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読書の記録です。

「科学の扉をノックする」

小川洋子/集英社

小川洋子が研究者と研究室の取材を通して書き下ろす、科学入門エッセイ。

小川さんと同じく、文系の私にとって、理系は永遠の憧れです。
私が生きている世界は、地球は、宇宙は、どうやってできたのか?私はなぜこんな姿なのか?なぜ、あの動物はあんな姿なのか?自分の成り立ちについて、誰もが一度はちらりと考えたことがあるはず。だけど、それを突き詰めて考える人は、あまりいないのではないでしょうか。ひとつの?に情熱を傾けた人たち、それが科学者だと思います。
本書には、そんなプロフェッショナルな人たちと小川さんの対談が収められています。ジャンルは多岐にわたり、天文学、鉱物、遺伝子学、放射光、粘菌、遺体科学、最後に小川さんの趣味でスポーツ(笑)。
どれも、魅力的な題材で興味深かったのですが、特に「天文学」と「鉱物」「遺伝子学」がおもしろかったなー。特に、「天文学」のお話を読んでいる時は、心がどこかに旅をしていたような感覚でした。自分はなんと小さいのか、宇宙はなんと広いのか。そう考えると、日ごろの悩みがふっとぶようでした。そうか、悩んだときは、宇宙の本を読めば良いではないか!と発見しました。笑。あと、とりあえず地球外生命体は、仮に存在していても、私が生きている間には地球を訪れないであろうことに安心しました・・・。
あと、良くわからないものには頭に「ダーク」をつけるという話もおもしろかった。「サムシング・グレート」のお話も。「スプリング・エイト」の話が一番難しかった!ですが、小さいものを見ようとすればするほど、大きな装置と目にも見えない速さのエネルギーを必要とする矛盾は、確かに私も美しいと感じられました。他にも、初めて聞く単語や概念がいっぱいで、しかもわかりやすく解説してあって、とても良い刺激になりました。これが入り口なんて、すごいなあ。
小川さんは、終始、プロの仕事に驚き、感心し、また人としての魅力を雄弁に語っておられます。私もまた、偉大な科学者たちの虜になってしまったのですが、それにも増して、小川さんの大ファンになってしまいました。理知的でありながらチャーミング。そして、何の抵抗もなくその世界に入り込める素直な姿勢。そんな小川洋子という作家の魅力を前面に引き出した1冊ではないかと思います。オススメ。

本とは全く無関係なのですが、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」というゴーギャンの絵の題名を思い出しました。哲学と科学は、意外に追い求めていることは同じなのかもしれない。


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「ぼくと彼女に降る夜 ナイトサクセサー」

八街歩/富士見書房

清夢騎士(スガム ナイト)は、容姿、成績、運動、すべてにおいて人並み。決して目立たず平凡な少年を15年演じてきた。しかし、彼の偽りの人生は、ある日一変する。“魔乖術師”と名乗る魔法使い同士の戦いに巻き込まれたのだ。

平凡を演じてきたんですって!私なぞ、素で地味なんだけど!
平凡を演じていた少年・ナイトが、魔乖術師同士の戦いに巻き込まれ、1人の少女の面倒を見ることになります。それがヨルさん。彼女は、魔乖術師のトップ「魔王」の座を争う戦い「魔宴」なるものに参加していて、ナイトくんは、彼女が勝ち抜くのを助けることになります。現在、日本にいる魔乖術師は「闇」のヨルと「滅」。それに、魔乖術師を狩る「魔女猟人(ヤクト・ヘクス)」も現れる。果たして、戦いの行方は・・・!
まあ、こんな感じの話で、設定は悪くないんですけど、どうも、ナイトとクラスメートの掛け合いとか、ヨルとナイトの掛け合いとかがうざったい。しかし一番の問題は、衝撃のラスト!勘違いかよ!笑。
まあ、ざっと説明すると、ナイトは初恋の恩師を、間違えて倒してしまったんですが、後でその間違いに気づいたんです。しかし、この勘違いに気づいてからのナイトの態度の変わりっぷりが、ひどい。そりゃあ、ヨルもさっきまで戦ってた敵をいきなり「治せ」と言われたら、「は?何言ってんの?」ってなるわな。笑。しかも、そのあと、「どんな姿になっても、先生はキレイだよ・・・。」とかクサイセリフを吐いて、3回もチューしやがって・・・。なんなんだよ、コイツら・・・!ナイトの最低っぷりはもとより、自分を蘇らせるためにヨルを利用しろとけしかけたアイリスも最低。さらに、ヒロインであるヨルも、あれだけナイトのヘタレっぷりを見せつけられたにも関わらず、まだ、ヘタレのことが好きときた!
なんなのこの人たち・・・?
そして、うちの兄弟は何がおもしろくて、これを最新刊までそろえたのか・・・?


「我が呼び声に応えよ獣」

秋田禎信/富士見書房

本業は魔術士だが、副業でモグリの金貸しをしているオーフェン。ちっとも金を返そうとしない地人が、どうやら金儲けの話を見つけてきたらしいいので、とりあえず、とある金持ちの屋敷にやって来たのだが…。

秋田禎信Boxが、もうすぐ発売されますね~。もちろん予約済みですのことよ!これに合わせて、シリーズをざっと読み返しておこうかな~と思いついたのです。間に合わないと思うけど・・・。途中で絶対飽きると思うけど・・・。
すっごく久しぶりに読んだけれど、やっぱりおもしろいな~。と感心しました。ギャグ、アクション、シリアス、ミステリーと色々な要素を詰め込んで、こんなにコンパクトにまとめられているなんて!当時、私は中学生だったので、オーフェンの年齢(20歳前後)は、大人~で、むしろマジクやクリーオウに共感しながら読んでいました。特に、金髪の美少年で魔術の素質があるマジク君に激ハマリでしたなー。笑。しかし、いまや私、アザリーやティッシを飛び越えて、チャイルドマン世代です。今読み返したら、オーフェンの若さにびっくりするやら寂しくなるやら。複雑・・・。
オーフェンのアザリーに対する気持ちっていうのが、初恋だったんだなあと改めて思いました。憧れや尊敬と恋は、似て非なるものですが、オーフェンは確かにアザリーを好きなのだ!と。クリーオウとオーフェンの関係も、最後まで曖昧なままでした。これは良き相棒かなあと、私は思うのですが、この答えが続編で出ることを期待しています。
後半、このシリーズはドラゴン種族やら大陸の歴史やら宗教色を帯びてきたような記憶があって、理解できなかった部分がありました。今回は、理解できるかな?
現在、馬鹿みたいなペースで大量のライトノベルが出版されていて、読める量なんてほんの少し。な上に、当たり外れが厳しいです。そんな中で、間違いなく胸を張ってオススメできるライトノベルです。


書影がなかったんです・・・。悲しい。

「ほしのはじまり」

星新一(新井素子:編)/角川書店

全世界で、あるいは全宇宙で永遠に読み継がれるべきマスターピース集。これ1冊で、星新一作品世界のすべてがわかる。星チルドレンの旗手・新井素子が選ぶショートショートの最高傑作54。

私の中で、ショートショートといえば、星新一か阿刀田高。ショートショートは苦手で、あまり読まないせいか、ぱっと作者が出てこない・・・。そもそも、私がショートショートが苦手になったきっかけは、星新一さんの「未来いそっぷ」でした。小学生くらいの時に、ショートショートというジャンルも、星さんも知らず、ただ表紙のキリギリスがかわいいという理由だけで読んだ本。意味がわからなくて、なんだか読後感が気持ち悪いと思ったのを覚えています。そして約20年が経ってから、どうして星新一を読もうと思ったのか謎です。笑。でも、おもしろかったなあ。きっと、編者の新井素子さんの解説と、愛ある構成のおかげだと思います。テーマごとに作品が集められていて、なじみやすかったというか。
びっくりしたのは、話を覚えていたこと。「少年と両親」と「おーい でてこーい」「いそっぷ村の繁栄」も。大人になった今読むと、これらの作品は人間の風刺画のように見えるのです。特に、ベタな結末ですが「おーい でてこーい」はとても好きです。
5章と6章の作品が好みでした。人間という生き物の性を描いているところが好きなのかな。「殉教」なんか良かったですねえ。あの、流されやすいところが人間ですよね。信用しちゃうんだ!っていう。読んでいる途中はいまいちだったのですが、余韻が残るのは「殿さまの日」。お殿様があーだこーだ考えていることなのですが、何も考えていないようなお殿様が、こんなに周りに配慮して生活していたとしたら・・・。と見る目が変わりそう。「花とひみつ」では、数々の偶然の結果、勘違いした研究者たちがロボットのモグラを開発した話。得意そうにモグラをさしだす所長がかわいらしい。笑。
星さんの作品には、「実はどこかのスパイ」とか「実は殺し屋」「実は組織のボス」「実は・・・」っていう裏の職業を持っている人がたくさん登場します。ありえないけど、そこがおもしろいのかも。
「ほしくずのかご」では、漢字とひらがなの全体的なバランスのこだわりの話が興味深かった。読みやすいし、ページを遠目に眺めてもきれいに見えるような気がするのは、このせいかな。気のせいかな?手元に1冊置いておきたい本です。オススメ。


「なにもいらない。いまのわたしに必要なのは思い出だけだ。それは持っている」


「黒笑小説」

東野圭吾/集英社

偉そうな顔をしていても、作家だって俗物根性丸出し!俗物作家東野がヤケクソで描く、文壇事情など13の黒い笑い。

シモだシモだという話を読んだ人から聞いていましたが、そんなにシモネタだとは感じなかったなあ。シモネタ耐性がついたのか。どんなレベルアップだよ・・・。1話1話が気軽に読める短編集。ということで、感想もかるーく。
「もうひとつの助走」寒川先生、あわれ・・・!こういう勘違いオチ、好きだなあ。
「巨乳妄想症候群」「インポグラ」たぶん、この本がシモネタと言われたのは、この2作が原因だろうなあと想像してみる。いや、インポグラは実際にあったら使えそうですよね!笑。
「みえすぎ」雑菌が目に見え、洗濯機を1日5回まわすという坂上忍のトークを思い出した。どうでもいい回想ですいません。
「モテモテ・スプレー」かわいそうだが、そこまでして・・・という涙ぐましい努力が、我々の笑いをさそうのです。ぷぷっ。
「線香花火」「過去の人」作家が書くだけに、そういう人が本当にいそうな気がしてきた。編集は、恐ろしいなあ。
「シンデレラ白夜行」ほんとうは恐いグリム童話・・・。そうか、ガラスの靴である理由はそこにあったのか!と納得した。そうそう、悲劇のヒロインはみんなしたたかな女なんだよねえ。
「ストーカー入門」女の見栄ってやだな。なんだかんだ言いつつ、ちゃんと彼女の指示に従っている彼氏がいい人だ。
「臨界家族」もし、自分に子供ができたとき、おねだりに屈しない自信はない!というか、たぶん怒れない。だめじゃん。
「笑わない男」きれいにオチがついていて、一番好きな作品。今のお笑いブームに乗っかって売れて、自分はおもしろいんだと勘違いしている芸人が読めばいいと思う。
「奇跡の一枚」私は、めちゃくちゃ写真写りが悪いので、うらやましい~。なぜ、人はすぐばれると分かっていて、嘘をついてしまうのだろうか・・・。
「選考会」寒川先生、再び・・・!「過去の人」での扱いの原因が判明。振り落としに、ここまで手間ひまかけてくれた編集は、優しいのか、ひどいのか・・・?
滑稽な登場人物たちに、くすりと笑いをもらしながらも、頭の片隅では「結構自分も同じ思考をしてるかも・・・」とぼんやり思っていました。