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読書の記録です。

「ボーン・コレクター」

ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋
訳者/池田真紀子

骨の折れる音に耳を澄ますボーン・コレクター。すぐには殺さない。受けてたつのは、四肢麻痺の元刑事ライム。だが、彼の研ぎ澄まされた洞察力がハヤブサのごとく、ニューヨークの街へはばたき、ボーン・コレクターを追いつめる。

“ウォッチメイカー”読後からしばらく経ちました。さて、シリーズ1冊目から攻めてゆきましょう!シリーズものを固めて読むのは、苦手だったはずなのですが(飽きるから)、オーフェンシリーズが、私にしては、わりとスイスイ読めているので、大丈夫かな・・・?と。
当たり前といえば、当たり前に、ライムとサックスはまだ出会っていません。この物語は、2人が出会う事件。サックスは、異動で広報課に転属する前日、ボーン・コレクターの第一犠牲者の現場を保存する。後々、この事件の担当刑事から依頼を受けたライムは、サックスの働きに注目し、現場の鑑識を彼女に任せることにする。
“ウォッチメイカー”では、息の合ったコンビという感じでしたが、最初はこんなに反発しあっていたのかと、びっくりしました。まあ、2人とも気が強そうですからね~。そして、なんで、サックスみたいな超美人が、四肢麻痺患者のライムをパートナーとしているのか?という私の疑問にも一応の答えは見つかりました。うーん、美人だからこその悩み。言い寄られることが前提ですから・・・。サックスの美人度に注目しがちだったのですが、意外にライムも端正なお顔立ちだったんですね~。それ以外にも、ライムの現役時代のエピソードや、脊椎を損傷した事故の話も。一番印象的だったのは、ライムに強い自殺願望があったということです。四肢麻痺患者の自殺を描いた映画を観たことがあるのですが、その時も難しいなあと思いました。答えがないんだろうなあ。結局のところ、その人の痛みや苦しみは、その人にしか分からないもの。けれど、そっと黙って寄り添ってくれる人がいたら、何か変わるのだと思う。事件発生から、たった3日でこんなにも腹をわって話せるのか、超人見知りの私には些か疑問ですが・・・。笑。これから、2人の絆が確かなものになってゆくのでしょう。
ボーン・コレクターとライムたち捜査陣との知恵比べは、とてもスリリングでした。救えなかった被害者もいたけれど、無事、救出できた人もいて救われた。特に、子供が助かってよかったなー・・・と思っていたら、最後のオチに噴いた。ええっ!?そんな、恩を仇で返すような・・・。いたたまれない・・・。犯人の正体にもびっくりさせられました。うーん、うまい!
これで、鑑識のシーンがもう少しわかりやすかったら良かったのにー。


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「流星の絆」

東野圭吾/講談社

惨殺された両親の仇討ちを流星に誓いあった三兄妹。14年後、彼らが仕掛けた復讐計画の最大の誤算は、妹の恋心だった。

今年のしし座流星群は、当たりだったみたいですねー。どうも疲れていて、夜空を見上げることがさらに少なくなりました。
しし座流星群を見に行った夜、両親が惨殺された有明兄妹。彼らは、14年後詐欺師になっていた。彼らが次のターゲットに選んだのは、大手洋食屋チェーン「とがみ亭」の御曹司だった。「とがみ亭」のハヤシライスの味が、兄妹の両親が開いていた洋食屋「アリアケ」の味と全く同じだったことから、彼らは事件の手がかりを掴むことになる・・・。
確か、ドラマ化されていましたよねえ。眉なしさん(中島美嘉)は、テレビのオリジナルキャラだったんだー!テーマは暗いはずなのに、なぜか陽気な雰囲気のドラマで、変なの~と思った記憶があります。脚本がクドカンじゃあ、そうなってもしょうがないか~。私はどうも要潤の顔が好きになれないらしい(すいません)。本を読んでも、全然イメージと合わないなあ。原作の方の戸神さんは、めっちゃタイプなんですけどね!不器用な男・・・。かわいい・・・。でも、結局あれですよね。顔がかわいい子がいいんだよね・・・。ちっ。東野さん、自身で公言している通り、ラブストーリーになると途端に雰囲気がぎこちないです。笑。
ミステリーパート(兄妹の両親を殺害した犯人について)は、意外な犯人でおもしろかったです。くだらない動機も含めて。傘がそう絡んでくるか!ひどい話でしたが、もともと有明パパが競馬に入れ込まなきゃこんなことにならなかった、とも言える。そのギャンブラーな血が、有明兄弟にも流れてたってことですかね。兄妹が、生きていくために詐欺をするしかなかった、っていう話もおかしなこと。まして、人の心をもてあそぶなんて、ひどいなーと思いながら読んでいた。立派に更生してくれ。
他人に対しては、結構容赦ない兄たちですが、妹をそれは大事にしていて、そこは好感が持てた。最後までかばってあげてるし。土下座までしてるし。兄妹の絆が強いと、だんなさんか奥さんは、妬いちゃうかもしれないよなー。戸神さん、大変だー。


「本格ミステリ08」

本格ミステリ作家クラブ編/講談社

なんだかんだで、見かけたら読むようにしている「本格ミステリ」。もう09は出てるのかな?
残念ながら、発掘はなし。
「はだしの親父」ミステリーというよりは、父と息子のちょっといい話、って感じ。久しぶりに会う兄弟といえば、みんな腹黒なイメージが先行してしまう、私の屈折ぶりを再認識させられました・・・。
「ギリシャ羊の秘密」ウンチクに閉口した。神話は嫌いではないのですが、そこまで発想する殺人犯がいる?ジャケットのタグは、いかにもこじつけ。星座シリーズの一つらしいのですが、とても他の作品を読む気にはなれないなあ。
「殺人現場では靴をお脱ぎください」題名はおもしろいんだけど、事件のオチはぱっとしない。お嬢様探偵、執事影山、警部と個性的なキャラクターがあまり生かされていなかったような・・・。
「ウォール・ウィスパー」光の三原色を使った、紫の影の解明はおもしろかった。しかし、お父さん、現金を使った宝探しごっこはいかんなあ・・・。
「霧の巨塔」既読。のはずなのに、トリックがすっかり抜け落ちていた。そこに驚いた。
「奇遇論」死人に口なし。こんな絆で結ばれた2人は、この先うまくいくのかなあ?
「身内に不幸がありまして」既読。何度読んでも動機に脱力させられる。
「四枚のカード」手品の種と、トリックがうまくかみあっている。しかし、あの手品を見て、本当に透視の能力を信じる人がいるのか。笑。あと、犯人の知られたくなかったこととは?スケープゴートに特定の人物を選んだ理由とは?と、消化不良の謎を残したままなのがひっかかる。
「見えないダイイングメッセージ」ポラロイド写真と指紋の組み合わせがおもしろい。そして、すねた音野順がかわいい。動機や犯人のオチは普通・・・。
気になっていつつも、読めていなかった作家さんの作品が何点かあったのですが、今すぐ他のも読みたい!という気分になるものはなかったなー。残念。


「我が森に集え狼」

秋田禎信/富士見書房

ここはキエサルヒマ大陸最後の秘境『フェンリルの森』。ディープ・ドラゴン=フェンリルを神と崇める信者に、マジクがさらわれた。オーフェンは救出に向かうが、教会の元教師と暗殺者が立ちふさがる。

マジク、ハートブレイクの巻。笑。
正直、フィエナは地味でうじうじしているし、私には魅力が感じられなかったのですが・・・。クリーオウの刺激に当てられていると、あの大人しそうな感じがいいのかしらん。
ドラゴン種族の中で、私のお気に入りがディープドラゴン!彼らは最強の戦士。魔術には、視線を用いており、無駄な音を発することもなく、静かな美しい獣。“深淵の狼”と呼ばれるように、大きな狼さんの姿をしています。そして、この巻からオーフェンご一行に、このディープ・ドラゴンの子供・レキが加わることになります。レキは本当にかわいい子でして、私だけでなく、たくさんの読者が虜になったことと思います。笑。記憶があやふやなのですが、レキって最後の方で群れに戻ったんだっけ・・・?
オーフェンたちは、マジクを《牙の塔》に登録するために、トトカンタ市を目指している途中、フェンリルの森に入る。そこには、ドラゴン信仰者が集う“偉大なる心臓”村があった。マジクは、村の巫女・フィエナを助けようとして、村の指導者・マクドガルたち信者に拉致される。オーフェンは救出を試みるが、戦闘の最中現れたディープ・ドラゴンに精神攻撃を受け、囚われてしまう・・・。と、今度はディープ・ドラゴンと一戦交えます。さすがのオーフェンも、ドラゴン種族相手では一発KO負け。ああ、カッコいいわ、ディープ・ドラゴン・・・!(信者がここにも1人)
キムラック教会絡みの謎が多く提示されています。マクドガルは、キムラックで一体何を見たのか?そして、フェンリルの森の最奥部にあるものとは?キムラック教会は、後半の死の教師との死闘が印象的でした。それ以外はさっぱり覚えてなくて・・・。この辺の話も頭に入れて、続きを読んでいこうと思います~。ドラゴン種族にもコネクションがあるチャイルドマン、すごいぜ!
当時はあんまり気がつかなかったけど、このシリーズ、さりげなく結構人を殺してますよねー。さくさくっと。でも、地人だけは何があっても死なないという。笑。
やっぱり、マクドガルって字の並び、マクドナルドって読みたくなるー。


「鬼」

今邑彩/集英社

言葉にできない不安感。おさまりのつかない気持ち悪さ。誰をも奇妙な世界に誘い込む、今邑彩のベスト短編集。

今でも覚えています。学生時代、友人のミステリマニアさんが、「今邑彩ね・・・。いい作家だけど、ずば抜けておもしろい本が無いよね・・・」というようなことを言っていたのを。同年代の友人の中で、大人びていた彼女ですが、振り返れば、玄人ぶった顔をして、ミステリ批評をしていたこと自体が、青さの証明なんだよなあ・・・。要するに、何が言いたいかというと!華やかなヒット作は無くとも、確実におもしろい本を書き続けている今邑さんはすごい!ということです。
前にもどこかに書いたけれど、ホラーとミステリーの融合っていいじゃん、と改めて記しておきたい。あの、後味の悪さがいいのさ~。
では、いくつかピックアップしてご紹介しましょうっ!
「たつまさんがころした」明るく、社交的な夏美さんが、実はものすごい腹黒だったというオチは素晴らしい。その上、騙されたフリをして、あえて教えない。春美さんの秘められた悪意にそそられます。そして、願わくば、不幸が起こって欲しいと思ってしまうのです。最恐の姉妹・・・。
「鬼」そして誰もいなくなった的な追い詰められる感じが、ホラー!・・・のノリかしらん、と思っていたら、最後にはうるっときてしまいました。それは、みっちゃんが、純粋に鬼ごっこを楽しんでいたから。最後に、彼女が微笑んでくれたから。
「黒髪」黒髪は日本のホラーの定番アイテム。あるはずのない黒い髪の毛が、いたるところに現れる導入部分は恐かったー。しかし、髪そのものがにょろにょろっと動くとは思わなかったため、恐いというよりは、滑稽な感じに・・・。しかも、途中からだんだん髪の毛がかわいくなってきて、死んでしまった時には、寂しさを感じるまでに。笑。浮気は治らない病気。
「メイ先生の薔薇」子供たちと、スプラッタな光景を結びつけるのには抵抗があります。男の言葉通り、冗談であればいいのに・・・と思った。悪意は無いのに、いちばん残酷な物語。
先の展開は見えても、着地をするその時まで目を離してはいけないのだ!