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読書の記録です。

「我が神に弓ひけ背約者」

秋田禎信/富士見書房

ネイム・オンリーを殺したことをきっかけに、魔術が使えなくなったオーフェン。牢獄でサルアと合流し、ユグドラル神殿の地下を目指す。しかし、そこには数十人の神官兵とクオ・ヴァディス・パテルが待ち構えていた。

下巻の帯「元気、勇気、天気!」のキャッチフレーズに小首を傾げつつ、折り返し地点に到達しました。
ファンの方には袋叩きにされそうなんですが、アザリーが結界の外へ出るのって、すっごい最後の方だと思ってましてー。私が最後の山場だと思っていた場面って一体・・・って感じでした。この先の展開、ほとんどが細切れ・・・!ちゃんと読んだんですよ!?読んだんだけど、記憶がところてん式に・・・ごにょごにょ。
上巻では、オーフェンが魔術を使えない状態のまま、クオ率いる神官兵との戦闘に突入。しかし、女神を見られたため、クオが暴走。オーフェンは凶弾に倒れ、アザリーは彼を助けるため、洞窟に留まることに。その他のメンバーは脱出。下巻から、巻き返しの反撃に出ます。クリーオウ、復活!一方、オーフェンはアザリーによって助け出され、再び地下でクオと戦闘に突入。勝利するが、クオが天人の始祖魔術士・オーリオウルを攻撃し、女神の侵入を許すことに…。
ざっと流れをまとめると、こんなとこでしょうか。結構動きがあるように見えて、実はオーフェンとアザリーは地下から一歩も出ていないという・・・。実はマジクの反抗期もあっさり終わっていたという・・・。いやあ、新発見がいっぱいだなあ。HAHAHA。
オーフェンが再び魔術を使えるようになるまで、かなり焦らされましたねえ。それだけに、地人を吹き飛ばした時の爽快感といったら!もう、この回における地人兄弟の存在意義って、吹っ飛ばされることにあると言ってもいいと思います。
一応、女神の侵入は阻止できたのですが、教主ラモニロックはまだ生きているわけですし、カーロッタもしたたかに生き残ってるんですよね。このあたり、この後出てきたかどうか記憶にないのですが・・・。人間の始祖魔術士が、人形の姿をしていることにもびっくりですが、人形が元は人間から作られたというのもびっくりです。サルアの兄ちゃんは目玉をくりぬかれ、クオは手足ちぎれるしー。やっぱり、このシリーズ地味ーにエグいなー。
そして、幕間で語られるチャイルドマンの過去。おお、そうだった・・・。あんた、数百年の時を超えてきた男だったんだっけ・・・。チャイルドマンとイスターシバの問答も好きです。絶望の中に横たわる愛。
次は東部編スタート。温泉で、ボルカンの首が飛ぶ!?ハービバノンノン。


「(愛ではない)
 彼は胸中で断言した。そんなものではない。恐怖。畏怖。不理解。理解。だが、すべてがそろえば――――それはおおむね、愛のようなものだ。」


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「南極(人)」

京極夏彦/集英社

笑撃のおすもうさん小説『どすこい(仮)』から8年。再び、小説の常識を打ち破るスラップスティック・ギャグ小説が登場!

このミス2010年版の、今年発売されたミステリ本が収録されているところに、この本が載ってまして・・・。・・・このカテゴライズで良いの?という感じのアホっぷりを発揮している一冊です。パロディなのは言わずもがな。コラボなんかもやっちゃってます。京極さん、楽しそうだなあ。
前編「南極探検隊」では、南極夏彦と彼を取り巻く面々がオカルトに立ち向かって?います。この売れない作家・南極は56歳の通称・簾禿げ。ちびでデブで寝汗はすごいわ、汚いわ、臭うわ、バカでアホと、人間のありとあらゆる負の特徴を寄せ集めたかのようなおっさん。話は、もう一人の売れない作家・赤垣廉太郎が、超凶暴な女編集者・椎塚有美子の企画に振り回されるところから始まるのですが、最終的には、南極が出てきて、ふっとばされて終わってるような感じ。
「海で乾いていろ!」心霊写真の回。ウミウシの腹みたいな顔ってどんなのだ!?中大岡と無田和尚のエセ霊能者がおもしろかった。
「宍道湖鮫」UMA。U・M・A。ウ・マ。うま。馬。なんじゃこのオチー!ダジャレ!?
「夜尿中」題名といい、法繞寺(ほうにょうじ)といい、この展開は予想していたけれど、こんなに臭い漂うオチだとは・・・。しかし、聖骸布ネタは好きだったりします。
「ぬらりひょんの褌」こち亀とのコラボ。私、原作が未読なもんで両さんがいかなる人物か存じ上げないのですが、幼少時からこんなゴキブリ並みの生命力を備えているなんて、ただものではないですね・・・!
後編「帰ってきた南極探検隊」は、10年後のお話になります。大盛望が売れっ子書評家になっています。書評家に売れっ子とかあるのか。あと、有美子が編集長になってます。それ以外の愉快な仲間たちも相変わらず元気な様子。
「ガスノート」このノートに名前を書かれた者は、必ず放屁する。・・・お、おそろしやー。
「探偵がリレーを・・・」く、苦しいっ!展開やオチに無理を感じましたが、干菓子野ケーキ先生が楽しそうだったのでよしとしよう。
「毒マッスル海胆ばーさん用米糠盗る」おっと、泥沼にはまったか!?まさかこれをパロディのネタとして持ってくるとは・・・。その心意気に完敗だぜ。ちなみに、毒マッスル海胆っていうは、巨大除霊ウニのことなんですよ。そいつがね、米糠をね、食べるんですよねえ。何の話でしょうねえ。
「巷説ギャグ物語」こちらは、赤塚不二夫作品とのコラボ。小説と漫画の世界について、登場人物が思索するという、メタな雰囲気が流れています。ある意味、一番真面目な作品ではないかと思います。ウナギイヌが出てこなかった・・・。しょんぼり。
いやー、長かった。これだけ長いのに、本当にバカなことしかやってない小説もなかなか無いよ、きっと。ぷすっ、と笑いたい人にオススメ。


「我が聖都を濡らせ血涙」

秋田禎信/富士見書房

メッチェンの助力を得て、キムラックへの潜入に成功したオーフェン一行。アザリーは必ずユグドラル神殿へ現れる、という確信を持って、オーフェンも神殿へ向かうが、彼の前に死の教師が立ちふさがる。

秋田禎信Boxを入手してきました!・・・でも読めない!まだ読めないの!という生殺し状態が続いています。2月くらいにはオーフェンの巻が読めるだろうか・・・。
さて、今回はキムラック編に突入!白オーフェン。
マジクも反抗期に突入。「ハチクロ」でいうところの、青春スーツを着こんでもこもこな感じ。もこもこマジク。無力で何も知らない恥ずかしい自分から脱しようと、師に色々食ってかかるわけですが、これがまた「きゃっ!恥ずかしい!」状態に。読んでる当時は、マジク寄りでしたから(笑)オーフェンは、マジクの才能に嫉妬しているに違いない的な印象だったような記憶があります。今読むと、オーフェンの主な関心はあくまでアザリーじゃん、と。笑。
幕間で語られる、イスターシバと彼との会話。彼が、ああ彼か!と思って読むとおもしろさ倍増ですね。と言いつつ、やっぱり大陸の歴史関係には弱いです、私。
キムラックから出られるのは死の教師だけ、という排他的な制度はなるほどなあと。それで、混血である魔術士を毛嫌いしているのか。こういった教義の設定が非常に緻密で、オーフェンシリーズの大きな魅力だと思います。
ラニオットの正体は、大体覚えていたのですが、地下道で鉄砲水に流された後の種明かしシーンは何度読んでもおもしろいなあ。ネイムの血の涙は、夢に見そうなほど怖い。あの挿絵を見ると、ぞっとします。本当にこわいよー。クリーオウもピンチで、シリアスな空気が・・・。クリーオウが元気がないと、なんだか物足りないー。
オーフェンが人を殺してしまった、衝撃の展開。「ヒーローは人殺しをしない」という不文律が崩れた瞬間。オーフェンはこれから先も人を殺さずに勝利していくのだと思っていた。だからこそ、この後描かれるオーフェンの苦悩に、私は寄り添うことができたのではないかと思う。
いよいよ西部編、クライマックスへ!


「閉じ込められてなんていない」

「現在は、常に未来に出会おうと歩き続けている!」


「平台がおまちかね」

大崎梢/東京創元社

自社本をたくさん売ってくれた書店を訪ねたら、何故か冷たくあしらわれ、文学賞の贈呈式では、当日、会場に受賞者が現れない…!?新人出版社営業部員の井辻くんは、波爛万丈の日々を奮闘中。

元書店員の視点が盛り込まれるせいか、大崎さんの本は、書店を舞台にしたものが一番生き生きしているような気がします。今回の主人公は、書店員さんではなく、出版社の営業さん。
本が売れるように、色々考えるのは書店員と一緒だけれど、出版社の営業にとっては、本屋さんもお客さん。あの手この手で、自社の本を売り込みます。本が好き、とは言っても、作り手のことをあまり考えたことのない私。裏話に、へー、ふーん、と頷いている内に終わっちゃったなあという感じでした。ソフト系の話が多かったからかな?ちょっぴりスパイスが効いていたのは、「贈呈式であいましょう」かな~と。基本ハッピーエンドなので、安心して読むことができました。
井辻くんが探偵役って、ちょっと意外。彼がひらめくと、「えっ、キミが?」と毎回つっこんでしまう・・・。本の世界観にのめりこむと、ジオラマまで作ってしまうマニアっぷり。いやー、それはスゴイわあ・・・、正直ちょっとひいてしまいました。ごめんよ。
営業の男性陣、がんばっていたのですが、いまいち魅力を感じなかったな~。個性的なんですけどね!濃すぎて・・・。笑。やはり、一番ときめいたのは、吉野先輩でしょう。長身のさわやか系・・・。きっと岡田将生くんみたいなイケメンに違いない・・・!と想像がふくらむふくらむ。
最後には、やはり登場した成風堂。シリーズものは、さりげないコラボが醍醐味ですねえ。ところで、井辻くんシリーズもまだ続くのか!




「茗荷谷の猫」

木内昇/平凡社

新種の桜造りに心傾ける植木職人、乱歩に惹かれ、世間から逃れ続ける四十男、開戦前の浅草で新しい映画を夢みる青年。幕末の江戸から昭和の東京を舞台に、百年の時を超えて、名もなき9人の夢や挫折が交錯し、廻り合う。

地味にプラチナ本を攻めていこう。
自分の県の地名すら怪しい私ですので、東京のことなどさっぱりさ!と胸を張って断言しておこう。よし、予防線は張った。
時代は、江戸から現代(たぶん昭和?)にかけて。あまり読まないタイプの本だったので、戸惑いながらのスタートとなりました。でも、最後まで読むと連作短編らしく各話につながりがあって、なるほど~という感じでした。ざっと感想を!
「染井の桜」。ソメイヨシノにこんなエピソードがあったらステキだな、と思った。徳造の生き方は清いと思うけれど、私にはこんな人の嫁はつとまりそうに無い。
「黒焼道話」まず黒焼って?という疑問が。彼の情熱は素晴らしいが、方向性を誤ったー!彼が真面目に黒焼の道を究めんとする姿が、あまりに滑稽でおもしろいやら悲しいやら。
「茗荷谷の猫」夫婦とはなんぞや?という話を語るには、私の経験値は足りなさ過ぎる。ただ、自然消滅は悲しい。床下に潜んでいた何かと一緒に、彼女の迷いも無くなれば良いのに。
「仲之町の大入道」松原と編集者のやり取りがおもしろい。春造は、今でも黒焼を作っているのかしらん・・・。
「隠れる」糸蚯蚓夫人!笑。たぶん、この本の中で一番コミカルな作品だと思う。嫌われようとすればするほど、気に入られてしまう展開がおもしろい。そして最後のオチも素晴らしい!
「庄助さん」戦時中。後半うるっときてしまいました。青年たちの夢や希望を犠牲にして、戦争は続いていたんだ。戦争ってそれほどの意味があるものだったのか?少なくとも、若人の未来より重要なモンではなかったことは確かだ。文枝さんの元・旦那さんの姿の消し方はずるいと思うの。
「ぽけっとの、深く」戦後。本編よりも、庄助さんが戦死したことに衝撃を受けた。復員して、映画を撮って欲しかった・・・。
「てのひら」親の老いを受け止めるのは大変だと思う。親に説教をするようにはなりたくない。いつだって、叱られる側でいたい。
「スペインタイルの家」高度経済成長期。あの靴磨きをしていた俊男くんが所帯を持っていたなんて・・・!と嬉しくなった。ゆったりとした物語の流れが安心感を誘う。しかしこの後、パチンと泡がはじけるのかと思うと、恐ろしいですねえ・・・。
思ったより猫成分が少なめだったのが残念といえば残念!