その時は何も感じなかったのだけれど、この本を読んで、すごくモリミー節に似てるなあと思いました。舞台が京都ってのも関係してるんだろうなあ。主人公のやたらと勿体ぶった喋り方も、雰囲気が似てる~。やはり妖怪が似合う町、京都。どんな世界観もどんと来い。顔が絞りの先みたいな鬼だってオッケーさ。京都の懐の広さを再認識しました。
ホルモーという競技を戦うことになった主人公。そう、この物語は、若者が仲間たちとぶつかり合いながら成長し、ホルモーを戦い抜く熱い青春小説・・・!という皮をかぶった恋愛小説です。最後、ほんま甘いですから。一目ぼれ三段構え。
主人公の鼻フェチは、結構理解できる人多いんじゃないかなあ。かく言う私も、指のきれいな男の人に弱いです。笑。フェチズムはみんな持っているもんだ!触りたいと思うのは、自然な欲求なのだ。変態じゃない!
最後に、男たちの熱き雄たけびで締めくくりたいと思いますです。


「ホルモオオオォォォー!」



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「新・垂里冴子のお見合いと推理」

山口雅也/講談社

小説家を志し、毎日、原稿ばかり書いている冴子だが、周囲からは次々とお見合い話が舞い込む。それでも、やっぱり、お見合いするたびに事件に巻き込まれ、お相手そっちのけで謎を解くはめに!

とうとう、冴子姉さんの境遇が他人事ではない年齢になってしまいました。 叔母さん、私にもヴェリースペシャルロイヤルグッドな縁談を、ひとつよろしくお願いします・・・(真面目に)。
いつもと毛色が違い、今回の縁談は、お見合いの鉄人が持ってきた縁談ではなく、垂里家の父と娘の紹介。まず、最初の縁談はフロム父。お相手は、優秀な研究員で水族館勤務の青年。ペンギン担当。ペンギンのことになると熱くなりすぎるという難あり。毎度のことながら、事件が起こってお見合いとかうやむやになってしまうのですが、今回は冴子姉さんが一味違うのよ!縁談破滅の運命に立ち向かう決意を固める姉さん。まあ、要するに、積極的に事件解決に動き出すという・・・。駄目じゃん!笑。ネックレスを飲み込んだペンギンが、腹を裂かれて殺害される場面はまさに猟奇的!ショック!しかし、あんまり謎解きにインパクトが無くて残念・・・。ペンギン無念・・・。
お次は次女・空美より。友人・笑窪ちゃんの元彼・東京茶夢(アメリカ人)。なんか読んだことあるなあと思っていたら、「日本殺人事件」の日本オタクの彼ですか!あんまり覚えてないんだけど、最後ねえ、女の人ともやっとした別れ方してたよねえ。あれが笑窪ちゃんかあ・・・。とそっちばっかり気になるったら。「日本殺人事件」はいつか再挑戦したい本のひとつでして、あの日本の文化をからめたミステリーは高度すぎて私、全くついていけなかったという苦い思い出があるのです・・・。今回は、ダイイングメッセージの解決にからめて、漢字のへんとつくりについての日本豆知識。ダイイングメッセージってご都合主義だなあとか、顔がねー、ばれないっていうのはねー、ありえないよねーとか茶々を入れながら読んでました。すんません。むしろ、こんなけしからん刑事の方を不審に思わねばならないのに、さほど不自然に感じないあたり、昨今の警察のだらしなさを再認識するわけです!と真面目にまとめてみました。
結局、2話とも登場人物たちの個性の濃さが際立ちすぎ、事件そのものはさらっと流されてしまったところが残念でした。意外に空美の身勝手さは可愛げがあって、結構好きです。
シリーズ3作目にして、とうとう冴子さんの縁談もまとまるかなあと思ったのですが・・・。小説が書きあがるのが先か、縁談がまとまるのが先か・・・?私が先か、冴子姉さんが先か・・・?


「沈黙博物館」

小川洋子/筑摩書房

博物館専門技師の僕は、老婆の博物館を作るため、ある村を訪れる。老婆の理想とする博物館とは、形見の博物館であった・・・。

小川イヤー作戦を着々と遂行しております。
博物館専門技師・・・という謎の職業の主人公。学芸員のようなイメージで読んでいましたが、立案・改築・展示・管理と博物館全体のプロデュースまで手がけいるので、学芸員の数倍ハードだと思います。
老婆の指示で、形見を収集することになった僕。形見の博物館、というコンセプトがとてもおもしろい。家族ですら、故人に相応しい形見を1つ選べと言われても、困ると思います。ましてや、村に赴任したばかりの僕が、何を形見に盗ってくるのか。はらはらしながらも、その選択に納得したり、殺人鬼の被害者の形見にはぞくりとしました。想像するだけで痛いわ!しかし、このエグいところを綺麗に描写してしまうところが小川マジックなのです・・・!
僕が沈黙博物館を作るかたわらで、沈黙の伝道師見習いの少年の変化、爆弾魔、連続殺人鬼の物語が語られます。特に、少年が沈黙の行に入ってしまうところ、だんだん無口になっちゃうところは、娘さんと同じく私も悲しくなりました。連続殺人鬼の正体は、やっぱりなーという感じでした。しかし、僕が疑われたままでいいんかいな?と思うのですが・・・。うーん、あと「アンネの日記」と顕微鏡の行き先が博物館になるとは。主人公はこの村に骨を埋めるのかしらん。
収集するという行為は、単調な作業のイメージがあったのですが、収集にも分類にも、その人の意思が関係してくるわけで、非常にクリエイティブな作業ですよね、そういう意味では。


「みんな世界を分解したがっている。不変でいられるものなんてこの世にはないんだ」


「我が夢に沈め楽園」

秋田禎信/富士見書房

レジボーンの温泉郷に向かう途中、オーフェンは何者かに荷物を盗まれる。犯人を追いかけて、温泉街へたどり着いた一行は、そこでペンション「森の枝」の親子とロッツ・グループの諍いに巻き込まれる。

温泉の無い温泉街へようこそ!
っていう謳い文句だったら、誰も来ないよね、普通・・・。そんな詐欺みたいな場所なのに、ある程度の観光客を集めるところがすごい。オーフェンのリアクションが、お笑い芸人みたいだなあと思いつつ、チャイルドマンやティッシは温泉無いって知ってたみたいなので、単にオーフェンが世間知らずだっただけなのかしら、と思った。今回、マジクが本当に何にもしてなくて、笑える・・・!本編とは関係ない肉体労働かよー。
東部編の入り口のお話で、ある意味一休みといったところ。ミステリ風味が強いのですが、あとがきに書かれているように、秋田さんのミステリは私の中ではいまいち・・・。「閉鎖のシステム」は絶賛されてましたけど、あれは私にとってはNGでした。
残っている疑問点としては、コンラッド・ノサップ・ボルカンは猿らしきものに殺された(と見せかけられた?)が、なぜ天人の遺跡に運ばれたのか?天人の遺跡が逆さまであることの意味?水槽(蘇生装置?)はなぜ逆さまではない?・・・等ありまして。自分が分かってないだけかなあ?と読んだあと少し悩みました・・・。
シーナとエリスの関係にしても、良く似ているのだから、実の親子かと思っていたのですが、後半の告白でクローン説が持ち上がったかと思えば、ぽしゃっ。シーナは一途に彼を想っていたようですから、別の男性の子供は考えにくい。一番有力なのは、養子説?
あとは、その後のことが気になりますねえ・・・。急にボスを失ったロッツ・グループが衰退したら、レジボーン温泉郷自体もしなびるんじゃないか、とか。あの天人の遺跡は破壊されたのかなー。肉塊は、まあ死んだとしてー。そういえば、コンラッドまっぷたつといい、肉塊といい、やはりオーフェンシリーズは地味にエグい。笑。今回おいしいところを最後の最後にノサップ君に持っていかれた地人兄弟、がんばれ!


「・・・・・・さあな。言ってただろ?自分で」

「時は終わるから、変えていくんだって」


「小川洋子の偏愛短篇箱」

小川洋子・編/河出書房新社

「この箱を開くことは、片手に顕微鏡、片手に望遠鏡を携え、短篇という王国を旅するのに等しい」小川洋子が「奇」「幻」「凄」「彗」のこだわりで選んだ短篇作品集。

人に好きなものを紹介することは、とても勇気がいることだと思う。
その昔、好きな音楽と好きな本をそれぞれ別の友人に紹介したことがあったのだが、酷評された苦い思い出がある。読書が趣味と言うと、リップサービスか話題作りか、「おすすめの本ある?」と大体聞かれるのですが、その経験のせいか、「最近、おもしろい本が無くて・・・」と大嘘をついてその場を逃れるようになりました。「件」を薦めた男性に「僕にはよく分からなかったよ」と言われた小川さんの気持ち、良くわかります!お気に入りを否定されるということは、私という人間が否定されることでもあるのだなあ。
さて、小川さんの思い入れのある短篇を集めた本。読んだことのない作家さんが多数で、新鮮でした。本編も良かったですが、小川さんの解説もまたステキで、惚れ直してしまいました。今年は小川イヤーにしようかしら!
印象に残ったのは、以下の作品たち。
「押絵と旅する男(江戸川乱歩)」押絵の中に入ってしまった男という、奇想天外な発想。男の作り話だと言われた方がまだ納得できる。
「兎(金井美恵子)」血と臓物の匂いに満ちた作品。その匂いを嗅いだなら、どの少女もウサギの皮をかぶらずにはいられないに違いない。
「みのむし(三浦哲郎)」暗くて寒い。悲しいというよりも寂しい。ここまで絶望的な話を久しぶりに読んだ。
「力道山の弟(宮本輝)」男の子の素直さが本当にかわいらしい。対比して、大人たちの諦観が浮き彫りになっている。
「雪の降るまで(田辺聖子)」乃里子を彷彿とさせるような奔放な女性。私は、田辺さんの書く女性が、責任の上に成り立つ自由を実現させているところがうらやましいのだと思う。これを、本当の自立と呼ぶのではないだろうか。
「お供え(吉田和子)」斬新な切り口。途中までわけがわからなかったのが、だんだんと意味がつかめてくる。不気味なものが、恐怖へと変わる過程。
「花ある写真(川端康成)」名言だ!看護婦さんの名言にやられました!
現代の小説よりも、一昔前の小説の方が、なんだか変な物語で斬新だなあと感じました。全く掴みどころがなかったのが「過酸化マンガン水の夢(谷崎潤一郎)」。これは最初から最後まで「???」でした。笑。


「くれる方も、貰う方も、医者から申しますれば、ただの卵巣で――――――どの女のものでもございませんのでしょう?」