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読書の記録です。

「キウイγは時計仕掛け」

森博嗣/講談社

建築学会が開催される大学に届いた奇妙な宅配便。中には、γと刻まれたキウイにプルトップが差し込まれたものがたったひとつ、入っていた。荷物が届いた日の夜、学長が射殺された。学会のため当地を訪れていた犀川創平は、キウイに刻まれたギリシャ文字を知り、公安の沓掛に連絡する。

「すべてがFになる」のドラマ、見てますか?
主役のキャラクターが原作とかけ離れているところは評価できませんが(特に犀川ティーチャーの謎解きシーンはひどい)、物語の見せ方、謎解きのエンターテイメント性が良いなと思って見ています。まあ、理系がウリといえばウリなんですが、私は森さんはロマンチストだと思っているので・・・。なんか、理系を前面に出すのも違うような気がします。あと、主題歌もどうにかならんかったんか。
何はともあれ、まだ作品を追いかけるモチベーションが残っていたようです。Gシリーズです。今回は、萌絵と犀川先生の出番が多く、半分S&Mでした。前作と変わらず、加部谷は県庁勤め、雨宮はリポーター、海月は院生?あと山吹は本格的に研究者として一人立ちしたようです。舞台は建築学会で、登場人物勢ぞろいといった感じでした。
殺害されたのは、学界が開催される大学の学長と副学長。副学長は女性で、海外にいたころに結婚・離婚を経験しており、その息子が留学生であった。今回は、その息子が犯人・・・という感じでした。相変わらず、事件については一歩引いた感じの扱いで、とても素っ気ない。おそらく、浴槽に浮いていたキウイや、キウイにプルトップのフタを挿して時限爆弾に見せかけたことにも意味はあったのかもしれませんが、なんかよくわかんなかったです。
注目すべきは、萌絵さんの心境の変化かなあ。事件に首を突っ込んでは、ひっかきまわしていたあの頃の自分を客観的に見ているシーンがあって、改めて、萌絵さんは大人になりましたなーと思ったのでした。
あと、山吹・加部谷・海月のトライアングルができるか?と思ったけど、どうでもよろしい気もします。うーん、そろそろ、謎解きに力を入れたミステリーが読みたいところです。


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「アリス殺し」

小林泰三/東京創元社

複数の人間が夢で共有する〈不思議の国〉で次々起きる異様な殺人と、現実世界で起きる不審死。驚愕の真相にあなたも必ず騙される。鬼才が贈る本格ミステリ。

大学生の栗栖川亜理は、おかしな夢を見続けていた。夢を見ている間、自分は、不思議の国の住人になっているのだ。その不思議の国で、ハンプティ・ダンプティが殺される事件が起こった。時を同じくして、亜理の大学でも王子先輩が死んでしまう。2つの事件は関連しているのか?そんな中、亜理の前に不思議の国ではビルと呼ばれている井森が現れる。彼は、不思議の国の住人は、自分のアーヴァタール(化身のようなもの)であり、この世界には他に不思議の国のアーヴァタールを持つ人間がいるはずだ、考えている。王子先輩のアーヴァタールが、ハンプティ・ダンプティであることを確認した後の出来事だったという。不思議の国で起こる殺人事件の容疑者となったアリスは、不思議の国で死刑となり現実世界で死なないために、真犯人を探す。
夢の国のアーヴァタールを殺害すると、現実世界でシンクロしている人間はなんらかの事故で死ぬという関係を利用した殺人事件。とても不思議な世界観でした。ポイントとなるのは、現実世界の人と不思議の国のアーヴァタールの相関関係です。現実世界の誰が、不思議の国の誰と結びつくのか?つまり、私たちは(名前のせいもあるけど)亜理=アリスだと思っていたけれど、そうではなく、刑事たちも帽子屋と三月兎ではないのです。そして、広山準教授も公爵夫人ではないことが明らかになります。嘘と勘違いが交錯し、現実世界と不思議の国の事件が結びつくとき、全てが明らかになる。そう、夢の世界だと思っていた不思議の国が現実で、現実だと思っていたこの世界の方がレッド・キングが見ている夢の世界だということが・・・。いや、白兎が間抜けな勘違いをしてただけとも言えるんですけど・・・。
バンダースナッチって何?と思い、ググッてみましたが、キャロルの作品では素早い生物以外に具体的な記述はないそうで・・・。他の作品では、怪物として描かれているようです。あと、不思議の国の住人たちが身近に集まりすぎなのは、話の都合上仕方ないんですが、どうにもご都合主義なところが気になりました。
殺人のシーンになると、突然グロい描写になるのにはびっくりしました。笑。どうした?って戸惑いました。まあ、そこまでひどくはないんですが・・・。アリスが「ぐぼお!」とか「がはあ!」とか言うの、想像したくないっていうか・・・。なんか、もっと穏便な殺し方無かったの?っていうか・・・ねえ・・・。笑。最後の斬首シーンも、ずっとごりごりやってるから、もう、いいよって思いましたし。大変なのはわかったよ!って。猟奇殺人がダメ!っていう方はNGです。ご注意を。


「風が吹いたら桶屋がもうかる」

井上夢人/集英社

牛丼屋でアルバイトをするシュンペイは、ミステリマニアのイッカクと、超能力が趣味のヨーノスケの3人で同居している。ヨーノスケの超能力は本物だけど、何の役にも立たない。それなのに、彼女たちはヨーノスケに助けを求める・・・。

私がミステリーにはまるきっかけとなった本は2冊あるのですが、そのうちの1冊です。(ちなみに、あともう1冊は倉知淳さんの「日曜の夜は出たくない」です。)
ミステリー好きを自称する方とお話をする機会があったんですが、全く話がかみ合わなくて、「もしやモグリなのでは・・・?(モグリのミステリー好きってなんだ。笑。)」と思ったりしたのですが、まあ、私も世の中の全てのミステリーを読んでいるわけじゃなし、別に趣味でたくさん知ってる方がえらいとかないし・・・と、後日、相手を疑った自分を反省しました。原点とか言いながら、井上夢人さんの本を全然読んでないなあ・・・と思って、借りてきました。
でも、恩田陸とジェフリー・ディーヴァーくらい知ってても良さそうなものなのに・・・。
題名の「風が吹いたら桶屋がもうかる」というのは、昔の洒落みたいなもの?で、風が吹いたらほこりが舞って、目の見えない人が増え、三味線が良く売れる。そうしたら、猫が減ってねずみが大量発生。増えた鼠が風呂桶をかじるため、桶屋がもうかるという話です。ひとつの出来事が、意外なところに効果を及ぼすということです。
連作短編集なのですが、パターンはほぼ同じ。
依頼人登場→ヨーノスケ超能力開始→待ってる間にイッカク登場→イッカク推理披露→依頼人慌てて帰る→ヨーノスケほったらかし→後日依頼者登場(謎解き)→ヨーノスケ何かを視る
これだけ見るとつまんないですが、構成は同じでも、謎は違うので楽しく読めました。今から17年前の作品ですが、全然古びた感じがしません。とは言っても、電話には時代を感じるかなあ・・・。携帯電話は便利だけど、恋人たちの会えなくて切ない、声が聞きたい・・・的な距離がなくなりましたよね。それがいいのか悪いのか、わかんないけど・・・。
これを読んだときに、推理ってひとつじゃなくていいんだ!ととても驚いたのを覚えています。イッカクの推理は、毎回的外れ(しかも物騒)なんですが、彼はしれっとした顔で「理論に破綻はない。だから、これは間違いではないのだ。」というようなことを言います。謎がひとつあって、それに対するアプローチが色々あっていいんだ、ということがわかったときに、私はミステリーのおもしろさに目覚めたのだと思います。
私はイッカクの堂々とした語りっぷりに、筋道の通った論理、だけど大間違いな推理が好きなんですが、これも、後日談のなんてことない謎解きが用意されているこそだからかな、と思います。日にち間違えてただけ、とかありますから。笑。
まあ、騙されたと思って、一度読んでみてください。


「ミステリマガジン700【国内篇】」

/早川書房

日本一位・世界二位の歴史を誇るミステリ専門誌“ミステリマガジン”の創刊700号を記念したアンソロジー“国内篇”。創刊当時から現在に至るまでの掲載作品から傑作短篇を多数収録。日本ミステリの精華を届ける。

ミステリマガジンは購読していないのですが、700号の中から選ばれた作品ってどんなのだろう?と興味がわいたので、読んでみました。全体的に昔の作品が多いなーという印象。あと、不思議な雰囲気のものも結構あったかも。前の「名探偵登場!」といい、ミステリーというカテゴリーの奥深さを感じますね。まあ、私は普通に謎解きがあるものが好きなんですけど・・・。笑。
読後から時が経過しているので、記憶に残っているものだけ・・・。
「寒中水泳」(結城昌治)これは結構昔の作品だったと思うのですが、構成がザ・ミステリーという感じで安心して読めたと思います。
「ドノヴァン、早く帰ってきて」(三条美穂)最後の仕掛けが、ミステリーといえばミステリーなのか。目が見えなくなった彼女。切ない作品です。
「クイーンの色紙」(鮎川哲也)消えた色紙を探せ!という話。途中まではおもしろかったんですがー。・・・裏かよ!まあ、そんな話です。
「閉じ箱」(竹本健治)とにかく不思議な話でした。わかる人にはわかるネタだったようで・・・。(オマージュみたいな感じ?)前から竹本さんの作品には、難解なイメージを抱いていたのですが・・・、ここまでわからんとは・・・。キララもシモな話だしなあ・・・。たぶん、これからも避けて通ります。笑。
「聖い夜の中で」(仁木悦子)子供が不憫だったけど、最後はハッピーエンドで良かった。子供の出てくる話は、後味が良い方がいいなーと思う今日この頃。
「『私が犯人だ』」(山口雅也)どこかで読んだことがあると思う・・・。大烏の「nevermore」を上手く取り入れた話。ある屋敷で教え子を殺した男は、屋敷を訪れた人々に殺人を告白する。しかし、人々は自分を無視し続け、やっと話が通じたと思ったら、話がかみあわない・・・。最後は脱力するような、少し薄ら寒い空気も残しつつ幕。
「城館」(皆川博子)皆川さんは、短編もすごいんです!幻想的な雰囲気にのまれそうになりました。私も女の子と一緒にモヤモヤしてたんで、燃えちゃって良かったです。笑。
「川越にやってください」(米澤穂信)米澤さんだー、と楽しみに読んだのに、???で終わりました。これも、わかるひとにはわかるネタだったようで・・・。残念!読書不足だなー。
「怪奇写真作家」(三津田信三)これは・・・、ホラーではないか!最後の追いかけられるところは、ハラハラしすぎて心臓に悪いったら・・・。これ、最後助かったからミステリーなのかしら?(たぶん違う)
次は海外篇。予約まだかなー。


「名探偵登場!」

/講談社

超絶難事件は解決されうるのか!?名探偵たちはいったいどんな推理を繰り広げるのか?通常では考えられない執筆陣容を誇る贅を尽くした華麗なる競演。驚愕必至の捜査と、予測不能の結末!13の難事件に挑む13人の名探偵。古今東西の名探偵たちへの超偏愛アンソロジー。

名探偵って言ったら、ミステリーだと思うじゃないですか。しかも執筆陣は、普段ミステリーのジャンルでは見かけない作家さんばかりで、こいつはおもしろそうだ!と期待していたのですが・・・。ミステリーのアンソロジーだと思って読むと、肩透かしをくらいますので要注意。
印象に残ったものをいくつかピックアップしたいと思います。
「科学探偵帆村」(筒井康隆)最初は、一体何の話なんだ?と思っていましたが、最後で脱力の種明かし。ぶっ飛んだ話ですが、処女懐胎を説明するにはコレしかない!笑。
「遠眼鏡」(木内昇)成功すると大ぼらを吹いて上京した男が、アパートで宝探しに挑む・・・話。暗号を解いて、何が出てくるのかな?と思ったら、味噌汁の作り方かーい!喜ぶの大家さんだけやん!そうか、秘伝の味噌汁という伏線はここに・・・と脱力したり納得したり。バカバカしいオチですが、私は木内さんの脱力ネタが好きなので、大変楽しめました。明智イメージを大きく覆す明智先生も登場します。しかも、何の役にも立ってない。笑。
「三毛猫は電気鼠の夢を見るか」(海猫沢めろん)喋れるようになった猫が探偵。SFだと思いますが、ミステリーとしての形式も踏襲しているので、アリかな。
「ぼくの大伯母さん」(長野まゆみ)これも途中まで、何の話?って感じでしたが、最後であらまあそうだったの、という感じで納得はしました。というか、お茶がおいしそうでした。
「a yellow room」(谷崎由依)これまた何の話やねん、という話でしたが、最後の方の余韻を覚えていたので・・・。要するに、探偵が犯人でその子供が探偵としてやってきたという話ですよね?
「フェリシティの面接」(津村記久子)これを読んでいるときは知らなかったのですが、アガサ・クリスティの小説に登場する秘書(フェリシティ・レモン)が登場しています。最後は、なんとかオチはついていますが、これを推理と言っていいのかどうか・・・。
冒頭でも書いたように、ミステリーのアンソロジーだ!という先入観のもとで読んだので、???が続く本でした。謎ときとかどうでもいいっていう。